一
駒澤大學佛敎學部硏究紀第六十九號 成二十三年三月一
﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読
佐
藤
秀
孝
凡
例
一 、 本稿は臨済宗松源派 ︵大覚派祖︶の蘭渓道隆 ︵大覚禅師 、一二一三│一二七八︶の法を嗣いで鎌倉中期に鎌倉二階堂の極楽禅寺すなわ ち後の稲荷山浄妙禅寺︵鎌倉五山第五位︶に住持した月峰了然︵生没年未詳、道隆より先に示寂︶の﹃月峰和尚語録﹄一冊一巻について、 翻刻の原文を上段に載せ、訓読を下段に載せたものである。 一 、 底本としたのは東京都千代田区永田町に存する国立国会図書館に所蔵される宝永七年 ︵一七一〇︶下春三月に刊行された江戸刊本 ﹃月 峰和尚語録﹄ ︵宝永本︶である。 一 、 中華人民共和国北京市の国家図書館 ︵もと北京図書館︶には南宋の咸淳四年 ︵一二六八︶に序 ・ 跋が付されて刊行された宋版 ﹃ 月 峰 和尚語録﹄が所蔵されており 、本来ならば宋版を底本とすべきであるが 、実際に国家図書館にてマイクロフィルムを閲覧したものの 、複 写許可が出て入手し得た複写部分が全体の三分の一にも満たず 、宋版を底本とした全文の翻刻は無理であるため 、宋版はあくまで部分対 校に留めたい。 一 、 序 ・ 跋や本文の主要箇所など語録の成立に関わる部分に関しては 、幸いに宋版の複写部分を入手できたことから 、両刊本の対校をなし ておきたい。 一、原文は原則として旧字体をそのままに使用するが、異体字や別体字などについては状況に応じて正字に改めた場合が存する。 一、 宝永本と宋版で文字や書体が相違している場合は、原文の文字の横に︵ ︶で宋版の文字を対校しておきたい。 一、 宋版で活字部分が虫食いなどで欠損している部分は、 江戸刊本でもほぼ同様の箇所が欠字として扱われ、 活字が打 た れ て い な い 。 空 白 部 分 は 一 字 ならば □ で 示 し、 二 字 以上 は文 字 数 に応じ て □□ で 示 す か 、 字 数が判 明 しな い 場 合は ︹ ︺ で示すことにしたい。また前後の関係か
﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
二
ら判読が可能な場合、□の右横に︵ ︶で字を補った場合が存する。 一 、 宋版はもちろんのこと 、 宝永本も白文 ︵漢字のみ︶で記されており 、句読点は付されておらず 、判読上 、翻刻者
︵佐藤︶
なりに妥 当と見られる点と丸を 補っておきたい。したがって、句読点の誤りや誤写に関してはすべて翻刻者の責任である。 一、宋版の序 ・ 跋 に押されている南宋禅者の落款︵方印︶については[ ]で示しておく。 一、原文および訓読とも序 ・ 跋や本文などで文字がつづいている場合、文意に添って改行した箇所が存する。 一、 本文中に小文字二行で記されている語句については︿ ﹀を用いて一行で示しておく。 一、原文で活字が曖昧な己・已・巳や千・干・于などの区別については、文章の内容から適切な文字を筆者なりに選定しておきたい。 一、踊り字﹁々﹂に関しては、状況により本来の字に改めた場合が存する。 一、人名や地名・寺名などが並列している場合、便宜上、分かり易くするために・を使用した箇所が存する。 一、 訓読 ︵書き下し︶ に関しては原則として新字体を用いることとし、 また仮名の表記は旧仮名使いではなく、 新仮名使いを用いることとす る。 一、 月峰了然と ﹃月峰和尚語録﹄ に関しては、 拙稿 ﹁月峰了然と ﹃月峰和尚語録﹄ │京都の大学博士から転身して蘭渓道隆の法を嗣ぐ│﹂ ︵﹃駒 澤大学禅研究所年報﹄第二二号、二〇一〇年一二月︶を参照されたい。峰和尙語錄
月峰和尚語録﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
三
無明將松源一滴水、皷地波濤、谿用無明一星火、□ 奪 □□□ 談。月峰不甘盡掃蕩、直得灰飛流絶。可謂不能克其家。□ 明 眼衲、向此錄中辨取。 咸淳戊辰長至前十日、 住大宋南山淨慈石帆叟 唯 惟 衍書。 [釋氏惟衍] [松源正派] [石帆] 來唐土、接可於嵩堆中、畧施三拜、便云得髓。早傷 曲了也。 谿接月峰於深處、 不犯機絲、 却有一絡索。 且、 □ 是 骨耶 、是髓耶 。具辨開口不在舌 。無明擅松源斯□ 、 所至橫說 豎 說 、 一字元無。眞本鉢囉孃。月峰操溪蜀音、且非梵語華言 可能管攝。已是和雲唱出、 韻在靑。更向此錄、 推尋扶桑國裏。 咸淳戊辰臘八、 溪西廣澤書于佛日山奪機室。 [廣澤] [溪西] 無 明 は松 源 の一滴水を将って、平地に波濤を鼓わせ、蘭谿は無明の一星 火を用って、□□に□談を奪う。月峰は情を尽くして掃蕩するに甘んぜ ず、直に得たり、灰飛び流れ絶えることを。謂つべし、其の家を克くす ること能わざる者なりと。明 眼 の衲 僧 、此の録中に向って辨取せよ。 時に咸 淳 戊 辰 ︵四年、一二六八︶の長至前十日、 大宋の南山浄 慈 に住する石 帆 叟 惟 衍 、書す。 [釈氏惟衍] [松源正派] [石帆] 達磨は唐土に来たりて、 可祖を嵩の雪堆中に接す。略して三拝を施すに、 便ち云く 、﹁ 髄を得たり﹂と 。 早や迂曲を傷つけ了われり 。蘭谿は月峰 を海宵の深き処に接し、機糸を犯さず、却て這 の一 絡 索 有り。且らく道 え、是れ骨なりや、是れ髄なりや。具さに辨ず、口を開くことは舌に在 らず。無明は松源の斯□を擅にし、至る所に横説竪説し、一字も元より 無く、真に本より鉢 囉 孃 なり。月峰は蘭渓の蜀音を操り、且つ梵語華言 もて能く管摂すべきに非ず。已に是れ雲に和して唱え出だし、韻は青宵 に在り。更に此の録に向って、扶 桑 国 裏 に推尋せよ。 咸淳戊辰の臘八、 渓 西 広 沢 、仏日山の奪 機 室 に書す。 [広沢] [渓西]﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
四 四
相模州極樂禪寺月峰和尙語錄。 侍 眞契 。 ︵ 1︶師於正嘉元年、建長禪寺首座寮受。拈法衣云、大庾嶺 頭提不起底、 因甚今日却在然上座手中。 諸人要知來處麼。 乃披衣云、栽松 鶴至、買石得雲饒。 指法座云 、 盡大地撮來如粟粒 、 大須彌 燈 灯 王座 、 又 向甚處 安著 着 。 倘 或躊躇、 山打藤、 謾諸人去也。乃驟歩登座。 ︿問荅不録﹀ 。 提綱乃云 、從上來事 、 䋽 絶名言 、瞬目 □ 揚 眉、 早 □ 傷 轍 。 德山棒以水濟水、 臨濟以聲止聲。實爲亂世英雄、 未是 太時、 其餘胡說亂、 大似好肉 剜 瘡。擧古擧今、 無 事生事。雖然事無一向、 曲爲初機、 略開線路。展鉢開單、 靈光常露 、行住坐臥 、應用無虧 、觸目現前 、更非他物 。 所以古德、 以思無思之妙、 思靈 燄 之無窮、 思盡源、 性相常住。到裏、 變大地作黃金、 攪長河爲酥酪。非是 強爲、 法本如是。是則故是、 更須轉那邊始得。何故。金 屑雖貴、落眼成翳。 相 模州 極楽禅寺の月峰和尚の語録。 侍者真契、 編す。 ︵ 1︶師、 正嘉元年︵一二五七︶に於いて、 建長禅寺の首 座 寮 にて請を 受く 。法衣を拈じて云く 、 ﹁ 大 庾 嶺 頭 にて提げ起こせざる底 、 甚 に因って 、今日 、 然 上 座 が手中に却在す 。諸人 、来たる処を 知らんと要すや﹂と 。乃ち衣を披て云く 、 ﹁ 松を栽ゆるに兼ね て鶴至り、石を買いて雲の饒るを得たり﹂と。 法座を指して云く 、 ﹁ 尽大地 、 撮み来たるに粟粒の如し 、大 須 彌 の燈 王 座 は又た甚 の処に向ってか安著せん。 倘 も 或し躊躇せば、 山僧 、葛藤を打し 、諸人を謾じ去らん﹂と 。 乃ち驟歩して座に 登る。問答は録せず。 提 綱 に乃ち云く 、 ﹁ 従 上 来 の事は 、迥かに名言を絶し 、瞬 目 揚 眉 すれば 、早や途 轍 を傷う 。徳山の棒は水を以て水を済し 、臨 済の喝は声を以て声を止む 。実に乱世の英雄と為すも 、 未だ是 れ太平の時節ならず 。其の餘の胡 説 乱 道 は 、大いに好 肉 に瘡 を 剜 えぐ るに似たり 。古えを挙し今を挙し 、事無きに事を生ず 。 事に 一向無しと雖然も、 曲げて初機の為めに、 略して線路を開かん。 展鉢開単して 、霊光は常に露われ 、行住坐臥にて 、応用して虧 くること無し 、 触 目 現前して 、更に他物に非ず 。所以に古徳道 く、 ﹃思いを以て思いの妙無く、 返って霊 燄 の窮まり無きを思う。 思い尽きて源に還らば 、性相は常住なり﹄と 。者 裏 に到りて 、 大地を変じて黄金と作し 、長 河 を攪まわして酥 酪 と為す 。是れ 強いて為すに非ず 、 法は本とより是の如し 。是なることは則ち︵佐藤︶
五 五
復擧、 雲門大師、 一日拈拄杖示衆云、 凡夫實謂之有、 聲 聞柝謂之無 、緣覺謂之幻有 、菩薩當 體 体 空 。 衲家 、見 拄杖子 、但喚作主 拄 杖 丈子 。行但行 、坐但坐 、總 惣 不得動 着 。 師云、 雲門大師、 只開入頭路、 未有出身路。驀拈拄杖云、 然上座條拄杖子、 不動、 不愛靜、 有出有入、 有殺有活、 放行也得、 把定也得。如何是把定。卓主 拄 杖 丈一下。如何是 放行。擲主 拄 杖 丈下座。 入 院 。 指三門云 、不二門開 、誰謂維默然杜口 。樓閣 曠 、何須彌勒彈指一聲 。且 、 裏是樓閣門耶 、 不 二門耶。今朝直入、更不相瞞。 佛殿。 德山拆却後、 令人墮黑山。 以香提佛云、 相好端嚴處、 不妨當面看。 陞座。拈香云、 此一瓣香、 恭爲延今上皇帝聖躬萬歲萬 歲萬萬歲、 恭願聖日永明仁風。次拈香云、 此香、 奉 爲本寺大檀越禮部員外侍郎、 久壽域、 永護宗乘。又拈 香云、 此香、 奉爲見住巨福山建長禪寺蘭溪大和尙、 爇 向 故らに是なるも 、更に須らく那辺に転じて始めて得し 。何が故 ぞ。金 屑 は貴しと雖も、眼に落つれば翳 と成る﹂と。 復た挙す、 雲門大師、 一日、 拄 杖を拈じて衆に示して云く、 ﹁凡 夫は実に之れを有と謂い 、声 聞 は柝けて之れを無と謂い 、縁 覚 は之れを幻有と謂い 、菩薩は当体に即ち空とす 。衲 僧 家 は、 拄 杖子を見て 、但だ喚んで拄 杖子 と作す 。行は但だ行 、坐は但だ 坐にして 、総じて動著するを得ず﹂と 。師云く 、 ﹁雲門大師 、 只だ入頭の路を開いて 、未だ出身の路有らず﹂と 。驀として拄 杖を拈じて云く 、 ﹁然上座が這條の拄杖子 、動を憎まず 、静を 愛せず 、出有り入有り 、殺有り活有り 、放 行 するも也た得く 、 把 定 するも也た得し 。如何なるか是れ把定﹂と 。拄杖を卓する こと一下す。 ﹁如何なるか是れ放行﹂と。拄杖を擲ちて下座す。 入 院 。三門を指して云く 、 ﹁ 不 二 の門は開けり 、誰か謂う 、維 摩 は黙然として口を杜づと 。樓閣は曠く達す 、何ぞ弥 勒 の弾指 一声するを須いん 。且らく道え 、者裏は是れ樓閣門なりや 、不 二門なりや。今朝、直入して、更に相い瞞ぜず﹂と。 仏殿 。﹁ 徳山は拆却して後 、人をして黒山に堕さしむ﹂と 。香を 以て仏に提げて云く 、﹁ 相 好 の端 厳 なる処 、当面に看ることを妨 げず﹂と。 陞 座 。香を拈じて云く 、 ﹁此の一 瓣 香 、恭しく為めに今上皇帝 が聖 躬の万歳万歳万万歳を祝延し 、恭しく聖日の永く明らかに 仁 風 の遠く扇がんことを願う﹂と 。次に香を拈じて云く 、 ﹁ 此 の香 、本寺の大檀越たる礼 部 員 外 侍 郎 の為めにし奉り 、久しく﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
六 六
爐中、用酬法之恩。趺座。 ︿問 答 荅 不錄﹀ 。 乃云、 竭掩室、 抱贓判事、 少林面壁、 掩耳偸鈴。何况、 言上生言、 句中添句、 去轉、 爭得歸源。新長老、 事 不獲已、 開第二義門去也。塵塵壁立萬仭、 人人常光現前。 只爲向外馳求 、日用渾不知覺 。儻於三條椽下七尺單前 、 歩就躬、 時時照、 始知一切處見前、 一切處成就。雖 然、 更須得荊棘林、 始是好手。且、 荊棘林作麼生。 乃一。 復擧、 玄沙和尙示衆云、 若論此事、 譬如一片田地、 四至 界結契 、賣與諸人了也 。只有中心樹子 、屬老在 。 師云、 玄沙和尙是則是、 未免分彼分我。 然上座、 片田地、 無取無、 中心樹子、 要與諸人同一受用。乃竪起拂子云、 諸人見樹子麼。便下座。 ︵ 2︶上堂。年光如流、 臘月告朔。天寒人寒、 十方一色、 心靜 寿域に遊び、 永く宗乘を護らんことを﹂ と。 又た香を拈じて云く、 ﹁此の香、 巨 福 山 建長禅寺に見住せる蘭 渓 大和尚の為めにし奉り、 爐中に 爇 ぜつ 向 し 、用て法乳の恩に酬ゆ﹂と 。遂に趺座す 。問答は 録せず。 乃ち云く 、 ﹁ 摩 竭 に室を掩うは 、贓 を抱きて事を判ず 。少林に て面壁するは 、耳を掩いて鈴を偸む 。何に况んや 、言の上に言 を生じ 、句の中に句を添うは 、道を去ること転た遠く 、 争 でか 源に帰するを得ん 。新長老 、事已むを獲ず 、第二義の門を開き 去らん 。塵塵は壁 立 万 仞 し 、人人は常光現前す 。只だ外に向っ て馳 求 するが為めに 、日用にて渾て知覚せず 。 儻 し三条椽下 ・ 七尺単前に於いて 、歩を退いて躬に就け 、時時に返照せば 、 始 めて一切処に見前し 、一切処に成就するを知らん 。雖然ども 、 更に須らく荊 棘 林 を過ぎ得て 、始めて是れ好手なり 。且らく道 え、荊棘林は作麼生か過ぎん﹂と。乃ち喝すること一喝す。 復た挙す 、玄 沙 和尚 、衆に示して云く 、 ﹁若し此の事を論ぜば 、 譬えば一片の田地の如し 、四至界畔に契を結び 、諸人に売り与 え了われり。 只だ中心の樹子のみ有りて、 猶お老僧に属せり﹂ と。 師云く、 ﹁玄沙和尚、 是なることは則ち是なるも、 未だ免がれず、 彼に分かち 、我れに分かつことを 。然上座 、這片の田地 、取る こと無く捨つること無し 。中心の樹子 、諸人と同一に受用せん と要す﹂ と。 乃ち払子を竪起して云く、 ﹁諸人、 還た樹子を見るや﹂ と。便ち下座す。 ︵ 2︶上堂。 ﹁年光は流るるが如く、 臘月は朔を告ぐ。 天寒く人寒くして、﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
七 七
境靜 、萬法一如 。是光影邊事 。不見 、石頭和尙 、 當明中有暗 、勿以暗相 、當暗中有明 、勿以明相覩 。 正恁麼時、眼不見眼、水不洗水。三世諸佛、口掛壁上、 千手大悲 、有眼如眉 。直得 、 如珠發光 、光自照 。此 是第二頭事。驀然拈起鐵 蒺 藜、 一擊百雜碎時如何。 咄。口是門。 3︶上堂。擧、問峰、古 磵 寒泉時如何。峯云、瞪目不見 底 。云 、飮如何 。峰曰 、不從口入 。趙州聞得乃云 、 不可從鼻入 。却問趙州 、 古 磵 寒泉時如何 。州曰 、苦 。 云、 飮如何。州曰、 死。峰聞云、 趙州古佛。峯從 此不荅話。 師云、 一人把斷要津、 一人要津把斷。 後學之流、 如何湊泊 。山未免旁資一路 。乃云 、古 磵 寒泉傍 、 堪嗟二老謾商量、至今未有出身計、活路應須待上陽。 4︶佛成上堂。淸淨本然、 說甚悟、 初無成壞、 豈暇 修證。 所以、 未离兜率、 已降王宮、 未出母胎、 度人已畢。又、 六年端坐、 一旦成、 法 性 □中、 萬德無闕。 若言有證有修、 十方は一色なり 。心静かに境静かにして 、万法は一如なり 。猶 お是れ光影辺の事なり 。見ずや 、石 頭 和尚道く 、﹃ 当に明中に暗 有るべし 、暗相を以て遇うこと勿かれ 、当に暗中に明有るべし 、 明相を以て覩ること勿かれ﹄と 。正 恁 麼 の時 、眼は眼を見ず 、 水は水を洗わず。三世の諸仏は、 口をば壁上に掛け、 千手大悲は、 眼有りて眉の如し 。直に得たり 、珠の光りを発するが如し 、光 り還た自ずから照らす 。此れは猶お是れ第二頭の事なり 。驀然 として鐵 蒺 しつ 藜 を拈起し 、鎚つこと一撃して百 雑 砕 する時は如何 ん。咄。口は是れ禍 門 なり﹂と。 ︵ 3︶ 上堂。挙す、 僧、 雪峰に問う、 ﹁古 磵 寒泉の時、 如何ん﹂と。峯云く、 ﹁目を瞪 るも見えざる底﹂ と。僧云く、 ﹁飮む者は如何ん﹂ と。峰曰く、 ﹁口より入らず﹂ と 。趙 州、 聞き得て乃ち云く、 ﹁鼻より入るべからず﹂ と。僧、 却て趙州に問う、 ﹁古 磵 寒泉の時、 如何ん﹂と。州曰く、 ﹁苦 し﹂と。僧云く、 ﹁飮む者は如何ん﹂と。州曰く、 ﹁死す﹂と。雪峰、 聞きて云く、 ﹁趙 州古仏﹂と。峯、此れより答話せず。師云く、 ﹁一 人は要津を把断し、一人は要津把断す。後学の流、如何んが湊泊せ ん。山僧、 未だ免れず、 旁らにて一路を資くるを﹂と。乃ち云く、 ﹁古 磵 寒泉は傍らに近づき難し。嗟くに堪えたり、二老が謾りに商量す ることを。今に至りて未だ出身の計有らず、活路、応に須らく陽上 るを待つべし﹂と。 ︵ 4︶仏 成 道 上堂 。﹁清浄本然にして 、甚の迷悟をか説かん 。初めより 成 壊 無し 、豈に修証を假らんや 。所以に道う 、﹃未だ兜 率 を离 れざる に 、 已に王宮に降り 、未だ母胎を出でざるに 、人を度すること已に畢﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
八 八
皓玉無瑕、 雕文喪德。 若言無證無修、 無孔鐵、 渾崘是鐵。 若言定有所悟、 靈龜負圖、 自取喪身之兆。若言定無所悟、 黑山鬼窟 、轉見暗 。無悟 、又無證修 。六載山 、 明星現時、 又是箇什麼。良久云、 莫怪從前多意氣、 他家 曾踏上頭關。 ︵ 5︶上堂。幸自圓成、何須穿鑿。若添一言、又成剩語。所以 峰凡見便、 是什麼。曹山、 歩就己、 萬不失一。 是皆應病與藥 。若能一念回光 、只是本來人 。喚作回光 、 早是夢言。更、 照與照、 同時寂滅、 亦未是極則。畢 竟合作麼生。滿庭白今何在、當眼寒松依舊靑。 ︵ 6︶上堂 。擧 、寒山問豐干 、古鏡未時 、如何照燭 。干曰 、 氷壺無影像、 猿猴探水月。山云、 此是不照燭、 更別 。干曰、 萬德不將來、 敎我什麼。後來瞎堂和尙拈曰、 三日以前一局某皆活、 今朝被打殺了也。衆中莫有下活底 一著麼 。衆無對 。 便下座 。師云 、豐干已是八字打開 、 可惜當面蹉。瞎堂雖善活路、 □奈人□□。□□爲 二老出氣去也。擧拂子云、見麼。□□□□。 わる﹄ と。又た道く 、﹃六年端坐し、一旦に道成る。法 性 海 中 、 万徳は 闕 くる無し﹄ と 。若し証有り修有りと言わば、皓玉に瑕無し、文を雕 みて徳を喪わん 。若し証無く修無しと言わば 、無孔の鉄鎚 、 渾 崘 是 れ鉄ならん 。若し定んで所悟有りと言わば 、 霊亀 、図を負い 、自ら 喪身の兆しを取らん。若し 定んで 所悟 無しと言わば、黒 山 鬼 窟 にて、 転た暗迷を見ん。既に迷悟無く、 又た証修無ければ、 雪山に六載して、 明星現ずる時、又た是れ箇の什麼 ぞ﹂と。良久して云く、 ﹁怪しむこ と莫かれ、從前に意気多きことを。他家、曾て上頭の関を踏む﹂と。 ︵ 5︶上堂 。﹁ 幸 自 に円成す 、何ぞ穿鑿するを須いん 。若し一言を添う れば、 又 た剰語と成らん。 所以に雪峰は凡そ僧を見るに便ち道く、 ﹃是れ什 麼 ぞ﹄と 。曹山道く 、﹃ 退歩して己に就かば 、万に一を 失わず﹄と 。是れ皆な応病与薬なり 。若し能く一念に回光せば 、 只だ是れ本来人なり 。喚んで回 光 と作さば 、早や是れ夢言なり 。 更に ﹃照と照とは 、同時に寂滅す﹄と道うも 、亦た未だ是れ極 則ならず 。畢竟して合に作 麼 生 。満庭の白雪 、 今 、 何にか在る 。 眼に当たる寒松、旧きに依りて青し﹂と。 ︵ 6︶上堂。挙す、 寒 山 、豊 干 に問う、 ﹁古鏡未だ磨かざる時、 如何ん が照燭せん﹂ と。 干曰く、 ﹁氷壷に影像無し、 猿猴、 水月を探る﹂ と。 山云く、 ﹁此れ猶お是れ照燭ならず、 請う更に別に道わんことを﹂ と 。干曰く 、 ﹁ 万徳は将ち来たらず 、我れをして什 麼 をか道わ しめん﹂と 。後來 、瞎 堂 和尚 、拈じて曰く 、 ﹁ 三日以前 、一局 、 某皆な活するも 、今朝 。打殺せられ了われり 。衆中 、活する底 の一著を下す者有ること莫きや﹂と 。 衆 、対うる無し 。便ち下﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
九 九
7︶歲旦上堂 。 舊歲昨歸甚處 、 木人夜穿靴去 、 新年今日 自何來、 石女天明帶帽回。 識得來處、 佛法世法、 會歸一源、 新年舊年、 頭頭成現。 露。 □聞得旁地不甘、 不覺呵呵失笑。 且、 笑箇什麼。 幸自好盤飯、 何用糝薑椒。 8︶ 上 堂。 擧、 問鏡淸、 新年頭有佛法也無。 淸 云、 有。 云 、 如何是新年頭佛法 。 淸 云 、 元正啓祚 、 萬物咸新 。 云 、 謝師荅話 。 淸 云 、 鏡淸今日失利 。 又問明敎 、 新年頭 有佛法也無 。 敎 云 、 無 。 云 、 年々是好年 、 日日是好 日 、 爲什麼却無 。 敎 云 、 張喫酒李醉 。 云 、 老老大 大 、 龍頭蛇尾 。 敎 云 、 明敎今日失利 。 師 云 、 二大老有 無 、 倶成剩語 。 或問極樂 、 新年頭有佛法也無 。 只 對 他 、 麗日光新 、 和風聲靜 。且 、 與二老是同是別 。 具 眼辨看。 9︶上元上堂。召大衆云、今時人、以無爲無作休去歇去、爲 座す 。師云く 、 ﹁ 豊干 、已に是れ八字に打開す 、惜しむべし 、 当面に蹉過することを 。瞎堂 、善く活路を通ずと雖も 、遊人の □□するを□奈せん。□□は二老の為に気を出だし去れり﹂ と。 払子を挙して云く、 ﹁還た見るや﹂と。□□□□。 ︵ 7︶歳旦の上堂。 旧歳の昨宵は甚 の処にか帰す、 木人は夜半に靴を穿 ち去れり 。新年の今日は何れよりか来たる 、石女は天明に帽を 帯びて回る。来処を識得すれば、仏法 ・ 世法、会ず一源に帰し、 新年 ・旧年 、頭頭に成現せん 。露 。□ 。旁地にて甘んぜずと聞 き得て、 覚えず、 呵呵失笑す。且らく道え、 ﹁箇の什麼をか笑う﹂ と。幸自に盤飯を好む、何ぞ薑 椒 を糝 ぜるを用いん。 ︵ 8︶上堂 。挙す 、僧 、鏡 清 に問う 、﹁新年頭 、還た仏法有りや﹂と 。 清云く 、﹁有り﹂と 。僧云く 、﹁如何なるか是れ新年頭の仏法﹂ と 。 清云く 、﹁元正啓祚 、万物咸な新たなり﹂と 。僧云く 、﹁ 師 の答話せるを謝す﹂と 。清云く 、﹁鏡清 、今日失利す﹂と 。又た 明 教に問う、 ﹁新年頭、 還た仏法有りや﹂と。教云く、 ﹁無し﹂と。 僧云く 、﹁年々是れ好年 、日日是れ好日なり 、什麼と為てか却て 無きや﹂ と。教云く、 ﹁張翁が酒を喫し、 李翁酔う﹂ と。僧云く、 ﹁老 老大大、 龍頭蛇尾﹂ と。 教云く、 ﹁明教、 今日失利す﹂ と。 師云く、 ﹁二 大老、 有りと道い、 無しと道い、 倶に剰語と成る。 或いは極楽に ﹁ 新 年頭、 還た仏法有りや﹂と問わば、 只だ他に対して道わん、 ﹁麗日、 光り新たにして 、 風に和して声静かなり﹂と 。且らく道え 、﹁ 二 老と是れ同か是れ別か。具眼の者は辨じて看よ﹂と。 ︵ 9︶上元上堂 。大衆を召して云く 、﹁今時の人は 、無為無作にして休﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一〇一〇
安樂處。殊不知、 謬認中以爲寶所。不見、 石頭問藥山、 汝在此作什麼 。山云 、千亦不識 。師云 、若是今時人 、 見道一物不□ 爲 カ □、 乃休去。 不然便用冬瓜印子。 石頭未免、 老婆親切又、 不以 箇什麼。且、 爲與不爲、 是箇什麼。 有辨明處也無。竪起拂子云、 我見燈明佛、 本光瑞如此。 ︵ 10︶佛涅槃上堂 。擧 、世臨入涅槃 、告衆曰 、若謂吾滅度 、 非吾弟子、 若謂吾不滅度、 亦非吾弟子。師云、 釋老子、 四十九年 、忉々怛々 。及到下稍 、賣弄不出 。山今日 、 淚出痛腸、 有箇頌子。兩頭倶截斷、 誰解到其中、 不見龍 宮殿、唯聞浪拍空。 ︵ 11︶謝知事上堂。澄源湛水、 尙棹孤舟、 古佛場、 乘車子。 舟若不行、 加以棹櫓、 牛若不進、 警以鞭策。今則各出隻 手 、逍遙性海之中 、力雙輪 、同到優游之地 。所以 、 乘是寶車、 游於四方、 嬉戲快樂、 自在無碍。且到家一句、 如何擧似。乃拍手云、囉哩囉々哩。 し去り歇し去るを以て 、安楽の処と為す 。殊に知らず 、謬って 中途を認めて以て宝所と為すことを。見ずや、 石 頭 、 薬 山 に問う、 ﹃汝、 此に在りて什麼を作す﹄ と。 山云く、 ﹃千聖も亦た識らず﹄ ﹂と 。 師云く、 ﹁若是し今時の人ならば、 ﹃一物も為さず﹄と道うを見て、 乃ち休し去らん 。然らずんば 、便ち冬瓜の印子を用いん 。石頭 、 未だ免れず、 老婆親切に又た道く、 ﹁﹃箇の什麼をか以 さざる﹄と。 且らく道え 、為すと為さざると 、是れ箇の什麼ぞ 。還た辨明の 処有りや﹂と 。払子を竪起して云く 、﹁我れ燈明仏に見ゆ 、本光 瑞は此の如し﹂と。 ︵ 10︶ 仏 涅槃上堂 。挙 す 、 世 尊 、入涅槃に臨んで 、衆に告げて曰く 、 ﹁若し吾れ滅度すと謂わば 、吾が弟子に非ず 。若し吾れ滅度せ ずと謂わば 、亦た吾が弟子に非ず﹂と 。師云く 、﹁釈迦老子 、 四十九年、 忉 々 怛 々 たり。下 稍 に到るに及びて、 売弄し出ださず。 山僧 、今日 、涙は痛腸を出で 、箇の頌子有り 。両頭倶に截断す 、 誰か解く其の中に到らん 。龍宮の殿を見ずして 、唯だ聞く 、浪 の空を拍つことを﹂と。 ︵ 11︶知事を謝する上堂 。﹁澄源の湛水にて 、尚お孤舟に棹さし 、古仏 の道場にて 、猶お車子に乗る 。舟の若し行かずば 、加うるに棹 櫓を以てし 、牛の若し進まずば 、警めるに鞭策を以てす 。今は 則ち各おの隻手を出だし 、性海の中に逍遥たり 、力めて双輪を 運び、 同じく優游の地に到る。所以に道う、 ﹃是の宝車に乗りて、 四方に游び 、 嬉戯快楽にして 、自在無碍なり﹄と 。且つ家に到 る一句、 如何んが挙似せん﹂ と。乃ち手を拍ちて云く、 ﹁囉 哩 、 囉 々﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一一一一
12︶上堂。擧、 深明二上座、 到淮河見人牽網、 有魚從網出。 深云、 俊哉、 一似箇衲。明云、 爭如當初不撞入網羅好。 深云、 明兄、 你欠悟在。明至中夜方省。師云、 一人撥波 求水、 一人離水尋波。 直饒得網來、 依舊淹他死水。 何故。 魚已出龍去、癡人 䮷 夜塘。 13︶上堂。在耳曰聞、在眼曰見。一點靈光、萬化千變。靜則 月印寒潭、 動則波生水面。佛性與精魂、 不隔一條線。諸 人鼎省麼。從來濁富不若淸貧。 14︶浴佛上堂。擧、布衲在藥山浴佛次、山云、你只浴得 箇 、浴得那箇麼 。云 、把將那箇來 。山休去 。師云 、 師資唱和、 箭鋒相柱。 或有人問、 浴得那箇麼。 只向他、 你要第二杓惡水那。 15︶結夏上堂。擧、古德云、護生須是殺、殺盡始安居、會得 箇中意、 鐵舡水上浮。圜悟和尙拈云、 殺衆生物命、 凡夫 見解、 殺六賊煩惱、 座主見解、 殺佛殺、 大闡提人見解。 衲分上 、殺箇甚麼 、試定當看 。師云 、一人殺中全活 、 一人活中全殺 。驀拈拄杖云 、山拄杖在手 、殺活擒縱 、 哩﹂と。 ︵ 12︶上堂。挙す、 深 ・ 明の二上座、 淮 河 に到りて人の綱を牽くを見るに、 魚有りて網より透出す 。深云く 、﹁俊なるかな 、一えに箇の衲僧 に似たり﹂と 。明云く 、﹁争でか当初より網羅に撞入せざるの好 きに如 かん﹂と。深云く、 ﹁明兄よ、 你は悟りを欠けり﹂と。明、 中夜に至りて方めて省す。師云く、 ﹁一人は波を撥 ねて水を求め、 一人は水を離れて波を尋ぬ 。直 饒 い網を透得し来たるも 、旧き に依りて他の死水に淹 る 。何が故ぞ 。魚は已に龍に出で去るに 、 癡人は夜 塘 を 䮷 く む﹂と。 ︵ 13︶上堂。 耳に在りては聞と曰い、 眼に在りては見と曰う。 一点の霊光、 万化千変す 。静まれば則ち月は寒潭を印し 、動けば則ち波は水 面に生ず。仏性と精魂と、 一条線を隔てず。諸人、 還た鼎省すや。 従来、濁富は清貧に若かず。 ︵ 14︶浴 仏 上堂 。挙す 、遵 布 衲 、薬山に在りて浴仏する次で 、山云く 、 ﹁你、 只だ這箇を浴し得るのみ、 還た那箇を浴し得るや﹂ と。遵云く、 ﹁那箇を把え将ち来たれり﹂ と。 山、 休し去る。 師云く、 ﹁師資唱和し、 箭鋒相い柱う。或し人有りて﹁還た那箇を浴し得るや﹂と問わば、 只だ他に向って道わん、 ﹁你、第二杓の悪水を要すや﹂と。 ︵ 15︶結 夏 上堂 。挙す 、古徳云く 、﹁護生は須 是らく殺すべし 、殺し尽 くして始めて安居なり。箇中の意を会得せば、 鉄舡も水上に浮ぶ﹂ と。圜 悟 和尚、拈じて云く、 ﹁衆生の物命を殺すは、凡夫の見解な り。 六賊の煩悩を殺すは、 座主の見解なり。 仏を殺し祖を殺すは、 大 闡 提 の人の見解なり 。衲僧が分上 、箇の甚麼をか殺す 、試み﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一二一二
總在臨時。只如粥喫粥、 飯喫飯、 殺活在什麼處。靠 主丈云、諸上善人、各自薦取。 ︵ 16︶上堂。昨夜夢中記得、 永明濳和尙有問、 亡化向什 麼處去 。濳云 、上座來豈不從廊下來 。師云 、幻人問 幻人荅 、恁麼來恁麼去 。諸人若也不會 、山開眼更說 箇夢。 昨日 䋅 賓畢、 今朝六月初、 黃時雨細、 白雲卷又舒。 且、是生耶死耶。不生不死耶。更若不會、問取虛空。 ︵ 17︶上堂。善牧 䈱 山水枯 牛、寅昏勿使墮常流、自家水草若知 足、倒臥橫眠得自由。以拂子打禪床一下。 ︵ 18︶上堂。擧、漸源坐紙帳内、撥開帳云、不審。源以目 之 、 良久云 、會麼 。 云 、不會 。 後僧擧似石霜 。霜云 、 如人解射箭不虛發。 師云、 山不然、 幸自圓成、 何勞目。 ︵ 19︶解夏上堂。九旬法制已圓成、借問寒山作麼生、皎潔直饒 に定当して看よ﹂と 。師云く 、﹁一人は殺の中に全く活し 、一人 は活の中に全く殺す﹂と 。驀として拄杖を拈じて云く 、﹁山僧が 拄杖は手に在り 、殺活擒 縦 、総べて時に臨むに在り 。只だ粥に 逢うては粥を喫し 、飯に逢うては飯を喫するが如きは 、殺活は 什麼の処にか在る﹂と 。主丈に靠 れて云く 、﹁諸の上 善 人 、各お の自ら薦取せよ﹂と。 ︵ 16︶ 上堂。 ﹁昨夜、 夢中に記得す、 永 明 濳 和尚、 僧有りて問う、 ﹃亡 僧は遷化して什麼の処にか去る﹄と 。濳云く 、 ﹃上座 、適来 、 豈に廊より下り来たらざるや﹄ ﹂と 。師云く 、 ﹁幻人問い 、幻 人答う 、恁 麼 に来たり 、恁麼に去る 。諸人 、若 也し会せずば 、 山僧 、眼を開いて更に箇の夢を説かん 。昨日 、 䋅 ずい 賓 は畢わり 、 今朝 、六月初まる 。黄梅は時雨細く 、白雲は巻きて又た舒ぶ 。 且らく道え 、 是れ生か死か 。 生ならず 、死ならざるか 。 更に若 し会せずば、虚空に問取せよ﹂と。 ︵ 17︶上堂。 ﹁善く 䈱 山 の水 䚃 牛 を牧し、寅昏にも常 流 に堕さしむるこ と勿かれ 。自家の水草 、若し足ることを知らば 、 倒に臥し横に 眠りて自由を得ん﹂と。払子を以て禅床を打つこと一下す。 ︵ 18︶上堂。挙す、 漸 源 、 紙 帳 の内に坐するに、 僧、 帳を撥開して云く、 ﹁不審﹂と。源、 目を以て之れを視、 良久して云く、 ﹁会すや﹂と。 僧云く 、﹁ 会せず﹂と 。後に僧 、石 霜 に挙似す 。霜云く 、﹁人の 解く箭を射て虚しく発せざるが如し﹂ と。 師云く、 ﹁山僧は然らず、 幸 自 に円成す、何ぞ目視するを労せん﹂と。 ︵ 19︶解 夏 上堂。九旬の法制、已に円成す、寒山に借問して作麼生。皎﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一三一三
同滿月、更須撒手暗中行。 20︶上堂。昨日泥牛吼、今朝木馬嘶、巴歌與曲、彼此和 齊。非思量處、 識測、 無修治處、 作麼修冶 。到得弓 箭折盡、 自然天下太。且、 太後如何。雨中只想 堂漏、 何似楊岐屋壁疎、 夢幻年光雖已老、 二時粥飯力 麤。且、麁底是什麼。乃拍膝一下。 21︶中秋上堂。以手打圓相云、只箇、無晝夜、常顯赫、没 盈虧。從上佛、 得此光明、 受用不盡。是汝諸人、 曾 照也無。 直饒見得分明、 是光影邊事。 只如光未發時、 如何話會。拄地拄天黑如漆、大悲千眼不能看。 22︶上堂 。 此事不可以有心求 、鷂子新羅 。不可以無心得 、 死水爭藏龍 。不可以語言 、說食豈充 。不可以寂默 、 開口同失。四路藤、 一時截斷了。裏薦得、 言滿天 下無口、 行滿天下無怨惡。脫或未然、 十二時中、 莫 不疑好。 潔なること直 饒 い満月に同じきも 、更に須らく手を撒ちて暗中 に行くべし。 ︵ 20︶ 上 堂 。﹁昨日は泥牛吼 え 、今朝は木馬嘶 く。 巴 歌 と雪 曲 と 、彼此 、 和するも斉しかること難し 。非思量の処 、識情もて測り難し 、修 治 する無き処 、作麼か修治せん 。弓箭の折れ尽くすに到り得て 、 自然に天下太平ならん 。且らく道え 、太平の後は如何ん 。雨中に 只だ僧堂の漏れるを想う 、楊 岐 の屋壁の疎なるに何 似ぞ 。夢幻の 年光 、已に老いたりと雖も 、二時の粥飯 、力めて猶お麁なり 。 且 らく道え、 麁なる底は是れ什麼ぞ﹂と。乃ち膝を拍つこと一下す。 ︵ 21︶中秋上堂。手を以て円相を打して云く、 ﹁只だ者箇、 昼夜無く、 常に顕赫として 、盈 虧 すること没し 。従上の仏祖 、此の光明 を得て、 受用し尽くせず。是れ汝諸人、 還た曾て返照するや。 直饒い見得すること分明なるも 、猶お是れ光影辺の事なり 。 只 だ 光の未だ発せざる時の如きは 、如何んが話 会 せん 。地を 拄え天を拄えて黒きこと漆の如し 、大悲千眼にても看ること 能わず﹂ と。 ︵ 22︶上堂。此の事は有心を以て求むべからず、鷂 子 は新 羅 を過ぐ。無 心を以て得るべからず 、死水に争でか龍を蔵せん 。語言を以て 造るべからず 、 食を説いて豈に飢えを充たさんや 。寂黙を以て 通ずべからず 、口を開くも還て同じく失す 。四路の葛藤 、一時 に截断し了わる 。者裏にて薦得せば 、言は天下に満ちて口過無 く、 行は天下に満ちて怨悪無し。脱 或し未だ然らずば、 十二時中、 道うこと莫かれ、疑わざるが好しと。﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一四一四
︵ 23︶上堂。擧、問投子、月未圓時如何。子云、呑却三箇四 箇 。圓後如何 。子云 、吐出七箇八箇 。師云 、或問極樂 、 月未圓時如何、 只對、 冨千口小。圓後如何。貧恨一 身多欲。未圓時如何。三十拄杖、欠一下不得。 ︵ 24︶上堂。擧、問雲門、如何是和尙家風。門云、門外讀書 人來報。師召大衆云、 白雲影裏靑山杪、 綠水溪頭翠竹斜。 ︵ 25︶忌上堂 。 銀山鐵壁 、 未足爲嶮 、 是非而不底 、 最爲嶮。 明月蘆花、 未足爲奇、 入荊棘林善求人底、 最爲奇。 故我大師、 逾越漠、 梁歷魏、 見爲易、 履嶮如。 面壁九年、 末後顯不傳之妙、 一花五葉、 至今飄無盡之香。 若言今日是忌辰、 辜負師。若言今日非忌辰、 背世諦。 且知恩報恩一句、 如何擧似。碧眼胡非師、 薦後方知 不是。 復擧、 馬大師忌辰、 南泉供養眞次、 告衆云、 且、 先師 來否。洞山出衆云、 待有 來。或有人問極樂、 師今 日來否。只向他、相隨來也。更若擬議、劈脊便棒。 ︵ 23︶上堂。挙す、僧、投 子 に問う、 ﹁月未だ円かならざる時は如何ん﹂ と。子云く、 ﹁三箇四箇を呑却す﹂ と。 ﹁円かなる後は如何ん﹂ と。 子云く、 ﹁七箇八箇を吐き出だす﹂ と。師云く、 ﹁或いは極楽に ﹃ 月 未だ円かならざる時は如何ん﹄と問わば、 只だ対えて道わん、 ﹃富 みては千口の小さきを嫌う﹄と 。円かなる後は如何ん 。貧して は一身の欲多きを恨む。 未だ円かならざる時は如何ん。 三十拄杖、 一下を欠かし得ず﹂と。 ︵ 24︶上堂。挙す、僧、雲門に問う、 ﹁如何なるか是れ和尚の家風﹂と。 門云く 、﹁門外の読書人 、来たりて報ぜん﹂と 。師 、大衆を召し て云く、 ﹁白雲影裏、青山杪 く、緑水渓頭、翠竹斜く﹂と。 ︵ 25︶ 達磨忌上堂 。銀 山 鉄 壁 は 、未だ嶮しと為すに足らず 、是非の海に 遊びて溺れざる底 、最も嶮しと為す 。明月蘆花は 、未だ奇なりと 為すに足らず 、荊 棘 林 に入りて善く人を求むる底 、最も奇なりと 為す。故に我が達磨大師、 海を逾え漠を越え、 梁に遊び魏を歴て、 難きを見て易きと為し 、嶮しきを履むこと平らかなるが如し 。面 壁九年 、末後に不伝の妙を顕わし 、一 花 五 葉 、今に至るまで無尽 の香りを飄わす 。若し今日は是れ忌辰なりと言わば 、祖師を辜 負 せん 。若し今日は忌辰に非ずと言わば 、世諦に違背せん 。 且つ恩 を知り恩に報ゆる一句 、如何んが挙似せん 。碧眼の胡僧は祖師に 非ず、薦みて後、方めて知る、是れ祖にあらざることを。 復た挙す、 馬 大 師 の忌辰に、 南 泉 、 真を供養する次で、 衆に告げ て云く、 ﹁且らく道え、 先師来たらんや﹂ と。 洞 山 、衆を出でて云く、 ﹁伴有らんを待ちて即ち来たらん﹂ と。 或し人有りて極楽に ﹁祖師、﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一五一五
26︶上堂。擧、明招和尙上堂。衆集乃云、裏風頭稍硬、且 歸煖處商量。 便歸方丈。 大衆隨至方丈。 招云、 纔到煖處、 便見 䲇 睡。以拄杖一時趁下。師云、 明招老、 謾人自謾。 山當時若在、 待他風頭稍硬且歸煖處商量、 以兩指夾 鼻云、吽々、敗缺不少。何故。殺人可恕、無禮難容。 27︶上堂。擧、 問趙州、 一物不將來時如何。州云、 放下。 師云、 一物不將來、 巨靈爭得擡、 有無倶放下、 裏早梅開。 28︶上堂。初面壁而坐、二三拜而立。坐立儼然、全體成 現 、無一絲毫可增 、無一絲毫可減 。德山見入門便棒 、 臨濟見入門便。雖則機如掣電、 未免費力太多。何况 意上生意、 句上生句。然雖如是、 暫以幻藥治幻病、 敎人 以紛飛之心究紛飛之念。直饒究之、 無處境智倶寂、 未 相許。何故。白雲盡處是靑山、行人更在靑山外。 今日来たらんや﹂と問わば 、只だ他に向って道わん 、﹁相い随い て来たらん﹂と。更に若し擬議すれば、劈 脊 に便ち棒せん。 ︵ 26︶上堂 。挙す 、明 招 和尚 、上堂す 。衆集まるに乃ち云く 、﹁這裏 、 風 頭 稍や硬し 、且らく煖処に帰りて商量せん﹂と 。便ち方丈に 帰る。大衆、 随いて方丈に至る。招云く、 ﹁纔かに煖処に到るに、 便ち 䲇 睡 するを見る﹂ と。 拄杖を以て一時に趁い下だる。 師云く、 ﹁明招老漢は 、人を謾じ自ら謾ず 。山僧 、当時 、若し在らば 、 他 が ﹃風頭稍や硬し 、且らく煖処に帰りて商量せん﹄と道うを待 ちて、 両指を以て鼻に夾 んで云わん、 ﹃吽 々 、 敗 缺 少なからず﹄と。 何が故ぞ。殺人は恕すべきも、無礼は容し難し﹂と。 ︵ 27︶上堂。挙す、 僧、 趙州に問う、 ﹁一物も将来せざる時は如何ん﹂と。 州云く 、﹁ 放下せよ﹂と 。師云く 、﹁ 一物も将来せず 、巨霊 、争 でか擡げるを得ん。有無倶に放下すれば、雪裏に早梅開く﹂と。 ︵ 28︶上堂。初祖は面壁して坐し、二祖は三拝して立つ。坐立は儼然と して 、全体成現し 、一絲毫も増すべき無く 、一絲毫も減ずべき 無し 。徳山は僧の門に入るを見ば便ち棒し 、臨済は僧の門に入 るを見ば便ち喝す 。 機に則すること掣電の如しと雖も 、未だ免 れず 、力を費やすこと太はだ多きことを 。 何に况んや 、意の上 に意を生じ 、句の上に句を生ず 。是の如しと然雖も 、暫らく幻 薬を以て幻病を治し 、人をして紛 飛 の心を以て紛飛の念を究め しむ 。直饒い之れを究むるも 、処として境智の倶に寂する無く 、 猶お未だ相い許さず 。何が故ぞ 。白雲尽くる処 、是れ青山なり 、 行人は更に青山の外に在り。﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一六一六
︵ 29︶上堂 。 擧 、 玄沙和尙示衆云 、 盡十方世界是一顆明珠 、 汝 等 諸人會麼 。時有出云 、 盡十方世界是一顆明珠 、 用會作 麼 。沙云 、 知 、 你向黑山鬼窟裏作活計 。師云 、山敢問 諸人、 會與不會、 在明珠内耶、 在明珠外耶。自辨看。 ︵ 30︶佛成上堂。擧、老宿有語云、天上星、眼中睛、星無悟 人之意、 睛無矚物之。以理而會、 自誠而明、 究竟如何 有成 。師云 、回天關 、轉地軸 、起氷河 䉆 、開鐵樹花 、 須釋老子。 老宿是則一手擡一手搦。 極樂亦未肯點頭 在。諸人知山落處麼。掬水月在手、弄花香滿衣。 ︵ 31︶上堂。擧、問香林、如何是衲衣下事。林云、臘月火燒 山。雪豆 頌云、 臈月燒山、 百種千般、 翹松鶴冷、 踏人寒、 不會 、大大 。師云 、雪竇老 、大似石女畫眉 。 山未免鐵蛇添足。臘月火燒山、 非非不。若生易 會、地起波瀾。 ︵ 32︶除夜小參。臘月今已告畢、寒煖豈尋常。若非寒氣 ︵ 29︶ 上 堂 。挙す 、玄 沙 和尚 、衆に示して云く 、﹁尽十方世界は是れ一 顆の明珠なり 、汝等諸人 、還た會すや﹂と 。時に僧有りて出で て云く、 ﹁尽十方世界は是れ一顆の明珠なり、 会するを用て作麼﹂ と。 沙 云 く、 ﹁ 情 に 知 る、 你 は 黒 山 鬼 窟 裏 に向って活計を作すこ とを﹂と 。師云く 、﹁山僧 、敢えて諸人に問わん 、会すると会せ ざるとは 、明珠の内に在りや 、明珠の外に在りや 。請う 、 自ら 辨じて看よ﹂と。 ︵ 30︶仏成道上堂。挙す、老宿に語有りて云く、 ﹁天上の星、眼中の睛 、 星に人を悟るの意無く 、睛に物を矚 むるの情無し 。理を以てし て会し 、誠に自 りて明らめば 、究竟して如何んが道の成ずるこ と有らん﹂と 。師云く 、﹁ 天 関 を回し 、地 軸 を転じ 、氷河の焔 を起こし 、鉄樹の花を開くことは 、須らく釈迦老子に還すべし 。 老宿 、是なれば則ち一手は擡 げ一手は搦 る 。 極楽も亦た未だ肯 えて点頭せず 。諸人 、還た山僧が落処を知るや 。水を掬 えば月 は手に在り、花を弄べば香りは衣に満つ﹂と。 ︵ 31︶上堂。挙す、僧、香 林 に問う、 ﹁如何なるか是れ衲 衣 下 の事﹂と。 林云く 、﹁臘月に火にて山を焼く﹂と 。雪 竇 、頌して云く 、﹁臈 月に山を焼く 、百種千般 、松に翹 つ鶴は冷やかに 、雪を踏む人 は寒し 。達磨は会せず 、大難 、 大難﹂と 。 師云く 、﹁雪竇老漢 、 大いに石女に眉を画くに似たり 。山僧 、未だ免れず 、鉄蛇に足 を添えることを 。臘 月 に火にて山を焼く 、 難きに非ず 、 難から ざるに非ず。若し難易の会を生ずれば、 平地に波瀾起こらん﹂ と。 ︵ 32︶除夜小参 。﹁ 臘 月 の今宵 、已に畢わりを告ぐ 。寒きを送り煖きを﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一七一七
一回極、 爭得煖風報上陽。參玄上士、 須向懸崖撒手、 自 肯承當。活路、 方名自在。若是只守寂然爲日用、 臘 月三十日、 依舊黑漫漫。拄杖子聞與麼吿報、 不覺背地裏 歡喜出來、 作箇家讌、 與諸人分歲去也。若是烹露地牛唱 村田樂、 是古人殘羮 飯、 必竟如何施設。卓杖一下云、 寥寥山舍幸無事、不若爐邊向火眠。 復擧、 問古德、 如何是三乘敎外別傳底一句。德云、 東 村王老夜燒錢。或問極樂、 如何是三乘敎外別傳一句。只 對他、今歲已彰三白瑞、來年决定是豐年。 33︶歲旦上堂 。 北帝謝事 、 東君當仁 、朝野樂堯舜無爲之化 、 黎庶爲羲皇向上之人 。旃檀林中 、人人體安樂 、獅子 窟裏 、箇箇無畏嚬呻 。擾擾紅塵 、深談玄妙 、 喧喧鬧市 、 轉大法輪 。拈拄杖云 、拄杖子樂忻々 、大家隨後賀新春 。 卓主丈一下。 34︶佛涅槃上堂。擧、 世臨入涅槃時、 示衆云、 若謂吾滅度、 非吾弟子 、若謂吾不滅度 、亦非吾弟子 。師咄云 、啼得 迎う 、豈に尋常ならんや 。若し寒気の一回極まるに非ずば 、争 でか煖風にて陽上るを報ずることを得ん 。参玄の上士 、須らく 懸崖に向って手を撒ち 、自ら肯いて承当すべし 。活路既に通ず れば 、方めて自在と名づけん 。若是し只だ寂然を守りて日用と 為さば 、臘月三十日 、旧きに依りて黒漫漫たらん 。拄杖子 、聞 きて与麼に告報し 、覚えず 、背地裏に歓喜して出で来たり 、箇 の家 讌 を作し 、諸人と歳を分かち去らん 。若是し露 地 牛 を烹 、 村の田楽を唱えば 、猶お是れ古人が残 羮 飯 ならん 。必竟して 如何んが施設せん﹂と 。杖を卓すること一下して云く 、﹁ 寥寥た る山舎、 幸 いに事無し。 若かず、 爐辺にて火に向って眠らんには﹂ と 。 復た挙す 、 僧 、 古徳に問う 、﹁如何なるか是れ三乗教の外に別に 伝うる底の一句﹂と。徳云く、 ﹁東村の王老、 夜に銭を焼く﹂と。 或いは極楽に ﹁如何なるか是れ三乗教の外に別に伝うる一句﹂ と問わば 、只だ他に対えて道わん 、﹁ 今歳已に彰わる三 白 瑞 、来 年は决定して是れ豊年ならん﹂と。 ︵ 33︶歳旦上堂 。﹁ 北 帝 は事を謝し 、東 君 は仁に当たる 、朝野は堯 舜 が 無為の化を楽しみ 、黎 庶 は羲 皇 向上の人と為る 。 旃 檀 林 中、 人 人が道体は安楽にして 、 獅 子 窟 裏 、箇箇は無畏にして嚬 呻 す。 擾 擾 たる紅塵にて 、深く玄妙を談じ 、喧喧たる鬧市にて 、大法 輪を転ず﹂と。拄杖を拈じて云く、 ﹁拄杖子は楽忻々たり、 大家、 後に随いて新春を賀す﹂と。主丈を卓すること一下す。 ︵ 34︶ 仏涅槃上堂。挙す、 世尊、 入 涅 槃 に 臨む時、 衆に示して云く、 ﹁若 し吾れ滅度すと謂わば 、吾が弟子に非ず 。若し吾れ滅度せずと﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一八一八
血流無用處、不如緘口殘春。 ︵ 35︶ 上 堂 。桃花爛 殘春 、世上貪芳知幾人 、惟有靈雲 覷 得 破 、超然獨露本來身 。只如□ 玄 □ 沙 □ 、 諦當甚諦當 、敢保老 兄未徹在。諸人知落處麼。若敎頻下淚、滄也須乾。 ︵ 36︶上堂。非方所、向之背之、倶隔關山、心超有無、動念 息念、 皆歸悶。若能向起心動念處徹根源、 則念念無 差、頭頭合徹、千里萬里一條鐵。 復擧、 百丈再參馬侍立次、 以目禪牀角頭拂子。丈 云、 此用、 離此用。云、 爾他後開兩片皮、 將何爲人。 丈取拂子竪起。云、 此用、 離此用。丈掛拂子於舊處。 便。百丈直得三日耳聾。師云、 體與用、 與離、 盡 拈却。且、 拈却後如何。誰知一耳聾後、 落賴門風 直至今。 ︵ 37︶浴佛上堂。擧、布衲在藥山浴佛次、山云、你只浴得 箇、 浴得那箇麼。布衲云、 把將那箇來。山休去。師云、 二大老已是不能折合。或問山、 浴得那箇麼。只對他 、打著南邊動北邊。 謂わば 、亦た吾が弟子に非ず﹂と 。師 、咄して云く 、 ﹁ 啼き得 て血流る無用の処、 如かず、 口を緘じて残春を過ごさんには﹂ と。 ︵ 35︶上堂。桃花は爛漫として残春に近し、世上、芳しきを貪り、幾人 を知る。惟だ霊 雲 の 覷 しよ 得 破 する有りて、 超然として独り本来身を 露す。只だ玄沙の ﹁諦当なることは甚だ諦当なるも、 敢 えて保す、 老兄の未だ徹せざることを﹂と道うが如きは 、諸人 、還た落処 を知るや。若 教 も頻りに涙下れば、滄海も也た須らく乾くべし。 ︵ 36︶上堂 。道は方所に非ず 、之れに向うも之れに背くも 、倶に関山を 隔つ。心は有無を超ゆ、 念を動かすも念を息むも、 皆 な迷 悶 に帰す。 若し能く心起こり念動く処に向って根源に透徹せば 、則ち念念に 差う無く、頭頭に徹に合し、千里万里、一条の鉄ならん。 復た挙す 、百丈 、再び馬祖に参じて侍立する次で 、 祖 、目を以て 禅牀角頭の払子を視る 。丈云く 、﹁此の用に即するや 、此の用に離 るるや﹂ と 。 祖云く 、﹁ 爾 、 他後、 両片皮を開くに、 何を将て人の為 めにするや﹂と。丈、払子を取りて竪起す。祖云く、 ﹁此の用に即 するや 、此の用に離るるや﹂ と 。 丈 、 払子を旧処に掛く 。 祖 、 便 ち喝す。 百丈、 直に三日耳聾することを得たり。 師云く、 ﹁体と用と、 即と離と、 情を尽くして拈却す。且らく道え、 拈却して後は如何ん。 誰か知らん、 一喝にて耳聾して後、 落 頼 の門風、 直に今に至る﹂ と。 ︵ 37︶ 浴 仏上堂 。挙す 、遵 布 衲 、薬山に在りて浴仏する次で 、 山云く 、 ﹁你、只だ這箇を浴得するのみ、還た那箇を浴得するや﹂と。布衲 云く、 ﹁那箇を把り将ち来たれ﹂と。山、 休し去る。師云く、 ﹁二 大老、 已に是れ能く折合せず。或し山僧に ﹁還た那箇を浴得すや﹂﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
一九一九
38︶結夏上堂。擧、古德、護生須是殺、殺盡始安居、會得 箇中意、 鐵舡水上。師云、 忽不死不活底人、 又向甚 處下手。良久云、殺活從來良將事、不關垂拱太人。 39︶上堂。十五日已前、開口 錯、十五日已後、□□ 失。 正當十五日、 聞鼓齊來、 擧歩踏。 匲 。 瘥 病不假驢駝藥。 40︶上堂。厨庫與堂、 面面自相對、 只許老胡知、 不許老胡會。 41︶解夏上堂。四月十五日、 結一縷藕絲牽大象、 七月十五日、 解三箇胡孫夜簸錢 。只如四月十五日以前七月十五日以 後、 夜暗晝明。且、 是解是結。渾家不管興亡事、 盡日 萊頂上眠。一下座。 42︶上堂。八月吉朔、不寒不熱、天氣和。不覺睡、睡眼 忽開。 記得、 傅大士有頌云、 空手把鋤頭、 今朝仲秋八月一。 歩行騎水牛、 須彌頂上浪奔。人從橋上、 滿頭白髮黑 如漆。橋流水不流、訶般若波羅蜜。 と問わば 、只だ他に対して道わん 、﹁南辺を打著して 、北辺を動 かす﹂と。 ︵ 38︶結夏上堂 。挙す 、古徳道く 、﹁護生は須是らく殺すべし 、殺し尽 くして始めて安居なり 。箇中の意を会得すれば 、鉄舡も水上に 浮ばん﹂と 。師云く 、﹁忽ち不死不活底の人に遇わば 、又た甚処 に向って手を下さん﹂と 。良久して云く 、﹁殺活は従来 、良く事 を将てす、太平の人を垂拱するに関わらず﹂と。 ︵ 39︶上堂。十五日已前は、口を開けば即ち錯まる、十五日已後は、□ □すれば即ち失す 。正当十五日は 、鼓を聞きて斉しく来たり 、 歩を挙して踏著す。 匲 。病いを 瘥 やすに驢 駝 の薬を仮らず。 ︵ 40︶上堂。厨 庫 と僧堂と、面面自ずから相い対す。只だ老 胡 の知るを 許すのみにして、老胡の会するを許さず。 ︵ 41︶解夏上堂 。﹁四月十五日 、一縷の藕 絲 を結びて大象を牽き 、七月 十五日 、三箇の胡 孫 を解いて夜に銭を簸 ぐ 。只だ四月十五日以 前 ・ 七月十五日以後の如きは、 夜は暗く昼は明るし。且らく道え、 是れ解くか是れ結ぶか 。渾家 、 興亡の事に管せず 、尽日 、 蓬 萊 頂上にて眠る﹂と。喝一喝して下座す。 ︵ 42︶上堂。 八月吉朔、 寒からず熱からず、 天気調和せり。 覚えず睡著し、 睡眼忽ち開く 。記得す 、傅 大 士 に頌有りて云く 、﹁空手にして鋤 頭を把る﹂とは、 今朝は仲秋八月一なり。 ﹁歩行して水牛に騎る﹂ とは 、須彌頂上に浪は奔溢す 。﹁人は橋上より過ぐ﹂とは 、 満頭 の白髪 、黒きこと漆の如し 。﹁橋流れて水は流れず﹂とは 、摩訶 般若波羅蜜なり。﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
二〇二〇
︵ 43︶中秋上堂。擧、 仰山與長沙月次、 仰山云、 人人盡有這箇、 只是用不得。 沙云、 恰是倚你用去。 仰山云、 和尙作麼生用。 沙踏倒仰山。山起來云、 直下似箇大虫。師拈拄杖云、 若 是箇擬、 則失趣乖、 用時無朕迹、 不用則有餘。且、 □□□□。卓拄杖一下云、放行與把定、常在放□□。 ︵ 44︶上堂。擧、松源和尙云、十五日已前取不得、十五日已後 不得。正當十五日、 築 磕 着、 七花八裂。師云、 十五 日已前 、仰之彌高 、鑽之彌堅 。十五日已後 、瞻之在前 、 忽焉在後。正當十五日、 且作麼生。到頭霜夜月、 任 落前溪。 ︵ 45︶禱上堂。耿恭拜井而出泉、 魯陽揮戈而駐日。三冬抽笋、 五月降霜 。天地寒温 、隨心轉變 、何災不滅 、 何福不生 。 般若無說之說、 蠲 業障如赫日霜、 妙理不空之空、 除 疾患似疾風拂雲霧。且共樂昇平一句、 如何擧唱。卓主丈 一下云、三邊喜得渾無事、四何愁不太。 ︵ 46︶上堂。擧、釋老子於般若會上謂善思菩薩言、賢德天子 ︵ 43︶中秋上堂。挙す、仰 山 と長 沙 と月を翫ぶ次で、仰山云く、 ﹁人人、 尽く這箇有り 。只だ是れ用い得ざるのみ﹂と 。沙云く 、﹁恰かも 是かり 、你に倚りて用い去らん﹂と 。仰山云く 、﹁和尚 、作麼生 か用いん﹂ と。 沙、 仰山を踏み倒す。 山、 起き来たりて云く、 ﹁直下、 箇の大虫に似たり﹂と 。師 、拄杖を拈じて云く 、﹁若是し者箇を ば擬すれば 、則ち趣きを失して還て乖く 。用いる時は朕 迹 無く 、 用いざれば則ち餘り有り 。且らく道え 、□□□□﹂と 。拄杖を 卓すること一下して云く、 ﹁放行と把定と、 常に放□□に在り﹂ と。 ︵ 44︶上堂 。挙す 、松 源 和尚云く 、﹁十五日已前は取り得ず 、十五日已 後は捨て得ず 。正当十五日は 、築 著 磕 こう 着 し 、七花八裂す﹂と 。 師云く 、﹁十五日已前は 、之れを仰げば弥いよ高く 、之れを鑽れ ば弥いよ堅し 。十五日已後は 、之れを瞻れば前に在り 、忽焉と して後に在り 。 正当十五日は 、且つ作麼生か道わん 。到頭 、 霜 夜の月、任運として前渓に落つ﹂と。 ︵ 45︶祈祷上堂 。﹁ 耿 恭 は井を拝して泉を出だし 、魯 陽 は戈 を揮いて日 を駐む 。三冬に笋抽んじ 、 五月に霜降りる 。天地の寒温は 、 心 に随いて転変す 、何の災いか滅せざる 、何の福か生ぜざる 。般 若無説の説 、業 障 を 蠲 のぞ くこと赫日の微霜を消すが如く 、妙理不 空の空 、疾患を除くこと疾風の雲霧を払うに似たり 。且つ共に 昇平を楽しむ一句 、如何んが挙唱せん﹂と 。主丈を卓すること 一下して云く 、﹁三辺 、渾て無事なるを喜び得て 、四海 、何ぞ太 平ならざるを愁えん﹂と。 ︵ 46︶上堂。挙す、 釈迦老子、 般若会上に於いて善思菩薩に謂いて言く、﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
二一二一
已於無量百千億劫修希有陀羅尼門 、名衆法不入陀羅 尼。此陀羅尼門、 諸文字、 言不能入、 心不能量、 無有 少法能入此。是故名衆法不入陀羅尼門。師云、 諸人當 知、 金剛圈可、 栗棘可呑。只這箇、 八風不能動、 四魔不能侵。今日恁麼讚、亦是石上栽花。 47︶上堂 。 荏生涯流水急 、無人向此築堤塘 。四時牢落三分 、浩々風 波日 忙 。 有不隨流 底 麼 。 試爲我箇 息來。 48︶忌上堂。神州緣會、誰知春入萬株。少林客稀、唯有 盈四面。三拜得髓、 神光眼見空花、 隻履謾人、 宋雲手 撈水月。自此是非紛紛不絶。一度思君一度愁、 一回飮水 一回噎。 49︶臘八値上堂。今朝臈八好時、不見明星惟見。露地 白牛在目前、 象王行處狐縱 絶。說說悟孰區分。且喜來 年蚕麥熟。裏有人未惺、釋老子若爲說。 50︶歲旦上堂 。上陽之初 、新歲之旦 、寒色未謝 、暖信 。 ﹁賢徳天子 、已に無量百千億劫に於いて希 有 陀 羅 尼 門 を修習し 、 衆 法 不入陀羅尼と名づく。此の陀羅尼門、 諸の文字を過ぎて、 言 にて入ること能わず 、心もて量ること能わず 、少法にて能く此 れに入る者有ること無し 。是の故に衆法不入陀羅尼門と名づく﹂ と 。師云く 、﹁諸人 、当に知るべし 、金 剛 圏 は猶お透るべく 、栗 棘 蓬 は猶お呑むべきことを 。只だ這箇 、 八 風 にても動かすこと 能わず 、四 魔 も侵すこと能わず 。今日 、恁麼に讃嘆するも 、亦 た是れ石上に花を栽ゆ﹂と。 ︵ 47︶上堂。荏 たる生涯、流水急なり、人の此れに向って堤塘を築く 無し。四時牢 落 にして三分過ぎ、 浩々たる風波、 日を逐いて忙し。 還た流れに随わざる底有りや 。試みに我が為めに箇の消息を通 じ来たれ。 ︵ 48︶達磨忌上堂。神 州 の縁会いて、誰か知らん、春の万株に入ること を 。少林の客稀れにして 、唯だ雪の四面に盈つること有るのみ 。 三拝して髄を得 、神光の眼は空 花 を見る 。隻 履 にて人を謾じ 、 宋 雲 の手は水月を撈 う 。此れより是非は紛紛として絶えず 。一 度び君を思い、一度び愁う。一回水を飲み、一回噎 ぶ。 ︵ 49︶臘 八 に雪に値う上堂。今朝の臈八は好時節なり、明星を見ずして 惟だ雪を見るのみ。露 地 の白 牛 は目前に在り、 象王の行く処、 狐 蹤絶す 。 迷を説き悟を説いて孰か区分せん 。且喜すらくは 、 来 年に蚕麦の熟することを 。這裏に人有りて猶お未だ惺らず 、釈 迦老子、若 為 んが説かん。 ︵ 50︶歳旦上堂 。﹁上陽の初め 、新歳の旦 、寒色未だ謝せざるに 、暖信﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
二二二二
驢事未去、 馬事到來。 塵塵放光明、 法法談大。 寰中安樂、 塞外亦安樂、 聚落無爲、 叢林亦無爲。 吹無孔笛、 彈無絃琴、 應此時、 同賀太。如何是無孔笛。擧拂子云、 若將耳 聽終會、 眼處聞聲方得知。如何是無絃琴。以拂子擊禪 床一下云、宮商角羽、五音箇裏圜。 ︵ 51︶上堂。擧、 應菴和尙、 頌世拈花葉破顔笑公案云、 金 色頭陀笑破顔、 傍觀只見一班々、 當時若解回頭早、 免見 兒孫墮黑山 。師云 、應菴老左邊歌 、山不免右邊拍 。 召大衆云、 今日人人笑破顔、 抑靑白草班々、 當陽誰謂 回頭晩、幸自安然在寶山。 ︵ 52︶佛涅槃上堂。擧、秦跋陀禪師問生法師涅槃義。生曰、涅 而不生、 槃而不滅、 不生不滅、 故曰涅槃。陀云、 箇是 如來涅槃、 那箇是法師涅槃。生曰、 未審、 禪師如何說涅 槃。陀拈起如意曰、 見麼。生曰、 見。陀云、 見箇什麼。 生曰 、見禪師手中如意 。陀將如意擲于地云 、見箇什麼 。 生曰、 見師手中如意墮地。陀斥云、 觀公見解、 未出常流、 何得名喧宇宙 。師云 、跋陀禪師是則是 、其奈費力不少 。 は 既 に 通 ず。 驢 事 未だ去らざるに 、 馬 事 到来す 。塵塵は光明を 放ち 、法法は大道を談ず 。寰中は安楽にして 、塞外も亦た安楽 なり 、聚落は無為にして 、 叢林も亦た無為なり 。 無 孔 笛 を吹き 、 無 絃 琴 を弾ず 。此の時節に応じて 、同じく太平を賀す 。如何な るか是れ無孔笛﹂と。払子を挙して云く、 ﹁若し耳を将て聴かば、 終に会し難し 、眼処に声を聞きて方めて知るを得たり﹂と 。﹁ 如 何なるか是れ無絃琴﹂と 。払子を以て禅床を撃つこと一下して 云く、 ﹁宮 ・商 ・角 ・徴 ・羽 、五音は箇裏に圜かなり﹂と。 ︵ 51︶上堂 。挙す 、応 菴 和尚 、﹁ 世尊 、花を拈じ 、迦葉 、破顔微笑す﹂ の公案を頌して云く 、﹁ 金 色 の頭 陀 、笑いて破顔し 、傍観して只 だ一班々なるを見るのみ 。当時 、若し解く頭を回らすこと早け れば 、児孫の黒山に堕せらるを免れん﹂と 。師云く 、﹁応菴老漢 は左辺にて歌い 、山僧は右辺にて拍するを免れず﹂と 。大衆を 召して云く、 ﹁今日、 人人、 笑いて破顔す、 抑た青梅は白く草班々 たり 。当 陽 に誰か謂う 、頭を回らすこと晩しと 。幸 自いに安然 として宝山に在り﹂と。 ︵ 52︶ 仏涅槃上堂 。挙す 、秦の跋 陀 禅師 、生 法 師 に涅槃の義を問う 。生 曰く 、﹁涅とは生ぜず 、槃とは滅せず 、不生不滅なる故に涅槃と 曰う﹂と 。陀云く 、﹁ 這箇は是れ如来の涅槃なり 、那箇か是れ法 師の涅槃なる﹂ と。生曰く、 ﹁未審、 禅師は如何に涅槃を説くや﹂ と。 陀、 如 意 を拈起して曰く、 ﹁還た見るや﹂と。生曰く、 ﹁見る﹂と。 陀云く 、﹁箇の什麼をか見る﹂と 。生曰く 、﹁ 禅師が手中の如意を 見る﹂ と。陀、 如意を将て地に擲ちて云く、 ﹁箇の什麼をか見る﹂ と。﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶
二三二三
或有人問、 如何是因中涅槃。卓拄杖一下云、 無風荷葉動、 决定有魚行。 53︶上堂。三月芳辰天氣好、賦詩酌酒幾沈吟、百花開處從君 看、花落春歸何處尋。 54︶上堂。擧、 䈱 山在方丈内臥、見仰山入來。 䈱 乃轉面向裏 臥。 仰云、 某甲是和尙弟子、 不用形迹。 䈱 作起勢。 仰便出。 䈱 召云、 寂子。仰乃回來。 䈱 云、 聽老說箇夢。仰低頭 作聽勢。 䈱 云、 與我原看。仰取一盆水一條手巾來。 䈱 洗 面了纔坐 。香嚴入來 、 䈱 云 、我來與寂子作一上神 、 不同小小。 嚴云、 某甲在下面、 了了得知。 䈱 云、 子試看。 嚴乃點一椀茶來 。 䈱 云 、二子神 、於 鶖 子 。師云 、 山亦爲諸人原夢、 耳不往聲處、 色非到眼中、 見聞如幻 翳、寤寐一如同。 生曰く、 ﹁師が手中の如意をば地に堕すを見る﹂ と。 陀、 斥けて云く、 ﹁公の見解を観るに 、未だ常流を出でず 、何ぞ宇宙に喧しと名づ くるを得ん﹂と。師云く、 ﹁跋陀禅師、 是なることは則ち是なるも、 其れ力を費すこと少なからざるを奈んせん 。或し人有りて ﹃如何 なるか是れ因中の涅槃﹄と問わば﹂と 。拄杖を卓すること一下し て云く、 ﹁風無くして荷葉動く、决 定 して魚の行くこと有り﹂ と 。 ︵ 53︶上堂。三月の芳辰、天気好し、詩を賦し酒を酌みて幾たびか沈吟 す 。百花開く処 、君に従いて看るに 、花落ち春帰りて何れの処 にか尋ねん。 ︵ 54︶上堂。挙す、 䈱 山 、方丈の内に在りて臥し、仰 山 の入り来たるを 見る 。 䈱 乃ち面を転じて裏に向って臥す 。仰云く 、﹁某甲は是れ 和尚の弟子なり 、 形迹を用いざれ﹂と 。 䈱 、起きる勢いを作す 。 仰便ち出づ。 䈱 召して云く、 ﹁寂子﹂ と。 仰乃ち回り来たる。 䈱 云く、 ﹁老僧が箇の夢を説くを聴け﹂と。仰、 低 頭 して聴く勢いを作す。 䈱 云く 、﹁我が与めに原ねて看よ﹂と 。仰 、一盆の水と一条の手 巾を取り来たる 。 䈱 、洗面し了わりて纔かに坐す 。 香 厳 入り来 たる 。 䈱 云く 、﹁我れ適来 、寂子と一上の神通を作す 、小小なる に同じからず﹂と 。厳云く 、﹁某甲 、下面に在りて 、了了として 知るを得たり﹂と 。 䈱 云く 、﹁ 子 、試みに道いて看よ﹂と 。厳乃 ち一椀の茶を点じ来たる 。 䈱 、嘆じて云く 、﹁二子の神通 、 鶖 じゆ 子 に過ぎたり﹂と 。師云く 、﹁山僧 、 亦た諸人の為めに夢を原ぬ 、 耳は声処に往かず 、色は眼中に到るに非ず 。見聞は幻 翳 の如し 、 寤 寐 は一如にして同じ﹂と。﹃月峰和尚語録﹄の翻刻と訓読 ︵佐藤︶