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吉野川流域におけるヤマトシジミの利用を問う環境教育
人間教育専攻
現代教育課題総合コース 牧 下 大 和
は じ め に
環境教育を有意義に実践するためには、複数 の組織や機関が「協働Jすることが重要である。
また、子どもたちに環境教育を行う上で、学校 が参加した活動‑学校と地域社会との協働ーは 避けて通れないことは明らかである。
しかし、様々な研究論文や実践報告を調べた ところ、そのほとんどにおいて学校が主体であ り、地域の人が多少参加している程度で、あった。
もしくは、1つまたは少数の組織が中心に活動し、
しかも単発的な実践の場合が大半であることが わかった。学校と地域社会または複数の組織が
「協働」して環境教育の活動を行っている実践 例が少ないのである。
そこで本論文では、どうすれば様々な組織が 協力しあい、発展的な環境教育を行えるかを考 える。特に、環境教育の活動を行う上で、学校 に地域の住人が数人来る出張授業ではなく、子 どもたちが地域の中に入って行くことを念頭に 置いて考察を行った。
また、環境教育の教材の視点からどのような ものが適切かを考えた。そこで、話題性の高い 絶滅危倶種などの動植物よりも、子どもたちが 身近に感じる教材を扱った方がより効果的では ないかという仮説のもと、吉野川のヤマトシジ
ミを教材として考察する。
1.環境教育の目指すもの
日本の学校教育では、 2000年に総合的な学習
指導教員 田 村 和 之
の時間が導入されて以降、徐々に環境教育が取 り入れられて来た。
しかし、環境教育の特徴である教科横断的な 性質はカリキュラムの整合性を確保することが 難しい。また、他教科と違い、学習指導要領で は環境教育の具体的な内容や教材・活動方法な どについては触れられていない。そのため、実 際にどのような環境教育や活動を行うかは学校 や教員の裁量によるところが大きく、現在でも なかなか効果的な活動が導入されていない状況 が続いている。
そんな中、 2005年から2014年までの「国連持 続可能な開発のための教育の10年間」をうけて、
日本では学校を中心に環境教育に力を入れるこ とが求められた。
また、 2011年には環境教育等促進法が公布さ れた。この法律により、今まで個人や学校を中 心に、個別に行われていた環境教育を複数組織 が「協働」して行うことが重要視されたのであ る。
2 .
徳 島 県 に お け る 環 境 教 育本章では、実際に徳島県内で行われている環 境教育の実践例を3つ紹介する。
まず、美馬郡つるぎ町徳島県立つるぎ高等学 校では農業や商業・工業など広い範囲において 地域住民の協力を得て活動している。しかし、
地域を主体とする展開ができていないという課 題がある。
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次に、阿波市井沢小学校では農業体験を通し た食育が行われ、地産池消の重要性や食生活の 改善の意識が育まれた。しかし、内容が地域の 農業と自身の健康についてのみ偏っており、社 会環境の理解へつながる展開ができていないと いう課題がある。
最後に、徳島市渋野小学校では児童が地域に 関する知識と郷土愛を得るための学習プログラ ムが行われた。そこでは、地域の自然や環境を 尊重する価値観が養われた。しかし、人間社会 による開発について考える視点と、まだ学校が 主体となり活動を行っている点が課題となって し、る。
これらは地域と連携して様々な分野に展開し ようとしているという取組は評価されるが、ま だ地域との協働が足りないことが最大の課題で ある。また、活動の視点も自然環境に重点が置 かれており、社会環境の側面がまだ少ないこと も問題である。
3 .
ヤ マ ト シ ジ ミ を 利 用 し た 環 境 教 育 の 可 能 性徳島市は都市型環境であり、環境教育で頻繁 に題材となる森林や希少な動植物は子どもたち にとってあまりなじみが無いものだと思われる。
そこで、徳島市近隣住民にとって潮干狩りなど で身近に感じることができる吉野川のヤマトシ ジミに着目した。
吉野川の河口から第十堰まではヤマトシジミ が生息できる広大な汽水域となっている。しか
し、近年では麻庫性貝毒が発生したり、そもそ もの資源量が減少したりしているという報告が ある。
そこで、この吉野川のヤマトシジミを教材と してどのような環境教育が可能かを検討した。
初めにヤマトシジミの櫨過能力による実験を
検証した。その結果、 40gのシジミを使えば1授 業時間でも十分にシジミの櫨過能力が観察でき るであろうことが分かつた。
次に、ヤマトシジミの資源量の調査から、人 間社会と自然のバランスを振り返る環境教育を 考察した。先の実験を含むこれらの活動では地 域の漁協や市場・市役所などの学外組織との協 働が可能だろう。しかも、学校に来て話をして もらうのではなく、子どもたちが実際に一般企 業や市役所などを訪問するのである。そして、
そこで、実行可能な対応や対策について直接話し 合うことが望ましい。このような活動が、子ど もたちにとってより充実した環境教育となるこ とが考えられる。
そして最後に、ヤマトシジミをきっかけとし た連想ゲームについて、その可能性について考 察した。物事を連想することで、自然環境だけ ではなく、様々な社会問題や環境問題について 考えさせることができる。そして、自然環境と 人間社会が密接につながっていることを可視化
させることができるのではないだろうか。
おわりに
本論では、ヤマトシジミに着目することで、
学校と地域社会や住民が協働した環境教育の可 能性ついて考察してきた。その結果、ヤマトシ ジミをきっかけにした活動を行うことで、子供 たちに幅の広い視点の獲得させる可能性がある のではないかという結論に到達した。
しかし、本論では、あくまで可能性を考察し たのみに過ぎない。今後の課題として実際にこ のような環境教育を実践してみる必要があるだ ろう。そして、実践の際環境教育としてどのよ うに広がっていくかを調査・研究することが今 後の課題とである。