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明海大学歯学雑誌 41‐1★/1.Watanabe

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(1)

ヒーリングアバットメントを用いたインプラント除染方法の

基礎的検討

鈴木 玲爾

辰巳 順一

2

松本 篤樹

1

溝部 健一

1

小野 裕貴

2

剛兵

2

基喆

2

荒木 久生

1 1明海大学歯学部機能保存回復学講座オーラル・リハビリテーション学分野 2明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野 要旨:インプラント周囲炎の治療法はいまだ確立されていない.その中でも,細菌に汚染されたインプラント体表面の 除染は,再骨結合を図る上でも重要である.そこで,口腔内に装着したヒーリングアバットメントの表面に付着した細菌 性プラークの効果的な除染方法を in vitro において検討し,インプラント周囲炎に対する効果的な治療法確立のための基 礎的検討として本研究を行った.材料と方法として,まず,イヌおよびヒト口腔内に装着されたヒーリングアバットメン トを口腔外で除染処理を行い,除染効果を評価した.除染群として,生理食塩水群,弱酸性水で洗浄した機能水群,プラ スチックスケーラー群,Subsonic Utility System(SUS)ブラシにて洗浄した SUS ブラシ群,Polyetheretherketone チップ (チップ PI)を装着した超音波スケーラーでスケーリングした超音波スケーリング群,β-リン酸三カルシウム(β-TCP) 粉末を噴霧した β-TCP群,Er : YAG レーザーで 1 および 3 分間照射した,Er : YAG レーザー群とし,除染処置を行わ なかったものをコントロールとした.除染効果の評価法として,除染前後の試料表面を走査型電子顕微鏡にて観察した. また,除染前後のヒーリングアバットメント表面の生菌付着数の計測を培養法を用いて行った.すなわち,除染後のヒー リングアバットメント表面の細菌を機械的に剥離し,寒天培地に播種,培養し,colony forming unit(CFU)を計測した. その結果,イヌ口腔内装着ヒーリングアバットメントの除染実験では,SUS ブラシ,β-TCP, Er : YAGレーザー照射群 で高い除染効果が得られた.さらに,ヒト除染実験結果から,チップ PI, Er : YAG レーザー照射群で除染効果が高かっ た.

索引用語:インプラント周囲炎,ヒーリングアバットメント,除染,超音波スケーラー,Er : YAG レーザー

Basic Study on Implant Decontamination Methods Using Healing

Abutment

Reiji SUZUKI

, Junichi TATSUMI

2

, Shigeki MATSUMOTO

1

,

Kenichi MIZOBE

1

, Yuki ONO

2

, Kohei HAYASHI

2

,

Kitetsu SHIN

2

and Hisao ARAKI

1 1Division of Oral Rehabilitation, Department of Restorative & Biomaterials Sciences, Meikai University School of Dentistry 2Division of Periodontology, Department of Oral Biology & Tissue Engineering, Meikai University School of Dentistry

Abstract : The decontamination of implant surfaces polluted with bacterial plaque is essential to control peri-implantitis and to obtain the re-osseointegration. Even today, however, there remains no established modality for the treatment of peri-implantitis. In the present in vitro study, we examined various methods of removing bacterial plaque from the surface of healing abutments to de-termine an effective treatment for peri-implantitis. Healing abutments applied to dog and human were decontaminated extraorally and the efficacy of various methods for the decontamination was evaluated. Physiological saline, functional water irrigation using mildly-acidic solution, plastic scaler, Subsonic Utility System(SUS)brush, ultrasonic scaler with polyetheretherketone tip(tip PI),powdered beta-tricalcium phosphate(β-TCP),or 1− and 3− minute Er : YAG laser irradiation were used for the decontamina-tion of healing abutment in the experimental groups. The healing abutments in the control group were not subjected to any

(2)

proce-緒

骨接合型インプラントは,無歯顎患者のみへの適応か ら部分欠損患者へと適応が拡大してきた1, 2) .近年で は,さらに歯周疾患の既往を有する患者にも行われるよ うになってきている3) .このインプラント治療後の予後 について調査された報告では,Moy ら4) は 20 年以上の 経過症例に対しての生存率が 93.4% であったと報告し ており,インプラント治療による欠損補綴は予知性の高 い治療手段であることが明らかとなっている. 骨接合型インプラントによる口腔機能回復が行われる ようになった反面,さまざまな併発症も報告されてきて いる5) .インプラント治療後の併発症の中でも,インプ ラント周囲炎の発症率が最も高く,さらにこのインプラ ント周囲炎の発症率が年々高くなってきていることが報 告されている.インプラント周囲炎の発症率は Ber-glundhら6) が 2002 年に 0∼14.4% の症例であったと報告 したが,その後 Zitzmann ら7) が 2008 年に報告した結果 では 28∼56% の症例で,インプラント周囲炎を認めた としている. このように近年増加しているインプラント周囲炎に対 し,その治療法に関する研究が数多く報告されてきてい る8−16) .しかし,その方法はいまだ確立されておらず, 今後さらにインプラント表面の除染,ならびに周囲骨組 織の再生に関する検討が必要であるとされている17) . インプラント周囲炎に罹患した患者に対する治療指針 として,すでに Mombelli と Lang18) が,インプラント周 囲組織の症状の進行に伴い,必要な累積的防御治療(cu-mulative interceptive supportive therapy)を示している. すなわち,インプラント周囲プロービング深さが 4 mm 未満で,排膿や骨吸収を認めない場合には,インプラン ト体表面の清掃と研磨を実施することがその対応法とな っており,さらに症状が進行すると局所への殺菌剤の使 用や,抗菌薬の全身投与,さらには外科的対応が要求さ れるようになっている.しかし,各処置法については何 ら具体的な治療法が示されているわけではない.中でも インプラント表面の機械的清掃と研磨は,インプラント 体の撤去以外のすべての段階で必要とされる重要な治療 法と考えられる. このインプラント周囲炎を治療するためには,まずイ ンプラント体表面の徹底した除染が必要とされ,そのう えで失われた周囲組織の再生療法を行わなければ,イン プラント周囲組織の再生は起こらない.そこで,すでに 様々なインプラント体表面の除染法について検討が行な われている.しかし,統一された条件下で検討されてい るわけではなく,最も効果の高い除染法がどのような方 法であるかは,現時点では確定していない. すでに,谷田部ら19) ,細田ら20) は,インプラント試料 表面に歯周病原菌である Aggregatibaccter actinomycetem-comitans(A.a )を付着させ,その後一定条件下で,除 染処置を行い,その効果を比較検討した.しかし,実際 の口腔内では細菌はバイオフィルムを形成し,単一の細 菌種を付着し,除染処置を行った場合と異なる結果にな る可能性も考えられた. そこで,実際に口腔内に装着したチタン製ヒーリング アバットメントの表面に付着した細菌性プラークの効果 的な除染方法を in vitro において比較,検討し,インプ ラント周囲炎に対する効果的な治療方法を確立するため の基礎的な研究を行った.

dure for the decontamination. Decontamination efficacy was evaluated by observing the surface of the healing abutment with a scanning electron microscope before and after the decontamination. The total bacterial count on the abutment surface was also measured using culture method before and after the decontamination. Bacteria from the post-cleaning abutment surface were inocu-lated on agar medium and the cultured colony-forming units(CFU)were measured.

Consequently, in the study of the decontamination of the healing abutment for dog, the SUS brush, powderedβ-TCP, and Er : YAG laser groups were found to exhibit the highest efficacy of the decontamination. Meanwhile, in the study of the decontamina-tion of the healing abutment for human, ultrasonic scaling with tip PI and Er : YAG laser proved to be the most effective methods for the decontamination.

Key words : peri-implantitis, healing abutment, decontamination, ultrasonic scaler, Er : YAG laser

───────────────────────────── §別刷請求先:鈴木玲爾,〒350-0283 埼玉県坂戸市けやき台 1-1

明海大学歯学部機能保存回復学講座オーラルリハビリテーショ ン学分野(現所属)

(3)

材料および方法

1.イヌ口腔内装着ヒーリングアバットメント表面の除 染実験 (1)実験動物への骨接合型インプラントの埋入および, ヒーリングアバットメントの回収 12か月齢の雑種成犬 6 頭(雄 HBD(mongrel),19.3 ±1.5 kg body weight,オリエンタル酵母工業,東京)を 本研究に使用した.骨接合型インプラント体材料とし て,直径 3.7 mm,長径 10.0 mm の完全埋入型 2 回法イ ン プ ラ ン ト ( Tapered Screw-VentⓇ, Zimmer Dental,

Carlsbad, CA, USA)を使用しプロトコールに準じて埋

入を行った.下顎両側第一から第四前臼歯までの抜歯, 欠損部位へのインプラントの埋入,および 2 次手術は全 身麻酔下で行った.すなわち,0.1 ml /kg body weight の 塩酸メデトミジン(ドミトールⓇ ,日本全薬工業,福島) を皮下注射し,鎮静状態を確認した.その後 4% セボフ ルラン(セボフレンⓇ ,丸石製薬,大阪)にて全身麻酔 の導入後,気管内挿管を行い,2% セボフルランにて全 身麻酔状態を維持した.局所麻酔は,処置部位に 1/8 万 エピネフリン含有 2% 塩酸リドカイン(歯科用キシロカ インカートリッジⓇ ,アストラゼネカ,大阪)にて局所 麻酔を施した.抜歯,インプラント体埋入および 2 次手 術後の管理として,250 mg のアジスロマイシン(ジス ロマックⓇ ,ファイザー,東京)を 1 日 1 回,3 日間投 与した.縫合糸は,術後 1 週間(W)で除去し,口腔清 掃は,1 W に 3 回軟毛ブラシを用いて行った.食餌は, 実験期間を通し軟食を与え,水は自由摂取とした. インプラント体埋入後 8 W が経過した時点で 2 次手 術を行った.まず実験対象部位に対して歯槽骨頂切開を 加え,粘膜骨膜弁を剥離翻転後,カバースクリューを除 去した.滅菌生理食塩水による術野の洗浄を行い,直径 5.0 mm,長径 5.0 mm のヒーリングアバットメント(Zim-mer Dental)を装着後,粘膜骨膜弁を復位させ,緊密に 縫合した.1 W 後に抜糸を行い,その後アバットメン ト表面にプラークが蓄積しやすいように Lindhe ら21) の 方法に準じ,インプラント体周囲粘膜辺縁に絹糸(3− 0,ベアーメディック,茨木)の結紮をおこなった.絹 糸設置後プラークコントロールを中止し,30 W 後にヒ ーリングアバットメントを回収した. 本動物実験は,明海大学歯学部動物実験倫理委員会の 承認のもと実施した(承認番号;A 0704). (2)イヌ口腔内装着ヒーリングアバットメントの除染 2次手術時にヒーリングアバットメントを装着し,そ の後ヒーリングアバットメント基底部に絹糸を結紮する ことでプラークの蓄積を促した.その後,30 W 装着し た 36 個のヒーリングアバットメントを回収した. 回収したヒーリングアバットメントは以下に示すよう に除染を行った.すなわち,①生理食塩水(saline)群 (Fig 1f):50 ml の滅菌生理食塩水を 17 G 注射用針を装 着した 50 ml 注射筒(テルモ,東京)を用いて,1 分間 洗浄した.②機能水群:50 ml の機能水(弱酸性水)を 17 G 注射用針を装着した 50 ml 注射筒を用いて,1 分

Fig 1 Instruments for the decontamination of the healing abut-ment.

a)Plastic scaler(ImplacareTM

, Hu-Friedy, IL, USA).b)SUS Brush(Subsonic Utilitys System ; SUS brush, CAVO, Biber-ach, Germany). c, g )Polyetheretherketone tip(Piezon tip PI, Shohu, Osaka). d )Quick Jet(Yoshida, Tokyo)withβ -TCP powder(Brainbase, Tokyo). e, h )Er : YAG Laser with C 600 F irradiation tip(ErwinAdvErL, Morita, Osaka).f )Saline ; 50 ml of physiological saline.

(4)

間洗浄した.本実験に使用した機能水は,pH : 5.0∼ 7.0,有効塩素濃度;50∼70 ppm(Well CLEAN-TE, OSG コーポレーション,大阪)である.③Plastic scaler(PS)

群(Fig 1a):プラスチックスケーラー(IMPLACARETM

, Hu-Friedy, IL, USA)で 1 分間 60 ストロークスケーリン グし,その後生理食塩水 50 ml で 1 分間洗浄した.④SUS ブラシ群(Fig 1b):SUS ブラシ(KAVO, Biberach, Ger-many)を滅菌精製水注水下で 1 分間ヒーリングアバッ トメントを除染した.⑤超音波スケーラー(US)群(Fig 1c, g):超音波スケーラーを用いた除染は,Grand Piezo (ヨシダ,東京)に Piezontip PI(松風,大阪)を装着 し,滅菌精製水注水下で 1 分間除染を行った.⑥β -TCP 粉末噴霧(β -TCP)群(Fig 1d):β -TCP 粉末(β -TCP パウダー,ブレーンベース,東京)を Quick Jet(ヨシ ダ)を用いて,滅菌精製水存在下で噴霧し,1 分間除染 した.さらに,⑦Er : YAG レーザー群(Fig 1e, h):Er :

YAGレーザー装置 ErwinAdvErL(モリタ,大阪)に, C 600 Fの照射チップを装着し,滅菌精製水存在下で照 射条件;80 mJ/pulse, 10 pps でレーザーを 1 分あるいは 3分間照射した.なお,回収したヒーリングアバットメ ントに対し,除染処理を行わないものを control とした. (3)除染処置後のヒーリングアバットメント表面の除染 効果の判定 除染処置を行ったヒーリングアバットメントは,その 後,後述する培養法により,colony forming unit(CFU) をカウントした.また,ヒーリングアバットメント試料 表 面 の 細 菌 の 付 着 状 態 に つ い て , 走 査 電 子 顕 微 鏡 (SEM)(JEOL JSM-6360 LV,日本電子,東京)によっ て観察した.試料の観察は,低倍率(22∼25 倍)およ び高倍率(3,000 倍)で行った.高倍率の所見は,ヒー リングアバットメントの 5 か所をランダムに選択し観察 を行った.試料表面は,99.99% Au を 200Å厚で Quick Cool Coaster(SC-708 MC,サンユー電子,東京)を用 いてコーティングした. 2.ヒト口腔内装着ヒーリングアバットメント表面の除 染実験 口頭および書面にて本研究の趣旨に同意を得た,55 歳から 66 歳(平均年齢 61.5 歳)の 4 名の患者(男性 2 名,女性 2 名)おのおのから 5 個ずつ得られた計 20 個 のヒーリングアバットメントを本研究に使用した. なお,本実験は,明海大学歯学部倫理委員会の承認のも と,実施した(承認番号;A 1003). (1)ヒト口腔内装着ヒーリングアバットメントの回収 2回法インプラントの 2 次手術後,上部構造装着まで の 3∼4 W 間装着されたヒーリングアバットメ ン ト (wide RP 4×4, 4×5 ; Nobel Biocare, Zurich, Switzer-land)を 20 個回収した.回収したヒーリングアバット メントは,その後口腔外で除染処置を行った.2 次手術 から抜糸までの 1 週間はヒーリングアバットメントのブ ラッシングはせず,その後回収するまでは患者自身のブ ラッシングのみ行い,歯科医師によるクリーニングは行 わなかった.ヒーリングアバットメント回収後,同一の 新品を口腔内に装着し歯科医師によるクリーニングを行 った. (2)ヒト口腔内装着ヒーリングアバットメントの除染 回収したヒーリングアバットメントは以下の方法で除 染処置を行った.すなわち,①生理食塩水洗浄(saline) 群(Fig 1f):50 ml の滅菌生理食塩水を 17 G 注射用針 を装着した 50 ml 注射筒を用いて,1 分間洗浄した.② 超音波スケーラー(US)群(Fig 1c, g):超音波スケー ラーを用いた除染は,Grand Piezo に Piezontip PI を装 着し,滅菌精製水注水下で 1 分間除染を行った.③Er :

YAG レーザー群(Fig 1e, h):Er : YAG レーザー装置

ErwinAdvErLに,C 600 F の照射チップを装着し,滅菌 精製水存在下で照射条件;80 mJ/pulse, 10 pps でレーザ ーを 1 分あるいは 3 分間照射した.なお,回収したヒー リングアバットメントに対し,除染処理を行わないもの を control とした.イヌ実験系で評価した機能水による 洗浄は,臨床上適用外使用となることから評価から除外 した.また,SUS ブラシは構造上,滅菌水にて洗浄す ることが困難なことから評価から除外した.β -TCP 粉 末による除染は,口腔内で使用した場合,皮下気腫が発 症する可能性があり,評価から除外した.また,プラス チックスケーラーによるスケーリングはイヌ実験系で除 染効果が低いことから評価対象から除外した. (3)除染処置後のヒーリングアバットメント表面の除染 効果の判定 除染処置を行ったアバットメントは,その後,後述す る培養法により,CFU をカウントした.また,アバッ トメント試料表面の細菌の付着状態について,SEM に よって観察した. 3.イヌおよびヒトから回収したヒーリングアバットメ ントに対する除染処置後の除染効果の評価 (1)SEM による試料表面の観察;除染後のヒーリング アバットメント表面 SEM により,加速電圧 15 kV, 3,000

(5)

倍の条件において観察した.

(2)培養法による除染効果の評価:ヒーリングアバット メント表面の生菌付着数の計測を培養法により行った. すなわち,10 ml の PBS(−)(ダルベッコ PBS(−) 粉末「ニッスイ」,日水製薬,東京)が入った 50 ml の コニカルチューブ(Becton Dickinson, NJ, USA)に試料 を入れ,ボルテックスミキサー(タッチミキサー MT-31,ヤマト科学,東京)で 1 分間震盪し,試料から付着 細菌を剥離させた.ボルテックスミキサーにて付着して いた細菌がヒーリングアバットメントから除去されてい るかについては,除染後ボルテックスミキサーを用いて 震盪した試料表面の SEM 像 3,000 倍にて観察し(Fig 2),最も細菌が付着していた control 群および除染方法 生理食塩水洗浄群において試料表面に細菌が残存してい ないことを確認した.このことから,試料表面に付着し ていた細菌は,ほとんどボルテックスミキサーにより回

収できた.その希釈液 100 μl を,brain heart infusion

(BHI, Becton Dickinson)寒天培地に播種した.そして,

10% CO2の好気条件,37℃ で 48 時間培養し,CFU を

計測した.この方法により試料表面の生菌量を計測し た.培養は各群 5 検体ずつ行い,結果は CFU の平均値 で表した.

(3)統計学的解析

すべての結果の有意差検定には,Kruskal Wallis H-test を用い,多重比較には Bonferroni correction を用いた.

1.イヌ口腔内装着ヒーリングアバットメント表面の除 染実験 (1)SEM による試料表面の観察;イヌ口腔内装着ヒー リングアバットメント除染処理後の試料表面の 3,000 倍 に拡大した SEM 像(Fig 2)から,口腔内に装着する前 のヒーリングアバットメント表面には機械研磨による線 条痕が認められた.このヒーリングアバットメントを, 30 W間イヌ口腔内に装着したところ,control に示すよ うに細菌様の堆積物が試料表面を覆い,ヒーリングアバ ットメント表面に付いていた線条痕は認められなかっ た。これに対して,試料表面を生理食塩水で洗浄すると その一部でのみ細菌様堆積物が剥落している部分が認め られた.FW による洗浄により,細菌様物はほとんど認 められなかったが,局所に堆積物を部分的に認めた.プ ラスチックスケーラーによるスケーリング,SUS ブラ シ,PI チップを装着した超音波スケーラーによるスケ ーリングではほとんどの部位でヒーリングアバットメン トの表面が認められるまで,堆積物が除去されていた. これに対し,β -TCP 粉末の噴霧では,堆積物は認めら れなかったが,試料表面が粗造になっており,表面形状 を変化させることがわかった. また,Er : YAG レーザー照射 1 分では,堆積物が残 存している部分と除去されている部分が認められたが, 表面の形状に変化は認められなかった.また,Er : YAG レーザー照射 3 分では,堆積物の残存はほとんど認めら れなかった.また,表面形状に変化は認められなかっ た. (2)培養法による除染効果の評価(Fig 3);イヌ口腔内 装着ヒーリングアバットメント除染処理後の試料表面の CFUを計測した結果,コントロールと比較し,FW, SUS ブラシ,β -TCP 噴霧で有意に細菌付着量が低値を示し, 高い除染効果を認めた.また,Er : YAG レーザーでは, Fig 2 SEM observations of the healing abutment surfaces before and after decontamination in dog.

It was confirmed that bacteria did not remain in the sample sur-face in control and saline-washing groups after vortex concussion, indicating that the bacteria which attached to the sample surface were mostly removed by vortex concussion.

The sediment was observed in a part in all groups. With the spray of the β -TCP powder, the sediment was not recognized, but the sample surface became the rough and it makes surface shape change.(Original magnification ; ×3,000)

(6)

1分照射と比較し 3 分照射で除染効果が高く,照射時間 が長くなると除染効果が高くなる傾向を示した.また, プラスティックスケーラーによる CFU は control に比 べ有意に減少していたが,その除染効果は FW 群,SUS ブラシ群,β -TCP 噴霧群,Er : YAG 3 分間照射群より 小さかった.これに対し,生理食塩水による洗浄群では control群に比べ,CFU の有意な減少は認められなかっ た. 2.ヒト口腔内装着ヒーリングアバットメント表面の除 染実験 (1)SEM による試料表面の観察;ヒト口腔内装着ヒー リングアバットメント除染処理後の試料表面の SEM 像 の弱拡大像(Fig 4)から,口腔内に装着する前のアバ ットメントと比較し,口腔内に装着したヒーリングアバ ットメントでは control に示すように表面に多量の堆積 物を認めた.これに対し,生理食塩水洗浄,PI チップ を装着した超音波スケーラーによるスケーリング,レー ザー照射による処理ともに試料表面の堆積物の多くが除 去されていることがわかった.次に,3,000 倍に拡大し た強拡大像(Fig 5)では,口腔内に装着する前のアバ

Fig 4 SEM observation of healing abutment surfaces before and after decontamination in human.

In all groups, most of sediment was removed in comparison with control.(Original magnification ; ×22−25)

Fig 3 Efficacy of various decontamination methods to re-move biofilm on healing abutment surfaces in dog.

As a result of evaluation by the culture method, significant difference was recognized in all groups except the group of the saline. Values are means±SD from 4 samples.

Fig 5 SEM observation of healing abutment surfaces before and after decontamination in human.

Much of sediment remained on the surface of samples from control and saline groups. The sediment was considerably re-moved on the surface of the sample from the group of US and Er : YAG irradiation one minute. Most of the sediment was not recognized in the group of Er : YAG irradiation three minutes. (Original magnification ; ×3,000)

(7)

ットメント表面で機械研磨による線条痕が認められた. これと比較し,口腔内に装着していたヒーリングアバッ トメントでは control の表面に示すように多量の堆積物 が認められた.これに対し,生理食塩水洗浄では膜状の 堆積物は認められないものの,試料表面に細菌様付着物 を比較的多量に認めた.PI チップを装着した超音波ス ケーラーによるスケーリング,レーザー照射による処理 ともに少量の細菌様物を認めたが,堆積物の多くが除去 されていることがわかった. (2)培養法による除染効果の評価(Fig 6);ヒトヒーリ ングアバットメント除染処理後の試料表面の CFU を計 測した結果,コントロールと比較し,各種除染処理によ る除染効果を比較した.その結果,生理食塩水による洗 浄,PI チップを装着した超音波スケーラーを用いたス ケーリングによる除染,レーザー照射による除染ともに コントロールと比較し有意に細菌付着量は減少してい た.また,生理食塩水による除染と比較して,超音波ス ケーラーによるスケーリング,レーザー照射 1 および 3 分 で は 有 意 に 除 染 効 果 が 高 い こ と が 分 か っ た ( p <0.01).

インプラント周囲炎とは,天然歯における歯周炎と同 様に細菌感染によって発症する炎症である8) .このうち インプラント周囲粘膜に限局するものをインプラント周 囲粘膜炎とし,天然歯の歯肉炎に相当する.これに対 し,細菌感染によってオッセオインテグレーションを喪 失し,組織破壊が進行したものをインプラント周囲炎と する17) .この細菌感染に関しては,インプラント周囲炎 における周囲溝の細菌叢が天然歯と類似していることか ら,天然歯のプラーク細菌叢がインプラント周囲溝に影 響を及ぼすことが考えられている22) .またインプラント 周囲溝は,天然歯と比較し細菌や外来性物質の侵入がし 易いと考えられている23, 24) .Berglundh ら25) はイヌを用 い,臨床的に健康な歯周組織とインプラント周囲粘膜の 生物学的組成を比較検討している.その結果インプラン ト体およびヒーリングアバットメントと周囲粘膜の結合 力は,天然歯と歯肉結合組織の結合力と比較し脆弱であ り,感染に対する防御能力の弱さを示唆している.この ようにインプラント周囲炎初期の段階で適切な対応を怠 った場合は,容易に炎症症状が進行すると考えられる. そこで,インプラント体表面の効果的な除染方法の検 討を行うことは,インプランント周囲炎予防と発症後の 治療に必要な治療法を開発するうえで,臨床上意義ある ことと考える.また,Mombelli と Lang18) らが,提唱し た累積的防御治療(cumulative interceptive supportive ther-apy)においても,インプラント表面の機械的清掃と研 磨はインプラント体の撤去以外のすべての段階で必要と

される重要な治療法とされている.そこで,谷田部ら19)

は,in vitro で試料表面に歯周病原菌の 1 つである

Aggre-gatibacter actinomycetemcomitans(A.a )を付着させ,試 料表面の除染効果について検討した.その結果,重層粉 末噴霧後,クロルヘキシジン水溶液で除染すると効果的 であったとしている.この実験系は,細菌の付着程度を 均一なものにしていることから除染効果の比較検討が行 いやすいが,実際の口腔内環境を再現しているとはいえ ず,バイオフィルムを形成しているインプラント体表面 の除染効果を比較する必要があると考えられる.谷田部 らの報告の中でも,単一の細菌種のみを付着させた除染 効果の検討だけではなく,実際の口腔内に形成されるバ イオフィルムや石灰化物の除染効果について今後検討が 必要であるとしている. Gosauら27) は,効果的なインプラント体表面の除染方 法を検討するために,チタン試料をボランティア口腔内 Fig 6 Efficacy of various Decontamination methods to

re-move biofilm on healing abutment surfaces in human. The group of US and Er : YAG irradiation for 1 and 3 min-utes significantly reduced a number of CFU in comparison with the control. Values are means±SD from 4 samples.

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に 24 時間装着し,付着したプラークの除染実験を報告 している.この実験系では,同一口腔内に装着された試 料で除染していることから,比較検討しやすいものと考 える.しかし,実際の口腔内でのインプラント体表面 は,さらに長期間装着されており,その表面にはバイオ フィルムだけでなく石灰化物の付着も認められる場合が ある.したがって,実際の口腔内における除染条件によ り近付けるために,一定期間口腔内に装着されていたヒ ーリングアバットメントや,アバットメントを試料に除 染を検討することは有用であると考える. 今回行った研究と同様に,口腔内に装着されたアバッ トメントに対する除染を行った報告がすでに数件存在す る.Speelman ら28)は,ビーグル犬に 16 W 装着されたア バットメント表面の除染を行い,その結果,ラバーカッ プによるポリッシングと,毎日の歯ブラシによるブラッ シングが最も除染効果が高く,重層粉末噴霧による除染 効果が最も低いと報告した.また,鏑木ら29) はヒト口腔 内で 1 W プラーク形成したインプラントアバットメン トを用いて,プラスチックスケーラー,重層粉末噴霧, 塩酸テトラサイクリン水溶液あるいは強酸性水による除 染処置を行った結果,重層粉末噴霧群で除染効果が最も 高いことが明らかとなったが,試料表面に多数の損傷を 認めたとし,この点を考慮するとプラスチックスケーラ ーによる物理的除染ののち塩酸テトラサイクリンによる 除染が最も有効であると結論付けている.さらに, Kawashimaら30) は患者口腔内に装着されたアバットメン トに対してカーボン,プラスチック,金属製でできたチ ップを装着した超音波スケーラーにより除染を行った. その結果,クリニカルパラメーターによる評価では 3 群 間に有意な差は認めず,金属製スケーラーでは,アバッ トメント表面に損傷を認めたとしている. このことから,本実験では,まず,実験的インプラン ト周囲炎を発症させたイヌ口腔内に装着されていたヒー リングアバットメントを用いて除染法を比較検討し,そ の結果をもとに,ヒト口腔内に装着されていたヒーリン グアバットメントを用いて除染効果を比較検討した.し かし,ヒトにおけるヒーリングアバットメントは同一患 者から多量に試料を採取することは困難であること,ま た,アバットメントを装着していた個体間でプラークの 付着状況に差があるため,同一口腔内から採取した複数 のアバットメントのうち 1 つをコントロールとして設定 し,その他のアバットメントに対して除染処置を行い, コントロールに対する除染効果を比較することにより評 価した. 本研究で用いた除染機器に関しては様々な報告があ る.超音波スケーラーに関しては,カーボンファイバー チップを用いた超音波スケーラーによるインプラント体 表面の除染により,インプラント体表面性状の変性を認 め,骨芽細胞の付着を阻害したと報告している31) .その ため本研究ではインプラント体表面に対して影響が少な いと考えられている PEEK ファイバーチップ32) を用い た.また,Er : YAG レーザーに関しては,照射された インプラント体表面では 60 mJ/pulse, 10 pps の照射条件 で殺菌作用が生じ33) ,さらに骨芽細胞や,線維芽細胞の 付着が認められた34, 35) と報告している.また Er : YAG レーザーの照射条件に関しては,100 mJ/pulse 以上で は,チタン表面の熱的変化が生じるため,この出力以下 で除染を行うことが推奨されている36).プラスチックキ ュレットに関しては,インプラント体表面に対して損傷 を起さず有用であるとの報告が散見される37−39) .しかし インプラント体表面のスレッド間の汚染物を除去するこ とは困難であるという報告もある29) .このように本研究 で用いた除染方法は,除染条件が異なるが,有用である と考えられた. 今回,イヌ口腔内に装着されたアバットメントの除染 の結果,未除染のコントロールと比較し,生理食塩水に よる洗浄を除き,除染効果を認めた.しかし,同一条件 で汚染したアバットメントにおいても,試料間のばらつ きが比較的大きいことから,除染効果に優位な差を認め たものは,機能水群,SUS ブラシ群,β -TCP 粉末噴霧 群および Er : YAG レーザー照射 3 分群となった.レー ザー照射群では照射時間と供に除染効果が高くなること が分かった.この中で,実際にヒト口腔内への応用を考 慮した場合.機能水は適用外であること,β -TCP 粉末 噴霧は処置に伴い,皮下気腫の懸念があることから,ヒ ト口腔内装着アバットメントの除染は,生理食塩水洗 浄,超音波スケーラーによるスケーリング,Er : YAG レーザー照射で行うこととした. ヒト口腔内装着アバットメントを対象とした除染処置 の結果,患者自身によるブラッシングを抑制していない にもかかわらず,口腔内から採取したアバットメント表 面には SEM 像から比較的多量のプラーク様物が試料表 面に付着していることが分かった.この試料を用い各種 除染処置を行ったところ,SEM 低倍率像では,ほとん どのプラーク様物が除去されていることが観察された. しかし,高倍率で観察した結果,生理食塩水群では比較 的多量の細菌様物の付着が認められた.しかし,超音波 スケーラー群,Er : YAG レーザー照射群では,いずれ

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も細菌様物の付着はわずかであった.また,除染処置に 伴う表面形状の変化も見られなかった.また,培養法の 結果においても,SEM による観察結果と同様,超音波 スケーラー群,Er : YAG レーザー照射群有意な除染効 果を認めた.さらに,Er : YAG レーザー照射群では, 両群間に有意な差はないものの,照射時間が長いほど除 染効果が高くなることが,ヒトサンプルによっても明ら かとなった.しかし,生理食塩水による洗浄だけでは除 染が不十分である事を示している. ヒト口腔内で発症したインプラント周囲炎に対する除 染実験の結果ではすでに,Takasaki ら40) は,フラップ手 術を併用し Er : YAG レーザーとプラスチックキュレッ トの比較,Schwarz ら32)は,フラップ手術を併用し Er : YAGレーザー,超音波スケーラーおよびメトニダゾー ルジェルを併用したプラスチックキュレットの比較検討 を行っている.その結果除染方法間における比較では, 有意差が認められないと報告しており,本研究結果と一 致している.しかし両研究とも,Er : YAG レーザーは, 他の除染方法と比較し,組織形態計測において改善傾向 が認められているため,除染方法として有効である可能 性を示しており,本研究も組織形態計測を含め総合的に 判断していく必要があることが示唆された.今回の研究 結果からも,Er : YAG レーザーの除染効果の有用性が 確認されたが,照射時間や照射条件によって除染効果が 異なる可能性があり,今後さらに条件設定が必要である と考える. インプラント周囲炎の保存的治療法については,今後 さらに有効で安全な除染方法の確立や,除染後の周囲組 織の再生法についてさらなる検討が必要であると考え る.

1.イヌ口腔内装着ヒーリングアバットメントの除染: コントロールに対し,FW, SUS,β -TCP で除染効果が 有意に高かった.Er : YAG レーザー群では照射時間 に依存し CFU カウントは低値を示し,3 分照射では コントロールと比較し除染効果が有意に高かった. 2.ヒト口腔内装着ヒーリングアバットメントの除染: 同一口腔内から採取したヒーリングアバットメントを 用いて各種除染処置を行った結果,すべての除染群で 有意に除染効果を認め,さらに生理食塩水による除染 と比較し超音波スケーラーによるスケーリングおよび レーザー照射による除染効果が有意に高いことが分か った. 3.各種除染処置を行ったアバットメント表面の観察結 果から,β -TCP 群では試料表面の形態変化が認めら れた. 稿を終えるにあたり,終始ご懇切なるご指導,ご高閲を 賜りました口腔生物再生医工学講座歯周病学分野教授 申 基喆先生に深謝したします.本研究にご理解,また,ご 指導を賜りました機能保存回復学講座歯科生体材料学分野 教授 中嶌 裕先生,形態機能成育学講座口腔解剖学分野 教授 羽毛田慈之先生,ならびに機能保存回復学講座オー ラル・リハビリテーション学分野教授 荒木久生先生に深 甚なる謝意を表します.さらに,研究資料の収集,解析に ご協力いただきました機能保存回復学講座オーラル・リハ ビリテーション学分野および口腔生物再生医工学講座歯周 病学分野の諸先生に御礼申し上げます.

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Fig 1 Instruments for the decontamination of the healing abut- abut-ment.
Fig 2 SEM observations of the healing abutment surfaces before and after decontamination in dog.
Fig 3 Efficacy of various decontamination methods to re- re-move biofilm on healing abutment surfaces in dog.

参照

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