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電子情報通信学会論文誌 D Vol. J95‑D No. 4 pp. 711‑712 © 一般社団法人電子情報通信学会 2012

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特集

ライフログ処理技術とその活用システム論文特集の発行にあたって

ライフログ処理技術とその活用システム論文特集編集委員会 委員長  

阿 部 匡 伸

ライフログとは個人の活動をディジタル化して蓄積 したものである.Eメールやドキュメント,ディジタ ルカメラで撮った写真のように個人が作成したコンテ ンツはもとより,体重や摂取カロリの電子的記録,更 には,閲覧したWeb履歴や検索のために入力したキ ーワード群,電話の発着信履歴なども含まれる.最近 では携帯電話のGPSで位置情報が取れ,ICカードで乗 降駅やコンビニでの購買商品に関わる情報が記録でき るなど,実生活に密着したライフログも取得できるよ うになってきた.既にインターネット上では,ライフ ログの一部であるWebの閲覧履歴や検索キーワード 履歴を利用して,商品のレコメンデーションや個人に 特化した検索など,評判の高いサービスが提供される に至っている.今後は多種多様なライフログを活用し て,より多くの便利なサービスが創出できると期待さ れている.この実現にはプライバシー保護を含めたラ イフログに関するいっそうの議論が必要であろう.ラ イフログはデータの種類が多様であり,その発生頻 度,周期なども異なり,データ量は膨大となる.デー タ構造,モデリング,情報抽出,検索方式など,技術 的に解決するべき課題は多い.また,ライフログは個 人の活動記録であり,個人にまつわる情報であるた め,必然的にプライバシーの問題が生じる.アクセス 制御,セキュリティに加え,社会的受容性なども考慮 されなければならない.インターネット上でのレコメ ンドサービスは,実運用で収集したライフログを活用 しつつ,ユーザにその利便性が受け入れられたからこ そ,成功に至ったと考えられる.つまり,社会的受容 性を検証するには,実フィールドといかに密接に結び 付いているかもポイントとなる.以上のように,ライ

フログに関する研究は,技術的に広い分野での議論は もとより倫理学なども含めた社会科学的な議論も不可 欠といえよう.

本特集は,上述のライフログ研究の特徴を鑑みて,

幅広く関連論文を募ったものである.少し長くなる が,ここで企画に至る経緯を述べさせて頂く.「ライ フインテリジェンスとオフィス情報システム研究会

(LOIS)」は,2009年度に研究会の名称を変更し,ラ イフログを研究スコープに取り込んだ.その理由は大 きく二つある.本研究会は1986年度に「オフィスシス テム研究会(OS)」として発足して以来,技術,工学 のみならず人文,社会の分野にわたり,広い範囲をカ バーしてきた.先に述べたようにライフログは社会科 学的な問題も含むが,本研究会は以前から類似した問 題を議論していた.これが第一の理由である.一方,

これまでの情報化は,ビジネスホン,ワープロ,PC,

グループウェアなどのようにオフィス環境を中心に発 展してきたため,前身のオフィス情報システム研究会

(OIS)では,「オフィス」と「情報」を中心に議論を 進めてきた.しかし,インターネットが一般コンシュ ー マ に 普 及 し た 結 果, 最 近 で は, ブ ロ グ,SNS,

Twitterなどのようにコンシューマ系で生成されるサ ービスや技術も少なくなく,情報化が必ずしもオフィ スで先行するとは限らなくなった.したがって,研究 会としてはオフィスに固執することなくコンシューマ 系のテーマを包含することとした.その結果,コンシ ューマ系で注目されているライフログも自ずとテーマ に含まれることになった.これが第二の理由である.

以上のように,研究会の改称で象徴的なテーマがライ フログであったため,ライフログを多面的,分野横断

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電子情報通信学会論文誌 2012/4  Vol. J95

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的に議論することを目的として,ライフログに関わる イベントを下記のように開催してきた.

・2009年5月研究会 「ライフログが拓く新たな世界」

と題した招待講演とパネルディスカッション(参加 者 約100名) 情報処理学会GN研究会と合同

・2009年9月FIT2009 イベント企画 「lifelogを情報 システムに―収集から活用へ―」(同 約120名)

・2010年5月研究会 LOIS研究会改称一周年記念イベ ント  ライフログ招待講演 (同 約90名) 情報処 理学会GN研究会と合同

・2010年9月FIT2010 イベント企画 参加者 「見え てきた?ライフログ活用サービスのビジネス化とコ ア技術」(同 約110名)

それぞれのイベントでは,技術面と社会面,夢と課 題,研究と実サービスなどの観点から活発な議論がな された.参加者数は幹事団の予想を上回った.また,

定例の研究会においてもライフログ関連の発表が半数 を占めるようになった.このようにライフログ研究へ の関心の大きさが示されたばかりでなく,研究会では 原著論文にすべきと考えられる発表が散見されたこと から,本特集を企画するに至った.

公募の結果,38編の投稿があり,13編の採録となっ た.対象分野と採録論文数は次のとおりである.

・ライフログの収集装置,デバイス 1編

・ライフログからのデータマイニング方式 3編

・ライフログからの情報検索方式 1編

・ライフログの可視化方式 0編

・ライフログを活用したサービス,応用システム  3編

・ライフログを活用する際のプライバシー等の問題を 解決する方式 3編

・ライフログを利用したシステムの評価 2編 ライフログ収集のための脈波センサの論文からライ フログサービスの受容性の論文まで,ほぼ全ての対象 分野で論文が採録された.なお,プライバシーの課題 やサービスの受容性に関する論文が多かったことは,

ライフログ処理技術とその活用システム論文特集編集委員会 委 員 長 阿 部 匡 伸

副 委 員 長 若 原 俊 彦 白 石 善 明

相 澤 清 晴 ・ 上 杉 志 朗 ・ 太 田 陽 基 ・ 関   良 明 田 岡 智 志 ・ 谷 本 茂 明 ・ 檜 垣 泰 彦 ・ 山 元 規 靖

ライフログ特集ならではの特徴である.本特集を一読 して頂ければ,ライフログ研究で取り組んでいる課題 を網羅的に把握できるであろう.なお,投稿論文のう ち約3分の2の論文は残念ながら不採録となったが,そ の多くは有効性,信頼性が十分ではなかったと判定を 受けたものである.新規性は十分に認められ興味深い ものばかりであったので,データの追加,主張ポイン トの絞込み,評価法の再検討などを行って再投稿をお 勧めしたい.その際,本特集に採録された論文は大い に参考になるものと考える.特に,一般論文ではなく システム開発論文として,データの補足及び考察を加 えれば採録レベルに達すると期待される論文も少なか らず見受けられたので,是非御検討をお願いしたい.

本特集が今後のライフログ研究の発展にいくらかで も貢献することを期待する.LOIS研究会では引き続 き幅広くライフログを議論していくので,会員の皆様 の積極的な登壇をお願いしたい.なお,本特集の発行 に際しては多数の方々に御協力頂いた.査読者の方々 には,査読期間がちょうど夏休みに重なったにもかか わらず快く査読を引き受けて頂いた.編集委員の方々 には,想定より多くの投稿があったために一人当りの 担当論文数が通常より多くなり御苦労をおかけした.

幹事を務めてもらった白石善明氏には,豊富な論文編 集委員の経験を生かし,編集委員会の適切なる運営に 御尽力頂いた.以上,関係各位に心より感謝申し上げ る.

 匡

まさ

のぶ

(正員)  1982早大・理工・電気卒.1984同大大学 院修士課程了.同年日本電信電話公社(現NTT)入社.1987 〜 1991  ATR自 動 翻 訳 電 話 研 究 所 出 向.1989  MIT滞 在 研 究 員.

NTT  サイバーソリューション研究所プロジェクトマネージャを 経て,2010より岡山大学大学院自然科学研究科教授.1991日本 音響学会学術奨励賞,1996日本音響学会論文賞,2006日本音響 学会技術開発賞,2010情報処理学会論文賞受賞.現在,本会 LOIS研究専門委員会委員長.この間,音声信号処理,音声合成,

ライフログの研究に従事.博士(工学).IEEE,日本音響学会 等各会員.

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