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ロボット文化

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Academic year: 2021

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平成 15 年度 Project-P 研究論文

ロボット文化

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I.始めに 80年代のロボットブームによって、日本は世界の産業用ロボットの 54%を持つよ うになり、「ロボット王国」と呼ばれるようになった。こういった産業ロボットが開発 され、稼動したことによって、産業の効率が上がり、戦後 日本は世界でも例を見ないほどの急速な経済発展を遂げたのではないだろうか。例えば 電気製品の生産効率を圧倒的に上げて、品質の向上に貢献したのも、日系自動車企業が 躍進を遂げたのも、産業用ロボットによるものとも思われる1)。現在、日本の産業ロボッ トがサービス業にまで進出し、レストランで注文を受けたり、給仕をしたりするロボッ トや、秘書ロボットまで使用されている2)  しかし、日本では産業ロボットだけではなく、いわゆるエンターテイメント・ロボッ トが独特のものとして次々に開発され、海外からも注目されている。子犬や子ライオン などの動物型の、高性能ペットロボットのブームを起こしたといえるAIBO や、最近テ レビでオーケストラを指揮したり、米国版「鉄腕アトム」のアニメリメイクで声優とし て活躍したりする人型のQRIO がソニーによって開発され、すでに販売されている。ホ ンダのASIMO も、世界最初の二足歩行ロボットであった P シリーズに基づいて開発さ れ、しばしばテレビのCM で放映され、2004年の NHK 紅白歌合戦では、人気アイ ドルグループSMAP と共演することまでできた3)。トヨタも、人工唇を持ち、トランペッ トを演奏できる二足歩行型と二輪走行方ロボット兄弟二体を今年2004年公開した4)  日本の若者たちの間では、「ロボカップ」などのロボットを様々なゲームで競争させ るロボットコンテストがブームになって、テレビドラマや漫画のテーマにまでなってい る。80、90年代にロボット工学を勉強した人たちにとって今のロボットコンテスト の社会的浸透は信じられないほどであろう5)  現在、「オタクの時代」、「子供の時代」と言われ、アニメや漫画、キャラクターグッ ズなどでも、鉄腕アトム、鉄人28号、機動戦士ガンダム、ドラえもん、新世紀エヴァ ンゲリオンなど、ロボットキャラクターが非常に人気を集めている。大阪だけでも、何 件もの総合アニメーショングッズを販売している店がある上、日本橋ではロボットのモ デルや作るための道具を専門に売っている店ばかりではなく、電気製品チェーン店のジョー シンが経営している「GUNDAM`S」という、機動戦士ガンダムのグッズしか扱ってい ない独特の店まである。行って見ると、全国から集まってきたファンたちが、外の歩道 で店の開店を行列で待っている。このようにロボットを愛好するといった傾向は先端技 術国、日本の一つの側面としか見えないが、なぜ日本でこれほどまでにロボットが人気 を呼ぶのだろうか。欧米のロボットと比較しながら、日本のロボットに見られる文化的

1) National Research Council (NRC), 5

2) NRC, 7

3) 瀬名、31

4) 池田、3.12

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背景を考えてみたいと思う。 II.日本のエンターテイメント・ロボットの現象  日本のエンターテイメント・ロボットは海外で不思議な現象と思われ、ニュースにま でなった1)。産業用ロボットが中心になっている西洋では、日本独特のエンターテイメ ント・ロボットはおもちゃとしか思われなかったからだ。実は日本の有名なエンターテ イメント・ロボットであるソニーのAIBO が開発されてから、アメリカでもペットロボッ トに似たおもちゃが流行したが、AIBO そのものは「おもちゃにしては高すぎる」と思 われて、ほとんど売れなかった。これは、産業革命以降技術と遊びを分けてきた西洋で は、日本と違って先端技術を楽しむためにも使うという意識が非常に少ないからだ2) それに、西洋では産業革命時代に開発された機械の大部分は、無人環境の中でもコンピュー タによって制御される産業用ロボットと違ってまだ人間がいなくては稼動できなかった。 西洋では多くの産業が労働組合に守られていて、ロボットを導入することはロボットに 仕事が侵されると言う感覚があったからだ。アメリカの自動車産業でも、80年代にロ ボットを導入したにも関わらず労働者の仕事が85%守られることと言う規制が作られ ていた3) 一方、日本ではこういったエンターテイメント・ロボットは江戸時代にもからくり人 形として作られた。からくり人形というのは、機械的な仕組みによって動く人形のこと である。お茶を運ぶからくり人形がよく知られているが、他にも弓を射る人形や、お祭 りのに装備された山車からくりまであった4)  日本のからくり人形は遊び道具でありながら、実用的な機能も含まれている場合が 多かった。このように実用的技術が遊びの要素と結びついていることは、現代の日本で は多機能携帯電話や友達のようにコミュニケーションをとるパートナー・ロボットなど の製品の中に見られ浸透している。  多機能携帯電話は、携帯電話のもともとの機能、つまりどこでも使える電話として の機能だけではなく、メールでやり取りをする機能や、コミュニケーションとまったく 関係のない、スケジュラーやアラーム、ゲーム、占い、インターネット検索やウェブブ ラウジング、写真やムービー撮影、GPS、好みにカスタマイズできる環境、コンピュー タ用モデム機器などの機能まである。  AIBO などのパートナー・ロボットも、動物型で、ペットみたいに振る舞って遊ん でくれる。特別のAIBO スケートボードやおもちゃで遊ぶことができて、持ち主がコン ピュータソフトによって、AIBO に歌や踊りをプログラムして、演奏させることができ る5)。四代目のAIBO の ERS-7 には、持ち主のために留守番をする機能までついている。 1) 巽『鉄腕アトムの世紀』上 2) 巽『鉄腕アトムの世紀』中 3) NRC, 6-7 4) 末松、からくりフロンティア 5) 瀬名、142 144

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つまり、持ち主が家を出たとき、どこのコンピュータからでもAIBO にアクセスできて、 AIBO に備えられたカメラで家の様子をチェックできるわけだ。ERS-7は、電池の残量 を確認して、なくなった時自分の充電器に戻ってドッキングすることまで自分で行う。 こういった製品はおもちゃというだけではなく、実用的な機能も併せ持ち、遊びと先端 技術が区別されないという日本独特の特徴を示していると思われる。  III.日本独特のペットロボットブーム もう一つの日本独特のエンターテイメント・ロボットは、1996年に国際的な「育 てゲー」ブームを起こした「たまごっち」というおもちゃである。「育てゲー」という のは「育てるゲーム」の省略で、全く新しい遊びとして現れた。当時日本はまだペット ブームが起こっておらず、ペットを飼うというのは現在ほど社会的に認められていなかっ た。日本人の多くはアパートやマンションに住んでいて、ペットを飼う場所もなく、許 可もされないことが大半だった。パートナー・ロボットの原型のようなものとしてバン ダイに開発されて、発売されるや、爆発的なブームを起こした。最初の「たまごっち」 はキーホルダーに付いている小型コンソールで、小さな画面にピクセルで卵の映像が表 示されている。時間が経つと卵がかえって、奇妙な宇宙動物が生まれる。扱い方によっ て、成長の仕方が変わって、えさをやらなければ、たまごっちが「シヌ」場合もある。  しかし、問題になったのは、たまごっちが死ねば、機械の裏に装備されたボタンを 押すだけで、新しい卵が手に入ってやり直すこともできることだ。日本でも海外でも、 この機能によって、子供たちは生き物の命を大事にしなくなったと言われ、遊びとして わざとたまごっちを苦しませたり、殺したりする子供も出たので、子供を残酷にすると も訴えられた。もちろん、たまごっちのブームと共に、偽物のたまごっちや色々のヴァー ジョンも販売された。あらゆる動物を飼うゲームや、「ポケモン」のピカチューや「ディ ズニー」のミッキーやミニーを飼うヴァージョンまで開発された。  しかし、たまごっちがブームを起こしたからこそ、1999年の夏に出た AIBO など のペットロボットが日本人にとって親しみやすいものになったのだろう。高性能ペット ロボットAIBO は、たまごっちのような子供のおもちゃとは比べ物にならない位高度で 複雑な機能を持っているが、日本人の同じ欲求を満たすために開発されたというのは確 かである。生活環境において、時間や住居空間が限られた日本人にとって、AIBO は非 常に魅力的だったと思われる。       AIBO という名前は、人工知能の「AI」や目「EYE」、そしてパートナーという意味 を持つ日本語の「相棒」から作られた。AIBO の開発者たちもまたロボットメディアの 影響を強く受けて、初代AIBO の外観は有名なロボットイラストレーターのがデザイン した。ソニーにとっては、ロボットらしさを保つことが大事だった。一般的に発売され る前、日本ではインターネット予約方式で、日本で売られるための3000体が20分 で売り切れ、海外でも話題になった。しかし、当時アメリカ用の2000体は売り切れ るまで四日間もかかった。この差は、日本人がいかにロボットを愛好するかという傾向

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を示していると思われる1)  IV.西洋の文化背景に影響されるロボットメディア 西洋と日本の宗教的基盤の違いも、ロボットに対する考え方に強く影響を及ぼしてい る。欧米での昔からのロボットSF メディア「フランケンシュタイン」や「R.U.R.」と いう、初めて「ロボット」という言葉が使われたチェコのチャペックという作家に書か れた戯曲などでは、人間的な人工物を作ることが罪悪視され、悲劇的な結末に至ってし まう2)。これは、ユダヤ・キリスト教の掟、「神は人を自分の像の通りに創造した」の 影響を強く受けたと思われる。 このため、有名なロボット SF 作家、アイザック・アシモフは、人間とロボットの共 存社会を想像し、ロボットの三原則を提案した。これは、「第一条、ロボットは人間に 危害を加えてはいけない。」「第二条、ロボットは人間に与えられた命令に服従しなけ ればならない。」「第三条、ロボットは第一条および第二条に反する恐れのない限り、 自己を守らなければならない」という三つの規則で、今でもロボットの大部分が三原則 を基盤として作られている3) 文学上だけではなく、H.G.ウェルズなどの早期アメリカのポピュラーSF 作家も、ロ ボットを宇宙からの侵略者として描いた。こんなロボットSF がアメリカの20世紀前 半に始まったUFO ブームと結びつき、ロボットの「侵略者」とか「敵」というイメー ジを助長したと思われる4) 日本の初代ロボットメディアも西洋のロボット SF の影響を強く受けていた。第二次 世界大戦後、アメリカのSF 雑誌が日本語に翻訳され、日本で販売されるようになった。 しかし、日本ではキリスト、ユダヤ教に生み出されたロボットや人型人工物に対する恐 怖感が少なかったため、ロボットは必ず悲劇的な「敵」としての存在ではなければなら ないという考え方に束縛されることはなかった。しかし日本のロボットSF はすぐに二 つの種類に分かれた。この二つの種類は初代日本ロボットSF、「鉄腕アトム」と「機 動戦士ガンダム」に象徴されている5)  V.日本における二種類のロボット 日本の SF に描かれるロボットの種類の一つは、「鉄腕アトム」や、その後の「ドラ えもん」などの友達になってくれる「他者としてのロボット」である。  「鉄腕アトム」は後の時代において日本のロボット開発に非常に大きな影響を及ぼす 存在になったと言われる。第二次世界大戦、核時代の始めを告げた原爆と共に、日本で は科学がいかにも恐ろしい存在に変わった。戦争の直後、ビキニ環礁で水爆の実験が繰 1) 瀬名、134 149 2) 舘、13 14、32 35 3) 舘、36 38 4) 瀬名、252 254 5) 瀬名、256

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り返して行われ、朝鮮戦争が勃発して、科学による人類の未来が危ぶまれる状況が起こっ てきた。この時代に日本人の科学に対する信頼を取り戻すために、漫画家の手塚治虫が 1951年に、始めは「アトム大使」という、人間と宇宙人の間を調停するロボットキャ ラクターを生み出した。しかし、人間の奴隷というより、人間の友達になれるロボット を作って見せるために、手塚は1952年に「鉄腕アトム」と言うキャラクターにした。 アトムは、核エネルギーによって動く少年型ロボットで、天馬博士というキャラクター によって、事故死で亡くした息子の代わりとして作られた。しかし、ロボットは人間の 代わりになれないと諦めた天馬博士はアトムを捨て、その後お茶の水博士に救われて、 鉄腕アトムは正義の味方として戦うようになると言う話である1) アトムはよく最初の日本的ロボットだと言われる。つまり、アシモフの三原則によっ て生まれた電気製品のような冷たいロボットと違って、人間のような感情を「心シミュ レータ」によって持たされ、日本人に愛好される最強のヒーロー的存在となったのであ る。十七年間以上続いたアトムは、世界中で人気を博し、核エネルギーの平和利用を紹 介すると共に、戦後の日本人に対して未来への希望を持たせてくれた。2003年、ア トムのアニメリメイクが、日本とアメリカで放映されハリウッドでは実写版リメイクも 制作中である2) 一方、アトムなどのパートナー・ロボットと反対に、唯一無二の「鉄人28号」や、 「機動戦士ガンダム」などの巨大ロボットも、現代日本で人気を博している。この場合、 性格などより、デザインや大きさが重視される。こういった「分身としてのロボット」 はほとんどの場合、中に乗っている人間のパイロットに操縦されるという形になってい る。こういったロボットは、60年代、「エグゾスケルトン型人力増幅機」というもの

として、米軍とGE が「MAIS: Mechanical Aid for the Individual Soldier」という計画のも

とに研究していた。しかし、その計画は途中で挫折してしまった。それにはいくつかの 理由がある。まず、パイロットにとって非常に危険なものとされた上に、研究されてい たロボットが人間より少しだけ大きかったことだ。ロボットの本体内に当時のコンピュー タを置く場所がなかったので、巨大ロボットにするという考えが提案されたのだが、人 間の変わりに働くことが難しいので、この計画は破棄された。しかし、この研究が実際 には葬り去られたにもかかわらず、日本においては巨大ロボットSF の基本となって、 フィクションの中で進化していったのである3) 現在、メカと呼ばれている「分身としてのロボット」は、メディアの中で大人気を博 している。「鉄腕アトム」と同時に連載された「鉄人28号」の時代から巨大ロボット という概念はあったが、社会的な大人気のきっかけになったのは、「機動戦士ガンダム」 だと言われている。ガンダムは、1979年に制作されたテレビアニメで、「鉄腕アト ム」の脚本家を書いたと言う作家に書かれた小説シリーズに基づいている。70年代後 半、もはや日本では「鉄腕アトム」のように善と悪が明確に分けられるような時代では 1) 巽、『鉄腕アトムの世紀』上 2) 巽、『鉄腕アトムの世紀』上 3) 舘、146 149

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なくなっていた。ガンダムは、絶対的な善と悪を区別することは難しく、人間にはその 時々で色々事情があり、善にもなれば悪にもなると言う視点から作られたロボットアニ メだった。しかも、アトムと同じように、ガンダムもその作者の第二次世界大戦に対す る意識の変化を表わしていた。富野由悠季はフィクションを使って、戦争中の日本の事 情を論理的に考えていった。実は、意外なことに始めのうちは人気が出なくて、打ち切 られてしまった。そして、また翌年の1980年、映画の三部作として作られ、バンダ イのマーケティングによってブームが起こった。  バンダイはガンダムのオリジナル映画と共に、「ガンダムプラモデル」、つまりファ ンたちが自分で組み立てるモデルも作り出して、食玩などの日本大衆文化の幼稚力にア ピールすることによって、ブームを巻き起こした。二十五年後の現在でも、ガンダムは まだ大人気を博している。数々のテレビ番組、映画、OAV だけではなく、月刊雑誌 「ガンダムエ ー スA」が全国の多くのコンビニエンス・ストアや本屋で売られ、ガンダム のプラモデル、番組、グッズの最新情報、ガンダムをテーマにした連載中の漫画や短編 ギャグ漫画、読者のガンダムをテーマにしたイラストや小説まで載っている。前述のよ うに、大阪の日本橋には全国でたった一つのガンダムグッズ専門店まであって、日本の 若者たちの間で、人気を集めているのだ。 VI.日本のロボットはなぜ人気を呼ぶのか? 1.アニミズム  「鉄腕アトム」などの友達ロボットが日本で生み出されたのは、古来日本の文化基盤 であった神道の「アニミズム」という概念と深く結びついていると思われる。アニミズ ムというのは、あらゆる物に霊や魂が宿るという考え方で、日本の芸術に影響を強く及 ぼしている。特に日本人の伝統的な演劇などにこの伝統がよく見られる。人間をいかに も人形的な存在に変えて、中に宿る魂をドラマ化する能や、その反対に使い手の息吹を 吹き込み人形の動きを巧みに操作することによって、使い手の魂を伝える文楽などは、 人間を魂の宿る器としての人型と考える日本人のアニミズムに基づいていると考えられ る1)  こういった考え方によって現在でも武者人形や雛人形などの伝統行事が続いているが、 日本人とロボットとの関係も、このアニミズムが関わっていると考えられ、 日本人の ロボットを愛好する文化の基調をなしているのではないだろうか。すなわち、ロボット は人間が神の業を侵害し、人型を作ることだと考える西洋の伝統と異なり、日本人にとっ て人間と平等の物であり、ロボットと共存することについての違和感が非常に少ないの だ。  今でも電気製品などのテクノロジーの中に霊魂が宿ると感じられ、コンピュータシス テムや自動車のためにお払いが行われたりする。AIBO の持ち主は、たとえ動物の形を していてもロボットは感情を持つことができないとわかっていながら、AIBO に愛され 1) 巽『鉄腕アトムの世紀』中

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ているとさえ感じる場合も多いらしい。しかし、AIBO などの動物型ロボットだけでは なく、産業用ロボットにでも「百恵ちゃん」や「チョースケ」などの人間の名前が付け られる場合も多いのだ1)  2.対人恐怖症への傾向 しかし、日本人のロボットに対する愛好はアニミズムにだけよるというわけではない。 もう一つの理由として、日本人の社会構造、特に「甘え」と、そこから生まれる対人恐 怖症への傾向が考えられる。現在、前述の多機能携帯電話が普及しても、若者たちはほ とんど電話として使わない。メールだけを使う場合が多く、表面的なコミュニケーショ ンが多いことが見られる。日本語では相手のことを傷つけないように、相手や「場」と いうことを考えてから、どんな話し方をするのかを変えなければならない。の「日本文 化の特徴について」では「自分を著しく卑下したり、反対に他者を過大に尊称する美意 識の背景には、日本的な人間関係から生まれる不安や対人恐怖があるのではなかろうか」 と説明されている2)。こういった理由で、日本人は直接的なコミュニケーションより間 接的なコミュニケーションを好むようになり、前述のような若者たちの携帯電話の使い 方などの例が生じるわけである。同様に、人間より機械のほうが安心できるという場合 も多く、ロボットこそ友達になれるという心理がここから生まれると思われる。       A.美少女・美少年ゲーム 日本人の自閉への傾向を示している一つの例として、日本独特のテレビゲームジャン ル、「美少女・美少年ゲーム」があげられる。「美少女・美少年ゲーム」というのは、 コンピュータ上でゲームのキャラクターと恋愛を楽しめる「デート・シミュレーション」 というジャンルだ。多くの「美少女・美少年ゲーム」には幅広く色々の人にアピールを するために色々のキャラクターが含まれている。多くのタイトルは漫画やアニメのアー トスタイルやストーリの流れにそって、実際に「新世紀エヴァンゲリオン」、「サクラ 大戦」などの人気ロボットアニメのキャラクターと「デート」ができる作品まで販売さ れている。 最新タイトルのニュースやリリース情報が、「ゲーマーズ」などの漫画やゲームのグッ ズを販売している全国的チェーン店に配られて、ほとんどのパソコンソフトを扱ってい る店舗で数多く売られている。各キャラクターのファンページがインターネットに乗せ られ、他のファンと会話できる掲示板などまである。こういったデートシミュレーショ ンは、日本で現在の「オタク時代」の若者たちの間にブームを起こし普及している。日 本アニメが日本以上に西洋で流行っている今だからこそ、いくつかの「美少女ゲーム」 が米国で発売されるようになったのだが、不思議なことにこういったソフトは西洋のア ニメファンの中でも、ほんの一部にしか人気がでないのだ。 B.カラオケ・ボックスへの変遷 また、カラオケの例も日本人の最近の対人恐怖症への傾向を示していると思われる。 1)巽『鉄腕アトムの世紀』中 2) 上地、101

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この二十年間、カラオケの技術が進んで、日本人にとって歌がお祭りや宴会での遊びで はなくなって、ほとんどカラオケボックスだけで歌われるようになった。そのカラオケ ボックスは、歌の共同性、そして歌うことによる開放感を奪って、歌を箱の中で行われ る自閉的な遊びにした。しかも、カラオケボックスのマイクによって、声が美化され、 集団で行っても共同性のなさによって、歌い手だけが興奮すると言うような遊びになっ てしまった。ある意味で、自己中心的な遊びである。外との交流もなく、ひとりで自分 のナルシスティックな世界に閉じこめる機械との遊びになった1) C.日本の「ゲーセン」 こういった自閉的世界は「ゲーセン」の構造の中でも見られる。「ゲーセン」は「ゲー ム・センター」と言う言葉の省略で、日本で非常に多い。しかし、アメリカの「アーケー ド」と店内の様子が全く違う。アメリカのアーケードでは、テレビゲームの機械が大き くて、プレイヤーが肩を並べて、立ったままでゲームをする。多くのゲームは二人用だ が、四人用まである。90年代からアメリカのアーケードは、モールのアーケードで起 こった誘拐事件などのため、危険なイメージがあって、最近は非常に少なくなってきて いる。一方、日本のゲーセンはよく駅前などの、歩行者が大勢通り過ぎるところにある。 これは、放課後の子供たちや、帰り道の通勤者にも寄ってもらうためである。 日本のゲーム機械はアメリカのよりはるかに小さく低くて、立ったままでは使えない。 日本のゲーセンは多くの場合機械が一人用になっている。二人用のゲームもあるが、ア メリカでは相手と並んでする場合が多いのだが、日本ではゲーム機械でお互いが完全に 見えなくなっている状況で、相手と向かい合ってする場合が多い。その上、友達と一緒 に行った時でなく、一人でゲームをしに行ったときは、知らない人と二人用のゲームで 対戦を試みることはほとんどない。二人用の機械の一方を使って他の人がゲームをして いる場合、もう一方を使って対戦することなく、その人が使い終えることを待つ場合が 多い。アメリカの場合、二人用のゲームには知らない人とでも気楽に対戦していくのと 対照的である。古い一人用ゲームで、画面が大きなポッド型の壁とベンチに囲まれてい て、知らない人からは見えなくなっている場合も多い。日本のゲーセンの機械配置は人 が多くても、なるべく他人に会わなくてもいいような形をしているとても不思議な空間 に思われる。 D.日本独特のモニュメントブーム 巨大ロボットの場合も同様の傾向のあらわれとも見られる。例えば、象徴としての戦 艦大和や巨大モニュメントに対する愛好と同じだと考えられないだろうか。最近、若者 たちが上京するに伴って、日本の地方で過疎化が恐ろしい速度で進み、地方都市では観 光客や住民を取り戻すために色々の対策をとっている。そのために次々と巨大モニュメ ントや施設を築くところも少なくはない。 田舎だけではなく、都会でも大規模な建設 計画が次々と挙げられ、全国的なモニュメントブームが起こっている。しかし、こういっ た施設の多くはほとんど使われずにいるだけなのである2)。日本学者のアレックス・カー 1) 佐々木、66 2) カー、167 169

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は、新京都駅舎の例によって、日本の最近のモニュメントブームこう説明している。 「街は相変わらず南北に分断されたまま、京都の歴史や文化のにおいを完全に排除した ものだ。灰色の箱があたりを圧するように広がり、その巨大さに京都市民は〈軍艦〉と あだ名しているほどだ。〈中略〉ひとつの徴候は、徹底的に周囲の環境を拒否している こと。そしてもうひとつは拡声器の音量を目いっぱいあげているような仰々しい構えで ある。つまらない街に落ちてゆく京都を前に、駅はその巨大さで人を圧倒しようとして いるわけだ。」1)しかし、なぜこれまでに巨大モニュメントが好まれるだろうか。これ に対して、日本人の対人恐怖症と結びついた強迫観念から生まれる、巨大なものに対す る憧れだと言う説明がある。確かに、アメリカなどの平坦な国の広い草原を見るの同じ ように、巨大なものを見ると開放感を感じるという日本人も少なくはない。 3.幼稚力 日本は「ロボット王国」だけではなく、「子供の天国」ともよく呼ばれる。たしかに、 まだ比較的に安全で、文化的にも子供にとって非常に快適なところだと言われる。テレ ビアニメ、ペットロボット、おもちゃ、ゲーセン、などの、子供の文化が蔓延している。 さらに、現代日本では奇妙な現象が起こっている。朝日新聞のコラムの中で赤瀬川原平 はこう語っている。「幼稚であることがトレンドにもなっている。若い女性の幼稚っぽ い言葉づかいがそれを象徴している。(中略)〈アーテリジェント〉というコピーを見 つけて、うははと思った。アートがいよいよ化学調味料となって「アート風味」の新商 法だ。すぐさま「ヨーチリジェント」という言葉が浮かんだ。しかし幼稚がトレンドと して意識されているうちはまだしも、今はそんな意識も蒸発して、幼稚は完全に肉質化 している」と言う2)。つまり、日本では子供っぽさは、トレンドという線を越えて、完 全に人の無意識的な部分となっていると言うことだ。子供と大人の線が非常に曖昧になっ てきたため、こういった子供に好まれるグッズや商品が多くなって普及してきた。  しかし、日本現代美術家、村上隆に名づけられた「幼稚力」は、最近珍しい文化特 徴として世界の注目を引くようになっているといわれる。戦後日本の社会階級がなくなっ て、中流的な大衆文化が生み出された。以前、上流階級の領域であったアートが、戦後 変わりにアニメ、漫画、ゲームなどの大衆文化として進化してきた。大衆から生まれた 子供文化がまた日本社会に支えられて、現代文化の一部となれた。このため、日本で子 供文化は大人の間でも認められていて、一般社会の中でロボットアニメなどのメディア を流行させていると思われる。そして、日本の幼稚力という概念が、「カワイイ」とい うことを何よりも優先させてきた。この「カワイイ文化」も、AIBO や QRIO などのエ ンターテイメント・ロボットのデザインや機能に影響を及ぼし、そういったロボットの 人気の要因一つとも思われる3) 4.異物恐怖 最近、アトムなどのロボットヒーローの「他者としてのロボット」とは異なり、主人 1) カー、168 169 2) 村上、448 3) 村上、448 451

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公の人間に操縦されるガンダムなどの「分身としてのロボット」が現象的に増えてきて いる。しかし、エグゾスケルトン型人力増幅機、つまりメカが米軍によって研究された のにも関らず、メカを操縦するSF の主人公はアメリカではほとんど見られない。その 反対に、「アメコミ」、アメリカのコミックスの中でよく描かれている主人公は放射線、 あるいは未知の科学物質によって、不思議な超人的な力の持ち主になる場合が多い。ま たは、機械的部品の移植によって超人的なサイボーグロボットになる場合も少なくない。 人気アメコミ「X-Men」は、そういったキャラクターが両方とも描かれている。が、反 対に日本では体の中に異物を入れて、身体を変えることに対する恐怖感が強い。もしか したら、身近で原爆を体験した戦後の日本で、放射線などで苦しんだ人が多く、前述の ように科学が恐ろしい存在になっていたため、こんな設定は日本の漫画で流行らなかっ たのではないだろうか。実に、アメリカの超人的な体を持つヒーローやサイボーグロボッ トより、日本ではロボットを道具として使用して自分の力を強化する場合が多い。しか し、この分身としてのロボットの流行は、別の意味も持つといえる。つまり、他者とし ての超人的なロボットに憧れるより、ロボットを自分の手足のように使うことによって 誰でも強くなれるという考え方のあらわれであり、科学を他者として畏敬する段階から、 自分のものとして使用し自己を強化する段階へと変わったことを示しているともいえる のである。 VII.ロボットアニメと技術の関係 日本でのロボット技術の発展は、日本の精神風土から生まれたロボットアニメと強い 結びつきがある。子供の頃から鉄腕アトムを見てきた世代がアトムから強い影響を受け、 ロボットの研究を始めた。政治家や消費者の間でロボットの開発を応援する日本人も多 いために、日本が世界的なロボット王国になれたともいえるだろう。 一つの例として、ドラえもんが挙げられる。ドラえもんと言うのは、1969年に藤 子・F・不二雄という漫画家コンビに生み出された人気のロボットキャラクターである。 ドラえもんは、青い猫型ロボットで、野比のび太という日本の少年を助けるために、二 十二世紀の未来から二〇世紀に送られてきた。ドラえもんの腹部には「四次元ポケット」 というものが付いていて、このポケットから二十二世紀から持ってきた道具を取り出し てのび太を助ける。天気を変える「お天気ボックス」や部屋を暗くするための「消光電 球」などの奇妙な発明が多い。言うまでもなく、ドラえもんは今でも子供たちの人気者 であり、アトムと同じように日本の大衆に愛され続けるキャラクターの一つである。 しかし、ドラえもんは日本社会にどんな影響を及ぼしてきたのだろうか。それは、驚 いたことにロボティクスと発明との面でドラえもんの影響を受けて開発された技術がか なり見られるのである。例えば、現在人気おもちゃメーカーのバンダイの「ロボット研 究所」ではドラえもんのロボットを開発する研究プロジェクトが行われている。このプ ロジェクトには三段階がある。始めは音声認識機能付きリモコン式おもちゃの「ドラえ もん・ザ・ロボット」が開発され、今年発売された。そして、2006年に「ドラえも ん・ザ・フレンド」という視覚、触覚センサーがついていて、友達みたいにコミュニケー ションをとる、もう一段と性能が上がったロボットおもちゃとして発売される予定であ

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る。そして、プロジェクトの成果として、2010年までに開発される予定の「リアル ドリーム・ドラえもん」に至る。「リアルドリーム・ドラえもん」というのは、本物等 身大の129.3 cm で、言葉を新しく覚えたりして、人間とのふれあいによって、自分 のプログラムを改良できる機能を持っている。表情もマイクロメカニズムを使って実現 する方式になるといわれている。 しかし、ロボティクスだけではなく、一般的な発明の分野の中でも、ドラえもんが強 い影響を及ぼしている面があるのだ。漫画でドラえもんが「四次元ポケット」から出し たものは、当時空想科学にしか見えなかったが、現在いくつかが実際に開発されてきて、 もう既に販売されている。例えば、ドラえもんの、言われた言葉をそのまま書いてくれ る「聞き書きタイプライター」がIBM のビアボイスというソフトとして売られている。 「動物語ヘッドホン」という動物の言葉を日本語に直してくれるヘッドホンは、タカラ に「バウリンガル・ミャウリンガル」などの、動物の意思を伝える機械として作られて いる。ドラえもんの「翻訳コンニャク」という言葉を訳す食べ物の変わりに、携帯電話 上でテキストを翻訳する機能がもう既にTu-Ka、AU などのメーカーの電話についてい る1) 日本でのロボット技術は、ドラえもんの例によく象徴されていると思われる。ロボッ トアニメに一般人が影響されて、ドラえもんなどの人気キャラクターにそっくりのロボッ トの開発への欲求が高まる。そして、こういった興味に応えるため、企業は多くの研究 費を費やして、開発しようとする。しかし、ロボットだけではなく、ロボットアニメの 中で発案されるテクノロジーも、ドラえもんの例のように注目を浴びるようになり、大 衆の欲求を満たすために会社が開発し始めしようとする場合も多く見られる。こういう 風に現実世界におけるロボット技術がロボットアニメの世界に触発され進んでいく。 こういったロボットアニメの影響は非常に強いように思われる。大阪の浅田稔教授は こういう風に説明している。「学会でこれだけアクティヴなディスカッションができる のは、何かをシェアしているからなんですよ。それが例えば『鉄腕アトム』だったりす るわけです。各自によって解釈は違うんですよね、アトムを見て何をつくるかっていう のは。足をつくるのか、目をつくるのか、手をつくるのか。つくるものは違うんだけれ ども、やっぱりシェアしているんですよ。」2)「本当の」アトムやドラえもんが作り出 される日はまだまだ遠いが、日本の研究者に共有できる夢があるからこそ、日本のロボッ ト技術が急速に発展してきたといえるだろう。 VIII.日本ロボティクスの未来 最近、日本では電気製品の製造会社が次々とロボットを出しており、これからはどう なるかということが非常に大きな話題になってきている。実は、未来のロボティクス技 術の進展はもうすでに見えてきていると思われる。ヒューマノイド・ロボティクス・プ ロジェクト(HRP)という開発計画グループが1998年から五年間国家の支援を受け 1) 扶桑社編集部、「ドラえもん」学、35 41 2) 瀬名、264

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て研究を始めた。このHRP の一つのプロジェクトの中で、「アールキューブ」という ロボティクスシステムの研究がある。「アールキューブ」というのは「レアルタイム・ リモート・ロボティクス:実時間遠隔制御ロボット技術」の省略で、簡単に言うとイン ターネット上の遠隔装置によって、ロボットを制御することである。もうすでにこのシ ステムは簡単に実現できている。アールキューブプロジェクトの標準言語であるRCML のホームページ1)では、プログラムをダウンロードして、遠隔地にあるロボットに接続 し、制御するというシステムがもう既に開発されている。 アールキューブプロジェクトが将来的に目指しているのは、ホンダの ASIMO の先輩 であるP3 という二足歩行ロボットを使ったアールキューブシステムの開発だ。しかし、 非常に重要な部分とは、特別なコンピュータによって制御されるシステムではなく、世 界中のどこのパソコンでも制御できるシステムを作ることである。つまり、無人工場な どでの複雑な作業のためだけではなく、一般人も使えるように開発されているというこ とだ。将来的にバーチャルリアリティと一体化して稼動するシステムになるとされてい る。例えば、ヒマラヤなどの、人間にとって危険なところにP3 ロボットを何体も設置 し、インターネット上でロボットにアクセスして、ロボットにエヴェレストを登山させ る。バーチャルリアリティが設定されている場合、ロボットが見たものを人間が全てロ ボットの中に入っていたかのように見て、ロボットを通じて体験することができるのだ。 このシステムによって、危険なところだけではなく、障害があるために外出できない人 や、旅行をする余裕のない人が簡単に異なった世界を体験できるようになる。社会学や 歴史の授業にとって、有効な道具にもなりうるだろう。遊びとしての様々な使い方も少 なくはない。遠距離に住んでいる友人や親戚とすぐ対面できる。そして、インターネッ ト上のビジネスをより円滑に効率よくするための道具ともなれる。世界中のどこの店に もロボットを送って、バーチャルリアリティを通じて自分の目で商品を見ることまでで きる。それだけではなく、ロボットの技術が進めば、ロボットに接続したとき、自分の サイズに設定して、ロボットに衣装を試着させるようになれるとHRP 会長のは「ロボッ ト入門」という新書で行っている2)  しかし、「ロボット入門」によると、アールキューブなどのロボットが成功するに は、いくつかの機能が必要だと言われている。まず、「安全知能」、つまりアシモフの 三原則にしたがって、ロボットは人間に障害を与えられない装置を含めなければなれな い。ロボットが人間を傷つけたと言うことになれば、日本でも西洋に似たロボットに対 する悲劇的なイメージが生じる可能性があるからだ。次ぎに、「分身性」が大事だと言 われている。他者としてのロボットが開発され続けたら、いつかは「ロボットの権利」 などのことが話題になってくると言われる。そんな話になる前に、分身としてのロボッ トの技術を優先させるべきだと言われている。そして、分身としてのロボットにとても 必要なものとして、「非匿名性」が述べられている。「非匿名性」と言うのは、アール 1) http://www.rcml.org 2) 舘、168-192

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キューブなどのロボットを制御している人の名前や顔などが明らかになることである。 そうではないと、犯罪やプライバシーの問題が生じる可能性が高いからだ1) しかし、アールキューブだけではない。ソニーのAIBO や QRIO の開発に示されてい るように、「パートナー・ロボット」の時代がもはや始まろうとしている。「ロボット 入門」では、後約十年間、人間一人に付き小型ロボット一体という比率に至るまでロボッ トが普及すると予測されている。現在、インフォメーション時代の中で、そんな世界が 実現する可能性は非常に高い。個人パートナー・ロボットが子供の頃からずっと、友達、 保護者、先生、秘書、パソコンなどの役を全部やってくれる貴重な存在になる可能性が 高い。しかし、こういった予測が実現された場合、友達になることによって、若者たち を自閉的孤独から救い出すのか、それともロボットとの関係に頼るようになった人の対 人恐怖的な症状を助長するのか、まだ私たちには予測できない。 IX.最後に 現在日本で一番注目を浴びている分野はロボット工学だといわれている。日本は、宗 教的文化的背景を基盤にロボット工学の研究者が技術を発展させるのに恵まれた環境な のかも知れない。先端技術を遊びと同格に認識すると共に、ロボットを拒否しないだけ ではなく、アニミズムなどの精神基盤によって逆に愛好を生じる場合も多い。同様に、 対人恐怖症への傾向によって、人間よりもむしろロボットだからこそ友達になれるとい う考え方まで生まれる場合が多い。社会的に好まれていると言ってまで良い位普及して きている。しかも、民間会社、全国の大学、政府の支援を受ける研究グループが研究の 成果を共に話し合える状況があるからこそ、ロボット技術は日本でこれほど加速的に発 展できたと思われる。  しかし、ロボット工学は機械工学とコンピュータのプログラムだけでいいというわ けではない。ロボットをこれ以上発達させるためには、徹底的に人間の感情、生理、認 知システム、また全ての統合機能、そして人間のロボットや機械に対する複雑な感情体 系を研究し理解することが必要である。特に、日本人のロボットに対する愛好感を究明 することは、西洋のロボット工学研究を進展させると同様に、日本人の研究者のために もなると思われる。 1) 舘、199-203

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参考文献 アレックス・カー、2002年、『犬と鬼 知られざる日本の肖像』、講談社 池田昇、2004年、『ロボット吹奏楽団誕生 トヨタが唇の動きを実現』、産経新聞、 3月12日 上地安男、2003年、『もう一つの沖縄 日本論 その母性と父性』、新風舎 村上隆、2004年、『「カワイイ」を世界に発信せよ 「幼稚力」こそ日本文化を牽引 する哲学』、日本の論点2004、文藝春秋、448 451p. 佐々木瑞枝、1995年、『カラオケの文化』、日本事情ハンドブック、大修館書店、6 6 69p 産経新聞編集部、2004年、『二足 ロボ の 名指揮者、 「キュリオ」が「運命」交響 曲をタクト』、産経新聞、3月10日 末 松 良 一 、 制 作 日 不 明 、 『 か ら く り フ ロ ン テ ィ ア 研 究 』 http://www.suelab.nuem.nagoya-u.ac.jp/~suematsu/karafro.html、 20 0 4 年 4 月 8日 瀬名英明、2001年、『ロボット21世紀』、文春新書 、2002年、『ロボット入門 つくる哲学・つかう知恵』、ちくま新書 巽孝之、2003年、『鉄腕アトムの世紀 4 .7誕生日を前に』上・中・下、読売 新聞、4月2日から三日間

National Research Council, 1990年、『Approaches to Robotics in the United States and Japan: Report of a Bilateral Exchange』、National Academy Press

扶桑社編集部、2002年、『最強ビジネス本としての「ドラえもん」学』、週刊SPA!、 6月18日、35 41p..

参照

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