原 著
論文受付 2011年 5 月22日 論文受理 2011年10月 6 日 Code No. 522直接型および間接型 Flat Panel Detectors と
Computed Radiography における
物理的画質評価を利用した画質同一化の試み
横井知洋
1)・高田忠徳
1)・市川勝弘
2)1)金沢大学附属病院放射線部 2)金沢大学医薬保健研究域保健学系
Investigation of Image Quality Identification Utilizing Physical Image
Quality Measurement in Direct- and Indirect-type of Flat Panel
Detectors and Computed Radiography
Tomohiro Yokoi,1) Tadanori Takata,1) and Katsuhiro Ichikawa2) 1) Department of Radiology, Kanazawa University Hospital
2) Kanazawa University Medicine Health Study Area, Health Studies System Received May 22, 2011; Revision accepted October 6, 2011; Code No. 522
Summary
The purpose of this study was to investigate image quality identification methods among direct- and indirect-type flat panel detectors (FPDs) and a computed radiography (CR) system using two radiation quali-ties RQA3 and RQA5 defined in the IEC 61267 standard. For each system, the digital characteristic curve, the presampled modulation transfer function (MTF), and the normalized noise power spectrum (NNPS) were measured. Images for a burger phantom and a foot-bone phantom were processed by resolution identification utilizing two-dimensional Fourier transform, and then contrast-to-noise ratio (CNR) for each image was measured. For the RQA3, the direct FPD system indicated the highest DQE value, and for the RQA5 DQE value of indirect FPD system, it was a little higher than that of direct FPD system. The CNR results with the resolution identification displayed good accordance with the DQE results in both phantoms. From the DQE results, dose ratios for image quality identification were determined, and the CNRs of the dose-adjusted images were measured. The results for, the CNRs of all systems showed good coincidence. From these find-ings, they indicated that the DQE measurement is effective to determine the exposure parameters for equal-izing the image quality of different types of radiographic systems.
Key words: flat panel detector (FPD), computed radiography (CR), detective quantum efficiency (DQE), frequency-processing factor (FP), contrast-to-noise ratio (CNR)
別刷資料請求先:〒 920-8641 金沢市宝町 13-1
金沢大学附属病院放射線部 横井知洋 宛
緒 言
近年,多くの施設においてディジタル化された X 線画像システムである computed radiography (CR)や flat panel detector(FPD)が日常診療で使用されるよう になった.FPD にはアモルファスセレン半導体を用 い,X 線エネルギーを直接電荷量に変換する直接変 換方式と,蛍光体を用い,X 線エネルギーを光に変 換し,フォトダイオードで電荷量に変換する間接変換 方式が存在する.また CR では輝尽性蛍光体による イメージングプレート(imaging plate; IP)に X 線強度 分布が一時的に潜像として保存され,レーザビーム を照射することで光の強度分布として取り出す. これらのシステムの普及に伴い,施設によっては, CRから FPD への置換や,それらの混在などの状況 が起こり,各システム間の最適条件設定や条件変換 を行ううえで,画質特性の正確な評価が有効な指標と なり得る.過去の報告では,間接変換型 FPD(間接型 FPD)とスクリーン−フィルムシステムの比較や1, 2),各 方式の物理特性や contrast-detail(CD)ダイアグラムに よる比較など3∼7)が見受けられるが,線質を考慮し て,条件設定の指標となり得るような具体的な結果を 示した報告はない.そこで,本研究では,直接変換
型 FPD(直接型 FPD),間接型 FPD および CR におけ る入出力特性,解像特性,ノイズ特性を,それぞ れ,ディジタル 特 性 曲 線,presampled modulation transfer function(presampled MTF),normalized noise power spectrum(NNPS)により線質を変化させて測定 し,これらより detective quantum efficiency(DQE)を 算出した.また,物理評価の結果を確認するため に,低周波領域の評価のためのバーガファントム,お よび高周波領域の評価のための足ファントムを撮影 した画像に対して,ボケマスク処理による一般的な 空間周波数処理ではなく,二次元フーリエ変換によ る空間周波数処理を用いた解像特性同一化処理を適 用して,低周波領域はコントラストノイズ比(CNR; contrast-to-noise ratio)を測定し評価を行い,高周波 領域はハイパスフィルタを施した画像に対して SD の みの比(SD 比)を用いた評価を行った.そして DQE 値の比から線量比を求めるという試みから,物理的 な画質の同一化について検討を行った. 1.方 法 本実験では,直接型 FPD として,島津製作所社製 BR-120F(ピクセルサイズ:150 μm),間接型 FPD と して,Siemens 社製 AXIOM Aristos MX(ピクセルサ イ ズ:143 μm),CR 装 置(CR)と し て,Konica Minolta社製 REGIUS 190(ピクセルサイズ:175 μm) を使用した.線質は IEC(International Electrotechnical Commission)612678)で規定された RQA3(50 kV)およ び RQA5(70 kV)を 用 い た.Presampled MTF, NNPS,およびファントム撮影においてこれらの二つ の線質を用い,入出力特性は,線質によって変化し ないため,RQA5 のみを用いた.なお,測定に使用し た画像はすべて画像処理前の生データである.以下 に各測定の詳細を述べる. 1-1 入出力特性 入出力特性の測定法はタイムスケール法を用い9), 相対 X 線露光量に対するピクセル値の関係を求めた. 焦点−検出器間距離(source-image receptor distance; SID)を 200 cm とし,X 線可動絞り部分にアルミニウ ムフィルタを付加し,検出器の前面 30 cm に線量計 (Radcal 社製 model 9015,使用プローブ:空気吸収 線量測定用 10×5−6)を設置した.線質は RQA5 を用 い,mAs 値を変化させて照射し,事前に mAs 値と線 量との直線性を確認した.その後,線量計を抜去 し,測定用の画像を同一 mAs 値につき 2 枚ずつ取得 した.そして各画像の中央部から 256×256 画素の region of interest (ROI)を切り出し,ROI 内のピクセ ル値を求め,さらに同一線量の 2 枚の画像から求め たピクセル値を平均した.なお,presampled MTF, NNPS,ファントム撮影ともに,付加フィルタや SID を同一の配置とした. 1-2 Presampled MTF の測定 IEC 62220-110)による DQE 測定法の中で示された MTF測定であるエッジ法を採 用し,厚さ 1 mm, 100×100 mm のタングステン板をエッジ用の被写体と して使用した.タングステン板は,約 2.5 度傾けて撮 影し複数のエッジプロファイルから合成プロファイル を取得する方法を用いた11).検出器前面のグリッドを 取り外して,検出器への密着に配慮し,線量は検出 器面で 2.58×10−7 C/kg (1 mR)とした.得られた合成
プロファイル(合成 edge spread function; ESF)を入出 力特性を用いて露光量に変換し,隣接差分して line spread function(LSF)に変換した後,フーリエ変換し て presampled MTF を測定した.それぞれ 2 回ずつ 測定し,平均をとった. 1-3 NNPS の測定 IEC 62220-1 の測定法に基づき,検出器面での線 量 2.58×10−7 C/kgと し た. 線 質 は MTF と 同 様 に RQA3および RQA5 を用いた.一様ばく射した画像 データから 256×256 画素の ROI を抽出し,各ピクセ ル値を入出力特性を用いて露光量に変換して,二次 元 2 次多項式によるトレンド補正を行い,二次元フー リエ変換によりパワースペクトルを求めた後 NNPS を 算出した.計算に用いた ROI は,隣接した 9 個(縦横 に 3×3 個)であり,この九つの平均の NNPS 値を結果 とした. 1-4 DQE の測定 DQE は,以下の式より算出した. ………(1) なお,X 線光子数である q は,IEC 62220-1 に示さ れている各線質の基準の光子数より算出した. 1-5 ファントムによる評価 1-5-1 ファントム撮影 用いたバーガファントムは厚さ 15 mm のアクリル 製で,ホールの径は 1∼10 mm,深さは 0.5∼10 mm であり,この径から低周波数の評価には適している が,高周波領域には不十分であると考えられた.そ こで高周波領域の評価のために,足ファントムの第 1 趾の骨梁部分を用いて測定することにした.線質は RQA3および RQA5 を用い,線量はファントムなしの DQE u v MTF u v NNPS u v q ( , ) ( , ) ( , ) = ⋅ 2
状態の検出器面で 2.58×10−7 C/kg(1 mR)となるよう に撮影したため,実際の検出器面の線量はそれより やや低下した線量となった.なお,バーガファントム の撮影時には通常アクリル板などの散乱体を利用す るが,さらなる線量低下を防ぐために使用しなかっ た.また,得られた DQE から,DQE の良いシステム に対して,DQE の悪いシステムの画質を近づけるた めの線量倍数を DQE 値の比から概算的に求め,その 線量倍数でファントムを撮影して,その画像からの画 質評価も行った. 1-5-2 ファントム画像における空間周波数処理 解像特性の異なるシステム間では,ノイズ特性も その影響を受けており,ファントム画像の視覚的な比 較が困難である.そのために総合的な評価である DQEが有効であるが,最終的な視覚的判断材料とし て,ファントム画像により比較が可能であれば DQE の結果確認においても有効である.そこで本研究で は,市川らによって提案されたファントム画像に空間 周波数処理を施して複数のシステムを等しい解像特 性にして比較する手法12)を用いた.バーガファントム のホールにおける低周波の評価では,高周波ノイズ が抑制されていることが望ましいため,MTF が最も 低い間接型 FPD に他の二つのシステムを一致させ た.また足ファントムによる高周波の評価は,高周波 成分の多いことが必要であるため,MTF が最も高い 直接型 FPD に他の二つを一致させた.空間周波数処 理係数(frequency-processing factor; FP)の算出は,文 献12)に従い,二つのシステムの MTF の比から求め, 例として,直接型 FPD の MTF(MTFDFPD)を間接型 FPDの MTF(MTFIFPD)に合わせる場合には,FP は以 下の式によって与えられる. FP=MTFIFPD/MTFDFPD ………(2) このように求めた FP で各画像を処理することに よって,解像特性が同等となる画像を作成可能であ る.ただし,この空間周波数処理はそれぞれのシステ ムのナイキスト周波数以下において適応となる.Fig. 1 に FP 算出と等解像度画像の作成の概要を示した. 1-5-3 ファントム画像の評価 1)CNR による評価 ファントム画像の評価手法として,定量的な方法と して多用される CNR を用いた.CNR は,対象のコン トラストと画像ノイズの比を測定することで,信号の 描出能を評価する指標であり,以下の式で求められ る13).対象としたホールは,ROI を設定するためにあ る程度の領域をもち,また視覚的に違いがわかる低 コントラストなホール径 8.5 mm,深さ 1 mm を採用 した. CNR=(ROIs−ROIB)/SDB ………(3)
(ただし,ROIs:信号部 ROI の平均値,ROIB:バック
グラウンド ROI の平均値,SDB:バックグラウンド ROIの標準偏差) CNR 測定では,単純な ROI の平均値と標準偏差 を用いるため,画像の空間周波数特性が考慮され ず,解像特性の異なる画像同士の比較では視覚評価 と一致しないことが既に報告されている14).これに対 して,本研究では,1-5-2 で述べたように対象画像の 解像特性をあらかじめ同一化して,この問題の回避 を試みた.バーガファントムのホールは単純な円形で あり,さらに,ホールの評価のために低い解像特性を もつ間接型 FPD に解像特性を合わせた処理を施して いるため,高周波ノイズが抑制されておりその影響は 減少する.よって,ホールの視認性と CNR は,良い 対応を示すと考えた. 2)ハイパスフィルタを用いた評価 足ファントムによる高周波領域の評価については, 細かな対象であるため,そもそも CNR の ROI 設定 が不可能であることから,それぞれの画像に同一の ハイパスフィルタ処理を施して骨梁のみを強調したの ち,骨梁の密な部分と隣接するバックグラウンドに ROIを設定した.しかし,ハイパスフィルタ処理を施 したことでゼロ周波数が 0(直流成分が 0)となるので 平均値を用いる CNR では評価できない.そこで,骨 梁が明瞭になることによって,信号部分の標準偏差 値が増加する性質を利用し,骨梁部分の SD 値を骨 梁コントラストとし,同様にバックグラウンドの SD 値を高周波ノイズとした.これらの SD 値の比(以 下,SD 比)を測定し,これを高周波領域評価の指標 Fig. 1 Outline of the creation of phantom images with
とした.この評価では,低周波成分が取り除かれて おり,高周波信号と高周波ノイズの SD 比を求めるこ とになる.用いたハイパスフィルタの空間周波数処理 係数は,カットオフ周波数(フィルタの値が 1/2 となる 空間周波数)を約 0.75 cycle/mm として,視覚的に骨 梁が見やすくなるように決定した. 3)DQE による線量倍率変化 DQE の比から線量倍数を概算的に求めたうえで, ファントム画像を撮影し,上記(1)(2)の評価を行い, 画質を近づけられるか検討を行った.本来,線量倍 率の計算は,DQE の比ではなく,NEQ を同一にする 線量から求めるべきである.なぜなら,NNPS には, 量子ノイズだけではなく,電気系ノイズや構造ノイズ が入っており,DQE の比には線量依存性(ノイズの成 分比)が存在するためである.過去の報告では,一般 撮影用の CR 装置は,0.17∼17.10 μGy15),乳房撮影 用 CR 装置では,29∼229 μGy,間接型 FPD では, 25∼853 μGy16)の NNPS が示されており,FPD におい ては,ほぼ線量に反比例し,CR では,高線量で, NNPS低下度合いが下がる傾向が示されている.こ の報告にみられるように臨床使用の線量範囲では, 量子ノイズが支配的とみることができる.また,この 線量レベルにおいて DQE の変化は大きくないことが わかっているため17),DQE の比を線量比として近似 することが可能である.よって,DQE 比から求める 簡便法の検証としてもこの算出方法を採用した. 2.結 果 2-1 入出力特性 Fig. 2 にそれぞれのシステムの入出力特性を示す. すべて良い直線性を示した.CR は,相対 X 線露光 量の対数に比例しており,そのガンマは 1024 であっ た.間接型 FPD の入出力特性では,X 線量 0 のと き,ディジタル値は 0 とならず,約 50 となった. 2-2 Presampled MTF
Fig. 3 に RQA3 と RQA5 の presampled MTF の 結 果を示す.CR については水平方向と垂直方向に違い Fig. 2 Results of digital characteristic
curves.
(a) Direct FPD, (b) Indirect FPD, (c) CR
Fig. 3 Results of presampled MTFs. (a) RQA3, (b) RQA5
がみられたため,双方を示した.間接型 FPD および 直接型 FPD は水平方向と垂直方向は,ほぼ同一で あったため,平均値を示した.RQA3,RQA5 ともに 直接型 FPD が有意に高い値となった.間接型 FPD および CR はともに低い値を示し,CR の垂直が,や や間接型 FPD より高くなった.RQA3 および RQA5 の MTF を比較すると,どのシステムも線質により MTFは変化しなかった. 2-3 NNPS
Fig. 4 に RQA3 と RQA5 の NNPS の結果を示す. MTFと同 様 に CR は 水 平と 垂 直 方 向 を 示し た. RQA3,RQA5 ともに間接型 FPD が優れていた.CR および直接型 FPD は低中周波数で大きな差を認め ず,CR の水平方向のみ高周波で低い値を示した.
2-4 DQE
Fig. 5 に RQA3 と RQA5 の DQE の 結 果を 示 す.
RQA3においては,全体的に直接型 FPD が高い DQE 値を示した.RQA5 においては,低 周波は間接型 FPDが高い DQE 値を示し,高周波は間接型 FPD が 直接型 FPD よりやや高く,CR が低い結果になった. 2-5 ファントム評価のための FP と線量比 RQA3 および RQA5 における MTF の結果は同等 であったので,FP の算出には RQA3 の線質のみ使用 した.Fig. 3a に示した RQA3 における MTF の結果 から,CR(垂直方向)の解像特性を直接型 FPD およ び間接型 FPD に合わせるための FP を算出した.そ の結果を Fig. 6 に示す.直接型 FPD の MTF は CR よりも高いため,FP は 1 より大きくなったが,反対 に,間接型 FPD は CR よりも低いため,FP は 1 より Fig. 4 Results of NNPS. (a) RQA3, (b) RQA5
a b
a b
a b
Fig. 5 Results of DQE. (a) RQA3, (b) RQA5
Fig. 6 Frequency-processing factors for equalizing CR’s resolution to those of (a) Direct FPD and (b) Indirect FPD.
小さくなった.これらの FP で CR の MTF を処理す ることで,直接型 FPD および間接型 FPD と等解像 度の画像を作成した.同様に,直接型 FPD のバーガ ファントム画像は間接型 FPD に,間接型 FPD の足 ファントム画像は直接型 FPD に解像度を合わせ,画 像を作成した. ここで,空間周波数領域について整理する.ディ ジタル画像では個々のシステムによってナイキスト周 波数が異なるため,「低周波数領域」や「高周波数領 域」というような厳密な定義はない.本研究では,低 周波数 領域を 1.0 cycle/mm 以下,高周波領域を 2 cycles/mm以上と定義することにする. DQE の結果に基づいての線量倍率は,以下のよう になった.RQA3 においては,DQE が最も高い直接 型 FPD に他のシステムを合わせるための線量比を求 めた.間接型 FPD を直接型 FPD に合わせるための 線量比については,低周波領域では 1.0 cycle/mm に おいて,DQE の比は約 1.16 倍であり,高周波領域で は 3.0 cycles/mm において,約 1.40 倍であった.よっ て,その平均値である 1.28 を線量倍率として,間接 型 FPD の線量を増加させて撮影し,その画像間で, CNRと SD 比の比較を行った.ただし,mAs 値の選択 の制限で実際の増加割合は 1.27 とした.次に,CR を 直接型 FPD に合わせるための線量倍率について考え る.低周波領域では 1.0 cycle/mm において,DQE の 比は約 2.76 倍であり,高周波領域では 2.0 cycles/mm において,約 4.50 倍であった.そこで,CR は高線量 で DQE が低下しやすい性質17)であることから,高周 波における高倍率(高線量化)の効果は得られないと 考え,低倍率である低周波領域に合わせることに し,2.76 を比率として CR の線量を増加させて撮影 し,その画像間で,CNR と SD 比の比較を行った. ただし,mAs 値の選択の制限で実際の増加割合は 2.55とした.RQA5 においては,DQE が最も高い間 接型 FPD に他のシステムを合わせるための線量比を 求めた.直接型 FPD を間接型 FPD に合わせるため の線量比については,低周波領域では 1.0 cycle/mm において,DQE の比は約 1.15 倍であり,高周波領域 では 3.0 cycles/mm において,約 1.08 倍であった. よって,その平均値である 1.11 を線量倍率として, 直接型 FPD の線量を増加させて撮影し,その画像間 で,CNR と SD 比の比較を行った.次に,CR を間接 型 FPD に合わせるための線量倍率について考える. 低周波領域では 1.0 cycle/mm において,DQE の比は 約 2.68 倍であり,高周波領域では 2.0 cycles/mm に おいて,約 4.74 倍であった.RQA3 と同様に,低倍 率である低周波領域に合わせることにし,2.68 を比 率として CR の線量を増加させて撮影し,その画像 間で,CNR と SD 比の比較を行った.ただし,mAs 値の選択の制限で実際の増加割合は 2.81 とした. 2-6 画像からの定量評価 Fig. 7 に RQA3 におけるバーガファントムのホール 画像を示す.(a)および(b)は CR および直接型 FPD で得られた解像特性同一化前のホール画像で,リ ファレンス画像として示した.(c),(e)および(g)は CR,間接型 FPD および直接型 FPD で得られた基準 線量(2.58×10−7 C/kg)でのホール画像,(d)は CR の 線量を基準線量の 2.55 倍にしたホール画像,(f)は間 接型 FPD の線量を基準線量の 1.27 倍にしたホール 画像である.Fig. 8 は Fig. 7 に示した(c)から(g)の ホール画像における CNR の結果である.CNR の高 い 順 に,直 接 型 FPD,間 接 型 FPD,CR となり, DQEの順位とも一致した.線量を 2.55 倍にして撮影 した CR,線量を 1.27 倍にして撮影した間接型 FPD ともに直接型 FPD とほぼ同等の値となった.Fig. 9 は Fig. 7 と同じホールの RQA5 における画像であ る.(a)および(b)は CR および直接型 FPD で得られ た解像特性同一化前のホール画像,(c),(e)および (g)は CR,直接型 FPD および間接型 FPD で得られ た基準線量(2.58×10−7 C/kg)でのホール画像,(d)は CRの線量を基準線量の 2.81 倍にしたホール画像,
Fig. 7 The hole images for measuring CNR obtained by radiation quality RQA3.
(a) CR: reference image, (b) Direct FPD: refer-ence image, (c) CR: standard dose (2.58×10−7 C/kg), (d) CR: 2.55 times the standard dose, (e) Indirect FPD: standard dose, (f) Indirect FPD: 1.27 times the standard dose, (g) Direct FPD: standard dose
(f)は直接型 FPD の線量を基準線量の 1.11 倍にした ホール画像である.Fig. 10 は Fig. 9 に示した(c)から (g)のホール画像における CNR の結果である.CNR の高い順に,間接型 FPD,直接型 FPD,CR となり, 低周波領域における DQE の順位と一致した.線量を 2.81倍にして撮影した CR は間接型 FPD とほぼ同等 の値となったが,線量を 1.11 倍にして撮影した直接 型 FPD は間接型 FPD よりやや低い値となった. Fig. 11 に RQA3 において足ファントム画像内の第 1趾骨梁部分にハイパスフィルタ処理を施した高周波 評価用画像を示す.(a)および(b)は CR および間接型 FPDで得られた解像特性同一化前の画像で,リファ レンス画像として示した.(c),(e)および(g)は CR, 間接型 FPD および直接型 FPD で得られた基準線量 (2.58×10−7 C/kg)での画像,(d)は CR の線量を基準 線量の 2.55 倍にした画像,(f)は間接型 FPD の線量 を基準線量の 1.27 倍にした画像である.Fig. 12 は Fig. 11に示した(c)から(g)の画像における SD 比の結 果である.SD 比の高い順に,直接型 FPD,間接型 FPD,CR となり,この評価でも DQE の順位と一致 Fig. 8 Results of CNR of the hole images obtained
by radiation quality RQA3.
Fig. 9 The hole images for measuring CNR obtained by radiation quality RQA5.
(a) CR: reference image, (b) Direct FPD: refer-ence image, (c) CR: standard dose (2.58×10−7 C/kg), (d) CR: 2.81 times the standard dose, (e) Direct FPD: standard dose, (f) Direct FPD: 1.11 times the standard dose, (g) Indirect FPD: standard dose
Fig. 10 Results of CNR of the hole images obtained by radiation quality RQA5.
した.線量を 2.55 倍にして撮影した CR では,SD 比 が上昇したが,線量を 1.27 倍にした間接型 FPD に比 べて低値となった.Fig. 13 は Fig. 11 と同じ足ファン トムの RQA5 における画像である.(a)および(b)は CRおよび間接型 FPD で得られた解像特性同一化前 の画像,(c),(e)および(g)は CR,直接型 FPD およ び間接型 FPD で得られた基準線量(2.58×10−7 C/kg) での画像,(d)は CR の線量を基準線量の 2.81 倍にし た画像,(f)は直接型 FPD の線量を基準線量の 1.11 倍にした画像である.Fig. 14 は Fig. 13 に示した(c) から(g)の画像における SD 比の結果である.SD 比の 高い順に,間接型 FPD,直接型 FPD,CR となり,高 周波領域における DQE の順位と一致した.線量を 2.81倍にして撮影した CR では,SD 比が上昇した が,線量を 1.11 倍にした直接型 FPD に比べて低値と なった. 3.考 察 物理的画質特性の測定結果において,三つのシス テムはそれぞれ異なる特性を示した.MTF について は直接型 FPD が優れ,X 線を直接電荷に変換する直 接変換型の特性がよく表れた結果となった.また, Fig. 11 The phantom images of distal phalanx of the first toe which obtained by radiation quality RQA3 and processed by the high-pass filter. (a) CR: reference image, (b) Indirect FPD: reference image, (c) CR: standard dose (2.58×10−7 C/kg), (d) CR: 2.55 times the standard dose, (e) Indirect FPD: standard dose, (f) Indirect FPD: 1.27 times the stan-dard dose, (g) Direct FPD: stanstan-dard dose
Fig. 12 Results of SD-ratio of the phantom images of the distal phalanx of the first toe which is obtained by radiation quality RQA3.
Fig. 13 The phantom images of the distal phalanx of the first toe which was obtained by radiation quality RQA5 and processed by a high-pass filter. (a) CR: reference image, (b) Indirect FPD: reference image, (c) CR: standard dose (2.58×10−7 C/kg), (d) CR: 2.81 times the standard dose, (e) Direct FPD: standard dose, (f) Direct FPD: 1.11 times the standard dose, (g) Indirect FPD: standard dose
RQA3および RQA5 の MTF を比較すると,どのシス テムも MTF は変化しておらず,50∼70 kV の範囲に おいてエネルギー依存性はみられないことが示され た.NNPS においては間接型 FPD が優れ,高周波の MTFの低下に従って,高周波にいくほど低値を示し た.これは,間接変換型の蛍光体において,エネル ギーを光に変換する際,光が隣の検出器に散乱する ことで MTF が低下し,高周波成分がぼけたことによ る影響であると考えられる18).また,RQA3 および RQA5の NNPS を 比 較 す ると,CR および 直 接 型 FPDは 変 化 が みられ なかった が,間 接 型 FPD は RQA5の方が向上した.MTF に変化がみられなかっ たことから,間接型 FPD は 50∼70 kV の範囲におい て X 線利用効率のエネルギー依存性が存在し,70 kV において,利用効率が向上することが示された.こ れは,間接型 FPD の蛍光体である CsI を構成する Csお よ び I の K 吸 収 端 が そ れ ぞ れ 35.98 keV, 33.17 keV19)であることから,妥当な結果と考えられ る.DQE については,RQA3 において直接型 FPD の 方が優れ,RQA5 においては間接型 FPD の方が低周 波で特に優れる結果となった.ファントム画像の CNRの結果は,DQE を低周波数と高周波に分けて 比較すると良い対応を示した.また,Fig. 7,9,11 および 13 に示した画像を参考にすると,見た目の印 象との逆転などなく,おおよそ良い対応を示した. 画像を視覚的に比較する場合,画像間の解像特性 に差があると,画像の善し悪しを視覚的に判断するこ とは一般的に難しい.これは,被写体の空間周波数 成分,評価対象となる部位,解像特性のノイズ特性 への影響などさまざまな因子が関係する.この影響を 軽減するように本研究では解像特性を一致させると いう方法をとり,さらに,低周波が重要なバーガファ ントムのホールでは,低い解像特性のシステムに合わ せ,高周波が重要な足ファントムの骨梁部分では, 高い解像特性に合わせるという配慮をした.本来, 同一線質において DQE が同一のシステム(ナイキス ト周波数も同一)は,同一解像特性とすることができ れば,MTF や NNPS に表れないアーチファクトなど の因子を除いて,同一の画像を提供できるはずであ る.よって,MTF が極端に低くなく,画像処理によ る改善が不可能でないシステムにおいては,DQE に よる結果をもってして画質を判断することに大きな問 題はないと考えられる.しかし,腹部領域や軟部組 織などの撮影では,高周波成分を抑制した空間周波 数処理が好まれたり,逆に頭部撮影では高周波強調 が高いほど評価が良かったりする20)ので,低周波成 分や高周波成分に分けて評価を行い,その特性を知 ることは重要であると考える.そこで,本研究では, DQEの空間周波数による違いを検証する目的もあ り,バーガファントムのホールと骨梁の実際画像から の定量測定を実施し,DQE の結果を検証することを 試みた.市川らは,computed tomography 画像を用い て,異なるシステムで解像特性を同じにする手法を 用いて比較することで,ノイズ量の視覚的な比較が 容易になり,その結果が信号対雑音比の結果とよく 対応すると報告した12).この論文の結果より,本研究 で測定した CNR については,視覚評価を行った場合 によく対応することが推察される.また,DQE の比 率から求めた線量比で線量を増加させて撮影した画 像においては,それに応じて CNR と SD 比の改善が みられ,RQA3 および RQA5 においてほぼ同一の値 となった.ただし,線量を増加させた CR の SD 比は 線量倍率を低周波に合わせたことで同一の値とはな らなかった.また RQA5 における線量を増加させた 直接型 FPD の CNR は,低周波領域 1.0 cycle/mm で DQE比は約 1.15 倍であり,平均した 1.11 倍ではやや 倍率が足りず,同一の値とならなかった.この結果か ら,DQE の測定結果に応じて,X 線量を調節するこ とで,ほぼ同一の画質(ナイキスト周波数の違いはあ る)が得られることが示された.これは DQE の線量 Fig. 14 Results of SD-ratio of the phantom images of
the distal phalanx of the first toe which is obtained by radiation quality RQA5.
依存性が今回用いた線量レベル(臨床的使用に近いレ ベル)では,変化が少ないことの現れでもあった. 本研究における DQE の比較結果と線量倍率調節 後の測定結果は,DQE を用いての感度の考察をも可 能とした.RQA5 の場合には,被写体厚のある程度 厚い対象となり,高周波成分よりも低周波を重要視 するならば,間接型 FPD より直接型 FPD がやや感度 が低いことになり,CR では DQE がさらに低く,FPD と同等の画質を得るために 2∼3 倍の線量が必要であ ると考えられる.RQA3 のような低管電圧において は,厚みの薄い骨撮影を対象とする場合が多く,比 較的に高周波である 2.0 cycles/mm を重視して DQE から感度を求めた場合,直接型 FPD を 100 とする と,間接型 FPD は 81.6,CR は 22.2 となる.本研究 では,低周波を基準にして線量倍率を決定したた め,間接型 FPD ではやや倍率不足で,CR では顕著 な不足となると考えられた.そして SD 比の結果にそ れが示され,Fig. 11 の画像の印象も相違ないもので あった.DQE の比だけで,CR における骨梁の同一 画質を得る線量倍率を求めると 5 倍近い値となる が,Ranger らの結果17)から,CR は高線量で DQE が 低下しやすい性質であることから,この倍率で等しい 画質を得ることは困難と推測でき,CR の性質を考慮 するとそのような倍率設定は,患者に無用な被ばくを させることになりかねない.したがって,低周波にお ける DQE 比を用いる本手法を実際に臨床応用する場 合,四肢撮影のような高周波成分を重要視する撮影 においては,高周波成分がやや不足する可能性があ り,CR に関しては本手法に限界があると考える.以 上のことを考慮すれば,線量倍率の設定に DQE を用 いることはほぼ妥当であると考えられた. 本研究では,FPD と CR において従来には行われ なかった空間周波数処理による解像特性の同一化 を,画質評価に応用するという新しい検討を行い, それにより各システムの画質特性をファントム画像を 含めて比較した.本研究で示した手法は,生データ に対して解像特性同一化処理を行うので,すべての 撮影部位で適応可能であり,システム間による画質 の違いを同一化することで,経過観察などで医師に 同等な画質を提供し,読影をより快適にしていただく ことが可能であると考える.また,一般的に,撮影部 位や撮影目的によって最適な解像特性や線量を決め ることができれば,システム間だけではなく,施設間 においても同等な画像を作成でき,近年問題となって いる施設間格差の広がりの解決策の一つになり得る と考える.しかし,撮影対象によって使い分けを行っ ている施設も多いと考えられ,本手法の運用に関して さらなる検討が必要である.本研究で示した手法 が,FPD や CR の適正線量の決定や,画像処理パラ メータの構築に寄与することを期待する. 4.結 語 直接型 FPD 装置,間接型 FPD 装置および CR 装 置の物理的画質特性を RQA3 と RQA5 にて測定し, 空間周波数処理による解像特性同一化処理を応用し て,ファントム画像を含めて画質特性の総合的な評 価を行い,総合的な画質の同一化について検討し た.その結果,DQE の結果から求めた線量倍率に よって,線量調節することで DQE 比が高くない場合 (2∼3 倍以下)において物理的な画質をほぼ同一にで きることが示唆された. 謝 辞 本研究を遂行するにあたり,多大なご協力を賜りま した金沢大学附属病院の関係諸氏に深謝いたします. 参考文献
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図表の説明
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(a)CR:リファレンス画像,(b)間接型 FPD:リファレンス画像,(c)CR:基準線量(2.58×10−7 C/kg),(d)CR:基準線量の 2.55倍,(e)間接型 FPD:基準線量,(f)間接型 FPD:基準線量の 1.27 倍,(g)直接型 FPD:基準線量
Fig. 12 RQA3の線質で得られた第 1 趾末節骨のファントム画像の SD 比測定結果
Fig. 13 RQA5の線質で得られ,high-pass filter で処理された第 1 趾末節骨のファントム画像
(a)CR:リファレンス画像,(b)間接型 FPD:リファレンス画像,(c)CR:基準線量(2.58×10−7 C/kg),(d)CR:基準線量の 2.81倍,(e)直接型 FPD:基準線量,(f)直接型 FPD:基準線量の 1.11 倍,(g)間接型 FPD:基準線量