博士論文要旨
論文題名:近赤外線時間分解分光法を用いた ヒト褐色脂肪組織の新しい評価法
立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科 スポーツ健康科学専攻博士課程後期課程 にれんぎ しんすけ 二連木 晋輔
1.背景
ヒト褐色脂肪組織 (BAT)の増量は、肥満や生活習慣病予防に重要であることが示唆され ている。しかしBATの評価法であるFDG陽電子放射断層撮影法/コンピュータ断層撮影法 (FDG-PET/CT)は被曝を伴うことや寒冷負荷の実施が必要なことなど制限が多い。
本研究の目的は,近赤外線時間分解分光法 (NIRTRS)を用いた非侵襲的かつ簡便なヒト褐 色脂肪組織 (BAT)濃度の評価法を考案すること、さらに、考案したNIRTRS法を用いて、長 期茶カテキン摂取によるBAT濃度が増加するか否かについて検討を行うことである。
2. 方法
19-29歳の健常者を対象に、室温27°Cの部屋および2時間の19°C寒冷負荷中の鎖骨上
窩 (BAT 近傍部)の NIRTRS指標の変化を測定した。その際に、寒冷誘発性熱産生 (CIT)も 測定し、NIRTRSにより評価した組織総ヘモグロビン濃度 [total-Hb]との関連性を検討した。
次に、FDG-PE/CT を用いた BAT 密度 (SUVmean)と右鎖骨上窩の[total-Hb]との関連性を 検討した。受信者操作 (ROC)曲線を用いて[total-Hb]によるBAT検出の的中率を評価した。
また、夏季および、冬季における[total-Hb]の季節変動について検討を行った。さらに、12 週間のカテキン(540mg/d)摂取 (CAT)群とプラセボ摂取群に分け、二重盲検法にてBAT 濃 度増加効果について検討を行った。測定はNIRTRSの[total-Hb]よるBAT評価、磁気共鳴分 光法による筋細胞外脂肪 (EMCL)を介入前後に測定した。
3. 結果
2 時間の寒冷負荷の間、NIRTRS指標には有意な変化は認められなかった。Log SUVmean
と[total-Hb]との間に有意な関連性が見られた (r = 0.73)。[total-Hb]とCITとの間に関連 性が認められた (r = 0.65, p < 0.01)。[total-Hb]によるBAT検出の的中率は82.8%であっ
た。[total-Hb]が冬季と比較して夏季に低値を示した (p < 0.05)。12週間の茶カテキン摂取によ り、CAT 群は[total-Hb]が 18.8%増量し,EMCL が 17.4%減少した(p < 0.05)。[total-Hb]と EMCLの変化率には負の相関が見られた(r = -0.66, p < 0.05)。その他の項目は介入前後で変 化は見られなかった。
5.結論
NIRTRSが非侵襲的かつ簡便なヒトBATの評価法となりうることが示唆された。12週間 の長期茶カテキン摂取により健常若年女性のBAT濃度が増加しEMCLが減少した。