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当院におけるVTE診療と臨床検査技師の関わり

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は じ め に

 肺血栓塞栓症( pulmonary thromboembolism:PTE)と 深部静脈血栓症( deep vein thrombosis:DVT)は一連 の病態であり,静脈血栓塞栓症( venousthromboembolism: VTE)と総称される.肺動脈が血栓塞栓子により閉塞す る疾患が PTEであり,その塞栓源の 90%は下肢あるい は骨盤内の静脈で形成された血栓である1).  VTEの成因として Virchowの 3要因があり,血流の停 滞,血管内皮の損傷,血液凝固能の亢進が関与して発症 する.具体的な危険因子として,先天性のものではプロ テイン C欠乏症・プロテイン S欠乏症・アンチトロンビ ン 欠乏症等が,後天性のものでは手術・肥満・安静臥 床・悪性腫瘍・外傷・骨折・中心静脈カテーテル留置等, 多岐にわたる1),2)(図 1).  臨床検査技術科では,血栓の検索を目的として多くの 診療科から下肢静脈エコー検査の依頼を受け,実際に下 肢の DVTを発見することは少なくない.特に血栓量が 多い場合に重篤な PTEを続発させることなく,いかに安 全に対応し治療の場へ繋げるかは臨床検査技師として重 要な役割の一つである.  当院では医療安全対策の一環として,多職種からなる VTE対策チームが立ち上げられているが,今回チームに 参加して,臨床検査技師の立場として得られたこと,検 査業務の改善に繋がった事柄について報告する. VTE対策チーム  当院 VTE対策チームは 2009年 2月に「医療安全全国 共同行動」を進めるためのタスクフォースとして発足し た.当初のチームメンバーは,医師・看護師・臨床検査 技師合わせて 5人だったが,今では 2倍の 10人に増えて 要   旨

 当院では,多職種により構成された静脈血栓塞栓症( venous thromboembolism:VTE)対策チームが活動しており,臨床検

査技師も参加をしている.活動内容としては,VTE発生時のチーム医師による各診療科との連携に加えて,多職種によるミー ティングやラウンド ,院内研修会による啓発を行っている.臨床検査技術科では,下肢静脈エコー検査や心エコー検査等を行っ ているが,チーム活動の中で下肢静脈血栓発見時の心エコー検査追加等の対応を取り決めた事で,迅速に VTEの重症度判定ま で行うことが可能となった.これにより,VTEに対して生理検査室内で必要な検査を一連として行って円滑に治療へ繋げられ るようになったと思われる. (京市病紀 2018;38(1):31-34) Key words:VTE対策チーム,下肢静脈エコー検査,DVT,PTE

当院における VTE診療と臨床検査技師の関わり

(地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院 臨床検査技術科) 園山 和代  宮川 大樹  井上 歩  山田 雅 北田 久美子  松浦 眞人 (地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院 薬剤科) 本多 あずさ (地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院 放射線技術科) 津川 和夫 (地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立京北病院) 正木 元子 (地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院 診療部) 谷掛 雅人  山本 栄司 図1 ᚋኳᛶᅉᏊ ඛኳᛶᅉᏊ ⾑ὶ೵ 㛗ᮇ⮩ᗋ ⫧‶ ዷፎ ᚰ⫵⑌ᝈ䠄䛖䛳⾑ᛶᚰ୙඲䚷៏ᛶ⫵ᛶᚰ䛺䛹䠅 ඲㌟㯞㓉 ୗ⫥㯞⑷䚷⬨᳝ᦆയ ୗ⫥䜼䝤䝇ໟᖏᅛᐃ ຍ㱋 ୗ⫥㟼⬦⒗ 㛗ᮇᗙ఩䠄᪑⾜䚷⅏ᐖ᫬䠅

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(2)

京都市立病院紀要 第 38巻 第 1号 2018 32 おり,うち半数が臨床検査技師である.  臨床検査技術科の下肢静脈エコー検査時や,放射線科 での造影 CT実施時に VTEの存在が検知されると,VTE 対策チームで情報を共有し,必要に応じチームの医師に より各診療科と連携を取り,治療への介入を行う(図 2).  その他のチーム活動としては『致死性 PTEの院内発症 ゼロ』を目標として,ミーティングやラウンド などを通 じて発症後の経過に関する情報の収集や検討を行ったり, VTE全症例を登録することで統計データを分析したり, 啓蒙活動として院内研修会等も過去に数回行った(図 3). 臨床検査技術科と VTE対策チーム  臨床検査技術科では,下腿部の浮腫や疼痛などの自覚 症状に加え,Dダ イマーの上昇や DVTの既往やその他 の危険因子に対するスクリーニングなど,様々な契機で 各診療科からの依頼を受けて,DVT検索目的の下肢静脈 エコー検査を行っている(図 4,図 5).  DVTを発見した場合,まず患者のバイタルを把握し, 検査ベット上で安静を保ってもらい,主治医と VTE対策 チーム医師へ連絡をとる.  血栓が少量で下腿に限局している場合は,医師の指示 のもと検査を終了し,患者は車いすや独歩等で検査室か ら退室となる場合が多い.  当院の臨床検査技術科では,VTEの危険因子がある場 合は短期間で血栓が伸長する可能性があるため,ごく少 量の DVTでも評価し医師への報告を行っている.少量 の DVTの検出数は以前より増加しており,そのことで 重篤な PTE発生の予防の一助になっているのではない かと考える.  血栓の範囲が膝窩よりも中枢側にかかっている場合に は,血管エコー担当技師が医師への連絡を行うと同時に 心エコー担当技師が引き続き心エコー検査を始める.  急性 PTE合併例では,心エコー検査で右心負荷(右心 機能不全)が認められると予後が不良であり,とくに血 行動態が安定しているときに発見することがより有用と されている1).  心エコー検査を追加することによって DVTの存在診 断だけでなく VTEとしての重症度評価が可能となる. 当院における VTEの統計  登録を開始した 2010年から 2016年までの 7年間に, 新規に検出された VTE症例は 830例であり,性別では女 性が男性に比べ 1.8倍と多く,発見月としては冬に多く, 図 2 ᳨ᰝ 䠲䠲䠰䠡䛾␲䛔 ⮬䞉௚ぬᡤぢ䚸䠠䝎䜲䝬―್ 䝸䝇䜽ᅉᏊ䠄䠇䠅 䚸⮫ᗋ⤒㐣 䜸䞊䝎 㐀ᙳ䠟䠰 ୗ⫥㟼⬦䠱䠯 㐃⤡ 䝏䞊䝮 㐃⤡ 㐀ᙳ䠟䠰 ᨺᑕ⥺デ᩿་ ୗ⫥㟼⬦䠱䠯 ⮫ᗋ᳨ᰝᢏᖌ 㐃⤡ 㐃⤡ 䠱䠟䠣 デ᩿☜ᐃ䞉⑓ែᢕᥱ ㏣ຍ᳨ᰝ 䜸䞊䝎 ἞⒪᪉㔪᳨ウ䚸ᝈ⪅䞉ᐙ᪘䜈䛾 䠥 䠟 ἞ ⒪ ᢠจᅛ⒪ἲ 䠥䠲䠮 䠟䠠䠰/ ⤒㐣ほᐹ Ᏻ㟼ᗘ ไ㝈 䝸䝝䝡䝸୰᩿ ↓ฎ⨨ 䠥䠲䠮䠖䠟䠠䠰/ 䠥䠲䠟䢈䡤䢕䡼䡬 䝸 䝡䝸୰᩿

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(3)

33 春と秋は少ない傾向を示す(図 6,図 7).  入院,外来の別では,入院患者が全体の 60~ 70%を 占めており(図 7),発見時の主診療科は外科系,内科系 ほぼ半数となっている.外科系の約 60%は整形外科で, 外科,産婦人科,脳外科,泌尿器科と続く.内科系では 循環器科が約 25%,次いで神経内科が約 20%,消化器内 科,腎臓内科,血液内科,呼吸器内科と続く(図 8).  VTEのタイプを,「DVTのみが検出された症例」,「DVT と PTEの合併が確認された症例」,「 PTEのみが検出され た症例」と分けた場合,「 PTEのみが検出された症例」 は毎年 4例以下であり,ごく少数である.  「 DVTと PTEの合併が確認された症例」の割合は, 2010年で 34%に対し,2016年で 16%と経年的に低下傾 向にある.  DVTについて発見時の血栓量を見てみると,少量で見 つかる症例の割合が増加傾向にある(図 9).一方,DVT 量が中等量~多量の場合,PTEの合併症例が多い傾向に ある.  血栓量の評価は,VTE対策チーム医師により大まかに 3段階に分けられている.少量は血栓量が少なく下腿に 限局する PTEを起こす危険性の低いものである.中等量 は下腿に限局しているが血栓量が多いまたは量は少ない が膝窩よりも中枢側に血栓の存在するもので,危険性は あるが重篤な PTEを起こす可能性は少ない印象のもの である.多量は,血栓量が多く膝窩よりも上に血栓が存 在する PTEを起こした場合に,重篤なものになる危険性 の高いものとなっている.  図 10は 2010年から 2013年までの,VTE対策チーム で収集したデータを示す.この観測に基づいて 2014年, 下腿から膝窩よりも近位まで血栓が伸びている場合は, 心エコーを続けて行うという対応の取り決めを行った. 以前は,発見後に右心負荷の評価を行うかどうかは,同 じ量の DVTでも主治医の方針により対応が異なってい た.取り決めを行って以降は,近位型の DVTに対して 一定の右心負荷の評価を行い診療の場へ提供することが できている. 図 6 160 ⑕౛ᩘ(ே) 100 120 140 40 60 80 0 20 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (ᖺ)

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図 10

(4)

京都市立病院紀要 第 38巻 第 1号 2018 34 お わ り に  臨床検査技師が VTE対策チームに参加をすることで, ミーテ ィング 等を通じて検査室だけでは把握できない VTE診療の全体的な情報を得ることができ,実施した検 査結果が VTE診療にどのように生かされているのかが よくわかる.また,血管走行の奇形や IVCフィルター留 置の有無など検査時に把握しているべき情報や注意点等 を知ることもでき,検査を行う上で役立っている.  血栓を発見した時,その量によっては下肢静脈のみの 評価で済ませることなく,DVTを VTEの一部として捉 えて迅速に心エコーを追加することで,「 DVTから血栓 が飛んで PTEが作られ右心負荷が起こる」という一連の 病態の中で患者が今どの段階にあるのかを評価し,その 後の治療への円滑な橋渡しができるようになった.  VTE対策チームが活動を開始してから現在まで,DVT 発見後に致死性の PTEを続発した症例を認めていない. これからも,検査やチームの活動を通じて,VTE診療に 貢献していきたいと考えている. 引 用 文 献 1)肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療, 予防に関するガイド ライン( 2017年改訂版)   [internet].http://www.j

-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_ito_h.pdf   [ accessed2018.05.15]

2)超音波による深部静脈血栓症・下肢静脈瘤の標準的 評価法

  [internet].

https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/vein. p-df[ accessed2018.05.23]

Abstract

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Department of Clinical Testing Technology,Kyoto City Hospital

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Department of Pharmacy,Kyoto City Hospital

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Department of Radiological Technology,Kyoto City Hospital

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Kyoto City Keihoku Hospital

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Clinical Department,Kyoto City Hospital

The venous thromboembolism( VTE)-team,which consists of members with various occupations including clinical technicians, has been active in our hospital.Doctors of the VTE-team collaborate with doctors in each department when treating the VTE patients.Also,the team holds multidisciplinary meetings and rounds,as well as educational hospital workshops.Clinical technicians in the Department of Clinical Testing Technology perform echocardiography and ultrasonography of the leg veins.The consensus to perform echocardiography simultaneously when ultrasonography of the leg veins showed VTE,enabled us to determine the severity of VTE immediately.We have been able to perform essential examinations for the diagnosis of VTE as a series in our department,which leads to the efficient treatment of VTE.

(J Kyoto City Hosp 2018; 38(1):31-34)

Key words: VTE treatment team,Lower extremity ultrasound,Deep vein thrombosis( DVT),Pulmonary thromboembolism( PTE)

参照

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