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―精神刺激薬モデルの観点から一

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 仲 唐 安 哉

学 位 論 文 題 名

統合失調症の病態進行過程における ラモトリギンの影響に関する研究

―精神刺激薬モデルの観点から一

学位論文内容の要旨

【 背景と 目的】統 合失調 症はcommon diseaseで あり、そ の効果的な治療法の開発は急務 の 課題である。現在、統合失調症のドパミン仮説を基に、統合失調症の治療にはドパミン D:型受容体遮断作用を有する治療薬(抗精神病薬)が使用されているが、抗精神病薬に反応 し なぃ統合失調症の治療には難渋している。統合失調症の急性期症状が改善した後には、

統 合失調症の再燃・再発防止目的で抗精神病薬の長期使用が推奨されている。しかし、抗 精 神病薬の長期使用によって不可逆的な運動障害が生じることは少なくない。そのためド パ ミンD2型受容体遮断作用以外の作用を持つ、長期的な副作用が少ない統合失調症治療薬 が求められている。

  メ タンフ ェタミン(METH)をどの 精神刺 激薬を用 いた動物 モデル(覚醒剤モデル)は統 合失調症の病態の一部を反映し,ており、治療薬のスクリーニングに広く用いられている。

し かし、統合失調症の症状および経過は一律ではなく、症状や病期に応じた治療法の使い 分 けが必要と考えられる。我カのグループは、@発病当初はドパミンDz型受容体遮断薬に 反応するが再燃・再発を繰り返すうちにドパミンDz型受容体遮断薬に反応を示さなくなり、

◎ 認知機能障害が進行していき、◎脳萎縮が進行する、という統合失調症の病態進行に着 目 した。我々のグループが開発した病態進行動物モデルではこの統合失調症の病態進行に 類似した行動[METHとN―methyl―D―aspartic acid (NMDA)受容体遮断薬であるdizocilpine (MK一801)に対する行動感作形成、prepulse inhibition (PPI)障害の形成]および神経組 織学的変化[terminal deoxynucleotidyl transferaseーmediated dUTP nick―end labeling (TUNEL)染色 陽性細胞 の惹起 ]が認められる。そのため、この病態進行動物モデルは統合 失 調症治療薬の新たなスクリニーングツールとして有用であると考えている。また、これ ま での脳内微小透析実験の結果から、統合失調症の病態進行への細胞外グルタミン酸濃度 増加の関与が推測される。

  本 研究は、この病態進行動物モデルを用いて、グルタミン酸放出抑制作用を有する抗て ん かん薬 であるラ モトリ ギン(LTG)が統合失調症の病態進行の基盤にあると推定される行 動 学的(NMDA受容体 遮断薬 に対する 行動感 作形成とPPI障害 の形成)および神経組織学的 変 化(TUNEL染色 陽 性 細胞 の 惹 起) に 及 ばす 影 響 を調 べ る こと を 目 的 とし て 行 った。

【材料と方法】実験動物としてSprague―Dawley系雄性ラットを用いた。薬剤としてMETH、 LTGとMK−801を用いた。移所運動量測定には受動型赤外線センサーで水平方向の運動量を 測定するSUPERMEXを使用し、PPI測定には音刺激による驚愕反応を測定するSR―LAB system

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を用いた。脳内微小透析法で回収した人工脳脊髄液は液体クロマトグラフイーを用いて解 析し、グルタミン酸濃度を測定した。

  一 連の 実験 で使用するLTGの用量を決定する目的で、METH2.5mg/kg投与2時間後にLTG 10 mg/kgおよ び30 mg/kgをラットに投与し移所 運動量を測定した。次に、METHの反復投 与に 対す るLTGの反 復併用投与の影響を検討する目的で、METH 2.5 mg/kgとLTGの反復併 用投与の後、十分な離脱期間を置いた時点での、METHO.2mg/kgまたはMK−8010,15 mg/kg 投与 後の 移所 運動量変化、PPIおよぴ内側前頭前野(mPFC)におけるTUNEL陽性細胞数を測 定した。また、METH 2.5 mg/kg急性投与後遅発性に生じる細胞外グルタミン酸濃度の上昇 に対するLTGの影響も検討 した。

【 結 果 】METH2.5mg/kg投 与2時 間 後 のLTG 30 mg/kgお よび10 mg/kg投与 は移 所運 動 量に影響を与えなかったため、一連の実験においてLTG 30 mg/kgを使用した。移所運動量 測定 では 、METH2.5mg/kgの反復投与によってMETHおよびMKー801への感受性亢進が形成 された。LTG 30 mg/kgの反復併用投与はMETH 2.5 mg/kgによるMK一801への感受性亢進形 成を 阻止 した 。驚愕反応測定では、METH2.5mg/kgの反復投与によってPPI障害が形成き れた 。LTG 30 mg/kgの反復併用投与はMETH2.5mg/kgの反復投与によるPPI障害の形成を 阻止 し、LTG 30 mg/kgの単回投与はMETH2.5mg/kgの反復投与により形成さ れたPPI障害 の発現を抑制した。TUNEL染色法を用いた検討では、METH 2.5 mg/kgの反復投与はmPFCで のTUNEL染色陽性細胞数を 増加させたが、LTG 30 mg/kgの反復併用投与はその増加を阻止 した。また、脳内微小透析法を用いた細胞外グルタミン酸濃度の測定では、METH2.5mg/kg はmPFCにおいて遅発性の細胞外グルタミン酸濃度上昇 を惹起したが、METH2.5mg/kg投与 120分後のLTG 30 mg/kg投 与により、その遅発性の細胞外グルタミン酸濃度上昇は抑制さ れた。

【考察】内側前頭前野において細胞外グルタミン酸濃度を増加させうる量であるMETH2.5 mg/kgの反復投与で惹起さ れるMK―801に対する行動感 作形成、PPI障害形成ならびにmPFC でのTUNEL陽 性細胞 数増加の3現象をLTGの反復併用投与が阻止したことより 、LTGは統合 失調症の病態進行の基盤を阻止する有用な薬剤であることが示唆された。METHによる細胞 外グ ルタ ミン 酸濃度上昇をLTGが抑制したことより、LTGはこの抑制機序を介して、METH 反復投与で惹起きれる行動変化ならびに神経組織的変化を阻害した可能性がある。しかし、

LTGにはグルタミン酸放出 抑制作用以外にもgammaーaminobutyric acid放出促進作用を有す ることなども報告されているため、本実験におけるLTGの作用機序にっいても更なる検討 が必要である。

【結 論】LTGとMETHの 反 復併 用投 与は 、METH反 復投与による行動異常たらびに神経組織 学的異常の形成を阻止した。本研究の結果より、LTGは統合失調症の病態進行の阻止に対し て有用な治療薬になりうると考えられた。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

統合失調症の病態進行過程における ラモトリギンの影響に関する研究

ー 精 神 刺 激 薬 モ デ ル の 観 点 か ら ―

  統合失調症治療では、ドパミン受容体遮断作用を有する治療薬(抗精神病薬)が使用されてい るが、長期的なドパミン受容体遮断は不可逆的運動障害を生じうる。そのためドパミン受容体遮 断以外の作用を持つ、統合失調症治療薬が求められている。本研究では、@発病当初はドパミン 受容体遮断薬に反応するが再燃・再発を繰り返すうちにドパミン受容体遮断薬に反応を示さなく なり、◎認知機能障害が進行していき、◎脳萎縮が進行する、という統合失調症の病態進行に着 目し、新たな統合失調症の病態進行動物モデルを用いて研究を行った。本モデルは、統合失調症 の病態進行に類似した行動[METHとN―methyl―Dーasparticacid (NMDA)受容体遮断薬であるジゾ シルピンに対する交差行動感作形成 、prepulse inhibition障害形成]船よぴ神経組織学的変化

(TUNEL陽性細胞の惹起)を表現して いる。本研究は、この病態進行動物モデルを用いて、抗て

んかん薬であるラモトリギンが統合失調症の病態進行の基盤にあると推定される行動学的および 神経組織学的変化に及ばす影響を調べることを目的として行われた。本研究の結果、ラモトリギ ンが、@メタンフェタミン急性投与後遅発性に生じる細胞外グルタミン酸濃度上昇を抑制し、メ タンフェタミンの反復投与後に生じ 、◎ジゾシルピンに対する交差行動感作形成、◎PPI障害の 形成およぴその発現、@内側前頭前野における′I丶UNEL陽性細胞の惹起を抑制することが確認さ れた。本研究より、ラモトリギンは統合失調症の病態進行基盤を阻止する有用な薬剤であること が 示 唆 さ れ 、 そ の 臨 床 的 応 用 が 期 待 で き る 薬 剤 で あ る と 考 え ら れ た 。   質疑応答では、渡辺雅彦教授から、ドパミンがグルタミン酸を放出させる機序にっいて質問が あった。これに対して申請者は、覚 醒剤によるグルタミン酸濃度上昇はカルシウムindependent であるため神経細胞からの放出ではなく、ナトリウム依存性のグルタミン酸トランスポーターを

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樹 と

   

岡 山

中 間

吉 小

田 本

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

介しての細胞外グルタミン酸濃度上昇が関与していると回答した。田中真樹教授からは、内側前 頭前野 でのapoptosisをみているが統合失調症患者で前頭葉以外の部位、特にドパミン放出が亢 進していてサーキットの一部である線状体の萎縮の有無にっいての質問があった。これに対して 申請者は、現在統合失調症で脳萎縮が確認されている部位は左上側頭回や前頭前野皮質であり、

統合失調症の画像研究で線状体の萎縮は確認されていないと回答した。本間さと教授から、グル タミン酸の放出を抑制するラモトリギンの機序についての質問があった。これに対して申請者は、

ラモト リギンが 神経細 胞膜上に あるsodium channelに直接作用して、その脱分極からの回復を 遅延させることにより神経細胞膜を安定化させ、グルタミン酸の放出を抑制すると回答した。吉 岡充弘 教授からは、内側前頭前野でのapoptosisについて、内側前頭前野を腹側と背側に分けて 検討を行ったか否かとの質問があった。これに対して申請者は、今回の研究では内側前頭前野を ひとまとめにして観察検討しているが、内側前頭前野の腹側と背側の機能に違いがあることが示 唆されているので、今後の検討課題としたいと回答した。次いで、小山司教授からは、本研究を 踏まえての今後の展望にっいて質問があった。これに対して申請者は、統合失調症の病態進行に 関わる詳細な分子メカニズムの検討、統合失調症の病態進行に対するラモトリギンの効果の臨床 的検討と本動物モデルを用いた新規統合失調治療薬のスクリーニングを実施する予定であると回 答した。

  本論文は、統合失調症の病態進行を的確に捉えた新しい動物モデルを用いて、統合失調症の病 態進行を正確に基礎実験に反映している。また、その理論の展開も精巧かつ現実的で、最終的に は実験結果を臨床に反映させる考察もなされている。上述した患者群の病態メカニズムの解明と その防止に関する臨床及び基礎研究の総合的な論文として高く評価される。今後、統合失調症患 者の病態の進行防止に関する前方視的な調査などの臨床応用によって、本患者群の病態進行の防 止が可能となることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単位なども併せ、

申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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