膵外分 泌機 能 の加齢 に よる変化
-内
視 鏡 的 純 粋 膵 液 採 取 法 に よ る 検
討-岡 山大学 医学部 第二 内科教 室(指 導:原 田実根 教授)
岡 山大学 医学部 臨床 検査 医学(指 導:原 田英雄 教授)
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(平成11年2月22日 受稿)
Key words:加
齢,膵 外分 泌機 能,内 視鏡 的 純粋 膵液採 取法,セ クレチ ン試 験,慢 性 膵炎
緒 言 純 粋 膵 液 採 取 法 の 魅 力 は,胃 液,十 二 指 腸 液, 胆 汁 が 混 入 し な い 膵 液 を膵 管 か ら直 接 採 取 で き る こ とに あ る.こ の 検 査 の初 期 の 目的 は,膵 液 の 細 胞 診 ま た は膵 液 中腫 瘍 マ ー カ ー 測 定 に よ る 膵 癌 の 診 断 で あ っ た1,2).し か し そ の 後,胃 液, 十 二 指 腸 液,胆 汁 が 混 入 し な い純 粋 膵 液 を採 取 で き る 利 点 か ら,よ り正 確 な 膵 外 分 泌 機 能 評 価 が 可 能 で あ る と考 え られ た3). 膵 外 分 泌 機 能 と加 齢 に つ い て は 多 くの 報 告 が あ るが,検 査 法,対 象 者 選 択 法,年 齢 層 別 法 の 相 違 に よ っ て,い ま だ 一 致 し た 結 論 が 得 られ て い な い4).筆 者 は す で に 日本 消 化 器 病 学 会 の 膵 液 検 討 小 委 員 会 に よ っ て 提 案 さ れ た セ ク レ チ ン 試 験5)を 用 い て膵 外分 泌 機 能 の加 齢 に よ る変 化 を報 告 し た6).今 回 は,純 粋 膵 液 採 取 法 を 用 い て 膵 外 分 泌 機 能 の 加 齢 に よ る 変 化 をprospectiveに 検 討 し,通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 と比 較 検 討 し た 結 果,1.高 齢 者 で は膵 外 分 泌 機 能 は低 下 す る, 2.そ の 低 下 様 式 が 導 管 系 機 能 と腺 房 系 機 能 の 間 で 異 な る,3.通 常 の セ ク レチ ン 試 験 との 比 較 で は,本 法 の 方 が 加 齢 の 影 響 を よ り明 確 に 示 す と い う成 績 を得 た の で こ こ に 報 告 し,若 干 の 考 察 を加 え る. 対 象 と 方 法 対 象 は,軽 度 の 上 腹 部 不 定 愁 訴 で 来 院 し た 患 者 の うち,1)全 身 状 態 が 良 好 で 併 存 疾 患 を認 め ず,2)血 液 性 化 学 検 査,糞 便 ・尿 検 査,上 部 消 化 管 造 影,腹 部 超 音 波(US), BT-PABA試 験 ま た は 糞 便 中 キ モ ト リプ シ ン 活 性 測 定,内 視 鏡 的 膵 胆 管 造 影(ERCP)で,消 化 管,肝 ・胆 ・膵 ・ 腎 疾 患,蛋 白 ・糖 ・脂 質 代 謝 に 異常 を 認 め ず, 3)飲 酒 歴 が な く,4)膵 外 分 泌 機 能 評 価 の た め の 純 粋 膵 液 採 取 検 査 に 同 意 を 得 られ た65名 で あ る.膵 外 分 泌 機 能 に 対 す る加 齢 の 影 響 を評 価 す るた めに,前 回 同様 に6)対象 者 を39歳 以 下 群16名, (男 性10名,女 性6名,19∼39歳,平 均28.0歳), 40∼64歳 群30名(男 性16名,女 性14名,40∼64 歳,平 均54.3歳),65歳 以 上 群19名(男 性13名, 女 性6名,65∼80歳,平 均71.4歳)の3群 に 分 け 比 較 検 討 し た. 純 粋 膵 液 の 採 取 に は,す で に 報 告 し た 方 法 を 用 い た7,8).す な わ ち,早 朝 空 腹 時 に 咽 頭 麻 酔 下 に 十 二 指 腸 フ ァ イ バ ー ス コー プ を十 二 指 腸 下 降 脚 に 挿 入 し,フ ァ ー タ ー 氏 乳 頭 の 膵 管 開 口部 か らERCP用 の カ ニ ュー レを1.5∼2.5cmの 深 さ ま で 膵 管 内 に挿 入 し,そ こ で 軽 く用 手 吸 引 を行 っ て カニ ュ ー レ先 端 に 無 色 の 膵 液 が 入 っ て く るの を 内視 鏡 観 察 下 に 確 認 す る.そ の 後,セ ク レチ ン(secrepan, Eisai)を100単 位 静 注 し,膵 液 を 用 手 吸 引 に て 氷 冷 下 に 採 取 した.前 処 置 と し て は,少 量 のdiazepam (5mg)の 筋 注 ま た は 静 注 以 外 に は薬 剤 を使 用 し な か っ た.通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 は す で に 報 告 し た方 法 に よ り行 っ た6). 採 取 終 了 後 直 ち に 液 量,重 炭 酸 塩 濃 度,ア ミ ラー ゼ 活 性,リ バ ー ゼ 活 性 を測 定 した.重 炭 酸 塩 濃 度 はEST 600 titration system(Radiometer社,Copenhagen, Denmark)を
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用 い て 逆 滴 定 法 で 測 定 し た.ア ミラ ー ゼ 活 性 は ア ミ ラー ゼ テ ス トキ ッ ト ・ワ コー(和 光 純 薬) を用 い,リ パ ー ゼ 活 性 は リパ ー ゼ キ ッ ト 「マ ル ピー 」(大日本 製 薬 株 式 会 社)を 用 い て 測 定 し た. 膵 外 分 泌 機 能 の 判 定 は10分 間 の,液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度 ま た は重 炭 酸 塩 分 泌 量,酵 素 分 泌 量 の3因 子 で 行 っ た7,8).そ し て 以 下 の 項 目 に つ い て 統 計 学 的 解 析 を行 い,p<0.05を も っ て有 意 と判 定 し た. 1. 3因 子 の 各 測 定 値 と年 齢 の 関 係 は 相 関 係 数 と2次 回 帰 曲 線 を 用 い て 検 討 し た. 2. 年 齢 に よ っ て 層 別 した3群 間 に お け る3因 子 の 測 定 値 の 比 較 に は 一 元 配 置 分 散 分 析 お よ び対 応 の な いwilcoxon検 定 法 を用 い た. 3. 我 々 が 以 前 に 設 定 した 基 準 域7,8)を参 考 に, 加 齢 に よ る 各 因 子 の 異 常 低 値 例 出 現 頻 度 を 比 較 検 討 し た. 4. 加 齢 に よ る低 下 程 度 を各 因 子 間 で 比 較 す る た め に,(各 因 子 の 実 測 値-平 均 値)÷ 標 準 偏 差 値 の 式 に て 標 準 化 し,こ の 値 を も と に対 応 の あ るStudentのt検 定 を用 い て検 討 した. ま た,65歳 以 上 群 の 平 均 値 を39歳 以 下 群 の 平 均 値 で 除 して 各 因 子 の 低 下 程 度(率)を 算 出 した. 5. 加 齢 に よ る膵 外 分 泌 機 能 低 下 に お け る特 性 の 有 無 をみ る た め に,日 本 膵 臓 学 会 慢 性 膵 炎 診 断 基 準9)に よ り診 断 した慢 性 膵 炎 確 診 群19名 (男性17名,女 性2名,34∼74歳,平 均60.6 歳)と の 比 較 検 討 を行 い,ま た慢 性 膵 炎 確 診 群 を65歳 以 上6名(男 性4名,女 性2名, 65∼74歳,平 均70.3歳)に 限 定 し比 較 検 討 も 行 っ た. 6. 純 粋 膵 液 採 取 法 と通 常 の セ ク レチ ン試 験 を ほ ぼ 同 時 期 に 施 行 し た26名 を39歳 以 下 群8名 (男 性3名,女 性5名,19∼39歳,平 均29.4 歳),40∼64歳 群10名(男 性4名,女 性6名, 40∼64歳,平 均53.5歳),65歳 以上 群8名(男 性4名,女 性4名,65歳 ∼78歳,平 均71.4歳) の3群 に 分 け,上 記 の 項 目 に従 っ て 膵 外 分 泌 機 能 に 対 す る加 齢 の 影 響 を 比 較 検 討 し た. 成 績 1. 3因 子 の 測 定 値 と年 齢 の 関 係 年 齢 と膵 外 分 泌 機 能 との 関 係 に つ い て は 液 量 (r=-0.507, p<0.01,図1),重 炭 酸塩 分 泌 量(r=-0.528, p<0.01),最 高 重 炭 酸 塩 濃 度(r=-0.389, p<0.01,図2),ア ミラ ー ゼ 分 泌 量(r=-0 .431, p<0.01,図3), リパ ー ゼ 分 泌 量(r=-0.299, p<0.05)と も に 有 意 の 逆 相 関 を 認 め た.し か し,液 量 お よ び 重 炭 酸 塩 分 泌 量 は 酵 素 分 泌 量 とは 異 な る 回 帰 曲 線 を示 した.す な わ ち後 者 が 加 齢 と と も に 除 々 に 低 下 す る パ ター ン を示 す の に反 し,前 者 は40 歳 代 を ピ ー ク とす る軽 度 のconvex curveを 示 し,50歳 後 半 以 後 に 比 較 的 急 速 に 低 下 す るパ タ ー ン を示 し た. 2. 年 齢 に よ って 層 別 し た3群 間 の 比 較 一 元 配 置 分 散 分 析 に よ る検 討 で は,年 齢 に よ っ て 層 別 し た3群 間 の 液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度, 重 炭 酸 塩 分 泌 量,ア ミ ラー ゼ 分 泌 量,リ パ ー ゼ 分 泌 量 に つ い て 有 意 差 を認 め た(そ れ ぞ れp< 図1 年 齢 と液 量 の関 係 年 齢 と液 量 との間 に は有 意 の逆 相 関 を認め る. しか し実 際 の 回帰 曲 線 は ア ミラーゼ分 泌 量 の 場 合(図3)と 異 な り,ほ ぼ50歳 まで は40歳 代 を ピー ク とす る軽 度 のconvex curveを 示 し,そ れ 以 後 は比 較 的 急速 に低 下 す るパ ター ン を示 す.0.01, p<0.01, p<0.01, p<0.01, p<0.01). どの 群 間 に 有 意 差 が あ るかwilcoxon検 定 に よ っ て検 討 す る と,65歳 以 上 群 が39歳 以 下 群 お よ び40∼64歳 群 に 較 べ て 有 意 の低 値 を示 し た(表 1).39歳 以 下 群 と40∼64.歳 群 と の 間 に は 有 意 差 を認 め な か っ た. 3. 加 齢 に よ る 各 因 子 の 異 常 低 値 出 現 頻 度 65歳 以 上 群 に 膵 外 分 泌 の 有 意 の低 下 を認 め た の で 各 因 子 の 異 常 低 値 例 出 現 頻 度 を算 出 す る と, 液 量10例(52.6%),重 炭 酸 塩 分 泌 量10例(52.6 %),ア ミ ラー ゼ 分 泌 量9例(51.2%)で あ っ た. 70歳 以 上 の 症 例 に 限 定 す る と,そ の 頻 度 は さ ら に 高 くな り,液 量7例(63.6%),重 炭 酸 塩 分 泌 量7例(63,6%),ア ミラー ゼ 分 泌 量7例(63.6 %)で,60歳 代 に お け る頻 度(そ れ ぞ れ,20.0 %,27.3%,40.0%)や50歳 代 に お け る頻 度(そ れ ぞ れ,7.0%,7.0%,14.0%)と の 間 に 差 を 認 め た. 4. 加 齢 に よ る各 因 子 の 低 下 程 度 の 比 較 65歳 以 上 群 に お い て 液 量 は72.4%,重 炭 酸 塩 分 泌 量72.7%,ア ミラー ゼ 分 泌 量69.2%に ま で 低 下 して い た.統 計 的 に は 液 量,重 炭 酸 塩 分 泌 量 が ア ミラ ー ゼ分 泌 量 に 較 べ て 低 下 の程 度 が 有 意 に(p<0.05)高 度 で あ っ た(図4). 図2 年 齢 と最 高重 炭 酸塩 濃度 の 関係 年 齢 と最 高重 炭 酸塩 濃度 との 間 には有 意 の逆 相 関 を認 め る. 図3 年 齢 とア ミラー ゼ分 泌量 の 関係 年 齢 とア ミラー ゼ分 泌量 との 間 に は有意 の 逆 相 関 を認 め る.液 量 の場 合(図1)と 異 な り, ア ミラー ゼ分 泌量 は加 齢 とと もに除 々 に低 下 す るパ ター ン を示 す. 表1 年 齢 層別 に よ る3群 間 の 膵外 分 泌 機 能 の比 較 65歳 以上 群 は39歳 以 下群 お よび40∼64歳 群 に較 べ 液 量,最 高 重 炭酸 塩 濃 度,重 炭 酸塩 分 泌量,ア ミラー ゼ 分 泌量,リ バ ーゼ 分 泌 量 の有 意 の低 値 を示 す. ) Mean±SD 2)Mean±2SD ** P<0.01
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5. 65歳 以 上 群 と慢 性 膵 炎 群 との 比 較 最 高 重 炭 酸 塩 濃 度 に つ い て は 慢 性 膵 炎 群 の ほ うが 有 意 の(p<0.05)低 値 を示 し た が,液 量 お よ び 重 炭 酸 塩 分 泌 量,酵 素 分 泌 量 に つ い て は 両 群 間 に 有 意 差 を認 め な か っ た(表2).ま た, 慢 性 膵 炎 群 を65歳 以 上 に 限 定 して 比 較 す る と全 因 子 に つ い て 有 意 差 を認 め な か っ た. 図4 標 準 化 に よる液 量 とア ミラーゼ分 泌量 の低 下 程 度 の 比較 液 量 は ア ミラー ゼ分 泌 量 に較 べ て65歳 以上 群 にお け る低 下程 度 が有 意(p<0.05)に 著 明 で あ る.6. 加 齢 に よ る膵外分 泌機 能 の変化:純 粋膵 液
採取 法 と通常 の セ ク レチ ン試験 との 比較
1) 3因 子 の測定値 と年齢 との 関係
通常 の セ クレチ ン試験 で は液量,重 炭 酸塩分
泌 量,ア ミ ラ ー ゼ 分 泌 量 は 年 齢 と有 意 の 逆 相 関 を示 し た が(そ れ ぞ れ,p<0,01),最 高 重 炭 酸 塩 濃 度 で は 有 意 の 相 関 を認 め なか っ た.純 粋 膵 液 採 取 法 で は 液 量,重 炭 酸 塩 分 泌 量,ア ミラ ー ゼ 分 泌 量 と も に 年 齢 と有 意 の 逆 相 関 を 示 し(そ れ ぞ れ,p<0.01),最 高 重 炭 酸 塩 濃 度 も有 意 (p<0.05)の 逆 相 関 を 示 した(表3). 2) 年 齢 に よ っ て 層 別 し た3群 間 の 比 較 一 元 配 置 分 散 分 析 で は ,純 粋 膵 液採 取法,通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 の 両 法 と も液 量,重 炭 酸 塩 分 泌 量,ア ミ ラー ゼ 分 泌 量 に 有 意 差 を 認 め た(そ れ ぞれ,p<0.01).ど の群 間 に 有 意 差 が あ るか をwilcoxon検 定 に よ っ て 検 討 す る と,両 採 取 法 と も65歳 以 上 群 が39歳 以 下 群 お よび40∼64.歳 群 に 較 べ て有 意 の 低 値 を 示 した(表4).最 高 重 炭 酸 塩 濃 度 に つ い て は 両 採 取 法 と も3群 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た. 3) 加 齢 に よ る各 因 子 の 異 常 低 値 出現 頻 度 65歳 以 上 に お け る各 因 子 の 異 常 低 値 例 出現 頻 度 を算 出 す る と,純 粋 膵 液 採 取 法 で は 液 量3例 (37.5%),重 炭 酸 塩 分 泌 量4例(50.0%),ア ミラー ゼ 分 泌 量3例(37.5%)で あ り,こ れ に 対 して 通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 で は液 量4例(50.0 %),重 炭 酸塩 分 泌 量4例(50.0%),ア ミラ ー ゼ 分 泌 量3例(37.5%)で あ っ た.70歳 以 上 の 症 例 に 限 定 す る と,純 粋 膵 液 採 取 法 で は そ れ ぞ れ,60.0%,60.0%,60.0%で あ り,セ ク レチ ン 試 験 で は そ れ ぞ れ,80.0%,60.0%,60.0% で 両 採 取 法 と もに60歳 代 に お け る 頻 度(純 粋 膵 液 採 取 法 で そ れ ぞ れ,17.0%,17.0%,33.3%, セ ク レ チ ン 試 験 で そ れ ぞ れ,17.0%,17.0%, 33.3%)と の 間 に 差 を認 め た. 表2 65歳 以上 群 と慢 性 膵 炎群 との膵 外分 泌機 能 の 比較 最 高重 炭 酸 塩 濃度 につ い て は慢 性 膵炎 群 が 有 意 の低 値 を示 す が,液 量,重 炭 酸塩 分 泌 量,酵 素 分 泌 量 に つ い ては 両群 間 に有 意 差 を認 め ない。 )Mean±SD 2)Mean±2SD * P<0 .05表3 純 粋 膵 液採 取 法 とセ ク レチ ン試 験 に お け る3因 子 の 測定 値 と年齢 の関 係 両 採 取 法 と も液 量,重 炭酸 塩 分 泌 量,酵 素 分 泌 量 と年 齢 の 間 には 有 意 の逆相 関 を認 め たが,純 粋 膵 液採 取 法 で は最 高重 炭 酸塩 濃度 に お い て も年齢 との 間 に有 意 の逆 相 関 が認 め られ た. *: p<0.01 *: p<0.05 表4 純 粋膵 液 採 取法 とセ クレチ ン試験 に お け る年 齢層 別 に よる3群 間 の膵外 分 泌 機 能 の比 較 両採 取 法 と も65歳 以上 群 は39歳 以 下群,40∼64歳 群 に較 べ て 液量,重 炭 酸 塩分 泌 量,ア ミラー ゼ分 泌 量 の 有 意の低 値 を示 す.最 高 重炭 酸 塩 濃度 につ い て は3群 間に有 意 差 を認 め ない. )Mean±SD 2)Mean±2SD ** P<0 .01 4) 加 齢 に よ る各 因 子 の低 下 程 度 の 比 較 65歳 以 上 群 の 膵 外 分 泌 の低 下 程 度 は 純 粋 膵 液 採 取 法 で は 液 量70.6%,重 炭 酸 塩 分 泌 量69.9%, ア ミラ ー ゼ 分 泌 量63.2%で,通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 で は そ れ ぞ れ,68.1%,66.2%,64.4%で あ っ た.統 計 的 に は両 採 取 法 と も,液 量,重 炭 酸 塩 分 泌 量 が 酵 素 分 泌 量 に 較 べ て65歳 以 上 群 に お け る 低 下 程 度 が 有 意 に 高 度 で あ っ た(p< 0.05). 考 察 加 齢 と膵 外 分 泌 機 能 の 関 係 に つ い て は,膵 機 能 を正 確.に表 示 す る機 能 検 査 法 が な か っ た時 代 か らす で に加 齢 に よ る 膵 外 分 泌 機 能 の 低 下 を 示 唆 す る所 見 が 報 告 され て い た10).その 後secretin, pancreozyminお よ びcaeruleinが 紹 介 さ れ, セ ク レ チ ン 試 験(S試 験),パ ン ク レ オザ イ ミン ・ セ ク レ チ ン 試 験(PS試 験),セ ル レ イ ン ・セ ク レチ ン 試 験(CS試 験)な ど,消 化 管 ホ ル モ ン剤 投 与 後 に 十 二 指 腸 内 に 分 泌 さ れ る 膵 液 を十 二 指 腸 チ ュ ー ブ に よ り吸 引 採 取 し,そ の 諸 成 分 を分 析 ・定 量 す る方 法 が 信 頼 性 の 高 い 膵 外 分 泌機 能 検 査 と し て 普 及 し た.し か し,こ れ らの 検 査 成 績 が 加 齢 に 伴 い低 下 す るか 否 か に 関 して は 報 告 者 に よ っ て 異 な る結 果 が 示 さ れ,一 致 した 結 論 に 達 して い な い4).そ の よ う な背 景 の も と で,今
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ま で 統 一 さ れ て い な か っ た 膵 液 検 査 法 が 日本 消 化 器 病 学 会 膵 液 検 討 小 委 貝 会 に よ っ てsecretin (セ ク レパ ン,エ ー ザ イ株 式 会 社)100単 位 靜 注 法 に 統 一 さ れ た5).筆 者 は,そ れ を 契 機 と し て secretin靜 注 法 を用 い てprospectiveに 加 齢 と 膵 外 分 泌 機 能 の 関 係 を検 討 し,膵 外 分 泌 機 能 は 加 齢 の 影 響 を受 け る こ と をす で に 報 告 した6). しか し,標 準 化 さ れ た セ ク レチ ン 試 験 に 問 題 が な い と は い え な い.十 二 指 腸 チ ュ ー ブ を介 し て 採 液 す る 方 法 は,胃 液,胆 汁,十 二 指 腸 液 が 混 入 す る可 能 性 が あ り,液 量,重 炭 酸 塩 濃 度 の 正 確 さ に 問 題 が 生 じ,そ の 結 果 と して 重 炭 酸 塩 分 泌 量,酵 素 分 泌 量 に も影 響 を及 ぼ し,そ の た め 変 異 係 数 が 大 き くな り,再 現 性 も悪 くな る11). こ の 点,純 粋 膵 液 採 取 法 は カ ニ ュ ー レ を フ ァ ー タ ー 氏 乳 頭 の 膵 管 開 口部 に 挿 入 して 直 接 膵 管 か ら膵 液 を採 取 す る た め 胃液,胆 汁 の 混 入 が ま っ た くな い.本 法 の 有 用 性 に 関 して は 批 判 的 な 意 見 もあ るが12),筆 者 の 詳 細 な検 討 に よ る と十 二 指 腸 チ ュ ー ブ を使 用 す る膵 外 分 泌 機 能 検 査 法 よ り も検 査 時 間 を著 明 に 短 縮 で き,し か も液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度,重 炭 酸 塩 分 泌 量,ア ミラー ゼ 分 泌 量 ともに 基 準 値 の変 異 係 数 が 有 意 に低 い7,8). 従 っ て,こ の 純 粋 膵 液 採 取 法 を 用 い て 加 齢 と膵 外 分 泌 機 能 との 関 係 を再 度 検 討 した. 今 回,純 粋 膵 液 採 取 法 の 検 討 で得 ら れ た成 績 は,通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 で得 ら れ た 結 果 と同 様 に,高 齢 者(65歳 以 上 群)で は 液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度,重 炭 酸 塩 分 泌 量,酵 素 分 泌 量 と も 有 意 に 低 下 す る こ と を示 し た.加 齢 に よ る変 化 を認 め な い とす る従 来 の報 告13,14)を詳 細 に分 析 す る と,報 告 者 に よ り成 績 が 異 な る こ と は 確 か で あ る が,そ の 相 違 は程 度 の 問 題 で,膵 外 分 泌 機 能 は加 齢 と と も に 何 らか の 障 害 を うけ る と考 え られ る. 高 齢 者 に お い て 膵 外 分 泌 機 能 が 低 下 す る 原 因 と し て は,1.労 中 心 細 胞 と細 膵 管 上 皮 の 扁 平 化 ・過 形 成 と細 膵 管 狭 窄 お よ び 腺 房 細 胞 の 萎 縮 と減 少,2.間 質 の 線 維 化,3.動 脈 硬 化 に よ る 膵 血 流 の 減 少,4.分 泌 刺 激 に 対 す る膵 細 胞 の 感 受 性 の低 下 が 挙 げ られ て い る. 筆 者 の 今 回 の 成 績 は 通 常 の セ ク レチ ン 試 験 で 得 た 結 果 と同 様 に,導 管 細 胞 機 能(液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度,重 炭 酸 塩 分 泌 量)の み な らず 腺 房 細 胞 機 能(酵 素 分 泌 量)も 加 齢 に よ っ て 低 下 す る こ と を示 す.従 来,加 齢 に よ っ て 膵 外 分 泌 機 能 の 低 下 を 認 め た 報 告 者 の 間 で も低 下 す る 因 子 に 関 して は,1.導 管 細 胞 機 能 の み に低 下 を 認 め る報 告15),2.腺 房 細 胞 機 能 の み に 低 下 を認 め る報 告14),3.両 者 と も低 下 を 認 め る とす る報 告16-19)が あ り,意 見 の 相 違 が あ る.こ れ らの 報 告 を分 析 す る と,対 象 選 択 基 準 の 厳 し さ や 栄 養 状 態 に 対 す る 配 慮 が 報 告 者 に よ っ て さ ま ざ ま で あ る.ま た,時 代 と と もに 高 齢 者 の年 齢 基 準 も 変 化 して お り,各 報 告 者 の 層 別 す る年 齢 も異 な っ て い る.つ ま り,こ れ ら の 相 違 は 主 と して 対 象 の 選 択 法 お よび 年 齢 層 別 法 の 相 違 に 起 因 す る と考 え ら れ る. 導 管 細 胞 機 能 お よ び 腺 房 細 胞 機 能 の 加 齢 に よ る低 下 の 出 現 時 期,頻 度 お よ び程 度 の 比 較 検 討 は 興 味 あ る問 題 で あ る が,今 回 の 成 績 で は 通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 の 場 合6)と 同 様 に 両 者 の 間 に低 下 様 式 の 差 異 が 認 め られ た.す な わ ち,腺 房 細 胞 機 能 が 加 齢 と と もに 除 々 に 低 下 す るパ タ ー ン を示 す の に 反 し,導 管 細 胞 機 能 は40歳 代 を ピ ー ク とす る軽 度 のconvex curveを 示 し,50歳 代 後 半 か ら比 較 的 急 速 に低 下 す る パ タ ー ン を示 し た.従 っ て 異 常 低 値 の 出 現 頻 度 は60歳 代 ま で は 導 管 細 胞 機 能 よ り も腺 房 細 胞 機 能 の ほ うに 高 い が,70歳 以 上 で は 両 者 が ほ ぼ 同 頻 度 に な る. 一 方,機 能 低 下 の 程 度 に つ い て は,65歳 以 上 群 で 導 管 細 胞 機 能 の ほ うに よ り高 度 の 低 下 を 認 め た.従 来 の 報 告 をみ る と,異 常 低 値 の 出 現 時 期 に 関 して,ア ミラー ゼ 分 泌 量 は60歳 代 で,液 量 は70歳 代 で 出 現 す る と早 川 ら16)が報 告 し て お り,低 下 程 度 に 関 して はSzadkowski17)は 腺 房 細 胞機 能 の 優 位 性 を報 告 し,Vellasら18)は 両 細 胞 機 能 の低 下 程 度 に差 は な い と報 告 し て お り, 筆 者 の 成 績 と 多少 異 な る.病 理 学 的 検 討 で は, Walters20)は 加 齢 と と もに 細 膵 管 の 過 形 成 が 引 き起 こ され,そ の 後,導 管 系 細 胞 の 障 害 か ら 閉 塞 が 起 こ り,つ い に は 外 分 泌 腺 の 萎 縮 が 起 こ る と述 べ て お り,細 膵 管 の変 化 を一 義 的 な加 齢 変 化 と し て 重 視 して い る21). ほ ぼ 同 時 期 に 施 行 し た純 粋 膵 液 採 取 法 と通 常 の セ ク レチ ン試 験 の 結 果 を 比 較 検 討 して み る と,年 齢 に よって 層別 した3群 間の比較,加 齢 に よ
る各 因子 の異常 低値 出現 頻度,加 齢 に よる各 因
子 の低 下程 度 の比較 で は両採 取法 と もに 同様 の
成績 が得 られ た.純 粋膵 液採 取法 に おけ る最 高
重炭 酸塩 濃度 は,ほ ぼ 同時期 に併施 した26例 で
の検 討(表4)で
は65歳 以上群 が他 群 と比較 し
て低 下傾 向 を認め た ものの有 意差 に は至 らなか
ったが,全 症例 を含む65例 での検 討(表1)で
は有 意差 を認 め た.純 粋 膵液 採取 法 にお いて最
高 重炭酸 塩濃 度 は他 の 因子 よ りも変 異係 数 が小
さ く,再 現 性 もよいの で7,8),この結果 の相違 の
原 因は症 例 の違 いに よ るもので はな く,む しろ
症例 数 の違 いに よ る と考 え られ る.他 方,測 定
値 と年齢 の関 係 にお いて,液 量,重 炭 酸塩分 泌
量,ア
ミラー ゼ分 泌量 で は両 採取 法 ともに有 意
の逆相 関が認 め られ たが,通 常 のセ ク レチ ン試
験 では最 高重 炭酸塩 濃 度 と年 齢 の間 には有 意の
関連 が得 られなか ったの に反 し,純 粋 膵液採 取
法 では有 意 の逆相 関が 認め られ た.最 高重炭 酸
塩 濃度 は,胃 液や 胆汁 が混 入す る と低 下す るた
め,膵 液 以外 の分 泌液 が混 入す る可能性 が あ る
通 常の セ クレチ ン試験 で は最 高重 炭酸塩 濃 度 に
混 入液 の影響 が 出現 し,加 齢 の影響 が出現 しに
くくな り,ほ か の分 泌 液混 入の可 能性 が ない純
粋 膵液採 取法 で は加 齢 の影響 が 明確 に認め られ
た と考 え られ,膵 外 分 泌機能 の加 齢 に よる検 討
では通常 の セ クレチ ン試験 よ り純粋 膵 液採 取法
が加 齢 の特徴 をよ く表す と思 わ れ る.
今 回の検討 で65歳 以上 群 と慢性 膵炎群 を比較
検討 した場合,最 高重炭 酸塩 濃度 以外 の 因子 で
は有 意差 を認 めず,ま た慢性 膵炎群 を65歳 以上
に 限定 して比較 した場合 で は全 因子 に有意差 を
認 めず,通 常 のセ クレチ ン試験 で検 討 した結 果
と同様 に,高 齢者 の膵外分 泌 機能 の低下 と慢 性
膵炎 に おけ る低 下 とを鑑 別 しうる よ うな特性 を
認め なか っ た.従 って,高 齢 者 の診 断に際 して
は膵外 分 泌機能 の低 下 のみ に よ り膵疾 患 の有 無
を判 断す るの は危 険で あ り,臨 床症 状 ・所 見お
よび画像 検査 所 見(US, CT, ERCP)と
の関連
を含 め て 総 合 判 断 す る 必 要 が あ る. 結 論 内視 鏡 的 純 粋 膵 液 採 取 法 を用 い て 膵 外分 泌 機 能 の 加 齢 に よ る変 化 を検 討 し,以 下 の 結 論 を得 た. 1. 液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度,重 炭 酸 塩 分 泌 量, 酵 素 分 泌 量 の い ず れ に つ い て も,65歳 以 上 群 は他 の2群 よ り も有 意 の 低 値 を 示 した.す な わ ち,高 齢 者 に お い て 膵 外 分 泌 機 能 は 低 下 す る. 2. 酵 素 分 泌 量 が 加 齢 と と もに 徐 々 に低 下 す る パ タ ー ン を示 す の に 反 し,液 量 と重 炭 酸 塩 分 泌 量 は40歳 代 を ピー ク とす るconvex curveを 示 し,50歳 代 後 半 か ら比 較 的 急 速 に低 下 す る パ ター ン を示 す .そ して65歳 以 上 群 に お け る 機 能 低 下 は 酵 素 分 泌 量 よ り も液 量 と重 炭 酸 塩 分 泌 量 に お い て よ り高 度 とな る. 3. 65歳 以 上 群 と慢 性 膵 炎 との 比 較 検 討 で は, 両 者 に お け る膵 外 分 泌 機 能 の 低 下 を鑑 別 す る 特 性 は発 見 で き ず,高 齢 者 に お け る慢 性 膵 炎 の 診 断 は 膵 外 分 泌 機 能 検 査 の み に 依 存 せ ず, 臨 床 症 状 や 画 像 検 査 所 見 を 含 め て 総 合 的 に 行 う必 要 が あ る. 4. ほ ぼ 同 時 期 に 施 行 した 純 粋 膵 液 採 取 法 と通 常 の セ ク レ チ ン 試 験 の 結 果 を 比 較 す る と,セ ク レ チ ン試 験 で は 最 高 重 炭 酸 塩 濃 度 と年 齢 の 間 に は 有 意 の 関 連 が 得 られ なか っ た の に 反 し, 純 粋 膵 液 採 取 法 で は有 意 の逆 相 関 が 認 め られ, 純 粋 膵 液 採 取 法 の ほ うが 加 齢 の 影 響 を 明 確 に 示 し た. 稿 を終 え るに あ た り,御 懇篤 な る御 指 導 な らび に 御校 閲 を賜 わ りま した恩 師原 田実 根 教 授 に深 甚 の謝 意 を表 し ます.ま た終 始御 懇篤 な る御 指 導 を賜 っ た 岡 山大学 臨 床 検査 医学 原 田 英雄 名 誉教 授 に深謝 申 し 上 げ ます.さ らに研 究に 御 協 力 い た だ き ま した諸 先 生 に感謝 い た し ます. 文 献 1) 原 田英 雄,菊 池武 志,三 島那 基,万 袋 昌 良,近 藤祥 昭,内 田嘉 具,小 野 哲也,藤 原 勝,岡 田啓 成:十 二 指68
石
橋
忠
明
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