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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学)    イ ズマ ッ トア ラベ ガ ム

     学 位論 文題 名

Prospects and Potentialities of Vertically Integrated     Contract farming in Bangladesh Poultry Sector     Development

( / ヾングラデシュの養鶏産業における 垂直的統合型契約農業の展望と可能性)

学位論文内容の要旨

    ノくングラデシュでは国民の20%が最貧困の状態にあり、44%が貧困線を下回る経済 水準にある。このような状況にあって栄養不足の解消は重要な課題であり、近年、食料のカ ロリーべースの充足に加え、蛋白摂取量の増加、とりわけ動物性蛋白の増加が重要な課題に なっている。鶏肉・鶏卵は宗教上の理由からも、国内における動物性蛋白の供給を増加させ、

国民 の栄養不 足を解消 するの に効果的である。養鶏部門のGDPシェアは4%であるが、雇 用労働者の割合は20%で、政府は養鶏業発展のためにさまざまの政策を実施したが、将来 的な需要に見合う大きな供給増加はみられなかった。

    1994年、 垂直的 統合型契 約生産システムが、キショルゴン地区に設立されたアフタ ブ・ ポフムキ 有限会社 (以下ABFL)によって、バングラデシュに初めて導入された。投 入要素から製品に至る生産・販売を垂直的に統合する契約生産が、バングラデシュ農村にお ける資本制限や、経済的リスク、市場流通の改善にどのような役割を果たしたのか、そして 鶏肉・鶏卵の生産拡大にどのように貢献しうるかについては、これまでほとんど研究されて いない。本研究では、垂直的統合型契約生産システムの既存の商業的養鶏経営と比較した際 の利点、とくに小規模経営が契約する経済的な誘因、農業所得および雇用形成への寄与、鳥 インフルエンザのような不測の事態が契約生産に与えた影響を実態調査によって明らかにす る。そして、先進国に30年遅れて導入された垂直的統合型契約農業の可能性を検討する。

    第1章では バング ラデシュ 、国連機 関など の統計資 料を用いて、バングラデシュの 一人あたり食料供給量(カロリー、栄養バランス)の長期的な推移、養鶏部門発展の意義と 重要性を明らかにした。っぎに、先進国の養鶏産業における垂直的な統合の経験と発展途上 国への適用事例に関する文献をサーベイし、バングラデシュの国内鶏肉市場の需給構造の分 析枠組みを提示した。すなわち、垂直的な統合による契約生産が供給曲線を右上方に大きく シフトさせる実行可能な解となるかどうかを明らかにすることが重要となる。現在の鶏肉生 産は、庭先に小屋を建て、残飯などを飼料として利用する小規模、副業的な生産と商業的な 養鶏経営による生産に分類され、前者の生産割合が86%を占め、商業的生産の割合は小さ い。こうした旧来の生産形態によって、将来的に増加が見込まれる鶏肉需要に応えることは 難しい。供給量を大きく増加させるためには、商業的な養鶏生産の発展が不可欠である。

    第2章では 、バン グラデシ ュの鶏肉 ・鶏卵 の需給構 造から、養鶏産業の発展と政策 の変化を概説した。とくに1980年代以降は生産羽数が年率5%で増加しており、一人あたり 鶏肉消費量は3倍近くに増加し、実質価格はほぼ一定に押さえられていた。鶏肉、鶏卵の所 得弾力性の計測結果は、それぞれ0. 65、0.33で、魚類、牛肉に比較しても大きく、今後も養 鶏部門がバングラデシュ農業の成長部門であることを示した。

    第3章では 、バン グラデシ ュ養鶏産 業の品 種、初生 雛、配合飼料などの投入要素の

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生産、流通構造を分析した。とりわけ初生雛、配合飼料は生産費の85%を占める重要な投 入要素である。商業的な養鶏経営にアンケート調査をした結果は、資本不足、輸送問題、疾 病リスク、投入要素の購入先に制約があるなど、多くの問題があることを示した。ブロイラ ー・採卯用品種はすべて海外に依存し、少数の国内企業が孵化事業を行う結果、初生雛の卸 売価格が固定的であること、また、とうもろこしなどの国内飼料生産が停滞しているなどの 問題を指摘した。

    第4章 、5章 は 、 バ ン グ ラ デ シ ュ で 最 初 の 垂 直 的 統合 型契 約会 社、ABFLと契 約 するキショルゴン地区(バジプール村、クリアチャール村)の養鶏経営のシステムおよび生 産 性・ 収益 性を 分析 した 。分 析に はABFL契 約農 家560戸 を、飼養羽数によって小規模

(1,200羽以下)、中規模、大規模(2,001羽以上)に分類し、階層抽出法に準じて選択され たABFL提供 の50戸の 投入 産出記録、そして、これらの農 家に対して筆者が実施した農 家実態調査の結果を使用した。契約生産との比較分析のために、古くから養鶏産地である、

首 都 ダ ッ カ 近 郊 に あ る ガ ジ プ ー ル 地 区 の 商 業 的 養 鶏 経 営25戸 を 実 態 調 査 し た 。     農民が契約生産に参入す る要因は、資本不足、リスクの減少、所得創出、より良い マーケティング手段の提供、技術的なノウハウ、獣医サービスなど、さまざまである。契約 農家の1羽あたりの平均収益は商業的養鶏経営の平均収益に比較して1.7倍、同様に農家あ たりの平均収益は3.6倍で、 契約生産の収益性は既存の商業的養鶏経営より高かった。

    契 約し た経 営は 初生 雛、 飼料 など の投 入要 素をABFLか らの 信用 貸付 けで 購入で きる。また生産物の販売はABFLに委託され、→定の農家価格が保証され、価格リスクを 回避することができる。農家は飼料給与方法や薬品使用方法などのアドバイスを専任技術者 から提供され、大きな便益を得た。とくに鶏死亡率を減少させるために、農家に経済的な誘 因を与えるシステムを採用したことは重要である。死亡率が3%以下の農家には80%、4〜 6%には40%、7〜 10%には20%、11‑‑‑  15%には10%の保険料を段階的に支払うシステムに なっている。すなわち、ABFLは専門技術者によるアドバイスのみならず、保険システム の導入によって農家の飼養管理労働の意欲を高め、生産リスクを農家と分担し、より低い鶏 死亡率という成果をあげた。 またAB FLは先物契約によって販売価格リスクを軽減した。

この結果、農村に有効な雇用創出・所得機会を創出した。

    6章 で は 契 約 シ ス テ ムが 小農 に与 える 影響 を分 析 した 。調 査地 区でABFLと契 約 する農家数は1999年に200戸、2002年には560戸に達した。ここで93%の契約生産農家が、土 地所有規模などで小農の範疇に分類されることは、きわめて重要である。小農の収益性は増 加し、雇用が創出され、稲作専業など他の経営カテゴリーと比較してもかなり所得が高く、

稲作との複合経営の可能性が大きいことを示した。しかしながら、2003年末から2004年の初 頭にかけてカンボジァ、中国、インドネシア、日本、ラオス、韓国、タイ、ベトナムの8ケ 国で発生した鳥インフルェン ザ(H5Nl)の風評被害は大きかった。バングラデシュでは 消費者が鶏肉の購入を控えた ため、数日のうちに鶏肉および初生雛の価格が下落し、ABF L契約生産者の多くが養鶏を中止し、契約農家は650戸から200戸に激減した。これによって ABFLは1億5千 万TKの 損 失 を 被 っ た 。ABFLは 投 入 要 素 の 販 売 を 信 用 貸 付 け か ら 現 金決済に変更したが、風評がおさまり、契約農家数は2005年には305戸まで回復している。

風評被害後の2005年のABFL契 約農家と商業的養鶏経営との収益性の比較分析は、垂直的 な統合型契約生産の優位性は失われていないことを示した。終章では、本論文を要約し、今 後の養鶏産業発展への政策含意を論じた。

    以上、バングラデシュに おける垂直的な統合による養鶏経営は、現在の商業的養鶏 経営の抱える問題を解決することによって、養鶏の国内生産を増加する有効な方法と結論で きる。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Prospects and Potentialities of Vertically Integrated   Contract farming in Bangladesh Poultry Sector     Development

(/ヾ ン グ ラ デ シ ュ の 養 鶏 産 業 に お け る 垂 直 的 統 合 型 契 約 農 業 の 展 望 と 可 能 性 )

  本 論 文 は 図27、 表46を 含 み 、 総 頁 数147頁 、7章 か ら なる 英 文 論 文で あ る 。別 に5編 の参考論文が添えられている。

  ノくング ラデシ ュでは国 民の44%が貧困線を下回る生活水準にある。このため、栄養不足 の解消、 とくに蛋 白摂取 量の増加 が重要 な政策課 題とな っている 。鶏肉・ 鶏卵の消費の増 加は、栄 養不足の 解決に 有効な方 法であ るが、需 要増加 に見合う 供給増加 は達成されてい ない。近 年になっ て、先 進国では1960年代に 普及した 、投入 要素から 製品に 至る生産・販 売を垂直 的に統合 する契 約農場生 産が、 バングラ デシュ に導入さ れた。こ の新しい契約生 産が農村 における 資本制 限や、投 入要素 市場の不 完全性 、技術的 な生産リ スク、販売リス クの改善 にどのよ うな役 割を果たしたのか、将来の生産拡大にどのように貢献しうるかを、

慣行的な 商業的養 鶏経営 との比較 分析に よって明 らかに すること が本研究 の課題である。

    第1章 で はバ ン グ ラデ シ ュ の一 人 あ たり 食 料 供 給量 ( カ ロリ ー 、 栄養バラ ンス) の 長期的な 推移、養 鶏部門 発展の意 義と重 要性を明 らかに した。っ ぎに、先 進国の養鶏産業 における 垂直的統 合契約 生産の経験と発展途上国ーの適用事例に関する文献をサーベイし、

国内鶏肉市場の需給構造の分析枠組みを提示した。

    第2章 で は、 バ ン グラ デ シ ュに お け る鶏 肉 ・ 鶏 卵の 需 給 構造 の 変 化を統計 的に分 析 し・た。鶏肉、鶏卵の所得弾力性の推定値は、それぞれ0. 65、0.33で、魚類、牛肉に比較し て 大 き く 、 今 後 も 養 鶏部 門 が ノく ン グ ラデ シ ュ 農業 の 成 長部 門 で ある こ と を 示し た 。     第3章 で は、 初 生 雛、 配 合 飼料 な ど の投 入 要 素 の市 場 、 流通 構 造 を、主と して慣 行 的な商業 的養鶏農 家のア ンケート 調査か ら分析し た。資 本不足、 技術上の 生産リスクの大

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男 彦

郎 巧

   

   

史 克

南 村

澤 藤

長 出

飯 近

授 授

授 授

   

   

教 教

教 准

査 査

査 査

主 副

副 副

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きさ、投入要素の購入先を選択できないこと、輸送問題など、生産を拡大するには農家サ イドに多くの問題があることを示した。

    第4章、5章 は、1994年にバングラデシュで最初に垂直的統合型契約養鶏会社とし て創立さ れたアフ タブ・ボフムキ有限会社(以下ABFL)と契約するキショルゴン地区   (バジプール村、クリアチャール村)の養鶏経営の生産性および収益性を分析した。AB FL契約農家、全560戸を飼養羽数によって小規模(1,200羽以下)、中規模、大規模(2,001 羽以上)に分類し、そこで階層抽出された50戸の農家調査を実施し、バッチ毎の詳細な投 入産出記録がABFLから提供された。比較分析のために、首都ダッカに近い養鶏主産地、

ガジプール地区の25戸の商業的養鶏経営を実態調査した。

    契約農家 は初生雛 、飼料な どの投入 要素をABFLか らの信用 貸付けで購入できる ので、契約参入の費用が小さい。この結果、契約農家の93%が土地所有規模などで小規模 農家の範 疇に分類 され、小農の所得機会の創出に寄与している。生産物の販売はABFL に委託さ れ、ABFLは先物契約によって販売価格リスクを軽減し、安定した農家庭先価 格を実現 している 。ABFL所属の専任技術者は飼料給与方法や医薬品の使用方法をアド バイスし、鶏死亡率を減少させるために、独自の保険システムを採用している。これによ って農家の飼養管理労働の意欲が高まり、低い鶏死亡率を達成することができた。ABF Lは保険の導入によって、生産リスクを農家と分担しているのである。契約農家の1羽あ たりの収益は商業的養鶏経営の約1.7倍で、契約生産農家の収益性は既存の商業的養鶏農 家の収益性に比較して、かなり高かった。調査地区において、垂直的統合による契約生産 は 農 家 所 得 を 増 加 さ せ 、 新 た な 雇 用機 会 を創 出 す るこ と に成 功 し たと い え る。

    6章では契約システムが小農経営に与える影響を分析した。2003年末から2004年の 初頭 に か けて 国 外 で発生 した鳥イ ンフルエ ンザ(H5Nl型 )の風評 被害によ ってABF Lは1億5千万TKの損失を 被り、飼 料などの 投入要素の販売方法を信用貸付けから現金 決済に変更せざるをえなくなった。これによって、契約農家数は650戸から200戸に激減し たが、2005年 には305戸まで回復している。ABFL契約農家の1羽あたり収益性は商業的 養鶏経営の収益性の約1.3倍で、風評被害後も垂直的な統合型契約生産の優位性は失われて いない。終章では、今後の養鶏産業発展ーの政策含意として、垂直的な統合による養鶏生 産 が バ ン グ ラ デ シ ュ の 国 内 鶏 肉 生 産を 増 加さ せ る 有効 な 方法 と 結 論し て い る。

  以上、本論文はバングラデシュにおける垂直的な統合による養鶏経営の可能性を、初め て経済学的に分析したもので、バングラデシュのみならず、発展途上国における成功事例 の先駆的研究として学術的観点からみて高く評価される。

    よって審査員一同は、Begam Ismat Araが博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格 を有するものと認めた。

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参照

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