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「日本草本植物根系図説」補遺(6)

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(1)

Annual Report of Botanic Garden, Faculty of Science,1(anazawa Univ. No.22,1999   1

「日本草本植物根系図説」補遺(6)

梅林正芳*・清水建美**

Masayoshi UMEBAYAsHI*and Tatemi SHIMIzu**  Supplement to Underground Organs of   Herbaceous Angiospe㎜s¶ (6)

ABSTRACT:This series is a supplement to our recent publication entitled Under−

ground Organs of Herbaceous Angiospe㎜s (1995)to be continued from Annual Re−

pot of Botanic Garden, Faculty of Science, Kanazawa University No.21,1−8

(1998).The present paper aims to describe and illustrate the underground organs of four herbaceous angiospe㎜s:D励y〃εlo 8顧(Berbe亘daceae),んη吻θααρたμ10τα

and Lετb〃↓τziα oηα〃4rfα (Asteraceae),Cy〃2bj4ゴμ〃280θriη8ii(Orchidaceae).

Key words:んη5〃oθαα〆cμ10τα,(汐mわ硫μm 80θrjη9ゴ , Dψ妙〃¢iα8roy↓, L6功η屹jo oηα〃−

     4rjo, Rhizome, Underground organs.

 筆者らは,1995年2月「日本草本植物根系図説」(平凡社)を上梓したのに続き,本誌に補 遺(1)(2)(3)(5)およびStap飽50巻に補遺(4)を発表した。本報は,その補遺(6)であり,今までに 未記載であった4属から4種を選んで記述した。

サンカヨウ Diphylleia grayi Fr. Schmidt(メギ科)

 落葉性の多年草。地下茎は一次根茎で横走根茎。分枝は仮軸分枝。越冬芽は今年の地上茎基 部の鱗片葉の腋から出て6枚の鱗片葉に包まれ,その中に幼葉と小さな花序がある。この試料 では長さ24㎜。1年間の根茎の伸びは10㎜内外で,時に20㎜になるものがある。年枝の上面に は地上茎痕および葉柄痕群が1列に並び,前者は中央部がやや窪み維管束痕が点在する。後者 は中央部がやや盛り上がり5−7個の葉柄痕が同心円状にあり中心に微細な茎の断面のあるも ので,地上茎を抽墓することなく葉のみを地上に出した痕である。従って年枝を数えることに よって見かけの年令と地上茎をつけた年を知ることができる。花序は地上茎の先につくので地 上茎が出た年は花序を生じたと考えられる。この試料では8年前の根茎部で切断されているが,

今年,前年,4〜6年前は開花したことがわかる。地上茎を生じた年枝には6個の芽鱗痕が認 められる。不定根には宿存根毛はない。

 一年目の実生は子葉のみ展開し,子葉柄は子葉身基部まで完全に合着し筒状で胚軸状,その 基部に越冬芽がある。越冬芽の位置は地中である。葉身も基部がたがいに合着し中心に小さな

*〒920−1192 金沢市角間町 金沢大学理学部生物学科  University, Kakuma, Kanazawa 920−1192, Japan

**〒390−0312 松本市岡田松岡211−3 清水植物研究室  Matsumoto 390−0312, Japan

Department of Biology, Faculty of Science, Kanazawa

Shimizu Botanical Laboratory,211−30kada−matsuoka,

(2)

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Fig.1. Underground organs of Dψ乃y〃ε〜α8myi×2/3.

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(3)

Annual Report of Botanic Garden, Faculty of Science, Kanazawa Univ. No.22,1999   3

穴がある。胚軸はごく短い。定根は宿存根毛が多い。2年目の実生は欠刻のある本葉を1枚つ け,根茎は短く1㎜ほどで4枚の鱗片葉がある。最上部の鱗片葉は葉柄基部と縦方向に半分だ けが合着し,もう半分は離れている。合着している部分は筒状になりその中に越冬芽がある。

越冬芽を入れた部屋の中に鱗片葉の片側の縁の部分が張出しているので,鱗片葉の縁で合着し てるのではなく縁より少し離れた部分で合着していることがわかる。位置的に見てこの芽は頂 芽ではなく,この鱗片葉の腋芽と考えられる。つまり,2年目から仮軸分枝をしていることに なる。根茎と定根の境に子葉柄の残存物が認められる。定根には宿存根毛がまばらに見られる。

鱗片葉のつく節から不定根が出始めている。

       試料:1986年9月30日安曇村冷泉小屋付近(図1)

      1998年4月28日,1997年5月21日富山県八尾町小井波(図2)

地表面

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合着して筒状になった      子葉柄

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部屋の中にまきこまれた   鱗片葉の縁

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葉柄に 合着した 鱗片葉

   子葉の残存物

Fig.2. Seedlings of Dψ力y〃εiα8rαyi, showing cotyledonary stage(A)with a bud at    the base of cotyledonary petiole(B), and one leaf stage(C)with a bud in    the small cell at the base ofpetiole(D). A:×1.5, B, D:×7.5, C:×1.

(4)

4  金沢大学理学部附属植物園年報 第22号

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前年の地上茎痕 休眠芽

2年前の地上茎痕  伸びそこねた芽  5年前の地上茎痕

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Fig.3. Undergroulld orgalls ofんη5〃oθααρごc〃10τo×1.

(5)

Annual Report of Botanic Garden, Faculty of Science, Kanazawa Univ. No.22,1999

今年開いた夏葉

5

越冬芽

今年伸びた秋の花茎

今年開いた春葉の痕

鱗片葉の痕

今年伸びた不定根

前年伸びた  根茎の痕

       地表面 今年伸びた根茎  前年の根生葉の痕

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今年開いた夏葉 今年開いた 春葉の痕

今年伸びた秋の  花茎

越冬芽   鱗片葉

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前年伸びた不定根B

Fig.4. Underground organs of」Lε功η∫mo oηαη4riα, showing the whole parts(A),

    and aterminal bud at theapex of vertialrhizome(B).A:×1,B:×2.

(6)

7 金沢大学理学部附属植物園年報 第22号 Annual Report of Botanic Garden, Faculty of Science, Kanazawa Univ. No.22,1999 8

花茎痕

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今年開く花茎

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17年前の偽球

25年前の偽球

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    dobulb(C).A:B:C:×2/3.

(7)

Annual Report of Botanic Garden, Faculty of Science, Kanazawa Univ. No.22,1999   9

キッコウハグマ Ainsliaea apiculata Sch. Bip.(キク科)

 林床に生育する越冬性の多年草。地下茎は一次根茎で直立根茎。根茎の分枝は交代型仮軸分 枝。年枝の長さは3−40㎜。越冬芽は2−4個,前年伸びた根茎の鱗片葉の腋につき,長さ2

5㎜,3−5枚の芽鱗に包まれる。芽鱗の背軸側上端と縁に上向きの毛がある。鱗片の向軸 側の基部に長さ3㎜ほどの上向きの毛叢がある。この毛叢は普通葉や花序の鱗片にもみられる。

根茎の毛は年枝の下方では上向き,上方では下向きになる。越冬芽は上部のものほど大きく,

翌年1まれに2個が伸長する。伸長した越冬芽は2−5cmに伸びて地表に出,10数枚の普通葉 を展開してロゼツトをつくり,頂芽は伸びて花序を生ずる。ロゼット葉には腋芽が生じないこ とが多く,あっても発達しない。前年のシュートは伸長した越冬芽の数㎜上で枯れ落ち明瞭な 痕を残すので,見かけの年令を知ることができる。この試料では5年前の根茎まで認められた。

 不定根は年枝の下部の節から生じ根粒が多く,宿存根毛はわずかである。

       試料:1998年11月16日 金沢市中山町

センボンヤリ Leibnitzia anandda(L)Turcz.(キク科)

 春に開放花,秋に閉鎖花をつける落葉性の多年草。根茎は一次根茎で直立根茎。10本前後が 集まった根束が二段につく特徴ある形をしている。閉鎖花の花茎は通常根生葉の上部の普通葉 か鱗片葉の葉腋から出る。花茎の断面は円形,葉柄は両側基部が翼状にひろがって花茎を抱く。

ロゼットの中心に綿毛に覆われた越冬芽があり,根茎の分枝は単軸分枝である。春に越冬芽が 伸長しその先に数枚の根生葉を開く。根茎の年枝は長さ2−16㎜,鱗片葉を着けないかあって

も1−2枚,根は出さない。不定根は花後に根生葉のつく節から葉柄の基部を突き破って出る。

この頃には前々年の根茎は枯れ落ちる。この全形の描かれた試料では開放花の痕跡はみられな かったが,図の右下の拡大図の試料では今年伸びた根茎の上端にある繊維状になった葉,つま

り春に生じた葉の腋に小さな花茎痕が認められた。

 不定根には宿存根毛はほとんどない。       試料:1998年11月16日 金沢市中山町

シュンラン Cymbidium goeringii(Rchb、£)Rchb、£(ラン科)

 常緑の多年草。地下茎は発達せず地上茎の基部が膨らんで偽球をつくり,多くの偽球が連なっ て独特の形態をなす。分枝は仮軸分枝である。発達した偽球は径17㎜程,多くは6−7枚の普 通葉を伸ばす。葉の基部は鞘状で,茎を包む。古い偽球ははじめ葉の枯れた繊維で覆われ,後 に繊維が脱落し環状の葉痕を現わす。花茎,越冬芽ともに偽球の基部の鱗片葉の葉腋につく。

この試料は2月に採集されているので,最も新しいシュートは前年に伸長したものとみなされ る。従ってこの試料では今年開花する花茎は2−5年前の偽球から1本ずつ出ているが,花茎 痕は24年前の偽球までみられることになる。発達した偽球には花茎痕は2個あるが,同時に2 本の花茎は出ないようである。偽球は1年に1ないし2個(2個の場合は分枝)つけるので,

偽球を数えることにより見かけの年令を知ることができる。この試料では25年前の偽球まで認 めることができた。また,8年前,17年前,22年前,24年前の4回分枝しているが,一方は一 つの偽球をつけるのみで成長は止まっているので,両者が成長することはまれと思われる。

(8)

10  金沢大学理学部附属植物園年報 第22号

不定根は偽球の基部の節から出て皮層が発達し,長いものは60cm以上あって分枝しない。古く なると皮層がくずれて針金状の中心柱が現われる。宿存根毛はない。

      試料:1999年2月17日金沢市中山町

      文     献

平塚明・工藤洋・芝池博幸.1992.多年生閉鎖花植物センボンヤリの個体群構造と日長展葉曲線.平成2年度     〜平成3年度科学研究費補助金(総合研究A)研究成果報告書一被子植物における交配システムの進

    イヒー :86−98.

森田竜義・1990.フィールドウォッチング 2.秋の野山を歩く一センボンヤリー:94−95.北隆館.東京.

沼田真・浅野貞夫.1969.日本植物生態図鑑①一合弁類一1 築地書館.東京.

清水建美・梅林正芳.1995.日本草本植物根系図説 平凡社.東京.

    ・    .1995.「日本草本植物根系図説」補遺(1)金沢大学理学部附属植物園年報18:1−6.

    ・    .1996.「日本草本植物根系図説」補遺(2)金沢大学理学部附属植物園年報ユ9:ユー4.

    ・    .1997.「日本草本植物根系図説」補遺(3)金沢大学理学部附属植物園年報20:1−6.

T.Shimizu and M. Umebayashi.1997. Examples of comparative morphology of underground organs between con−

    generic angiospems−Supplement to Underground Organs of Herbaceous Angiospe㎜s (4). Stapfia 50:

    327−337.

梅林正芳・清水建美.1998.「日本草本植物根系図説」補遺(5)金沢大学理学部附属植物園年報21:1−8.

参照

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