三陸総合研究 第34号
平成20年度助成研究実施報告書
研 究 題 目 パル スパ ワー技術 の高度利用 によるさん りくブラン ドきのこの収穫量改善
研究者 (所属 ・職)
研究代表者 高木 浩一 (岩手大学工学部 ・准教授) 共 同研究者 小藤 田 久義 (岩手大学農学部 ・准 教授) 共同研究者 梶原 昌五 (岩手大学教育学部 ・准教授) 電話 :019‑621‑6941 FAX :019‑621‑6941
Eメール :takaki@iwate‑u.ac.jp
U R L :http://www.eng.iwate‑u.ac.jp/jp/1abo/elcO7‑1.html 研 究 目 的
パル スパ ワー技術 を利用 して簡便 な高電圧短パル ス発生装置 を開発 し、腐生性お よび菌根性 きの こ‑ の電気刺激 による、 さん りくブ ラン ドきの この生産性 向上 を図 る。多品種 きの この安 定収量の確保や増収 をも とに、きのこ関連業者 を中心に、地域 の活性化 をはか る。
研究結果の概要
1 背景及 び課題 ・ニーズ等 (1)背景等
自然食 ブームの影響 もあ り、安全 で、健康 によい食材 に対す る需要は年 々高まってい る。
きの こは、アルカ リ性食 品であ り、抗 がん作用 があ り、かつ低 カ ロ リー食 晶であるこ とか ら、健康食材 としての需要が年 々高まってい る。 しか し、 自然林 を用いた国産 きの こ (菌 根性 きの こ) の採取 は、下草刈 りや腐葉 土処理 な どの作業が必要 になる。林業 関係者 の高 齢化や環境 の変化 な どのため、国産 きのこの採取高は減少 してい るのが現状である。外 国 産 のきの こは、防腐剤 の使用 な どの問題 もあ り (トレーサ ビ リテ ィイ の困難 さ)か ら、国 産 きの この増産が必要 になる。
(2)課題 、ニーズ等
林業関係者 の間で、落雷があれ ばその周囲約 15mできのこは異常繁殖す ることが知 られ てい る。雷 による異常繁殖 の特徴 は、光や音 、振動 の刺激 に対 して、非線形 的に変化 が見 られ る点である。人工的に電気刺激 で増産 をす る研究が、昭和60年 頃に行 われ、 しいたけ のホダ木 に人工落雷 による刺激 に よる影響 について、電気刺激 と収量の関係 に関 して、詳 細 な報告がな され てい る。本研 究 の 目的は、電気刺激 がきの この生育 に与 える影響 につい て生物学的な見地か らも明 らかに し、 さらにパル スパ ワー技術 を用 いて コンパ ク トな電詔京 を開発 し、 しいたけやナメ コな どの腐生性 きの この菌床栽培 、ホダ木栽培や 、 自然林 を利 用 したあみたけや まった けな どの菌根性 きの この栽培 に活用す ることである。
2 研究の実施 内容
本研究では、菌床栽培 (おが くず を固めて菌床 を作 ってハ ウス内で栽培)、ホダ木栽培 (野 外 のホダ木 に植 菌 して仮伏せ ・伏せ こみす るもの)、自然林 を利用 した菌根性 きのこの3つの ケースを想 定 していた。 これ らに適 した電気刺激 の条件 は対象で異 な る。 このため、本研究 では、 1)各栽培法での増産 に適 した電源 の開発 、2)増産効果 の実験 的検証、 3)電気刺 激 が菌 に与 える影響 の解 明を計画 していた。平成20年度 は以下 を計画 していた。
[コンパ ク トな電源 開発] きの こ増産 の実用化 に必要 な電源 の条件 として、高電圧 ・低 コ ス ト ・コンパ ク トがあげ られ る。 これ には コンデ ンサ とコイル を組 み合 わせ て高電圧 を発生 す る誘導性エネル ギー蓄積方式が適す る。 このため出力電圧 50kV、150kV、250kVの電源 を開
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発 し、 さらに回路素子 を検討 、 コンパ ク トで安価 な電源 を開発す る。
[電気刺激効果の検証] 本研 究 の核 の部分 にな る。誘導性 エネル ギー蓄積 方式パル スパ ワ ー電源 を用 いて、菌床栽培 、ホダ木栽培 、 自然林栽培 の きの こに適用 して増産効果 の検証 を 行 う。
以下、項 目に分 けて、本年度 の実施状況 をま とめ る。
(1)電源 開発 :コンパ ク トな電源 開発 では、ホダ木栽培用 にはMarx動作 時で250kV、Marx一IES 動作 時で500kV出力 の電源 を開発 した。Marx方式 (コンデ ンサ を並列充電 して、ギャ ップ スイ ッチ で直列 につ なぎ変 えて電圧増 幅 を行 う) と誘 導性 エネル ギー蓄積方式 (急激 な電 流遮 断で生 じる誘 導起電力 を利 用 して電圧増 幅 を行 う) を併用す るこ とで、高電圧 ・低 コ ス ト ・コンパ ク トを実現 した。 また、 この電源 は IES動作 の付加 の有無 に よって、異 な る 周波数成分 を有す るパル ス波形 を作 り分 け られ る。 さらに、Marx動作 のみ に よ り、連続 的 なパル ス電圧発 生動 作 も可能 にな り、実験 の効 率が格段 に改善 され た。 図1に装置 の概観 を示 す。 また、図2に出力波形 の一例 を示す. 出力 は、 1mのホダ木 の実験 に適 した 出力 電圧 の ピー クは約 110kVであ り、出力電圧 パル スの半値 幅 は約 50nsとな る。 この結果 、電 圧 の増幅利得 は22倍 とな る。この値 は、これ まで使用 され ていた1段 のIES電源(0.22LIFX l個、 10kV充電) 同 じエネル ギー を蓄積 した場合 の電圧利得 で ある約9倍 に対 して大 きな 値 とな る。 また、充電 5kVで 100kV以上の出力 を達成 で きてい ることがわか る。 この電圧 範 囲では充電 中の コロナ放電損 も起 こ りに くく、 よ り野外実験 に適 した電源 とな ってい る
ことがわか る。
図1開発 ・改 良したMal‑X‑IES方式パル スパワー発 生装置 (最 大 出力 :約 500kV)
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中0.05mm,/=10cm L=10HH,Vc=5kV
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図2 出力電圧 波形 と回路電流の一例 (出力 約 110kV)
(2)きの こ増産実験 :開発 した電源 を用 いて、菌床栽培 、ホダ木栽培 において増産効果 の確 認 を行 った。 マ ンネ ンタケ (霊芝) な ど、薬 に用 い られ る種類 で も大幅 な増産 が確認 で き てい る。 一例 として、図3に電気刺激 の有無 に よる しいた けの発芽 の違 いを示 す写真 、図 4に原木栽培 にお ける、15本 のホダ木 か ら収穫 され る重 さを比較 した もの を示す。50kVの 印加電圧 の場合 、ホダ木 に電圧 を印加 す る回数 を1回か ら50回に増やす ことで、収量が約
2倍 にな る様子 な どが確認 で きる。
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三陸総合研究 第34号
図3電気刺激 の有無 によるしいたけの収 量変 化の一例 (上 :刺激 なし、下 :パルス電気刺 激)
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Contro1 50kV 90kV 125kV 50kV (50Tmes) 図4電気刺激 によるシイタケの収 量変化 (右より刺激な
し、50kV1回、90kVl回、125kV1回、50kV50回)
3 考 察
図5にきの この ライ フサイ クル 、図6にシイ タケの増産実験 に使 用 した15本 のホダ木 のそ れ ぞれ の収 量の電圧 印加 回数 に よる変化 を示す。 図6よ り、電圧 印加1回の場合 、収量のな いホダ木 が7本存在す るが、50回印加 す るこ とで、 どのホダ木 か らもシイ タケが得 られ る様 子 がわか る。 この よ うに、電圧 印加 は子実体形成 の引 き金 になってい るこ とが確認 で きる。
子 実体形成 は、一般 には、図5に示す 、‑核 菌糸 が合体 して二核 菌糸‑ と変 わ り、疎水性 た んぱ く質 (ハ イ ドロホ ビン) を出 し、菌糸 の集合体 を形成 す るこ とに よ り起 こる。他 の研 究 報告 で も、二核菌糸形成 の際 に観 察 され るクランプ コネ クシ ョン (樹枝 状突起) が、電気刺 激 に よ り増 え る との報告 もあ る。今後 は、増産 の メカニ ズムの解 明や希少 品種 での増産効果 の確認 な どが課題 とな る。
タ ラ / プ コ ネ ク シ ー ン
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図5きのこのライフサイクル
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No.1NL2MB3No.4rh5仙 6 1k7 rh8 Ik9他.10rhllPh12Ph13Nq.14他,15
(a)50kVX 1time
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他.Ih2恥,31k4IkS 札6 1k7 Ph8 NL9山.lo仙.llNo.12NL13No.14NA15 (b)50kVX50times
図6電気刺激 の15本 のホダ木からのシイタケ の収穫 量と印加 回数の比較 (電圧:50kV)
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事業展開の見通 しと期待 され る効果
事業者 の事業 内容 は、主に、 きの この加 工 と販売 になる。 防腐剤 な ど薬剤使用 の問題 な どか ら、国産 のきの この需要が高まってい る。現在 は、需要 の高 ま りに、 自然林で採取のみの現方 法 では、追いつ けない状況 である。本技術 を用いて、 自然林 で採取可能 な菌根性 きの こ (あみ たけや まったけな ど)を増や し、商品価値 の高い国産 の菌根性 きの こを安定 に供給す ることで、
これ まで安定 に原料 を入れ られ なかったために、商品化 で きなかった もの も取 り扱 うことがで きる。 また商品を供給で きる範 囲を、県 内中心か ら、関東 圏、関西圏、九州‑ と押 し広 げるこ とも可能 になる。
期待 され る効果 として、 1) さん りくブラン ドきの この確 立、 2)国産 の菌根性新商 品開発 による地域 の由性化 、 3)バイオ‑の電気技術 の応用 といった新分野の技術応用 の話題性 、 4) 未活用資源 としての 自然林 の有効活用 な どがあげ られ る。特 に、 1) の さん りくブ ラン ドの確 立は、ほかの農業商品の価値 をも高 め、成果 の波及効果 も期待できる0
三陸地域への波及効果
(1) さん りくブラン ドの拡大 :さん りくブ ラン ドは、海産物 に関 しては強力 なネームバ リュー があるが、それ以外 はそれ ほ ど強 くはない。本研 究 は、 さん りくブラン ドをきのこに対 して 確立できることが期待 され る。 ブ ラン ド名 の強化 は、ほかの作物 の価値 をも引き上 げ、 さん
りく地域全体 の活性化 に も貢献できる可能性 を有す る。
(2)新商品開発 と販売範囲拡大 に伴 う地域の活性化 :本 目的が達成 された場合、県内産、 さん りく産 のきの この収穫量が増 し、菌根性 きの こを用いた加 工食 品の商品化 が可能 になる。 こ れ は関係す る業者‑ も波及効果 があ り、 さん りく地域‑の活性化‑貢献が期待 され る。
(3)バイオ と工学融合の領域の新技術の情報発信 :きの こといった生物系の応用 に、電気工学 の技術 を用い る融合領域 の技術 には、話題性 がある。 これ らがメデ ィアな どに取 り上げ られ ることで、 さん りく地域 が融合技術 の先行地域 とな り、話題 を集 めることが期待 され る。
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