博 士 ( 農 学 ) 美 土 路 知 之
学 位 論 文 題 名
市場再編下の食品産業の展開構造に関する研究
ー地場原料立地型食品加工業の存立条件一
学位論文内容の要旨
本 研 究 で は 、 戦 後 の カ [IT市 場 の 展 開 と 食 料 消 費 の 性 格 と 債 撮 膚 讃 嬲 に つ い て 検 討 し 、ttに 立 地 し た 農 産 お 叮 ニ 業 の 存 立 条 件 に つ い て 考 察 し た 。 肥 ブ 叫 ヒ す る 食 品 工 業 や 外 食 産 業 を は じ め と し たr贓I産 業 は 、 円 高 と 「 グ ロ ー/ツ レ 経 済 亅 の 進 展 下 、 輸 入 に よ る 厠 陽 ・ 中 間 製 品 の 利 用 を 強 め て き て い る 。 こ れ ヵ ミ 地 喊 のi儀 藻 拭 瑚 り 疑 磯 し た 加 工 業 を 塗 炭 の 苦 境 に 追 い 込 ん で い る 。 市 場 原 理 を 優 先 さ 世 た 大 可 ヨ ア グ リ ・ フ ー ド ビ ジ ネ ス に よ る 食 料 幵i場 意 勵 ゝ 、a卿 狹 国 内 燃 に 立 脚 し た 需 給 禅D再 帯 陳 か を め ぐ っ て 、 そ の 矛 盾 と 対 抗 軸 が 先 鋭 に た っ て き て い る 。 、 ; 籾 冴 究 は 、 食 料 消 費 市 場 の 形 成 条 件 の 分 析 か ら 食 品 産 業 の 市 場 編 成 原 理 と 性 賂 を 卿 羽 し て 、 地 場 加 工 型 の 食 品 加 工 の 復 嶐 と 再 構 成 の 可 能 性 に つ い て 明 ら か に し た 。
第I章 に お い て は 、 国 民 生 活 と 労 働 力 再 珪 漣 釣 ミ 件 と を 関 連 さ せ て 食 生 活 や 食 蔕H肖 費 に つ い て の 考 察 を 加 え た 。 そ の 結 果 、 国 民 蛍 舌 は 高 度 経 済 成 長 ピf来 高 消 費 と 家 計 支 出 の 硬 直fkbi労 働 者 家 計 を 支 配 し 、 強 め ら れ た 消 費 の も と で の 食 料 消 費 が 定 着 し た 。 そ う し た な か で 加 工 食 品 や 中 食 ・ 外 食 が 消 費 食 料 の な か に 深 く 根 付 く よ う な っ た 。 ま た 、 婦 女 子 の 有 業 化 や ・ 都 市 ‐ 極 集 中 に と も な う 単 身 世 滞 の 増JII.通 鯛 の 拡 大 な ど に よ り 、 食 生 活 の 簡 便 化 カ ミ 進 み 、 い っ そ う の 加 工 食 品 、 外 食 市 場 闘 字 を 規 定 し て い る 。 し か し ′ く ブ ル 経 済 破 綻 後 の 長 期 不 況 期 に 到 る 間 に は 、 す で に 国 民 の 消 費 量 を は る か に 超 え た 過 剰 供 給 状 態 を 生 み だ し 丶 飽 食 や 過 食 と い わ れ る 事 態 に も 逢 着 し て い る 。 ま た 、 過 度 と も い え る 加 工 食 消 費 の 急 増 が 、 不 槌 康 ・ 不 健 全 な 食 事 は も と よ り 、 さ ま ざ ま な 食 品 リ ス ク を 鮒 匕 さ ぜ て い る 。
第H章 で は 、 そ う し た 食 糾 消 費 市 場 の 展 開 が 、 加 工 食 品 キ 外 食 産 業 の 奇 形 的 と も い え る 膨 張 を も た ら し て お り 、 こ れ ら の 市 場 を め ぐ る 関 係 資 本 の 参 ヌ と 競 争 に つ い て 検 討 し た 。 戦 後 の 加 工 食 品 ・ 外 食 市 場 | 量1960 年 代 以 降 の イ ン ス タ ン ト 食 品 の 登 場 を 皮 切 り に 、70年 代 以 降 の 冷 凍 食 品 犬 嘩 駿 和 食 品 ( 飲 料 ・ や 菓 子 蕎D、 食 肉 カ ロ 工 品 な ど の 市 場 拡 よと と も に 、 こ れ に 対 応 . ヽす る 関 連 晒 翁 驚 ヤ ル ロ 工 資本 が 大 き く 成 長 を 遂 げ .r̲oこ う し た な か で の 企 鄰q競 争 の 激 化 は 、 一 国 内 に 止 ま ら ず 、 外 資 企 業 の 参 入 に よ っ て も い っ そ う 市 場 規 模 の 拡 大 と 、 単 独 商 品IJ囀 鑼 彭 湘 勲 こ 展 開 し て き た 食 品 産 業 が 、 分 野 や 業 鍾 ・ 業 態 を こ え て 連 労p潮 激 し あ う 「 重 層 的 」 なf格 を 強 く 帯 び は じ め た 。 さ ら に 、 円 高 と グ ロ ー バ ′ レ 経 済 の 進 展 は 、 滴 垪 堀 翻 と 資 本 輸 出 を 淬 絡 化 さ せ る こ と に な る 。1980年 代 に は 、 ア ジ ア 地 曦 へ の 直 接 投 資 と 現 瑚 功 ロ エ に よ る 開 発 輸Aが 急 進 す る な ど 、 日 本 国 内 に と ど ま っ て い た 生 産 機 能 は 次 々 に 海 外 流 出 を し は じ め た 。 こ う し た 「 産 業 空 洞 化 」 の 進 行 は 丶 食 拳 ゆ 国 内 自 給 基 瑚 軸 こ 潰 滅 的 と も い え る 打 撃 を 受 け 、 地 蝴 講 鮎 酊 刊 樹 皮 錨 も 、 さ ら に は 地 蛎 欝 朗 竃 を 押 し 潰 し て い く こ と に な る 。 第m章 に お い て は 、 グ ロ ー ′ り1缶 醐 芋 下 の 競 争 や 経 済 不 況 に さ ら さ れ た/llef苴 の 噛 品Jcri業 に つ い て 、 全 般 的 な 位 置 づ け と 実 態 把 握 を お こ な っ た 。 北 海 道 は 食 料 品 製 造 業 の 出 荷 額 第1位 の 地 曦 で 、 そ の 特 徴 と し て 、
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@ 全 国 拘 に 出 荷 額 が 減 少f蜃 向 を 辿る な か、 その 落 ち込 み 方が 少 なkヽ。 @従 業 者数 で はむ し ろ増 加 して いる 。
@ )f寸 カロrf生 産面 では 全 国レ ′ ヤレ を 下回 り、 製 造出 荷 の喰 黼 はお し なべ て低 を 助口 劫 海舛 、 。缶 戯縫丗纐 中 に 占 め る 原 樹 糊使 用額 の 高比 率 と、 地 場産 原料 の 利fa昏h争6ミ 高kヽ。 また 地 曦産 業 との 関 連で も 、製 造業 中 に 占 め る 食 品 工 業 の 地 越 勁 ミ き わ め て高 く 、食 品工 業 中軸 地 曦と な って いる 。 こう し た特 徴 は永 ら く持 続し て き た が 、 低2k7Jロ ェ 製 品 が 多 く 過 当 競争 状 態に 陥り や ナく 、 そこ に 外国 製品 の 輸入 が 増加 を する と 、脆 弱な 経 営 纖 潯 呈 し て 企 業 鰄 轟 制 闘 退 を 繊 な く さ れ る こ と も 歴 史 的 に 散 見 さ れ た し 丶 現 在 も グ ロ ー ′ ヤ1経 済 の も と での 市 場再 編 にさ らさ れ てい る 。
第 IV章 で は 、 北 海 道 東 郎 の 網 走 地 曦 を 対 象 に し て 地 場 加 工 型 錨 も 工 業 の 事 誠 分 听 を お こ な っ た 。 冷 食 メ ー カ ー のA社 は 、 そ の 出 自 を ス イ ー ト コ ー ン 罐 詰 に 発 し つ っ も 、 罐 詰 市 場 再 編 の の ち に 冷凍 食品 メ ー カ ー に 転 じ て い る 。 同 社 の 特 色 は 、す べ て相 手先 ブ ラン 問 ぬ酋 を 約50社と の 間で お こな っ てい る 点で ある 。 工 場 の 衛 生 環 兜 ま じ め 、 品 質 管 理 の 徹 底 に よ り 、 発 注 企 業 の 数 や 出 荷 量 を 増 やし て きた 。 全国 拘 にみ て、 コ ロ ッ ケ 馨 廴 春 巻 、 グ ラ タ ン な ど の l造 カ ミ シ ェ ア が 高bヽ 。 刪こ は 、馬 鈴薯 ` 玉ね ぎ 、人 参 が使 用 され 〜同 社 の 立 ±岨 ‐ る近 躑T柿う ゝ らの 買 `咐 け 畠量 当 謝懴 のカ 嶮 りの 曹 に達 し てい る。
漬 物 メ ー カ ーB社 は 、 野 沢 菜 を 主 カ に し た 中 堅 的 な 企 業 で あ る 。 販 路 は6割 が 道 内 市 飄4割 が 東 京 の 餌 晩 業 者 を 通 じ た 全 国出 荷を 行 って い る。 同aカ 、ミ オリ ジ ネー タ ーと な った 全睡 搭 吸の 開 発商 品 も伺 点 かあ るが 、 レ シ ビ や 技 術 を 公 開 し て 類 以 品 に よ るト ラ ブ′ レの 発 生を 回 嚠す る 努カ をし て きた 。 それ で もな お 販路 を確 保 し て い る 点 で は 技 術 や 品 質 が 高 い レ ヤ レ に あ る こ と に よ る。 原 料は 全 本の8割 を地 元 と近 隣 町キ ォ から 契約 栽 培 で 購 入 し て お り 、 栽 曦 農 家 に 対 す る 品 質 管 理 に は 特 別 の 諷 心 が 払 わ 加 て お り、 こ うし た 原料 管 理が 製品 の 品 質 鯏も め ボイ ン トと なっ て いる 。
冷 凍 食 昂 メ ー カ ーc社 は 、 ア ス パ ラ や 野 菜 罐 詰 の 加 ニI揚 で あ っ た が 、 マ ッ シュ ポ テト を 中心 と した 工場 に 転 身 後 、 需 要 減 退 を 契 隆 に 冷 凍 食 品 に 主 カ を 移 し て き た 。 現 在 で は 調 理 済 み 冷凍 食 品を 中 心に し て、 付加 価 値 性 の高 い 商品 開 発に カを 注 ぐ. 。FiRF‑I晒! 物には、馬鈴 薯、玉ねぎ、 人参が中´いで `A社に次ぐ 数量となって い る 。
調 麟 け ー カ‑D楢 ま 丶 わ さ て 肋 単 躪 鎚 の 企 業 で 、 も と も と は 愛 知 県 | こ 所 在 しn、 た カ 廴 網 走 に 供 給 基 盤 を 移し て から 契(崩猪 に よる 「 丘わ さ び」 の カロ工処理をお こなって丶ヽ る。本;阯を 持株会社に敢 組したおり、
こ の 事 菊 幵 も 子 会 社 と し て 独jto地 元 産 の 「 丘 わ さ びJを1次 処 理 し て 本 社 工 場 に 出 荷 し て き た が 、 一 貫 生 産 化 を 図 り 、 機 動 性 と 商 品 開 発 の 機 能 強 化 、 工 程 管 理 の 合 理 化 を 推 進 し て い る。 ま た、 辛 味酵 素 の研 究開 発 と ウ ィ ル ス フ リ ー 苗 作 出 の バ イ オ 技 術 な ど の 開 発 も こ の 事 業 者 功 溌 展 す る 重 要 な 要 素 で あ っ た 。 牛 乳 プ ラ ン トE社 は 、 酪 農 家 が 自 家 プ ラ ン ト と し て スタ ー トさ せ た。 「超 」 低温 殺 菌で し かも 包 装容 器( 紙 パ ッ ク ) や 瓶 に こ だ わ り 、 品 質 保 持 と 牛 乳 の 安 定 出 荷 を 実 呪 し て き た 。 網 走 市域 の 立地 も 販売 出 荷上 のメ リ ッ ト を 有 し 、 適 正 規 模 の 消 費 人 口 を か | か え 工 場 の 製 造 ロッ ト とほ ぼ 均衡 して い る。 ま た,J‑嚮 効 ゝえ って 地 域 と の 交 流 を 深 め 、 こ の 牛 乳 の 好 評 を 後 ろ 盾 に な っ て い る 。 小 ロ ッ ト 出 荷 は 、在 庫 をか か えな ぃ 安定 した 商 品 回 転率 を 実現 す るな どのr,ヽ回 り 」を 利 かせ た経 営 とな っ てい る 。
以 ヒ の 事 例 検 証の なか か ら、 終 章に お いて は全 体 の総 括 と課 題 の展 望 を提 起し 、 グロ ー バル イ ヒJや市 場競 争 の う え に 成 立 す る い び っ な 食 料 需 給 を 、 地 域 ; の 佃 め ゝ ら 変 革1禰 補 戒 し て い く 意 義 と 役 割 を 提 起 し た 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 三 島 徳 三 副 査 教 授 黒 河 功 副 査 教 授 出 村 克 彦 副査 助教授 飯澤理一郎
学 位 論 ″ 文 題 名
市 場 再 編 下 の 食 品 産 業 の 展 開 構 造 に 関 す る 研 究
一 地 場 原 料 立 地 型 食 品 加 工 業の 存 立 条件 ―
本論文 は図 29 、表 56 、参考文 献 56 を含む 総頁数145 頁の和文論文であり、他に参考 論文10 編が添えられて、いる。
本論文は、第二次大戦後のわが国の食料消費市場及び食品産業の展開と特質について 分析し、これを踏まえ、さらに地方に存在する地場原料立地型の食品工業の存立条件に ついて考察したものである。その問題意識は、わが国の食品工業や外食産業をはじめと した「食」関連産業が、円高と「グローバル経済」の進展のもと、輸入による原料.゛中 間製品の利用を強めてきており、これが地域農業や地方に立地する食品工業を苦境に追 い込んでおり、地域経済及び地域農業の再構築のためにも、地場原料立地型の食品工業 の 外 部 条 件 と 存 立 条 件 を 明 ら か に す る 必 要 性 が あ る こ と に あ る 。 第 I 章においては、戦後における国民生活の変貌と関連させながら、食生活や食料消 費の諸特徴にっいて考察した。国民生活は高度経済成長以来、家計支出の高位化と硬直 化が進行し、食料消費においては加工食品や中食・外食が深く根付くようなった。また、
単身世帯の増加や通勤圏の拡大などにより、食生活の簡便化が進み、それが加工食品・
外食市場への依存傾向を規定している。また、加工食品消費の急増によって、不健康・
不健全な食事が増大するとともに、各種の食品リスクを顕在化させていることなどを明 らかにした。
第 n 章では、以上の食料消費市場の展開を背景とした、加工食品・外食産業の展開過 程と関係資本の動態について考察した。戦後の加工食品・外食市場は、1960 年代のイン スタント食品の登場を皮切りに、70 年代以降では冷凍食品や食肉加工品などの市場拡大 が進み、これに対応した関連産業や加工資本が大きく成長した。同時に企業問競争も外 資系企業を含めて激化した。さらに、 1980 年代には、円高を背景にアジア地域への直接 投資と現地加工による開発輸入が急進し、食品の生産機能は次第に海外に流出し始め、
いわゆる「産業空洞化」が進行することによって、地域商品と地場消費の存立条件が崩 れていったことを明らかにした。
第 m 章においては、グローバル経済下の競争や経済不況にさらされている北海道の食 品加工業について実態把握を行い、その特徴を整理した。北海道の食品加工業は、地場 産原料の利用割合が高く、低次加工が多い。そのため、過当競争に陥りやすく、外国製
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品 の 輸 入 が 増 加 する と、 企業 倒産 や撤退 が余 儀な くさ れる 脆弱 性を 有し てい る。
第IV 章では、北海道東部の網走地域を対象にして地場加工型食品工業の事例分析(冷 凍食 品2 社、 漬け 物1 社 、調 味料 1 社、 乳製品1 社)を行った。事例企業では、いずれ も地元農業との結び付きが強く、地場産原料を独自の技術開発で製品化し、品質管理も 優れているなどの特徴があるが、販売市場は道内全域及び道外へと広域化し、地場市場 対応は例外的であることなどを明らかにした。
終章においては、論文各章の総括を行い、さらにグローパル化や過度な市場競争の上 に成立するいぴっな食料需給構造を、地域から変革し再構成していく必要性を指摘した 上で、北海道網走地域にみられるような地場原料立地型の食品工業は、グローバル化に よる風圧を不断に受けつっも、地域経済と地域農業の持続的発展に深く関わっているこ とを強調して、本論を結んでいる。
このように本論文は、第一に、経済のグローバル化と日本経済の海外進出の中で、国 内農業との結び付きを弱めっつ、資本としての肥大化を図ってきた食品工業・外食産業 などの「食」関連産業と、その展開の下で形成されてきたわが国の食料消費市場と食生 活構造を社会科学的に分析し、第二に以上のような外的条件の中で、地元農業との結ぴ 付きを維持し、地場産原料に依存した食品工業を展開している北海道網走地域の企業事 例を発掘し、その存立条件を明らかにしたものである。これはわが国の食品産業分析と し て は き わ め て レ ベ ル の 高 い も の で あ り 、 そ の 学 術 的 価 値 は 高 い 。 よって審査員一同は、美土路知之が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。
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