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福井県嶺北地方の湧水中の水質組成

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(1)

著者 三浦 麻, 荒川 直美

雑誌名 日本海地域の自然と環境 : 福井大学地域環境研究

教育センター研究紀要

号 27

ページ 77‑91

発行年 2020‑12‑01

URL http://hdl.handle.net/10098/00028612

(2)

(キーワード:湧水,水質組成、福井嶺北,飲料水,日本海側地域)

AsaMiura

(DepartmentofScienceandMathematicsEducation,FacultyofEducation,HumanitiesandSocialSciences, UniversityofFukui,Fukui,910-8507)

** NaomiArakawa

(SAKAICHEMICALGROUPon,Sabaecity,Fukui,916-0088)

1 はじめに

湧水は水循環の過程で地下水が地表に現れたものであり、地域の生態系を支える重要な環境要素で あるとともに、生活に潤いをもたらす地域の文化資源としても貴重な存在である(環境省,2010)。

地下水は自然環境のなかで涵養され、周囲の環境や地層の影響を受ける。また、様々な人間活動が地 下水に影響を及ぼすこともあり、水量の減少や水質の悪化などの問題がみられる地域もある。湧水は 水循環の一部であり、湧水を調査することは地下水の健全性を知るのに有効である。一方、地下水(湧 水)は良質で安価な水源であり、古来より地域の人々の生活用水や産業用水として使われ、湧水は人々 の暮らしと密接に関わってきた。福井県においても、良好な水質、豊富な湧出量など多様な湧水が存 在し、その多くがそれぞれの地域において古くから現在まで守られ、飲料水として活用されつづけて いる。

本研究では、湧水の保全はいうまでもなく、資源利用のひとつとして湧水の可能性を探ることを目 的とし、前報(三浦ら,2018)において調査した「ふくいのおいしい水」に認定されている福井県嶺 北地方の湧水地点の再調査に加えて、認定されていない地点の湧水を調査した。本報告では、水質分 析によって得られた化学成分のデータに基づいて、硬度等の水質成分および水質組成図を用いた水質 組成タイプ解析および推測される水の起源について検討した。

2 研究対象地域

本研究の対象地域である福井県嶺北地方の西側は日本海に面しており、北東側の石川県境および岐 阜県境には、加越山地や越美山地などの山稜が連なっている。また、日本海側の丹生山地と東側の加 越山地に囲まれるように福井平野が広がっており、水田等の農業地帯として多く利用されている。ま た、嶺北地域東側の大野市では、荒島岳などの山々に四方を囲まれて大野盆地が形成されている。福 井県の総面積のおよそ 8 割は山地であり、山地で蓄えられた水は地下に浸透し、盆地や扇状地、平地 において豊かな地下水脈を形成している。

本研究は、福井県嶺北地域の福井市、鯖江市、越前市、大野市および勝山市に存在する湧水のうち 33 地点を調査した。大野市の市街地に位置する湧水を除くと、ほとんどの採水地点が谷、もしくは

No. 27, 77 - 91, 2020

Chemical composition contained in fresh natural water in Northern Fukui

福井県嶺北地方の湧水中の水質組成

三浦  麻*

 (福井大学 教育・人文社会系部門    教員養成領域 理数教育講座)

荒川 直美**

 (酒井化学工業株式会社)

(3)

図1 調査地域

(大野市を拡大し、枠内abcdに示す)

(4)

表1 採水地点の概要(地点番号は図1と対応する)

地点

番号 採水地点名 所在地 ふくいのおいしい水

認定あり(○印)

① 水分神社

福井市

長橋町

② 糸崎町 糸崎町

③ 金光水 荒谷町

④ 名水足谷の清水 足谷町

⑤ 弘祥寺跡地の甘露水 金屋町

⑥ 岡の泉 次郎丸町

⑦ 許佐羅江清水

鯖江市

定次町 ○

⑧ 刀那清水 上戸口町 ○

⑨ 三場坂清水 上河内町 ○

⑩ 桃源清水 上河内町 ○

⑪ 解雷ヶ清水

越前市

千合谷町 ○

⑫ 段田清水 米口町 ○

⑬ 石神の湧水 大虫町 ○

⑭ 治左川井戸 上真柄町 ○

⑮ 皇子ヶ池の水 粟田部町

⑯ 命の水 杉尾町

⑰ 瓜割清水 赤谷町 ○

⑱ 榎清水 横住町 ○

⑲ 石堂の水 西河内町

⑳ 石灯籠会館清水

大野市

本町 ○

水舟清水 元町 ○

芹川清水 元町 ○

七間清水 元町 ○

新堀清水 城町 ○

御清水 泉町 ○

義景清水 泉町 ○

清水広場 弥生町 ○

本願清水 糸魚町 ○

篠座神社の御霊泉 篠座 ○

岩屋観音

勝山市

北郷町

神谷の水 村岡町栃神谷 ○

たらたら山「白竜の滝の霊水」 村岡町浄土寺

中村の清水 北谷町谷

(5)

山地から平地への接続部である。採水地点の位置および概要を示す(図 1、表 1)。湧出形式は自噴式、

ポンプアップ式、斜面浸出があり、また、集水した水を塩ビ管や蛇口によって採水するなど多様であっ たが、本研究ではこれら全てを湧水として取り扱った。今回調査した湧水 33 地点のうち 21 地点は、

2020 年 1 月現在、「ふくいのおいしい水」に認定されている(福井県,2019)。

3.研究方法

3.1 現地調査

2019 年 6 月から 11 月にかけて、研究対象地域における 33 か所の湧水を調査した。現地では、水 温、pH、電気伝導度(EC)および流量を測定した。水温、pH、EC は、pH・EC メータ(HORIBA D-54)を用いて測定した。流量は、手付きビーカーを用いて、一定時間における流出量を 5 回測定し、

その平均値を採用した。採水した湧水は 250mLポリ容器に入れ、クーラーボックスで保冷して実験 室に持ち帰った。

3.2 水質分析

(1)イオン成分

 湧水中のイオン成分(Na、K、Mg2 +、Ca2 +、Cl・NO3、SO42 -)をイオンクロマトグラフィー

(東ソーIC-2010)を用いて濃度分析を行った。また、重炭酸イオン濃度を JISK010113.1酸消費 量(pH4.8)に準じて分析を行った(日本規格協会,2009)。なお、重炭酸イオン(HCO3)の含有 量は、pH8.4 酸消費量を P とし、pH4.8 酸消費量を M とするとき、HCO3=M - 2P の式によっ て求められる(地下水ハンドブック編集委員会,1998)が、今回採取した湧水は、全て pH8.4 以下 であったため、HCO3濃度を求めるのに、pH4.8 酸消費量のみを使用した。

(2)シリカ(SiO2)濃度

 シリカ(SiO2)濃度は携帯用吸光式水質分析計(セントラル科学photoFlexSTD)によって測 定した。分析方法は USStandardMethods4500-SiO2に準拠している。

(3)化学的酸素要求量(COD)

 COD 分析には、シリカ分析と同様に携帯用吸光式水質分析計を用いた。分析方法は JIS 法(過 マンガン酸カリウム酸化法)に準拠している(浦野,2002)。なお、COD はすべての湧水において 検出されなかったので、本報告では省略した。

3.3 データ解析

(1)硬度

 飲料水としての水を検討する際、しばしば硬度が用いられる。硬度とは、水中の Ca および Mg の量を、これに対応する炭酸カルシウムCaCO3の単位体積当たりの質量(mg/L)に換算したもの である。ここで、硬度をA(mg/L)とすると、以下の式(a)によって求められる。

A(mg/L)=Ca(mg/L)×2.49+Mg(mg/L)×4.11   (a)

世界保健機関(WHO)では、水の硬度は表 2 のように区分されている(食品安全委員会,2017)。

表2 水の硬度

区分 硬度(mg/L)

軟水 60以下

中硬水 60 ~ 120 硬水 120 ~ 180

超硬水 180以上

(6)

(2)水質組成図

 多数の分析された湧水の水質特性は、水質成分項目の濃度や項目間の比較によって湧水の特徴が 把握され、直観的に把握するために図形化して示される(日本地下水学会,2009)。水質の特徴を 示す図形は様々があるが、本報告では、シュティフダイアグラムとトリリニアダイアグラムを用い て検討した。2つのダイアグラムを併用することで、地下水等の水質の特徴を把握することができ る。各ダイアグラムの概要は以下に示すとおりである。

 〔シュティフダイアグラム :Stiffdiagram〕

 シュティフダイアグラムは、図 2 に示したように、中央の値を 0 として左側には陽イオンが上か ら順にNa++K+、Ca2+、Mg2+、右側には陰イオンが同様に Cl、HCO3、SO42+(+NO3)が示され、

これら 6 成分の含有量(ミリ当量値 meq/L)を中央軸からの長さで対応するように表したもので ある。各成分のプロット値を結んだ六角形が 1 地点ごとに作成され、その形と大きさから地点ごと の水質組成の特徴を直感的に把握できる。

 〔トリリニアダイアグラム :TrilinearDiagram〕

 トリリニアダイアグラムは、中央の菱形座標図(キーダイアグラム)と左右の 2 つの三角座標図 からなり(図 3)、piper(1944)によって開発されたものである。この図から、化学成分濃度の相 対的な割合を知ることができ、Na++K+、Ca2+、Mg2+、SO42+(+NO3)、HCO3、Clの成分の場 所による違いや同一地点での水質組成の時間変化を示すことができる(日本地下水学会、2009)。1 試料の結果はそれぞれ 1 プロットで示され、濃度が著しく異なるものも同様に表示できる。1 つの 図のなかに、全ての試料水を表示させることができ、キーダイアグラムにおけるプロットの場所に よって水質組成のタイプを分類することができる。表 3 に水質組成の型とその特徴について示す。

図2 シュティフダイアグラム

 

meg/L meg/L

(7)

4.結果および考察

4.1 湧水の硬度および成分

現地調査および水質分析の結果に基づき、各地点の湧水の硬度を算出した(表 4)。算出には、

Ca2+と Mg2+の濃度を用いた(式(1))。調査地点の中で最も低い硬度を示したのは、地点の勝山 市村岡町浄土寺の「たらたら山『白竜の滝の霊水』」の 7.54 であり、最も高い値は、地点⑯の越前市 杉尾町の「命の水」であり、119.92 となった。33 地点の硬度を表 3 の区分に当てはめると、29 地点 が軟水、4 地点が中硬水であった。また、各地域に存在する湧水の硬度は、地域ごとに特徴が見られた。

湧水の硬度のばらつきが大きい地域は越前市(標準偏差 25.84)であり、湧水地点数が同程度の大野 市(標準偏差 3.52)と比較しても明らかである。標準偏差がもっとも小さくなった地域は勝山市であっ た。

各湧水に含まれる 8 項目(HCO3、SO4、NO3、Cl、Ca、Mg、K、Na)のイオン成分分布を図 4 に 図3 トリリニアダイアグラム(下左右図)とキーダイアグラム(中央図)

表3 キーダイアグラムにおけるプロットされる水質組成タイプの分類

区分 水質組成型 水の起源

Ⅰ型 アルカリ土類非炭酸塩 温泉水・鉱泉水および化石塩水 Ca-SO4、Mg-SO4、Ca-Cl タイプ

Ⅱ型 アルカリ土類炭酸塩 浅層地下水、日本の循環性地下水のほとんどがこのタ イプ

Ca-HCO3、Mg-HCO3タイプ

Ⅲ型 アルカリ炭酸塩 深層地下水、停滞的な環境にある地下水

Na-HCO3タイプ

Ⅳ型 アルカリ非炭酸塩 海水および海水が混入した地下水、温泉水等

Na-Cl または Na-SO4タイプ

Ⅴ型 中間混合 いくつかの型の水が混合した河川水、伏流水および循

環性地下水の多くがこのタイプ

(8)

所在地 地点番号 硬度

(mg/L) 硬度の

標準偏差 硬度区分

福井市

① 17.15

12.19

軟水

② 13.49 軟水

③ 24.15 軟水

④ 41.13 軟水

⑤ 31.20 軟水

⑥ 47.30 軟水

鯖江市

⑦ 27.96

13.96

軟水

⑧ 47.61 軟水

⑨ 66.89 中硬水

⑩ 52.78 軟水

越前市

⑪ 51.63

25.84 

軟水

⑫ 52.99 軟水

⑬ 82.01 中硬水

⑭ 16.02 軟水

⑮ 48.78 軟水

⑯ 114.92 中硬水

⑰ 43.40 軟水

⑱ 64.99 中硬水

⑲ 53.31 軟水

所在地 地点番号 硬度

(mg/L) 硬度の

標準偏差 硬度区分

大野市

⑳ 36.76

3.52

軟水

36.75 軟水

37.63 軟水

34.15 軟水

38.44 軟水

39.11 軟水

36.76 軟水

33.63 軟水

37.62 軟水

26.35 軟水

勝山市

8.53

1.99 

軟水

12.79 軟水

7.54 軟水

10.26 軟水

表4 各湧水地点の硬度と硬度区分

図4 湧水中の全イオン成分

(9)

示す。硬度の標準偏差にも示されたように、①~⑥(福井市)、⑦~⑩(鯖江市)、⑪~⑲(越前市)

では、同地域内の各湧水中のイオン成分分布は多様であることが分かった。一方、⑳~(大野市)、

~(勝山市)は、同地域においてほぼ類似したイオン成分分布を示した。越前市において、硬度 が最も高かった地点⑯は、Ca2+および HCO3を相対的多く含み、それぞれミリ当量値は 1.74meq/L、

および 2.73meq/L であり、いずれも全地点の平均値を大きく上回った。地点⑯と同地域に存在する 地点⑭は、勝山市の湧水に類似した濃度の低いイオン成分分布を示した。

勝山市は比較的標高が高く、地点の標高は400m程度である。同じく内陸部の大野市街地の標 高180m程度や福井市の山地で採水した地点④の標高 280m程度と比べても高い。勝山市の湧水は、

降水として地上に供給された水が短い滞留時間で湧出したために、土壌や地質からの溶出が少なく、

図5 湧水中の陰イオンに対する陽イオンの比

福井市・鯖江市・越前市(①~ ⑲)   

図6 湧水中のSiO2濃度(破線は20mg/Lを表す)

(10)

イオン成分があまり含まれなかったと考えられる。

各湧水中の陽・陰イオンのバランスを検討した。図 5 は、8 項目のイオン成分における湧水中の陰 イオン濃度に対する陽イオン濃度の比を示したものである。これによると、福井市、鯖江市、越前市 に存在する湧水中には、陽イオン:陰イオンがほぼ 1:1 で含まれており、8 項目において両イオン のバランスはとれているといえる。これに対して大野市、勝山市では、陽イオンに対して陰イオンの 含有率が高く、これらの地域の湧水には、本報告において分析した 8 項目以外のイオン物質によって バランスが保たれていることが考えられる。

図 6 に各湧水中の SiO2濃度を示した。ケイ素(Si)はカルシウム(Ca)以上に人間の骨を作る上で、

重要な役割を果たしており、また、人体の組織の弾力、強靭性を保つためのタンパク質の合成・増加 を促進させる役割をもつ(渡辺,2011)。つまり、湧水中にケイ素の量が多く含まれることは、飲料 水として可能であることに加え、人の健康にとっても有効な成分を含む水であるといえる。図 6 に よると、硬度やイオン成分分布の傾向とは異なり、SiO2濃度は各湧水によって特徴がみられた。SiO2

濃度が 20mg/L(20ppm)以上の含有濃度(Si 換算 9.4ppm)をもつ湧水は 12 地点あり、そのうち 6 地点が越前市の湧水である。玄米に含まれる Si は 47ppm、精白米では 4.5ppm(渡辺,2011)であ るから、これらの湧水は精白米よりも多くのケイ素を含むことがわかった。

4.2 水質組成図を用いた湧水成分の検討

(1)シュティフダイアグラム

 図 2 に示すシュティフダイアグラムの 6 つ水質組成タイプに従って湧水の分類を行った。各湧水 のシュティフダイアグラムを図 7 に示す。これらの六角形の形状がそれぞれ、図 2 の水質組成タイ プと類似するものをその湧水のタイプとして以下のとおりに決定した。

 まず、各地域の各湧水の六角形の形状を俯瞰すると、福井市、鯖江市および越前市では、地点によっ てその形状は、1 種類に決まらず、異なる水質組成タイプが複数存在することが推測された。一方、

大野市および勝山市の各地域の湧水の形状は、同一地域内において酷似しており、水の起源は同一 であることが推察される。

 次に、各湧水を水質組成タイプによって分類する。福井市における地点①(水分神社)および地 点②(糸崎町)の形状は、Na-Cl タイプに分類できることは明らかである。これら 2 つの湧水が位 置する周辺環境をみると、全地点のうちで日本海側に最も近い地点であり、海からの海塩粒子、海 洋成分等の影響を受けることが考えられる。

 また、Na-HCO3タイプに分類できる湧水としては、福井市の地点③(金光水)、鯖江市の地点⑦(許 佐羅江清水)および地点②(刀那清水)、越前市の地点⑭(治佐川井戸)、勝山市の全 4 地点、地点

(岩屋観音)、地点(神谷の水)、地点(たらたら山)、地点(中村の清水)である。

 その他の 23 地点は、明確に水質組成タイプに分類されにくいが、複数のタイプの複合として 捉えると次のように分類されると考えられる。六角形の形状から判断すると、23 地点に共通して HCO3成分を相対的に多く含んでいるため、水質組成タイプは -HCO3タイプに分類できる。また、

湧水中に含まれる陽イオン側の Ca 成分が突出しているとみられるのは、鯖江市の地点⑨(三場坂 清水)および地点⑩(桃源清水)、越前市の地点⑪(解雷ヶ清水)、地点⑬(石神の湧水)、地点⑯(命 の水)、地点⑱(榎清水)および地点⑲(石堂の水)、大野市はすべての湧水(⑳~)が当てはまっ た。すなわち、これらの 17 地点は Ca-HCO3タイプと分類した。

 ここに挙げなかった残り 6 つの湧水は、形状から判断して、Na 成分も少なからず含んでいると 判断したため、Ca-HCO3タイプと Na-HCO3タイプの複合であると分類した。つまり、複合タイプ として分類されたのは、福井市の地点④(足谷の清水)、地点⑤(弘祥寺跡地の甘露水)および地 点⑥(岡の泉)、越前市では地点⑫(段田清水)、地点⑮(治佐川井戸)、地点⑰(瓜割清水)である。

 なお、SO4(または SO4+NO3)成分はごく低濃度あるいは含まれていないため、Ca-SO4タイプ および中間混合タイプに分類される湧水はなかったと判断した。

(11)

福井市 鯖江市 越前市 大野市 勝山市

meg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/Lmeg/L

図7 福井県嶺北地域の湧水のシュティフダイアグラム

(12)

(2)トリリニアダイアグラム

 トリリニアダイアグラムによって、嶺北地域 33 地点の湧水中の化学成分を解析し、表 3 にした がって水質組成タイプに分類された結果をキーダイアグラムにプロットした(図 8(a)~(f))。全地 点のプロットをみると、33 地点の湧水は、Ⅱ型、Ⅳ型、V 型のいずれかに分類された(図 8(a))。

各地域における湧水の水質組成タイプの分類について、地域ごとのキーダイアグラム(図 8(b)~(f))

によって検討した。

 Ⅱ型(アルカリ土類炭酸塩)に分類された湧水は、21 地点と最も多くなった。Ⅱ型を示す湧水 は、浅層地下水として、Ca-HCO3タイプに区分され、日本の循環性地下水のほとんどがこのタイ プである。この型に分類された湧水中の陽イオンの含有率は、Ca が Na + K と同程度か、あるい は顕著に上回った。大野市の湧水では、10 地点のすべてがⅡ型に分類され、地点相互間で類似し たイオン含有率を示した。大野市の湧水のほとんどは越前大野駅周辺の市街地に位置しており、10 地点の相互間の距離は非常に近い。また、大野市街地がある真名川以西の地下水は、全体に南から 北に向かって流れており、市街地では主に木本扇状地内を流れる木本扇状地地下水系に属する地下 水が流れていると考えられている(大野市建設課,2011)。したがって、水の起源としては、トリ リニアダイアグラムによる解析結果で示されたように浅層地下水であるといえる。

 これに対して、Na+NO3の含有率が Ca のそれより上回る場合には、Ⅴ型(中間混合)に分類さ れる結果を示した。V 型は、複数のタイプの水が混合して組成される河川水、伏流水、循環性地下 水であり、Ⅱ型とⅤ型の Ca と Na + K の含有率は類似することが考えられる。また、Ⅱ型かⅤ型か、

あるいはⅣ型かⅤ型かの分類は、陰イオン HCO3と Cl および SO4+ NO3の含有率との量的相互関 係が、水質組成タイプの決定に影響していると考えられる。例えば、地点⑤、⑦、、はⅡ型と

Ⅴ型の境界線上に、地点はⅣ型とⅤ型の境界線近くにプロットされている(図 8(b)(c)(f))。この 場合、水の起源をこの結果から水質組成タイプを見当つけることは難しい。

 福井市の地点①および②(図 (b))は、シュティフダイアグラムの結果と同様に Na-Cl タイプを示し、

Ⅳ型(アルカリ非炭酸塩)に分類された。推測される水の起源は、海水および海水が混入した地下 水であると考えられる。実際に、この 2 つの地点はほぼ海岸線に位置しているため(図 1)、海洋 の影響を受けていることが推測される。Ⅳ型に分類されたその他の地点は、越前市の地点⑭および 勝山市の地点であった(図 8(d)(f))。いずれの地点も内陸部に位置しており(図 1)、海水起源で あるとは言い難い。このような結果を示した理由として、地点①、②、⑭、の陽イオン含有率に ついては、Na + K が 57%以上を示し、相対的に高くなったが、陰イオン含有率では、地点⑭およ びについて、Cl、SO4+ NO3、HCO3において、互いの含有率に大きな差はみられなかったため、

SO4+NO3をわずかに上回った Cl の含有率によってⅣ型に振り分けられたと考えられる。なお、⑭ およびの 2 地点のシュティムダイアグラムの結果は Na-HCO3タイプに分類された。

(3)2 つの水質組成図に基づいた湧水の水質組成の検討

 シュティムダイアグラムおよびトリリニアダイアグラムの 2 つのダイアグラムによる解析結果に 基づき、33 地点の湧水中に含まれる水質組成タイプの分類について改めて検討した。表 5 には陽 イオン(Ca、Mg、Na+K)・陰イオン(Cl、SO4+ NO3、HCO3)の各イオンの成分含有率と、こ れらの成分含有率から考慮し、各湧水に含まれると推測される水質組成タイプ、4.2 項(1)およ び(2)で検討した両ダイアグラムによって分類された水質組成タイプを示した。

 両イオン成分の含有率はトリリニアダイアグラムから読み取り、表 5 中の「Σ陽イオン」、「Σ 陰イオン」は、それぞれの成分の合計を表したものであり、全体で 100%となる。湧水中に含まれ る水質組成の推測には、各イオン成分が 30%以上含まれるとき、主な水質組成とみなされると仮 定した。例えば、地点①について、Na+K の含有率が 70%、Cl が 60%であるから水質組成として Na-Cl が含まれる。また、HCO3が 32%であるため、主な陽イオン成分とあわせて考慮すると Na- HCO3も含まれることになる。このようにして、33 地点の湧水中の主な水質組成を推測した。

(13)

(a)嶺北地域(5市全地域)

(c)鯖江市

(e)大野市

(b) 福井市

(d) 越前市

(f)勝山市 図8 福井県嶺北地域の湧水のトリリニアダイアグラム

(◆:福井市,○:鯖江市,△:鯖江市,×:大野市,□:勝山市)

(14)

表5  湧水中に含まれる陽イオン/陰イオンの含有率とイオン含有率から推測される水質組成タイプ、    トリリニアダイアグラムおよびシュティフダイアグラムによって解析された水質組成タイプ

(15)

これによると、福井市の 6 つの地点においては、海洋の影響受けた地下水と 2 つ以上の水質組成タ イプが混合された循環性地下水であることがいえる。また、鯖江市では、HCO3を含む循環性地下水 であり、4 地点全てにおいて Na-HCO3タイプと Ca-HCO3タイプの水が混合された水質組成であるこ とが考えられる。越前市では、4.1 項で検討した硬度や表 5 に示されるようにイオン成分の含有率に ばらつきが見られたものの、9 地点のうち 7 地点が Ca-HCO3タイプに分類され、浅層の循環性地下 水とみなされる。大野市についてもすでに 4.2 項(1)、(2)で検討されたように、Ca-HCO3タイプ であることが確認された。勝山市の 4 地点は、シュティフダイアグラム(図 7)にも見られたように、

成分濃度が低く、水質組成の傾向が明確ではない。また、トリリニアダイアグラムによる解析結果(図 8(f))においても、Ⅱ型と V 型、Ⅳ型と V 型の境界線近くにプロットされていた。ただし、4 地点に おいて HCO3の含有率が比較的高いことから、水のタイプとしては循環性地下水であると推察する。

今回調査した勝山市の湧水の地点数は、地域面積に対して少なかったため、水質組成の詳細を把握す るにはさらに地点を増やし検討する必要がある。

シュティフダイアグラムおよびトリリニアダイアグラムの 2 つの水質組成図による水質組成解析に よって湧水のタイプおよび水の起源を検討したが、地点⑭(越前市)のような同一地域内の他の地点 と明らかに傾向が違う水質含有率を示す湧水や勝山市のように、含まれる成分が低濃度である湧水に ついては、湧水が存在する地質環境の情報を取り入れ、地点数を蓄積した上で、多様な観点からの検 討が不可欠になる。

5.まとめ

福井県嶺北地域の湧水 33 地点について調査し、硬度、陽陰イオンバランス、シリカ(SiO2)、水質 組成図を用いた解析から、湧水の化学的特徴、水質組成タイプとその起源を検討した。本研究で得ら れた知見を以下に示す。

(1)湧水 33 地点の硬度は、軟水~中硬水を示した。地域ごとに特徴が見られ、湧水の硬度のばら つきが大きい地域は越前市であり、最も小さくなった地域は勝山市の湧水であった。

(2)湧水中の陽・陰イオンのバランスを検討したところ、福井市、鯖江市、越前市に存在する湧水 中には、ほぼ陽イオン:陰イオンが 1:1 で含まれており、大野市、勝山市では、陽イオンに対 して陰イオンの含有率が高くなった。

(3)SiO2濃度が 20mg/L 以上の含有濃度(Si 換算 9.4ppm)をもつ湧水は 12 地点あり、これらの 湧水は精白米(4.5ppm)よりも多くのケイ素を含むことがわかった。

(4)シュティフダイアグラムによる水質組成の検討した結果、福井市、鯖江市および越前市の各湧 水には、水質組成タイプが複数存在することが推測された。また、大野市および勝山市では、

各湧水の起源はそれぞれの地域において同一であることが推察された。

(5)トリリニアダイアグラムによる水質組成を検討した結果、33 地点の湧水は、Ⅱ型(アルカリ 土類炭酸塩)、Ⅳ型(アルカリ非炭酸塩)、V 型(中間混合)のいずれかに分類された。21 地点 の湧水がⅡ型であり、これらの湧水は浅層における循環地下水であることが推測された。また、

Ⅳ型(海水起源)に分類された地点①および②は、最も日本海に近い地点であり、海の影響を受 けていることが解析結果からも明らかとなった。

謝  辞

本研究は、第4回福井銀行産学連携研究助成を受けたものです。

参考文献

1)環境省 水・大気環境局 土壌環境課 地下水・地盤環境室 ,2010, 湧水保全・復活ガイドライン , http://www.env.go.jp/water/yusui/guideline.html(2020 年 1 月 29 日閲覧)

(16)

2)三浦麻,福田彩香,2018,「ふくいのおいしい水」の水質特性と課題,福井大学地域環境研究教 育センター研究紀要「日本海地域の自然と環境」,25,109-126.

3)福井県 ,2019,「ふくいのおいしい水」の認定について ,冊子パンフレット

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4)日本規格協会,2009,JIS ハンドブック環境測定Ⅱ水質,684-685.

5)地下水ハンドブック編集委員会,1998,改訂地下水ハンドブック,建設産業調査会,p.134.

6)浦野紘平,2002,CODMn の簡易測定法と効率的な JIS 準拠法 ,水処理技術,43(4),185-189.

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8)日本地下水学会,2009,新・名水を科学する水質データからみた環境,技報堂出版,p.293.

9)Arthur M. Piper, 1944, A graphic procedure in the geochemical interpretation of water- analyses,EOS,

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10)渡辺和彦,2011,糖尿病、認知症、骨粗しょう症を防ぐ ミネラルの働きと人間の健康,農文教,

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11)大野市建設部建設課 ,2011,越前おおの湧水文化再生計画

 http://www.carrying-water-project.jp/school/library/(2020 年 1 月 29 日閲覧)

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参照

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