• 検索結果がありません。

建築設計実務における環境配慮型技術のイノベーションプロセスに関する研究 −グリーンビルディング設計支援システムの開発を目指して− [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "建築設計実務における環境配慮型技術のイノベーションプロセスに関する研究 −グリーンビルディング設計支援システムの開発を目指して− [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)建築設計実務における環境配慮型技術のイノベーションプロセスに関する研究 −グリーンビルディング設計支援システムの開発を目指して−. 本田 あす香 1 研究の背景と目的. が顕著であり、 設計ガイドラインの作成や専門チームの編成と. (1) 技術情報支援の必要性:近年、地球環境問題の取組が本格. いった実施体制を取ることが困難な小規模事務所に対する情報. 的実行段階へと進みつつある中、 日本でも建築分野での環境配. 支援が重要な課題であるといえる。. 慮が不可欠となっている。 「グリーンビルディング」(以下 GB). (3) 環境配慮型技術に対する認識と取組(表2):GBの9つの原則. は建築のライフサイクル全体にわたり環境負荷低減を目指した. を提示し、この中から①最も重視されるべき項目、②最も積極. 包括的な設計理論である。日本の行政では GBガイドラインを. 的に取り組んでいる項目、 ③技術的な情報が不足していると感. 作成しているが、その内容は技術事例を提示したものが多く、. じる項目に対して 3つを選択する質問を行った。その結果、最. 建物用途や地域性に応じた指針や評価といった設計実務に有益. も重視されるべき項目と最も積極的に取り組んでいる項目は同. な技術情報が求められる。. 様の結果となり、 「エネルギー消費の削減」 、 「敷地周辺の自然. (2) 環境配慮型技術のイノベーションの必要性:環境配慮型技. 環境、生態系の保全」 、 「建築物の長寿命化」が多くなっている。. 術は日々研究されており、設計者によって新たに工夫・創造さ. 一方、技術的情報が不足していると感じる項目では、 「運用段. れることによって大きな効果を上げる技術もある。 このような. 階のマネージメントの確立」、 「建設副産物のリサイクル化」、. 技術のイノベーション( 革新) は、 技術そのものを向上させるだ. 「建築副産物の削減」の順に多く、建設段階以後の運用・廃棄. けでなく、 環境配慮型設計が抱える課題を解決する可能性も持. の段階を考慮した技術分野での情報不足が認識されており、 ラ. つ。GBを実現する技術をイノベーションにより創造するしく. イフサイクル全体を通した環境配慮型設計という点で大きな課. みづくりが必要である。. 題となっている。. (3) 研究の目的:設計者支援で求められる技術情報を明らかに. 表 1 調査の概要. するには、まず、設計の実態を把握する必要がある。そこで本. ①環境配慮型設計に対する意識と取組. ②建築設計実務の実態を把握. 研究では、 ①建築設計事務所の環境配慮型設計に対する意識と. 方法 アンケート調査(H13. 1実施). アンケート及びヒアリング調査(H13. 10 ∼H4. 1実施). 取組を把握し、②建築設計実務の実態を把握する。その上で技. 対象 九州圏の設計事務所* 1 結果 238票配布 110票回収(回収率46%). 16設計事務所* 2 -. 術情報を支援し、技術のイノベーションを推進する GB設計支. * 1 「九州の設計事務所一覧」( 建築ジャーナル2000. 3) の「主要設計事務所」とした * 2 調査①に回答した事務所から、環境配慮型設計に対して意識が高く、建築をオープンテクノロジと 認識しているものを抽出した. 援システム開発の指針を得ることを目的とする。. 0%.  本研究では、表 1に示す 2つのアンケート調査とヒアリング. 20%. 5億円以上. 4. 1億∼5億円. 調査を実施した。 2 環境配慮型設計の意識と実施体制. 「最も優先すべき重要な課題」とした事務所は 19%(21/ 110) 、. 3. 2. 0. 5千万円以下. 3. 0. 15. 80%. 100%. 2. 18 13. 2. 7. 2. 7. 3. 25 9. 6. 67. 所内でガイドラインを作成 物件ごとに担当者の裁量に任せる その他. 「重要な課題」とした事務所が 77%(85/ 110)であり、環境配. 60%. 11. 6. 6. 5千万∼1億円 全体. (1) 環境配慮型設計の重要性に対する認識:環境配慮型設計を. 40%. 22. 1 8. 設計担当とは別の専門チームを組織 外部の専門家(技術者)と協力. 図 1 環境配慮型設計の体制と設計事務所規模. 慮型設計への関心は高く、重要な課題として認識されている。 (2) 環境配慮型設計の実施と体制(図1):環境配慮型設計を「全. 表 2 環境配慮型技術に対する認識と取組 環境配慮型設計の原則. ての物件において実施」している事務所は 32%、 「特定の設計 に対して実施」している事務所が 55%で、全体の 87%の事務所 で取組を行っている。 環境配慮型設計を「全ての物件」もしくは 「特定の設計」において実施している事務所の実施体制をみる と、全体では「物件ごとに担当者の裁量に任せる」が 56%( 67/ 121) と最も高く、 「所内でガイドラインを作成」、 「専門チームを 組織」は、それぞれ 12%( 15/ 121) 、7%( 9/ 121) に止まっている。 特に事務所の規模によって個別的な対応と組織的な対応の差異. 最も重視され 最も積極的に取り 技術的な情報が不 るべき項目 組んでいる項目 足している項目. エネルギー消費の削減. 78. 72. 26. 水消費の削減、水循環システ ムの確立 建設副産物の削減. 22. 22. 19. 16 15. 11 14. 44 49. 43. 23. 39 50. 16 15. 34. 21. 8. 68. 建設副産物のリサイクル化 敷地周辺の自然環境、生態系 57 の保全 エコマテリアルの採用 23 建築物の長寿命化 46 室内環境(インドアエアクロリティ)の 24 安全性 運用段階のマネージメントシ 17 ステムの確立 ※数値は質問に回答した計96件に占める割合(%)を示す。. 34- 1.

(2) 3 建築設計実務における環境配慮型技術の取組. も多く、その理由は、 「コスト」(13, 81%, 全体では 24, 58%) が最. (1) 採用された環境配慮型技術(表 3):分析対象とした 14の事. も多い。 「エネルギー消費の削減」は採用された技術でも最も. 務所では、合計で 123の環境配慮型技術が採用されていた。こ. 多くなっており、 他の原則と比較しても最も積極的に検討され. れらを GBの原則で分析すると、 「エネルギー消費の削減」に関. ている技術といえる。. わる技術が最も多く( 47, 32%) 、次いで「エコマテリアルの採. 4 採用された環境配慮型技術の検討プロセス. 用」( 20, 16%)「敷地周辺の自然環境、生態系の保全」 ( 12, 9%) 、. 4-1 分析方法(表 5):本研究では、イノベーションを、 「設計. 「建築の長寿命化」 ( 12, 9%) となっている。表 2に示した①最も. 者 あ る い は 集 団 の ア イ デ ア 創 出 に 始 ま り 、技 術 と し て 構. 重視されるべき項目、 ②最も積極的に取り組んでいる項目の結. 想 さ れ 、最 終 的 に そ の 技 術 が 建 築 設 計 実 務 に お い て 最 適. 果を反映しており、特に実務では「エコマテリアルの採用」が. 選 択 さ れ る 一 連 の プ ロ セ ス 」と定義し、イノベーションプ. 多く取り組まれている。 これは製品メーカー等から情報が直接. ロセスを、 「アイデアの創出」 ・ 「技術の構想」 ・ 「技術の最. 的に得られるため容易に採用されていると考えられる。一方、. 適 選 択 」の 3つの段階に区別する。 「アイデアの創出」は、既. 「運用段階のマネジメントシステムの確立」 、 「建設副産物の削. 存にない全く新しい考えを発想すること、 「技術の構想」は、発. 減」 、 「建設副産物のリサイクル化」の採用数は少なく、特に「建. 想した新しい考えや既成の技術を再構成して新たな技術を構想. 設副産物の削減」 「建設副産物のリサイクル化」の技術は、各. すること、 「技術の最適選択」は、新たな技術や既成の技術か. 事例で技術内容が異なっており、 現時点では技術が模索されて. ら、設計の与条件に適合した技術を選択し、採用するというプ. いる段階と考えられる。. ロセスである。. (2) 採用されなかった環境配慮型技術(表4):計画・設計段階に.  本研究では、調査から採用技術の検討プロセスを把握し、イ. 検討されたが結果的に採用されなかった環境配慮型技術は合計. ノベーションプロセスによって 3 つの技術に分類した( 表 5) 。. で 33であり、このうち「エネルギー消費の削減」(16, 48%) が最. 本項では、取組に積極的な 5つの事務所( 表 6) と計 8つの採用 技術を抽出し、採用にいたるまでの検討プロセ. 表 3 建築設計実務で採用された環境配慮型技術 環境配慮型設計の原則. 施設用途:専用住宅( 57). 施設用途:教育施設・事務所・集合住宅・ 体育館・公文書館・宿泊施設( 66). 断熱( 3) , 窓の断熱( 3) , 日射遮蔽( 3) , 自然通 風( 2) , 床暖房( 2) , 外断熱 屋上緑化, 自然採 エネルギー消費の削減(47) 光, 換気, 通風を考慮したデザイン, 深夜電 力. 外壁断熱( 3) , 断熱( 2) , 自然採光( 3) , 日射遮蔽 ( 3) , 自然通風( 2) , 全熱交換器( 2) , 太陽光発電 ( 3) , 壁面緑化, 太陽熱利用, クーチューブ, コ ジェネレーション, 氷蓄熱, 外気冷房, 深夜電 力, 照明の適正区分. 水消費の削減、水循環シス 井戸水の利用 テムの確立(9). 雨水利用( 3) , 中水利用( 2) , 水循環, 空調熱源 機器の空冷化, 節水器具. ステンレス管の使用, モジュール寸法を用 RCガラの削減, ラス型枠の使用 いた設計 建築副産物のリサイクル化 リサイクル容易な材料, 屋根瓦の再利用, 古 リサイクル材, RCガラの再利用 材の再利用 (5) 敷地内緑化( 3) , 既存樹木の保全( 2) , 透水性舗 敷地周辺の自然環境、 敷地内緑化( 2) , 既存樹木の保全 装( 2) , 雨水流出抑制, 自然水路の活用 生態系の保全(12) 建築副産物の削減(4). エコマテリアルの採用(20) 建築物の長寿命化(12). 自然素材( 9) , リサイクル材, F1以下合板. リサイクル材( 4) , 自然素材( 3) , 地元産材( 2). 燻煙処理材( 2) , 大断面部材, 白蟻対策, 改修 部材の劣化防止( 2) , 耐力強化, 改修容易な建 容易な構造, バリアフリー, フレキシブルな 具, 長寿命に対応し得るデザイン プラン. 室内環境(インドアエアクロリティ) 珪藻土( 3) , 人体に害の少ない建材( 3) , F1以 人体に害の少ない塗料・建材( 2) の安全性(11) 下合板( 2) , 自然塗料 運用段階のマネージメント メンテナンス( 2) システムの運用データ収集 システムの確立(3). 環境配慮型技術. OAフロア(ガラス廃材の再利用), 天井板 建築副産物のリサイクル化 の再利用, 建築副産物の削減, 既存蔵のリ (2) サイクル 敷地周辺の自然環境、 生態系の保全. 13. 事務所で、設計事例は町営宿泊施設の建替であ る。施主の要望である『省エネルギー対策』に 対し、事務所は、太陽光発電及び二重屋根を提 案した。本事例では、予算が少なく、設計期間 が短いことで、設計者は質を落とさずに設計す るという課題に取り組んでいる。[太陽光発電. 果、太陽光発電が選択された。当初、設計者は 2 11 1. たが、予算が厳しいことから、施主が採用さえ できれば最低限の性能であってもかまわないと. 3. 2 1. 要望し、性能が最小限に抑えられて採用される. 11. 結果となった。また、曲面の二重屋根にパネル. 11. を組み込む方法を検討した際に、曲面パネルは. -. コストが高いことと景観的には目立たないとい. F0合板, VOCの少ない塗料, リサイクル材, 再生タイル, エコマテリアルの採用(8) オレフィン系ビニルクロス, 脱PCVのタイルカーペット, 地元産杉, 無農 薬畳 建築物の長寿命化. [設計事例の概要]技術職9名の中規模意匠設計. 高い性能を設定し、コストの調整を検討してい. 水消費の削減、水循環シス 雨水利用( 2) , 雨水循環システム, 中水利用 テムの確立(4) 既存蔵のリサイクル. (1) A社/採用技術:太陽光発電. 種類の技術をコストの比較によって検討した結. 判断理由. ペアガラス( 2) , パッシブソーラ, 井水利用 による( 空調) ヒートポンプシステム, 庇・ バルコニー・縁側、屋上緑化, 外断熱, 遮 エネルギー消費の削減(16) 熱のペアガラス, 太陽熱利用, 太陽光発電, セルロースファイバー, 昼光センサー, 通 風窓, 二重サッシ, 氷蓄熱. 建築副産物の削減(1). 4-2 技術事例の検討プロセス. の検討内容] 『省エネルギー対策』に対して、数. 表 4 建築設計実務で採用されなかった環境配慮型技術 環境配慮型設計の原則. スを整理する。. う設計者の判断から、直にパネルを組み込む方. 3 11. 6. 式を選択したが、結果的に二重屋根の機能を損. -. 室内環境(インドアエアクロリティ) 珪藻土 の安全性(1). 1. 運用段階のマネージメント メンテナンスについての資料 システムの確立(1). 1. コスト. デザインコンセ プトに合わない. 目標性能を満足 しない. 施主の要望と 合わない. 性能が不明確. 検討する時間が 不足. 34- 2. なうことになった。これは技術の与条件が厳し いものであったために、検討が十分になされず に採用され、技術本来の効果が十分に活かされ.

(3) (3)C社/採用技術:燻煙処理された国産材. なかった事例といえる。. [設計事例の概要]技術職 3名の小規模意匠設計事務所で、. (2)B社/採用技術:部材の劣化防止策 [設計事例の概要]技術職10名の中規模意匠設計事務所で、. 設計事例は新築の専用住宅である。施主は『民家のイメー. 設計事例は築34年共同住宅の改修である。施主の要望はコ. ジで』という要望を出した。打合せで徐々に施主の環境へ. ストのみであった。設計者は既存建築の再生( 長寿命化) を. の関心の高さがわかったと設計者は述べている。設計者は. 主要テーマとして設計を行っている。[部材の劣化防止策. 従来から民家の再生や古材利用を積極的に取り組み、民家. の検討内容]築年数の経過でRCの強度が増していることか. 再生を進める団体を運営したり、林業組合等のメーカーと. ら、この強度を維持するために部材の劣化を防ぐ技術が検. 交流を持っている。 [燻煙処理された国産材の検討内容]設. 討された。設計者は、従来の部材に直接張られるタイルで. 計者は欠陥住宅の調査を行った経験があり、木材のひび割. は、ひびから雨水が進入し、部材を劣化させることを考慮. れに対し施主からのクレームが多いことを認識していた。. し、タイルに当たる保護材を部材から切り離して接合する. 設計者は人工乾燥、自然乾燥、燻煙処理された各産地の木. ことによって部材を雨水から護る綱板の膜を考案した。ま. 材を比較検討し、床暖房を使った場合の影響を考慮した結. た、既成の製品を使用するとコストが高くなることから、. 果、乾燥によるひび割れが少ない燻煙処理材を選択した。. 業者に依頼して製造することにより、安価に抑えた技術を. 燻煙処理は、伝統的な住宅で、木材が囲炉裏の煙によって. 開発することができた。日頃、設計者はコストを抑えるた. 燻されることで細胞が変化し、乾燥して長持ちする性質を. めに、サッシ等の開発を行っており、本事例でも既製品を. 現代に再現した技術である。設計者は日頃から木材に関す. できるだけ使用せず、設計者が自ら再構成した技術を開. る情報収集を行っており、性能による比較検討で伝統を活. 発・採用することによって、コストを抑えつつ性能を満足. かした技術を再評価し、採用した事例といえる。. させる取組を行っている。. (4)D社/採用技術:膜屋根・吸音膜. 表 5 環境配慮型技術のイノベーションプロセス 環境配慮型技術のイノベーションプロセス※1. 該当技術. 技術分類. 小分類. アイデアの創出. 技術の構想. 技術の最適選択. −. −. ○. 既存技術の選択. −. ○. ○. 既存技術の再構成. ○. ○. ○. 技術例. 近代技術の選択 ( A社) 太陽光発電 ( D社) 膜屋根 近代技術の改善 ( B社) 部材の劣化防止策 ( D社) 吸音膜 伝統技術の再生 ( C社) 燻煙処理 ( E社) 地元産材. 新技術の創造※2 − ※2 本調査では該当する技術例を把握できなかった. ※1 各技術分類が該当するプロセスに○. −. 表 6 建築設計実務で採用されなかった環境配慮型技術 ( 技術事例として検討プロセスを整理した技術をゴシック体で示し、覧に色を付けた) 事 務 所 及 び 設 計 事 例 の 概 要. 設計事務所名 総売上高(H11). A社( 宮崎市・技術職8名) 1億∼5億円. B社( 大分市・技術職10名) 5千万∼1億円. C社( 福岡市・技術職3名) 2千万∼5千万円. D社( 福岡市・技術職15名) 1億∼5億円. E社( 那覇市・技術職220名) 5億円以上. 実施度 設計体制. 特定の設計に対して実施 「内部協力」. 全ての物件において実施 「ガイドライン」. 全ての物件において実施 「外部協力」. 全ての物件において実施 「担当者裁量」. 全ての物件において実施 「地域独自」. 所内で専門チームを組織 外部の専門家と協力. 所内でガイドラインを作成 外部の専門家と協力 物件ご 物件ごとに担当者の裁量 とに担当者の裁量に任せる に任せる. 沖縄の地域特性への配慮と して社内ノウハウを持つ. 宮崎県東諸県郡綾町 宿泊施設 自治体 1. 058㎡ 地上3階 RC造. 福岡県福岡市城南区 共同住宅 法人 1, 325. 55㎡ 地上5階 RC造( 一部鉄骨造). 沖縄県南風原町 公文書館 自治体 7, 757. 49㎡ 地下1階 地上4階 塔屋1階 RC造. 外壁屋根, 床の断熱, 二重屋根, 庇, 通風, 自然採光, 太陽光発電. ルーバー、壁面緑化、夜間電力 外断熱( 壁、屋根) 、床暖房. 事例所在地 用途 施主 延床面積 階数 構造 エネルギー消費の削減. 採 用 さ れ た 環 境 配 慮 型 技 術. 採 用 さ れ な か っ た 環 境 配 慮 型 技 術. 水消費の削減、水循環システムの確立. 水循環( 風呂). 福岡県福岡市東区 専用住宅 個人 167. 09㎡ 地上2階 無筋コンクリート造( 一部S造). −. 洗浄水、散水の中水利用. −. 地中部ラス型枠の使用. −. RCガラの削減. 建築副産物のリサイクル化. −. RCガラの再利用. 旧屋根瓦を瓦敷きとして使用. 緑の保全、敷地内緑化. 国産材の多量使用. エコマテリアルの採用 建築物の長寿命化. 既存樹木の保全, 自然水路の活 用 地元産材 長寿命に対応し得るデザイン. − 部材の劣化防止策. 室内環境(インドアエアクオリティ)の安全性. −. −. 運用段階のマネジメントシステムの確立. −. −. エネルギー消費の削減. 通風, ミラ, 二重サッシーガラス, ペアガ ラス, パッシブ, 外断熱, 氷蓄熱ソー ラー, 太陽熱利用. 水消費の削減、水循環システムの確立. −. −. 建築副産物の削減. −. −. 建築副産物のリサイクル化. −. −. 敷地周辺の自然環境、生態系の保全. −. エコマテリアルの採用 建築物の長寿命化 室内環境(インドアエアクオリティ)の安全性 運用段階のマネジメントシステムの確立. 地場産材, 再生タイル. 膜屋根の採用による昼間照明の 二重屋根、ルーバー、ダブルスキ 削減、ソーラー温水システム ン、氷蓄熱、全熱交換器、照明区 分の細分化. −. 建築副産物の削減. 敷地周辺の自然環境、生態系の保全. 福岡県糟屋郡粕屋町 体育館 自治体 8, 161. 96㎡ 地下1階 地上1階 RC造( 一部鉄骨造). 雨水利用、節水器具 −. − 透水性舗装. 漆喰、再生タイル、庭の木を材料 廃材利用の人工石 自然素材 に使用 断面の広い材料を使用、薫煙処理材. 深い軒. 塗料に木タール( 自然塗料) を使 用. 吸音膜. − 敷地内緑化、透水性舗装、雨水流 出抑制 地元産材( 琉球瓦、石灰岩) − −. −. ペアガラス. −. −. 井水利用による( 空調) ヒートポ 昼光センサー ンプシステム. −. 雨水循環システム. 既存蔵のリサイクル. 中水利用. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. −. メンテナンス資料. フレキシブルなプラン. 34- 3.

(4) [設計事例の概要]技術職15名の中規模組織設計事務所で、. 解決することにより、与条件に適合しつつ性能を総合的に. 設計事例は町立体育館である。施主の要望は省エネルギー. 高めて採用された事例といえる。. 対策であった。 [膜屋根の検討内容]膜屋根は照明の電気料. (2)既存技術の再構成. 金を抑えるために自然採光を取り入れる方向で、当初から.  本研究では、 「近代技術の改善」として、B社の部材の劣. 検討されていた技術である。設計者は、体育館が開けた敷. 化防止策と D社の吸音膜を、 「伝統技術の再生」として、C. 地に建つことから、景観的に屋根の高さを抑えたいという. 社の燻煙処理材と E 社の琉球瓦を事例として取り上げた。. 考えがあり、省エネとデザインの両方を満足させる技術と. 部材の劣化防止策は、従来の技術にこだわらない自由な発. して採用された。膜屋根は、当時採用事例が少なく、情報. 想で手法を再構成することにより創造された事例であり、. 収集が大変であったが、施主と共に施設見学をし、意見交. 吸音膜は、他の技術の材料を本来の機能に立ち返ることに. 換を行った。採用の際の問題の一つに、熱負荷の増大が. よって見出した、効果的な技術事例といえる。一方、燻煙. あったが、敷地の風向を活かしたダクトによる通風を採用. 処理材は、伝統的建築が生み出した利点を技術として現代. し、解決している。この事例は、当時まだ新しかった技術. に再現し、採用されるにいたった技術事例であり、琉球瓦. を、可能な限りの情報収集と施主やメーカーとの活発な意. は、意匠面で評価され、性能を他の技術で補うことにより. 見交換を行うことにより、問題点を解決して、より高い性. 採用することができた技術事例といえる。. 能をもつ技術として採用することができた事例といえる。. (3)新技術の創造. [吸音膜の検討内容]膜屋根メーカーと設計者がドーム内.  本研究で対象とした技術事例では、該当する技術を把握. の残響問題を検討した際に、設計者が屋根に使用した膜材. することができなかった。. である布本来の吸音性に着目し、吸音膜としての検討が始. 6 まとめ. まった。吸音性そのものは確かであるとして、次にドーム. (1)環境配慮型技術の採用条件と課題. 内にどのように設置するかという意匠面が検討された。当. [施主]自治体は環境への関心が高く、技術採用も積極的で. 初 11秒の残響が運用段階では 4. 9∼ 6秒と効果を示してい. あるが、法人や個人の場合、予算内で設計できることが重. る。本事例では、既存の技術である屋根材の膜を本来の布. 要となっている。 [設計体制]積極的な取組では、設備等の. として捉え直すことにより、別の機能を持たせた技術を作. 専門家だけでなく、施主やメーカー、施工業者の協力関係. り出すことができた事例といえる。. が効果的な技術選択につながっている。 [設計者の姿勢]取. (5)E社/採用技術:地元産材(琉球瓦). 組は予算や施主の要望、体制によって制限されるが、設計. [設計事例の概要]技術職 220 名の大規模組織設計事務所. 者によっては独自のアプローチで解決しており、設計者の. ( 那覇市) で、設計事例は公文書館の新築である。施主は沖. 姿勢によって取組に違いが出ている。 [課題]技術の効果が. 縄の風土や伝統を象徴する設計を要望した。また、周辺環. 必ずしも明確な認識の上で採用されず、設計者個人の経験. 境に対する配慮と省エネルギー対策を要望した。当初から. や思いこみによって判断されることがある。. 施主の積極的な参加により、施主や設計担当者、施工業者. (2)環境配慮型技術のイノベーションの実態. らの有効な協力関係が築かれ、設計が進められた。 [地元産.  既存技術の選択では、与条件への適合選択が必ずしも性. 材の検討内容]本事例では書庫内の環境を安定させるとい. 能を高める方向で選択されていないことがわかった。既存. う第1の目的があり、屋根を含めた建物全体の断熱性が検. 技術の再構成では、近代技術と伝統技術に区別され、再構. 討されていた。当初、瓦は断熱瓦と沖縄独自の琉球瓦が検. 成された技術が効果的であることがわかった。一方で、新. 討されたが、屋根スラブに直接瓦を載せるという沖縄の一. 技術の創造は把握することができなかった。. 般的な方法では、屋根自体が既に断熱性を持つことから、. (3)GB設計支援システム開発の指針. 沖縄独自の琉球瓦が選択された。本事例では、断熱性では. [技術情報支援]. 劣る伝統的な瓦が、意匠面で評価され、性能においても他. ①総合的な設計のために技術情報の不足した分野を補う。. の技術で補うことによって採用された事例といえる。. ②技術の性能情報を支援するために、設計者の経験知や性. 5 環境配慮型技術のイノベーションの実態. 能の検証結果または運用段階の評価情報を共有化する。. (1)既存技術( 近代技術)の選択. ③また、そのための定性的・定量的指標づくりを行う。.  本研究では、A社の太陽光発電と D社の膜屋根を事例と. [ネットワークの構築]. して取り上げた。太陽光発電は、検討の中で厳しい予算と.  異分野の専門家による協力関係は設計者個人の意欲にも. いう与条件に適合させた結果、性能を最低限まで落として. 働きかけ、より設計や新たな技術開発を促進させる。事務. 採用された事例であった。一方、膜屋根は、当時はまだ新. 所規模に関係なく、実務での十分な検討や情報交流を行え. しい技術であったが、膜屋根によって生じる問題を地道に. るような、異分野間の技術者ネットワークが必要である。. 34- 4.

(5)

参照

関連したドキュメント

充電器内のAC系統部と高電圧部を共通設計,車両とのイ

工場設備の計測装置(燃料ガス発熱量計)と表示装置(新たに設置した燃料ガス 発熱量計)における燃料ガス発熱量を比較した結果を図 4-2-1-5 に示す。図

第4 回モニ タリン グ技 術等の 船 舶建造工 程へ の適用 に関す る調査 研究 委員 会開催( レー ザ溶接 技術の 船舶建 造工 程への 適

法制執務支援システム(データベース)のコンテンツの充実 平成 13

エネルギー大消費地である東京の責務として、世界をリードする低炭素都市を実 現するため、都内のエネルギー消費量を 2030 年までに 2000 年比 38%削減、温室 効果ガス排出量を

• 熱負荷密度の高い地域において、 開発の早い段階 から、再エネや未利用エネルギーの利活用、高効率設 備の導入を促す。.

参考のために代表として水,コンクリート,土壌の一般

小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2