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(社)日本薬剤師会
(社)大分県薬剤師会
(財)日本体育協会
(アンチドーピング部会ドーピングデータベース作業班)
序
ドーピングは、公正さを基本とするスポーツ競技において重大なルール違反であるというだけでな く、選手の生命自体にも影響を及ぼす可能性のある危険な行為です。また、医薬品の適正使用とい う観点からもドーピングは見過ごせるものではありません。医薬品の供給を担う薬剤師として、ドーピ ング防止活動への貢献は非常に重要であると考えております。 その一方で、ドーピング目的で禁止物質を使用するつもりがなくても、市販のかぜ薬などを服用し ただけでドーピング陽性になることがありえます。例えば、興奮薬として禁止されるメチルエフェドリン を含むかぜ薬は数多く販売されており、その中には各種メディアで宣伝されている、大手企業有名 ブランドの製品も少なからず含まれております。スポーツドクター等の支援が十分受けられない選手 の中には、自分でこのような製品を購入し、ドーピングを意図せずに使用してしまうことがあるかもし れません。このような「うっかりドーピング」を最も有効に防止することができるのは、医薬品を直接販 売する薬局・薬店の薬剤師です。 静岡国体における静岡県薬剤師会の活動を受けて開始した、日本薬剤師会のドーピング防止活 動も今年で 5 年目に入りました。この間、埼玉国体・岡山国体・兵庫国体・秋田国体においては、地 元薬剤師会と薬剤師の先生方のご尽力の結果、関係団体からも高い評価を頂き、ドーピング防止 活動における薬剤師の存在感は確実に増しております。そして、この活動は本年の国体開催県であ る大分県にも引き継がれ、薬剤師の新職能として更なる浸透を図れるものと期待しております。 社会的に見ましても、この1年でドーピング防止活動を取り巻く環境は急激に変化してまいりまし た。昨年 2 月には「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」が発効し、これを受けて 同年 5 月には文部科学省により、「スポーツにおけるドーピングの防止に関するガイドライン」が策定 されました。ガイドラインではドーピング防止活動に関して、国内ドーピング防止機関及びスポーツ 団体が取り組むべき内容を規定するとともに、序文にて「文部科学省においては、厚生労働省等 と連携・協力し、我が国におけるドーピング防止活動が円滑に実施されるよう必要な支援を講じ ていく」ことが謳われています。まさにドーピング防止活動は、スポーツ界と医療界を結ぶ国家的な 取り組みとなってきていると言えます。また昨年は、米国大リーグの薬物疑惑や元陸上スター選手の マリオン・ジョーンズの違反、国内では野球選手のα-還元酵素阻害薬使用による違反や J リーグ選 手の静脈内注入の問題などが報道され、ドーピングに対する一般の方々の関心も大きく高まりまし た。 このような潮流の中で、医薬品の専門家として薬剤師が果たすべき役割はますます大きくなって きており、今後はうっかりドーピングの防止活動はもちろんのこと、青少年への医薬品の不適正使用 がもたらす危険性の啓発といった、学校薬剤師活動も併せて重要になってくるものと考えられます。 本会では現在、(財)日本アンチ・ドーピング機構と協力し、スポーツファーマシスト制度の設立につ いての検討を重ねており、ドーピング防止活動へのさらなる参画を進めてまいりたいと考えておりま す。 本書は、ドーピング防止活動の一貫として、日本体育協会アンチドーピング部会ドーピングデータ ベース作業班からご提供頂いた情報に基づいて、平成 16 年より作成しており、薬剤師のドーピング 防止活動の参考書として多くの方からご高評を頂いております。本年は、最新の 2008 年 WADA 禁 止表に準拠するとともに、国内における呼称との調和を図るため「薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック」と名称を改めました。本書が、薬局をはじめとする幅広い場所で大いに活用され、スポー ツをしている多くの方々の薬の適正使用に貢献することを願っております。 最後になりましたが、本書の作成作業に格別のご協力を賜りました、日本薬剤師会ドーピング防 止に関する特別委員会委員諸氏並びに快く情報をご提供下さった日本体育協会アンチドーピング 部会ドーピングデータベース作業班の方々に、心より御礼申し上げます。また、作業にあたりご協力 頂きました、日本体育協会、大分県薬剤師会、チャレンジ!おおいた国体・おおいた大会実行委員 会、大分県体育協会、秋田県薬剤師会の皆様にも厚く御礼申し上げます。
2008 年 5 月
日本薬剤師会
会 長 児玉 孝
発刊によせて
日本薬剤師会編「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」は今年で5回目の改訂となります。 この一年の間に多くのスポーツ選手、スポーツ指導者、医学サポートスタッフの方々とお話する機会があ り、このガイドブックが薬剤師であるか否かを問わず、いかに広範囲かつ日常的に利用されているか、と いう実態をお聞きし、編集に携わる著者の一人として、責任の重さをしみじみと感じました。 2007 年は日本にとってアンチ・ドーピング UNESCO 国際規約元年とも言うべき年で、日本のアンチ・ド ーピング運動が、国際的なルールに沿って、日本政府を主体とする大きな枠組みのなかで動き始めまし た。そしてこれまでドーピング検査とは無縁であった、オリンピック種目でないいくつかの国内競技連盟や、 ドーピング検査に関心の薄かったプロスポーツ競技種目においても、新たに検査を開始し、あるいは検 査準備の着手を表明した団体が複数ありました。このことは、本書の役割が益々重要になっていることを 意味します。 一方、関連物質の使用や医療行為の実施可否判断に際して、いわゆるローカル・ルールと呼ばれる 競技団体独自の規則や前例から来る解釈の違いを巡って混乱が生じ、またドーピング物質ではないとの 思いこみから、禁止成分を含む新薬を担当医がうっかり選手に処方してしまい、陽性と判定されてしまっ た事例が、我が国においても複数発生してしまいました。 本書は、アンチ・ドーピングの知識を正しくご理解いただき、薬剤師の方々のアドバイスによって、スポ ーツ医療現場で適切な薬物使用が周知されることを願って、日本薬剤師会アンチ・ドーピング特別委員 会、国体開催県薬剤師会と日本体育協会ドーピングデータベース作業班の協力によって編纂されてい ます。2008 年版の編集に際して著者の方々が心がけられたことの一つは、拡大解釈によって誤った解釈 が生じず、しかし難解な法律用語を多用しないようにしたことです。 世界アンチ・ドーピング機構(WADA)のドーピング禁止表の記載は、医療レベルと医療習慣の異なる 世界中の国々で利用できるように考慮されているために、最小限の記述に留められている部分がありま すが、2007 年の WADA 禁止表の解釈に関する問い合わせが日本から多数 WADA 本部に寄せられたた めに、2008 年の WADA 禁止表ではより明示的な表現に改められた部分もあります。製薬業界の急激な 会社再編の動きによって、製品情報に変更が加えられる場合があることにもご留意いただき、本書の内 容について疑問を持たれた場合には、かならず 2008 年版 WADA 禁止表をご確認ください。併せて、より 良い内容とするために本誌編集部まで、皆様のご意見をお寄せ頂ければ幸いです。財団法人日本体育協会 アンチ・ドーピング部会
ドーピングデータベース作業班
班長 植木 眞琴
目 次
1.本書について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.2008 年 WADA 禁止表掲載のドーピング禁止薬物の作用と禁止医薬品例 ・・・・・・・・・・・・4 3.2008 年 WADA 禁止表の主要な変更点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 4.特に気をつけたい一般用医薬品(OTC 医薬品)と健康食品・サプリメント ・・・・・・・・・・・・・・19 5.使用可能薬リスト/一般用医薬品(OTC 医薬品):OTC DRUGS
(1)解熱鎮痛薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (2)解熱鎮痛薬【坐剤】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (3)総合感冒薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 (4)総合感冒薬【外用】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 (5)鎮咳・去痰薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 (6)鎮咳・去痰薬【トローチ/ドロップ】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 (7)胃腸薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 (8)消化薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 (9)便秘治療薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 (10)整腸薬・下痢止め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 (11)アレルギー用薬(鼻炎内服薬を含む) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 (12)点鼻薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 (13)吐き気・乗り物酔い予防薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 (14)催眠・鎮静薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 (15)鉄欠乏性貧血用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 (16)痔疾用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (17)目薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (18)うがい薬・口腔内殺菌薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 (19)皮膚外用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 6.使用可能薬リスト/医療用医薬品:ETHICAL DRUGS (1)解熱・鎮痛・抗炎症薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 (2)中枢性筋弛緩薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 (3)酵素製剤(消炎・繊維素溶解) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 (4)鎮咳・去痰薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 (5)気管支拡張・喘息治療薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 (6)アレルギー治療薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 (7)抗めまい薬(乗り物酔い予防) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 (8)胃腸薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 (9)総合消化酵素 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 (10)便秘治療薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 (11)止痢・整腸薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 (12)肝疾患治療薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
(13)高脂血症用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 (14)血圧降下薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 (15)抗狭心薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 (16)催眠・鎮静・抗不安薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 (17)抗精神病薬(悪心・嘔吐) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 (18)抗うつ薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 (19)抗てんかん薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 (20)自律神経系作用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 (21)鉄欠乏性貧血薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 (22)痛風・高尿酸血症治療薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 (23)糖尿病用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 (24)抗菌薬・抗生物質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 (25)化学療法剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 (26)抗真菌薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 (27)抗ウイルス薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 (28)ワクチン(保険適用外) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 (29)経口避妊薬(保険適用外) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 (30)卵胞、黄体、混合ホルモン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 (31)痔疾用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 (32)耳鼻咽喉科用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 (33)眼科用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 (34)口腔用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 (35)皮膚外用薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 (36)消毒薬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 7.ドーピング防止 Q&A(日本体育協会作成) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55 8.治療目的使用に係る除外措置(TUE)(日本アンチ・ドーピング機構作成) ・・・・・・・・・・・58 9.参考:JADA 標準/略式 TUE 申請書様式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 10.よくある質問(医薬品の使用可否検索の手順について) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 11.WADA ドーピング・クイズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 12.薬剤師会ドーピング防止ホットライン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 ドーピング禁止薬に関する問合せ用紙(薬剤師会ホットライン用) 13.チャレンジ!おおいた国体ホットラインサービスについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79 ドーピング禁止薬に関する問合せ専用用紙(国体用) 購入医薬品等記載シート チャレンジ!おおいた国体ドーピング防止活動に関するアンケート 14.索引(使用可能薬リスト掲載医薬品の一覧表(50 音順)) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83
1.本書について
1. 作成の経緯 2003 年静岡県で開催された「NEW!!わかふじ国体」から国体におけるドーピング検査が初めて行なわ れました。ドーピングとは競技能力を高めるために薬物などを使用することで、健全なスポーツの発展を 妨げる「ずる」くて「危険」な行為です。その一方で、故意に使用した訳ではなく、不注意のうっかりミスで 検査にひっかかってしまう場合もあります。市販されている風邪薬や胃腸薬などには禁止物質を含むも のが少なくなく、「風邪気味だから」「胃が痛いから」などと安易に使用してドーピング違反と判断され、そ の結果、重い罰則が科せられてしまうことがあります。 このような『うっかりドーピング』を防ぐため、(社)静岡県薬剤師会は、2003 年に『薬局におけるアン チ・ドーピングガイドブック』を作成し、ドーピング防止活動を行ないました。翌年、(社)日本薬剤師会は 「アンチ・ドーピングに関する特別委員会」を設置し、2004 年「彩の国まごころ国体」、2005 年「晴れの国 おかやま国体」、2006 年「のじぎく兵庫国体」、2007 年「秋田わか杉国体」、そして 2008 年「チャレンジ! おおいた国体」をモデル事業と位置付け、「薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック」を毎年作成し、 今回、2008 年版が出来上がりました。 2. 2008 年禁止表について 国際レベルのあらゆるスポーツにおけるドーピング行為は 1999 年に設立された世界ドーピング防止 機構(WADA)が監視しています。そして、2004 年 1 月 1 日、WADA が世界ドーピング防止規程(WADC) を発効し、これまでのオリンピックムーブメントドーピング防止規程(OMADC)に代わり、すべての競技団 体がこの新しい国際基準の禁止表を利用することになりました。 そして、毎年禁止表は改訂され「チャレンジ!おおいた国体」では 2007 年 9 月にすでに公開され、2008 年 1 月 1 日に発効した禁止表が適用されます。 新しい禁止表は、2007 年禁止表と比べて分類は変わりなく、Ⅰ.常に禁止される物質と方法、Ⅱ.競技 会検査で禁止対象となる物質と方法、Ⅲ.特定競技において禁止される物質、Ⅳ.特定物質(禁止物質の 中で医薬品として広く市販され、ドーピング物質として乱用されにくく、不注意によりドーピング防止違反 を誘いやすい物質。これらの使用が競技能力の向上でないことを競技者が立証できれば制裁が軽くな ることがある。)に加えて、禁止表に掲載されていない物質のうち、競技における薬物乱用パターンを把 握した方が得策であると WADA が判断した監視プログラム(モニタリングプログラム)があります。2007 年 禁止表との違いは WADA のホームページ http://www.wada-ama.org/rtecontent/document/Explanatory_Note_2008_En.pdf に掲載(和訳は本書 16 ページ)されています。 ●2008 年禁止表改訂に伴う留意すべき主なポイント 1.静脈内注入について、2007 年の「正当な医療行為を除き、静脈内注入は禁止される。」から「静脈内 注入は禁止される。緊急の医療状況においてこの方法が必要であると判断される場合、遡及的治療 目的使用に係る除外措置が必要となる。」に変更になりました。 2.α-還元酵素阻害薬(フィナステリド)が特定物質に新たに加わりました。 ○治療目的使用に係る除外措置(TUE)の提出について 禁止物質であっても治療目的であれば、所定の手続きによって使用が認められることもあります(「治 療目的使用に係る除外措置(TUE)」)。手続きの詳細は、本書 58 ページの「治療目的使用に係る除外措 置」(あるいは、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)作成「ドーピング防止のための選手必携書」)をご参 照下さい。 3. 本書の使い方 「薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック」には、①2008 年 WADA 禁止表掲載のドーピング禁止薬 物の作用と禁止医薬品例、②特に気をつけたい一般用医薬品(OTC 医薬品)と健康食品・サプリメント、 ③使用可能薬リスト(一般用医薬品 19 薬効群)、④使用可能薬リスト(医療用医薬品 36 薬効群)、⑤ドーピング防止 Q&A、⑥治療目的使用に係る除外措置(TUE)、⑥国体ホットラインサービスについて、な どを掲載し薬局店頭において常時使用できるようにしました。 使用可能な医薬品を選択する場合には、まず、一般用医薬品、医療用医薬品の「はじめに」を読みま す。次に、薬効別の四角に囲まれた(注意)を読み、<使用可能薬例>の表の中から販売名を探します。 使用可能薬リストは薬効群別に記載し、その薬効群別に注意を掲載しました。 使用可能の可否に迷ったら、不明な点は本書掲載の『ホットラインサービス』にてご確認ください。決し て、安易な判断はしないでください。 なお、本書 4 ページから 21 ページまで(黄色い紙のページ)は、2008 年 WADA 禁止表と禁止医薬品 の例、特に気をつけたい一般用医薬品(禁止薬物を含む製品)などが掲載されております。この部分に は禁止医薬品が多く掲載されておりますので、間違えて使用することがないように特にご注意下さ い!! 4. 最後に ドーピングは医薬品集等に掲載されている薬効ではなく、いわゆる薬の裏の作用を期待し、また、毎 年禁止表は発効されるため、とてもわかりにくくなっています。しかし、「薬剤師のためのドーピング防止 ガイドブック」は「使用可能薬を探す」ことを目的に、販売名と薬効別の販売上の注意を記載してあり、薬 剤師としての利用価値は高くなっています。薬局・一般販売業における薬剤師の先生方は、このガイドブ ックを利用し、日頃の業務の一環として『うっかりドーピング』の防止に取り組むことができます。 今年からスポーツファーマシストの認定制度も本格的に始動します。その知識も学び、国体などにお けるドーピング防止活動を、これまでのような安全使用の確保とは視点を異にした活動として、スポーツ 界はもとより、一般社会に対しても薬剤師の新職能として貢献していただければと期待します。 ドーピング防止に関する特別委員会 大石順子 文献
1) The World Anti-Doping Agency : The World Anti-Doping Code Ver3.0 2) The World Anti-Doping Agency : The 2008 Prohibited List
3) 財団法人日本アンチ・ドーピング機構:日本ドーピング防止規程(version2.0) 4) アンチ・ドーピング活動と薬剤師, 日本薬剤師会雑誌, 56, 959-961(2004)
2.2008 年 WADA 禁止表掲載のドーピング禁止薬物の作用と禁止医薬品例
WADA 禁止表では、大会中に実施する「競技会検査」および不定期に実施する「競技会外検査」の対 象となる物質を 2 つに分類し、さらに「禁止物質」、「禁止方法」、「特定競技において禁止の対象となる物 質」ならびに「特定物質」について、具体的かつ詳細に規定している。競技会検査ではすべての禁止物 質、禁止方法、特定物質が対象である。この他にも禁止物質ではないが、乱用の動向を把握する目的 で調査対象とする薬物を「監視プログラム」として定めている。 Ⅰ. 常に禁止される物質と方法(競技会検査および競技会外検査) [禁止物質] S1. 蛋白同化薬 1. 蛋白同化男性化ステロイド薬(AAS) ・ 外因性のスタノゾロールなど合成蛋白同化ステロイド薬のほか、天然の男性ホルモンである 内因性のテストステロンやデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を例示。 ・ いわゆる筋肉増強剤として、筋力の強化と筋肉量の増加によって運動能力を向上させ、同時に 闘争心を高める目的で使用され、様々な投与方式で大量に使用されるため禁止。 ・ 肝臓癌など致命的な有害作用が発生。高インスリン血症、HDL コレステロールの低下、血圧上 昇など心血管系障害の発症も示唆。 ・ 女性では多毛、嗄声などの男性化や痊瘡が発現。 ・ 男性では女性化乳房、無精子症、インポテンツが発現。 ・ 試験所によって報告された 19-ノルアンドロステロンの違反が疑われる分析結果は信頼され る。 2. その他の蛋白同化剤 ・ 臨床では気管支拡張薬として喘息の治療に投与するクレンブテロールが、筋肉増強剤として 使用されることから禁止。 ・ ゼラノールは、動物に肥育ホルモンして利用され、体重増加など成長促進作用を有するので 禁止。 ・ 選択的アンドロゲン受容体調節薬(SARMs)は、筋委縮症の治療とアンドロゲン代替治療のた めに開発中。作用機序からドーピング物質と考えられる。 ○外因性 AAS の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) 1-アンドロステンジオール ― 1-アンドロステンジオン ― ボランジオール ― ボラステロン ― ボルデノン ― ボルジオン ― カルステロン ― クロステボール ― ダナゾール ボンゾール(田辺三菱)他:子宮内膜症治療薬 デヒドロクロロメチルテストステロン ― デソキシメチルテストステロン ― ドロスタノロン ― エチルエストレノール ― フルオキシメステロン ― フォルメボロン ― フラザボール ― ゲストリノン ―4-ヒドロキシテストステロン ― メスタノロン メサノロン(持田):蛋白同化ホルモン(販売中止) メステロロン ― メテノロン プリモボラン(バイエル)他:蛋白同化ホルモン メタンジエノン ― メタンドリオール ― メタステロン ― メチルジエノロン ― メチル‐1-テストステロン ― メチルノルテストステロン ― メチルトリエノロン ― メチルテストステロン エナルモン(あすか)他、OTC:経口男性ホルモン ミボレロン ― ナンドロロン デカ・デュラミン(富士製薬)他:蛋白同化ホルモン 19-ノルアンドロステンジオン ― ノルボレトン ― ノルクロステボール ― ノルエタンドロロン ― オキサボロン ― オキサンドロロン ― オキシメステロン ― オキシメトロン ― プロスタノゾール ― キンボロン ― スタノゾロール ― ステンボロン ― 1-テストステロン ― テトラヒドロゲストリノン ― トレンボロン ― ○内因性 AAS の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) アンドロステンジオール メサルモン F(日本臓器):両性混合ホルモン製剤 アンドロステンジオン メサルモン F(日本臓器):両性混合ホルモン製剤 ジヒドロテストステロン ― プラステロン(デヒドロエピアンドロステロ ン、DHEA) マイリス(オルガノン)他:子宮頸管熟化薬 テストステロン及びその代謝物と異性体 エナルモン(あすか)他:男性ホルモン製剤 ○その他の蛋白同化薬の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) クレンブテロール スピロペント(帝人)他:気管支拡張薬 選 択 的 ア ン ド ロ ゲ ン 受 容 体 調 節 薬 (SARMs) ― チボロン 日本未発売:骨粗鬆症薬 ゼラノール ― ジルパテロール ―
S2. ホルモンと関連物質 ・ エリスロポエチンは赤血球生成促進因子であるため酸素運搬能が上昇し、持久力が必要な運動 種目では運動能力の強化につながるため禁止。 ・ 成長ホルモンは脂肪組織におけるトリグリセリドの加水分解、肝臓でのグルコース排泄促進など を有するが、筋肉増強を期待する乱用はアレルギー症状や糖尿病を誘発し、大量投与で末端肥 大症などの有害作用が発現するため禁止。 ・ インスリン様成長因子は成長促進作用とインスリン様作用を有し、細胞の増殖と分化を促進する ペプチドであるため禁止。 ・ ゴナドトロピン類は、男子不妊症や男性の下垂体性性腺機能不全の治療に投与され、男性ホル モンの産生量を増加させるため男性においてのみ禁止。 ・ インスリンは筋肉におけるグルコースの利用とアミノ酸の貯蔵を促進し、蛋白の合成を刺激し分解 を抑制するため禁止。 ・ コルチコトロピン類(ACTH)は副腎皮質を刺激し、血中の糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドを 上昇させ弱い活性の男性ホルモンの分泌を促進するため禁止。 ○ホルモンと関連物質の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) エリスロポエチン エスポー(キリン)他 成長ホルモン ジェノトロピン(ファイザー)他 インスリン様成長因子 ソマゾン(アステラス)他 機械的成長因子 (メカノグロースファクター) ― ゴナドトロピン類(LH、hCG 等) ゴナドリール(持田)他 インスリン類 インスリン(各社) コルチコトロピン類 コートロシン(第一三共)他 S3. β2作用薬 ・ 気管支拡張剤であるが、交感神経興奮作用、蛋白同化作用による筋組織量の増加を期待して 使用されるためすべてのβ2作用薬が常時使用禁止。 ・ ホルモテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリンの吸入に限り TUE 略式申請 (a-TUE)をすれば使用できる。 ・ 1000 ng /mL 以上のサルブタモール(フリーとグルクロン酸抱合体の濃度)とクレンブテロールを除 くすべての吸入β2作用薬の使用が、競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証で きれば制裁措置が軽減されることがある。(特定物質) 注意:サルブタモールの濃度が 1000 ng /mL を超えた場合には、特定物質の制裁措置の軽減は適 応されないことになる。 S4. ホルモン拮抗薬と調節薬 ・ アロマターゼ阻害薬、選択的エストロゲン受容体調節薬等は、乳癌治療剤、骨粗鬆症治療薬、排 卵誘発剤として使われるが、抗エストロゲン作用を有するため禁止。 ・ ミオスタチン阻害薬は、筋肉の増強を抑制するミオスタチンを阻害することにより、筋力向上等が 期待できるため禁止。 ○抗エストロゲン作用を有する薬物の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) 1.アロマターゼ阻害薬 アナストロゾール アリミデックス(アストラゼネカ):乳癌治療剤 レトロゾール フェマーラ(ノバルティス―中外):乳癌治療剤
アミノグルテチミド ― エキセメスタン アロマシン(ファイザー):乳癌治療剤 フォルメスタン ― テストラクトン ― 2.選択的エストロゲン受容体調節薬 ラロキシフェン エビスタ(イーライリリー-中外):骨粗鬆症治療薬 タモキシフェン ノルバデックス(アストラゼネカ)他:乳癌治療剤 トレミフェン フェアストン(日本化薬)他:乳癌治療剤 3.その他の抗エストロゲン作用を有する薬物 クロミフェン クロミッド(塩野義)他:排卵誘発剤 シクロフェニル セキソビット(あすか):排卵誘発剤 フルベストラント ― 4.ミオスタチン機能を修飾する薬物 ミオスタチン阻害薬 ― S5. 利尿薬と他の隠蔽薬 ・ 隠蔽薬として、利尿薬、エピテストステロン、プロベネシド、α-還元酵素阻害薬、血漿増量物質及 び類似の生物学的効果を有するものが含まれる。 ・ 利尿薬が血圧降下薬や浮腫治療薬以外に乱用されるため禁止される理由に下記が考えられる。 ① 排出する尿量を増加させ尿中に排泄する禁止薬物や代謝物の尿中濃度を下げて禁止物質 の検出を逃れること。 ② 柔道、ボクシング、重量挙げなどの体重別種目で競技成績を有利に導くため、体水分の排泄 を促して体重を急速に減量すること。 ・ ドロスペリノン(経口避妊薬:日本未発売)は禁止物質ではない。 ・ プロベネシドの使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば制裁措置 が軽減されることがある(特定物質)。 ・ α-還元酵素阻害薬の使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば 制裁措置が軽減されることがある(特定物質)。 ○利尿薬の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) アセタゾラミド ダイアモックス(三和化学) アミロリド ― ブメタニド ルネトロン(第一三共) カンレノン ― クロルタリドン ハイグロトン(ノバルティス) エタクリン酸 ― フロセミド ラシックス(サノフィ・アベンティス)他 インダパミド ナトリックス(京都-日本セルヴィエ, 大日本住友)他 メトラゾン ― スピロノラクトン アルダクトン A(ファイザー)他 チアジド類 ダイクロトライド(万有)他 トリアムテレン トリテレン(京都-大日本住友)他
○隠蔽薬の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) エピテストステロン ― プロベネシド ベネシッド(科研):尿酸排泄促進薬 α-還元酵素阻害剤 フィナステリド プロペシア(万有):男性型脱毛症治療薬 デュタステリド ― ゲストノロン デポスタット(富士):前立腺肥大治療薬 ホスフェストロール ホンバン(杏林):前立腺癌治療薬 血漿増量剤 アルブミン 赤十字アルブミン(日赤)他:アルブミン製剤 デキストラン デキストロン注射液(日本製薬-武田)他:血漿代用 剤 ヒドロキシエチルデンプン サリンへス(杏林)他:血漿代用剤 [禁止方法] M1. 酸素運搬能の強化 下記の事項が禁止されている。 a. 血液ドーピング。血液ドーピングとは、自己血、同種血、異種血又はすべての赤血球製剤を投与 すること。 b. 酸素摂取や酸素運搬、酸素供給を人為的に促進すること(過フルオロ化合物、エファプロキシラ ール(RSR13)、修飾ヘモグロビン製剤(ヘモグロビンを基にした血液代替物質、ヘモグロビンのマ イクロカプセル製剤等)が含まれるが、これらに限定するものではない。) M2. 化学的・物理的操作 a. ドーピングコントロールで採取された検体の完全性及び有効性を変化させるために改ざん又は 改ざんしようとすることは禁止される。これらにはカテーテルの使用、尿のすり替え、尿の改変な どが含まれるが、これらに限定するものではない。 b. 静脈内注入は禁止される。緊急の医療状況においてこの方法が必要であると判断される場合、 遡及的治療目的使用に係る除外措置が必要となる。 M3. 遺伝子ドーピング 治療以外の目的で、競技能力を高める可能性のある細胞、遺伝子、遺伝因子又は遺伝子発現の 修飾は禁止される。
Ⅱ. 競技会検査で禁止対象となる物質・方法 S6. 興奮薬 ・ すべての興奮薬(関連したその光学異性体(D 体及び L 体)も含めて)は、局所使用されるイミダゾ ール誘導体と 2008 年監視プログラムに含まれる薬物を除いて、禁止される。 ・ 中枢神経系を刺激して敏捷性を高め、疲労感を低減して競争心を高める効果を有するが、疲労 の限界に対する正常な判断力を失わせ、ときには競技相手に危害を与えかねないため禁止。 ・ アンフェタミンは有害な中枢神経興奮作用をもち、オリンピック大会の自転車競技で本剤に起因す る死亡事故が発生しているため禁止。 ・ エフェドリンは中枢神経興奮作用をもち、大量投与で精神を高揚させ、血流を増加させるため禁 止。 ・ 多くの一般用医薬品の感冒・鼻炎用薬には、エフェドリンやメチルエフェドリンなどが配合されてい る。 ・ ダイエットサプリメントとして乱用されるエフェドラ、シブトラミンで死亡例が増加している。 以下の興奮薬の使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば制裁措 置が軽減されることがある(特定物質)。:カチン、クロプロパミド、クロテタミド、エフェドリン、エタミバン、 ファンプロファゾン、ヘプタミノール、イソメテプテン、レブメタンフェタミン、メクロフェノキセート、p-メチル アンフェタミン、メチルエフェドリン、ニケタミド、ノルフェネフリン、オクトパミン、オルテタミン、オキシロフリ ン、フェンプロメタミン、プロピルヘキセドリン、セレギリン、シブトラミン、ツアミノヘプタン及びその他の興 奮薬で S6 に明確に記載されておらず、S6 に述べた条件を満たすことを競技者が証明した薬物 ○興奮薬の禁止医薬品例 成分名 販売名(メーカー) アドラフィニル ― アドレナリン *局所麻酔薬との併用、あるいは局所投与(鼻、眼等)の場合は禁止されない。 ボスミン(第一三共)他:強心薬 アンフェプラモン ― アミフェナゾール ― アンフェタミン ― アンフェタミニル ― ベンズフェタミン ― ベンジルピペラジン ― ブロマンタン ― カチン *尿中濃度 5μg/mL 以上が禁止 ― クロベンゾレックス ― コカイン 塩酸コカイン(塩野義、武田):麻薬 クロプロパミド ― クロテタミド ― シクラゾドン ― ジメチルアンフェタミン ― エフェドリン *尿中濃度 10μg/mL 以上が禁止 ヱフェドリン(大日本住友)他:気管支拡張薬 エタミバン ― エチルアンフェタミン ― エチレフリン エホチール(日本ベーリンガー)他:昇圧薬 ファンプロファゾン ― フェンブトラゼート ― フェンカンファミン ― フェンカミン ― フェネチリン ― フェンフルラミン ― フェンプロポレックス ―
フルフェノレックス ― ヘプタミノール ― イソメテプテン ― レブメタンフェタミン ― メクロフェノキサート ルシドリール(共和)他:脳循環代謝改善薬 メフェノレックス ― メフェンテルミン ― メソカルブ ― メタンフェタミン(D 体) ヒロポン(大日本住友):覚醒剤 メチレンジオキシアンフェタミン ― メチレンジオキシメタンフェタミン ― p-メチルアンフェタミン ― メチルエフェドリン *尿中濃度 10μg/mL 以上が禁止 メチエフ(田辺三菱):気管支拡張薬 メチルフェニデート リタリン(ノバルティス)他:精神刺激薬 モダフィニル モディオダール(アルフレッサ-田辺三菱) ニケタミド ― ノルフェネフリン ― ノルフェンフルラミン ― オクトパミン ― オルテタミン ― オキシフロリン ― パラヒドロキシアンフェタミン ― ペモリン ベタナミン(三和化学):精神刺激薬 ペンテトラゾール ― フェンジメトラジン ― フェンメトラジン ― フェンプロメタミン ― フェンテルミン ― 4-フェニルピラセタム(カルフェドン) ― プロリンタン ― プロピルヘキセドリン ― セレギリン エフピー(エフピー)他:パーキンソン病治療薬 シブトラミン ― ストリキニーネ ホミカエキス ツアミノヘプタン ―
S7. 麻薬 ・ 麻薬は鎮痛、鎮静による精神・心理機能の向上とリラクゼーション、また、陶酔感、多幸感を期待 して使用されるため禁止。 ・ 日本では、麻薬及び向精神薬取締法にて規制されている物質がある。 ・ 副作用として、呼吸抑制、呼吸麻痺、依存性、血圧降下、ショック、めまい、眠気、嘔吐、虚脱、便 秘、筋萎縮、視調節障害が見られる。 ・ モルヒネ/コデイン比は監視プログラムにて監視される。 ○禁止表に掲載され明確に禁止されている物質 成分名 販売名(メーカー) 分類 ブプレノルフィン レペタン(大塚)、ザルバン(日新・山形) 非麻薬性鎮痛薬 デキストロモラミド ― ジアモルヒネ(ヘロイン) ― フェンタニル及び誘導体 デュロテップ(ヤンセン-協和発酵)、フェンタネスト (第一三共)、タラモナール(第一三共)、フェンタニ ル(第一三共)他 麻薬 ヒドロモルフォン ― メサドン ― モルヒネ 塩酸モルヒネ、オプソ(大日本住友)、アンペック (大日本住友)、プレペノン(テルモ-武田)、MS コン チン(塩野義)、カディアン(大日本住友)、ピーガ ード(田辺三菱)、モルペス(藤本)、MS ツワイスロ ン(帝国製薬-日本化薬)、モヒアト(第一三共、武 田、田辺三菱)、パシーフ(武田) 麻薬 オキシコドン オキシコンチン(塩野義)、パビナール(武田)、 パビナール・アトロピン(武田) 麻薬 オキシモルフォン ― ペンタゾシン ソセゴン(アステラス)、ペンタジン(第一三共)、トス パリール(小林化工)、ヘキサット(マイラン)他 非麻薬性鎮痛薬 ペチジン 塩酸ペチジン(武田)、オピスタン(田辺三菱)他 麻薬 S8. カンナビノイド ・ 世界各国において、さまざまな呼称で street drug として使われている。 ・ 思考、知覚、気分を異常に変化させ、多幸感、高揚感を期待して使用されるため禁止。 ・ 憂うつ感、被暗示性の増強、錯乱、幻覚を伴うことがある。選手が競技に対する不安や焦りから 逃避する目的で嗜癖に陥る危険性がある。 ・ 大麻草 Cannabis sativa の葉を乾燥したものがマリファナ、樹脂がハシシュである。 ・ 成分はテトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビロール等。 ・ 尿中代謝物の THC が 15 ng/mL を超えた場合、陽性として報告される。 ・ 麻子仁は麻の果仁を乾燥したもの。 ・ 本剤の使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば制裁措置が軽減 されることがある(特定物質)。 ・ 大麻取締法にて規制。
S9. 糖質コルチコイド ・ エネルギー代謝を活性化させ、競技力向上をねらって使用される。あるいは、陶酔感を期待して 使用されるため禁止。 ・ 炎症を抑える作用があるので、ケガをしていても競技を継続できてしまうことがあるので注意。 ・ 感染の増悪、続発性副腎機能不全、消化性潰瘍が発現。 ・ 使い方(申請の種類) ¾ 皮膚(イオントフォレシス/フォノフォレシスを含む)、耳、鼻、目、口腔内、歯肉および肛門周囲の 疾患に対する局所的使用は禁止されず、TUE は不要。 ¾ 関節内/関節周囲/腱周囲/硬膜外/皮内注入および吸入は TUE 略式申請(a-TUE)が必要。 ¾ 経口使用、経直腸使用、静脈内使用、筋肉内使用はすべて禁止。治療目的の使用では TUE の 標準申請が必要。 ・ 本剤の使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば制裁措置が軽減 されることがある(特定物質)。
Ⅲ. 特定競技において禁止される物質 P1. アルコール ・ アルコール(エタノール)は、下記の競技種目において競技会検査に限って禁止。 ・ 血中濃度が 35 mg/mL を超えると精神運動障害が発現、精緻で複雑な運動調節機能の障害や バランスの維持が不安定になり、反応時間や運動能力が低下する。 ・ 検出方法は、呼気分析あるいは血液分析。 ・ ドーピング違反が成立する閾値(血液の値)が競技団体ごとに()で表示。 ・ 本剤の使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば制裁措置が軽減 されることがある(特定物質)。 航空スポーツ(国際航空連盟:FAI) (0.20 g/L) アーチェリー(国際アーチェリー連盟:FITA、国際パラリンピック委員会:IPC) (0.10 g/L) 自動車(国際自動車連盟:FIA) (0.10 g/L) ブール(国際パラリンピック委員会ローンボウルス:IPC bowls) (0.10 g/L) 空手(世界空手道連盟:WKF) (0.10 g/L) 近代五種(国際近代五種連合:UIPM)射撃種別において (0.10 g/L) モーターサイクル(国際モーターサイクル連盟:FIM) (0.10 g/L) パワーボート(国際パワーボート連盟:UIM) (0.30 g/L) P2. β遮断薬 ・ 特段の定めがある場合を除き、下記の競技種目において競技会検査に限って禁止。 ・ 静穏作用のため選手の不安解消や「あがり」の防止、また、心拍数と血圧の低下作用で心身の 動揺を少なくするため禁止。 ・ 本剤の使用が競技力向上を目的としたものでないことを競技者が立証できれば制裁措置が軽減 されることがある(特定物質)。 航空スポーツ(国際航空連盟:FAI) アーチェリー(国際アーチェリー連盟:FITA、国際パラリンピック委員会:IPC) (競技会外においても禁止) 自動車(国際自動車連盟:FIA) ビリヤード(世界ビリヤード・スポーツ連合:WCBS) ボブスレー(国際ボブスレー連合:FIBT) ブール(国際スポーツ・ド・ブール連合:CMSB、 国際パラリンピック委員会ローンボウルス:IPC bowls) ブリッジ(世界ブリッジ連盟:FMB) カーリング(世界カーリング連盟:WCF) 体操(国際体操連盟:FIG) モーターサイクル(国際モーターサイクル連盟:FIM) 近代五種(国際近代五種連合:UIPM)射撃種別において ナインピン・ボーリング(国際ボウリング連盟:FIQ) パワーボート(国際パワーボート連盟:UIM) セーリング(国際セーリング連盟:ISAF) - マッチレースにおけるヘルムのみ 射撃(国際射撃連盟:ISSF,IPC)(競技会外においても禁止) スキー・スノーボード(国際スキー連盟:FIS) スキー ジャンプ競技/フリースタイル(エアリアル/ハーフパイプ) スノーボード ハーフパイプ/ビッグエアー レスリング(国際レスリング連盟:FILA)
○禁止表に掲載されているβ遮断薬 成分名 販売名(メーカー) アセブトロール セクトラール(オルガノン)他 アルプレノロール レグレチン(あすか)他 アテノロール テノーミン(大日本住友-アストラゼネカ)他 ベタキソロール ケルロング(田辺三菱)他 ビソプロロール メインテート(田辺三菱)他 ブノロール ― カルテオロール ミケラン(大塚)他 カルベジロール アーチスト(第一三共)他 セリプロロール セレクトール(日本新薬)他 エスモロール ブレビブロック(丸石) ラベタロール トランデート(GSK)他 レボブノロール ミロル点眼液(杏林-科研) メチプラノロール ― メトプロロール セロケン(アストラゼネカ)他 ナドロール ナディック(大日本住友)他 オクスプレノロール トラサコール(ノバルティス)他 ピンドロール カルビスケン(アルフレッサ)他 プロプラノロール インデラル(大日本住友-アストラゼネカ)他 ソタロール ソタコール(ブリストル):抗不整脈 チモロール チモプトール点眼液(万有-参天)他 Ⅳ. 特定物質 ・ 全ての吸入β2 作用薬(1000 ng /mL以上のサルブタモール(フリーとグルクロン酸抱合体の濃度)と クレンブテロール(S1.2:その他の蛋白同化薬に記載)を除く); ・ α-還元酵素阻害薬、プロベネシド; ・ カチン、クロプロパミド、クロテタミド、エフェドリン、エタミバン、ファンプロファゾン、ヘプタミノール、イ ソメテプテン、レブメタンフェタミン、メクロフェノキセート、p-メチルアンフェタミン、メチルエフェドリン、 ニケタミド、ノルフェネフリン、オクトパミン、オルテタミン、オキシロフリン、フェンプロメタミン、プロピル ヘキセドリン、セレギリン、シブトラミン、ツアミノヘプタン及びその他の興奮薬でS6に明確に記載され ておらず、S6 に述べた条件を満たすことを競技者が証明した薬物; ・ カンナビノイド; ・ 全ての糖質コルチコイド; ・ アルコール; ・ 全てのβ遮断薬。
監視プログラム
禁止表に掲載されていない物質のうち、競技における薬物乱用パターンを把握した方が得策であると WADA が判断したものがある場合、WADA は、他の署名当事者及び各国政府と協議して当該物質に関 する監視プログラムを策定するものとする。 1. 興奮薬 a)競技会検査のみ:ブプロピオン、カフェイン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピ プラドロール、プソイドエフェドリン、シネフリン b)競技会外検査:アドラフィニル、アドレナリン、アンフェプラモン、アミフェナゾール、アンフェ タミン、アンフェタミニル、ベンズフェタミン、ベンジルピペラジン、ブロマンタン、ク ロベンゾレックス、コカイン、シクラゾドン、ジメチルアンフェタミン、エチルアンフェ タミン、エチレフリン、フェンブトラゼート、フェンカンファミン、フェンカミン、フェネ チリン、フェンフルラミン、フェンプロポレックス、フルフェノレックス、メフェノレック ス、メフェンテルミン、メソカルブ、メタンフェタミン(D 体)、メチレンジオキシアンフ ェタミン、メチレンジオキシメタンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル、ノ ルフェンフルラミン、パラヒドロキシアンフェタミン、ペモリン、ペンテトラゾール、 フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、4-フェニルピラセタム(カル フェドン)、プロリンタン、ストリキニーネ 2. 麻薬 競技会検査のみ:モルヒネ/コデイン比 JPN ドーピング・データベース(日本体育協会監修、(株)じほう 発行)も併せてご参照ください。3.2008 年 WADA 禁止表の主要な変更点
常に禁止される物質と方法(競技会検査および競技会外検査) S1. 蛋白同化薬 1-蛋白同化男性化ステロイド薬 y この項の説明に、「非定型的な」結果の考え方が入りました。 1- 第 4 段落に 2 つの文章を加えて、もし、内因性蛋白同化ステロイドの最初の結果が、その物 質が外因性か内因性かの起源を特定するための追加調査の誘因となったら、そのサンプルは 「違反が疑われる」ではなく「非定型的」として報告される、と規定しました。この「非定型的」の 概念は、以下のように盛り込まれました。:「そのような追加調査が必要とされる場合、試験所 はその結果を、違反が疑われる、ではなく、非定型的として報告しなければならない」「この長 期的検討を始動させた結果は、非定型的、として報告されなければならない」 2- 第 1 段落の最初に「違反が疑われる分析結果として報告される」という文章を加え、この記述 は「非定型的」とは見なされない結果に該当し、違反が疑われる分析結果に相当するということ が示されました。 変更のポイント y 蛋白同化男性化ステロイドの検査において、結果を「違反が疑われる」とするのか、ある いは「非定型的」とするのか、結果の取り扱いが明確にされました。 y 重複を避けるために、説明文中のいくつかの文章に削除と変更がありました。この関連で: 1- 第 3 段落の「その結果が生理的あるいは病的状態に起因するか、または外因性の蛋白同化 男性化ステロイド薬に起因するかを判断する為に」という語句を削除し、この考えは第 3 段落の 最初に導入された変更点「検査値が正常範囲からかけ離れておらず、信頼できる分析方法…」 にまとめました。 2- 2007 年禁止表の第 4 段落から、「分析機関から、尿中の T/E 比が 4 を超えて報告され、信頼 できる分析方法(IRMS 等)によっても外因性の禁止物質であると判断できない場合、その比率 が生理的・病的状態に起因するかあるいは外因性の蛋白同化男性化ステロイド薬由来である か否かを判断するため、過去の結果を検討する、あるいは追加検査によりさらに調査すること ができる。分析機関から報告された違反が疑われる分析結果が、信頼のおける分析方法 (IRMS 等)を用いて外因性の蛋白同化男性化ステロイド薬であることを証明している場合には、 追加調査は必要とされず、検体には禁止物質が含まれているとみなされる。」を削除し、第 3 段 落の最初の文章「…あるいは試験所から、尿中の T/E 比が 4 を超えて報告され、信頼できる分 析方法(IRMS 等)によっても外因性の禁止物質であると判断できない場合、…」にまとめまし た。 3- 2007 年禁止表の第 5 段落の最後の文章「信頼性のある分析方法(IRMS 等)が追加的に行わ れない場合、関連アンチ・ドーピング機関は 3 ヵ月以内に少なくとも 3 回の予告無し検査を当該 競技者に対し実施しなければならない。一連の検査を受けた競技者の長期的ステロイドプロフ ァイルが生理的に正常ではない場合、違反が疑われる分析結果として報告されなければなら ない。」を削除しました。前の段落と内容が重複するためです。 変更のポイント y 主に説明文の整理と内容の明確化のための変更です。2-その他の蛋白同化薬 y 選択的アンドロゲン受容体調節薬(SARMs)がこの項に含まれました。新たな非ステロイド性分 子ファミリーが、アンドロゲン受容体に選択的・特異的であるとして同定されました。現在のとこ ろ、治療における SARMs は筋委縮症の治療とアンドロゲン代替治療のために開発されていま す。これらの作用機序と前期臨床試験に基づくと、これらの化合物はドーピング物質として用い られる可能性があります。 変更のポイント y 医薬品としては未だ開発中であるものの、臨床試験等の結果からドーピング物質として 用いられる危険性があるため、選択的アンドロゲン受容体調節薬(SARMs)が「その他 の蛋白同化薬」として禁止されました。 S2.ホルモンと関連物質 y 他項の記載様式に合わせ、解説文を例示の前後 2 つに分割しました。 y 「ゴナドトロピン類(LH, hCG 等)」と「等」を付けることで、LH と hCG はゴナドトロピン類の単なる 2 つの例であることを示しました。 y 長期作用型・短期作用型のインスリンの入手性を反映し、インスリン(Insulin)の後に「類(s)」を 付けました。 y 「類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するその他の物質も含む」という記載の重複 を避けるため、この項の最後の段落を削除しました。 変更のポイント y 主に文言と説明文の整理が中心の変更です。 y ゴナドトロピン類とインスリンの示す範囲について変更が加わりました。 S4.ホルモン拮抗薬と調節薬 y ホルモン受容体に拮抗する、かつ/もしくは、ホルモン受容体を調節する新規物質の範囲を広 げるため、タイトルが、2007 年の「抗エストロゲン作用を有する薬物」から「ホルモン拮抗薬と調 節薬」に変更されました。 y ミオスタチンの機能を修飾する物質が、この項に加えられました。これはミオスタチンの効果も しくはシグナル経路に拮抗する、かつ/もしくは、調節する物質(ミオスタチン阻害薬など)です。 変更のポイント y タイトルが「抗エストロゲン作用を有する薬物」→「ホルモン拮抗薬と調節薬」となり、広 範囲の物質を含めることができるようになりました。そして、今回追加されたミオスタチン 阻害薬は、筋肉の増強を抑制しているミオスタチンを阻害することにより、筋力増強が 期待されるため禁止物質に加えられました。 禁止方法 M2.化学的・物理的操作 y 関係者からの意見をもとに、静脈内注入は緊急の医学的状況においてのみ使われうるという ことをはっきりさせるため、表現を変えました。診療は、遡及的治療目的使用に係る除外措置 を得ることによって、正当なものと証明されなければなりません。
変更のポイント y 静脈内注入に関する文言は、2006 年禁止表の「正当な緊急の医療行為を除き禁止」か ら 2007 年に「正当な医療行為を除き禁止」に変更されました。2008 年では再び変更が 行われ、以下のような文言になりました。 静脈内注入は禁止される。緊急の医療状況においてこの方法が必要であると判断され る場合、遡及的治療目的使用に係る除外措置が必要となる。 特定競技で禁止される薬物 P1.アルコール y CMSB(ブール)の要望により、この項から削除されました。 P2.β遮断薬 y UIM の要望により、パワーボートが表に加わりました。これらの薬物は、この種のスポーツにお いてパフォーマンスを向上させるために使われうると考えられるためです。 変更のポイント y 「P1.アルコール」から、ブール(国際スポール・ド・ブール連合:CMSB)が除外されまし た。ただし、ブール(国際パラリンピック委員会ローンボウルス:IPC bowls)は残っていま す。 y 「P2.β遮断薬」にパワーボート(国際パワーボート連合:UIM)が加わりました。 特定物質 y クレンブテロールが「その他の蛋白同化薬」として、セクション 1.2 に例示されていることが明記 されました。 y α-還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリド 等)が 2008 年より特定物質になりました。 これらの薬物は男性化ステロイドの隠蔽剤として使われることがありえますが、最近の研究デ ータで、男性化ステロイドプロファイルの詳細な分析により、これらがステロイドと一緒に使われ たかどうかを特定する検査方法があることが実証されたためです。 変更のポイント y 以前から、クレンブテロールは蛋白同化作用があるため、特定物質には含まれませんでした が、今回の変更でそのことが明確に分かるようになりました。 y プロペシア等のα-還元酵素阻害薬が特定物質になりました。
詳しくは、WADA ホームページ(2008 Prohibit List Summary of Major Modification)をご参照下さい。 出典:http://www.wada-ama.org/rtecontent/document/Explanatory_Note_2008_En.pdf