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革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究 ( 厚生労働科学研究 ) に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療 再生医学分野の小戝健一郎教授の 難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究 が 平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金 ( 難病 がん等の疾患

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Academic year: 2021

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革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究(厚生労働科学研究)に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療・再生医学分野の小戝健一郎教授の「難治癌を標的治 療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究」が、平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金(難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業〔が ん関係研究分野〕)に採択されました。 厚生労働科学研究の背景と本研究事業の概要 がんは我が国の死亡原因の第1位であり、国民の生命及び健康にとって重大な問題にな っています。このため、がん研究については、昭和 59 年にがん対策関係閣僚会議により「対 がん 10 カ年総合戦略」が策定され、以来、10 か年戦略を改訂し、これまで厚生労働省、文 部科学省、経済産業省が中心となって、がんの病態解明から臨床への応用に至るまで取り 組んできています。「第3次対がん 10 か年総合戦略」ががんの罹患率と死亡率の激減を目 指して策定された「第3次対がん 10 か年総合戦略」16 年度から厚生労働省では第3次対が ん総合戦略研究事業を推進してきています。また、平成 18 年6月に「がん対策基本法」が 成立し、その基本理念で「がんの克服を目指し、がんに関する専門的、学際的又は総合的 な研究を推進するとともに、がんの予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究等 の成果を普及し、活用し、及び発展させること」が求められていることから、更なるがん 研究の推進に取り組んできています。 月に総合科学技術会議でまとめられた「平成 23 年度科学・技術重要施策アクション・プ ラン」のライフ・イノベーション・施策パッケージとして「早期診断・治療を可能とする 技術、医薬品、機器の開発」において、特に死亡者が多く、5年生存率が低く、早期診断 が困難ながんについて、効率的に研究を推進することが掲げられたことを受け、第3次対 がん総合戦略研究事業での実績を踏まえ、「健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーシ ョンプロジェクト」の一貫として、平成 23 年度より新規に取り組むべき事業として、2領 域について重点的に推進し、実用化に向けた一定の成果をあげてきました。 今回の補助金の研究事業は、日本に知財を有する革新的ながん治療薬等に係る基礎研究 の成果を確実に実用化に向けた臨床研究へ移行させるために実施する非臨床研究を支援す るものとして、一般公募後により厳正な書面ならびにヒアリングの審査を経て採択された ものです。本採択課題の研究費は本年度分が1億1千万円(次年度以降の額は未定)で、 3年間の予定(総額で最大3億円前後)です。

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本研究課題の概要  がん遺伝子治療の背景と問題点 がん克服には従来の治療法(手術、抗癌剤、放射線など)の改良だけでなく、革新的な 治療法の開発が急務です。がんに対する遺伝子治療の研究は、平成4年に米国にて世界で 最初のヒトがん患者への臨床試験が行われて以来、多くの臨床研究・治験が世界でなされ て来ました。当初、これらのケースでは、細胞に遺伝子を導入するための遺伝子治療薬の 運び屋(ベクター)(注1)として非増殖型ウイルスベクター(注2)が用いられており、 その安全性は問題がないものの、期待されたレベルの治療効果は得られませんでした。こ の問題を克服するために近年、がんのみで特異的に増殖する制限増殖型ウイルス(注3) によるウイルス療法が多く報告されています。しかし早期の実用化が望まれる一方で、こ のようながんを殺すウイルス医薬のがん特異性(安全性)と治療効果は完全には確立され ていないため、この領域を世界でリードしている米国では基礎研究と臨床試験が一体とな ってこの実用化の推進が強力に進められています。 本邦で医薬として実用化して国民福祉の向上に貢献するには、基本となる基盤技術を独 自開発し、その知財(特許)を確保し、それを元に非臨床研究(試験)(注4)を行い、治 験(注5)を行うことが必要です。しかしこれまで本邦では、欧米で開発された技術や既 に実施された治験プロトコールを単に導入して実施する、つまり独自開発の技術と知財に 基づいていない臨床研究(注6)が主体であり、これまで本邦で独自開発された制限増殖 型ウイルスを本邦で治験を行った例は未だないというのが現状です。  本課題の内容と期待される成果 小戝教授らはこれまでに、制限増殖型ウイルスの一つである制限増殖型アデノウイルス (CRA)(注7)の問題点であるがん特異性の向上と標準的な作製技術の確立のために、 精密ながん特異化や、自由な治療遺伝子導入も可能な次世代のCRAを標準的に作製でき る独自の基本技術(m-CRA)(注8)を開発し、さらにその応用展開として、がん治療 効果を示すサバイビン反応性m-CRA(Surv.m-CRA)(注9)を開発し、いず れも知財(国際特許)を確保しています。これまでの科学研究で、Surv.m-CRA は、ほとんど全てのがんに治療効果を示します。さらにSurv.m-CRAは、これま で最良とされてきた同分野での競合技術(テロメラーゼ反応性CRA)との比較実験にて、 がん特異性(安全性)と治療効果の両性能ともSurv.m-CRAが遥かに凌いでおり、 その優位性と有望性も示されています。これらの研究は、上記の平成 16 年度から始まった 第3次対がん総合戦略研究事業においても、当初より「革新的な治療研究分野」の主任研

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究者(班長)として研究課題が一貫して採択され推進し、本研究事業の基盤となる科学的 な研究進展と知的財産の創出と確保という成果を上げてきたものです。 今回はこれまでの基礎研究成果に基づき、これを発展して実用化することで革新的がん 治療薬に繋がるという意義を認められて採択されたもので、この「革新的がん治療薬の実 用化を目指した非臨床研究」を推進することで、日本「発」の技術が日本「初」の増殖型 ウイルスの医師主導治験(注 10)へと進展し、本邦での革新的ながん治療薬の実用化に繋 がることが期待されます。最終的には、現在の医薬や医療手段では克服できない転移がん などへの応用に繋がることが期待されます。(図)  今後の展開 今回の研究費により、治験に必要な製剤の製造と非臨床研究を行いデータを取得し、3 年間で治験開始の準備を整える予定です。その後、新たな公的研究費を申請し、本邦初と なる国内での医師主導治験(安全性を確認することが目的のがん患者さんでの臨床試験第 一相)を実施する予定です。安全性が確認できれば、さらに治療効果を検証する臨床試験 第二相へと、がん患者さんでの治験を進める計画です。

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本件の連絡先 〒890-8544 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘 8 丁目 35-1 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 運動機能修復学講座 遺伝子治療・再生医学分野 教授 小戝健一郎 電話; 099-275-5219 ファックス; 099-265-9721 E-mail; kosai@m2.kufm.kagoshima-u.ac.jp http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~anatomy2/

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用語解説 注1)ベクター 治療遺伝子を細胞(ここではがん細胞)に運ぶもので、多くは遺伝子組換えによりその性 質を改変したウイルスを用いる。 注2)非増殖型ウイルスベクター 治療遺伝子を細胞内に導入する機能だけが残され、安全性確保のためにウイルスの増殖能 力は欠損した遺伝子組換えウイルス。 注3)制限増殖型ウイルス 遺伝子改変され、がん細胞の中でだけ増殖するウイルス。正常の細胞にはほとんど作用す ることがなく、ウイルスががん細胞の中で増殖することにより細胞が溶解し、がんだけを 効果的に殺していく。溶解性ウイルスとも呼ばれる。 注4)非臨床研究(試験) 医薬品の研究開発において、ヒトで評価する前に、動物を用いて薬効薬理作用、生体内で の動態、有害な作用などを調べる試験。 注5)治験 医薬品の研究開発において、非臨床試験の結果、有効性が期待でき、安全性にも問題がな いと考えられた場合に、ヒト(健康な人や患者さん)で行う試験。承認前の薬剤(医薬品候 補)を、実際に、患者さんや健康な人に投与することにより、安全性と有効性(効果) を確 かめる必要があり、この「新薬開発」の為の「治療を兼ねた試験」である。よって厚生労 働省へ事前に届ける必要があり、いわゆる臨床研究と違い厳格な手続きで行われる。 注6)臨床研究 新薬の開発の目的に限らない、医薬の実用化の手続きや承認を必要としないヒト(患者さ んや健康な人)での研究も含む、広い意味でヒトでの薬の作用や効果を調べる試験研究。 いわゆる臨床研究は、治験に基づかない臨床研究を指し、これは厚生労働省へ事前に届け る必要がないなど、手続きなども簡易で、費用も抑えられるが、そのデータは医薬の実用 化には直接は繋がらないという欠点がある。 ※厚生労働省へ事前の届出は必要ありませんが「臨床研究に関する倫理指針」に基づき機

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関において審査を受ける必要があります。 注7)制限増殖型アデノウイルス(CRA:Conditionally replica ting adenovirus) 注3の制限増殖型ウイルスの中で、アデノウイルスを遺伝子改変したもの。正常の細胞 にはほとんど作用することがなく、ウイルスががん細胞の中で増殖することにより細胞が 溶解し、がんだけを効果的に殺していく。溶解性アデノウイルス(Oncolytic a denovirus)とも呼ばれる。 注8)m-CRA(CRA regulated with multiple tumor- specific factorsの略) 多因子で精密にがんを特異標的治療する次世代のCRA。単一の因子でがんの特異化を試 みる従来の単純なCRAではなく、ウイルスの増殖制御部を最大4つの異なるがん特異化 の因子で精密に制御することで、がんの特異標的化を精密に行うことが可能となり、安全 性が格段に向上される。さらに治療遺伝子も搭載可能であるため、がん治療効果の増強も 可能である。さらにウイルス遺伝子の改変を行い、その性格を変えることも可能である。 注9)サバイビン反応性m-CRA(Surv.m-CRA) もともと細胞が死ぬのを抑える機能を持つ遺伝子の1つとして発見されたサバイビン(S urvivin)遺伝子は、その後の研究でがんのマーカーであると分かった。つまり、 ほとんどの種類のがんはサバイビンと呼ばれるたんぱく質を多量産生しているのに対し、 正常の細胞ではほとんど産生していない。さらに、がん患者さんでのサバイビンの量は、 がんの悪性度や患者さんの予後とよく相関することも分かった。 本研究開発ではサバイビンはがん細胞のみで特異的に異常産生されているという特性に注 目し、サバイビン遺伝子のプロモーター部分(細胞の種類や状態で遺伝子の量を決めて、 遺伝子の量をコントロールしている部分)を、m-CRAのウイルスの増殖開始を決める 最初のスイッチに使った。そのために、このサバイビン反応性m-CRA(Surv.m -CRA)は、がん細胞の中だけでスイッチが入ってウイルスの増殖が起こることでがん 細胞を次々に殺していき、その一方で正常の細胞の中ではそのスイッチが入らないために ウイルスは増えずに安全という、がんだけを見つけ出しては殺して治療していく理想的な 医薬といえる。 注 10)医師主導治験

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通常の治験は製薬会社が新薬開発の目的で行うものであるが、これに対し医師主導治験と は、医師あるいは医療機関主導で、企画され実施される。営利企業である製薬会社はリス クが少なく確実に製剤となり収益が見込める従来型の医薬(化合物)の治験が主体であり、 遺伝子医薬やウイルス医薬のような全く新しい形態の革新医薬の開発はリスクが大きいた め早期の治験には取り組まないことが多い。このため革新医薬を実用化するという公的意 義の高い治験には、公的研究費などによる医師主導治験が必要となっている。

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