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保育者志望学生の性格特性 : 四年制保育者養成に関する研究

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Academic year: 2021

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<研究報告>

保育者志望学生の性格特性

― 四年制保育者養成に関する研究 ―

Char act er i s t i csofper s onal i t yoft hes t udent s wi s hi ngt obeani nf ants choolt eacher

− A r es ear chon4-yeart r ai ni ngofi nf ants choolt eacher−

西 田 ますみ 日 高 精 二 常 田 奈津子 二階堂 邦 子 Masumi NISHIDA, Seiji HIDAKA, Natsuko TOKIDA and Kuniko NIKAIDOU

Abstract

Thisisacomparativestudyofphysicalfeatures(heightandweight),Physicalstrength(grip)andcharacteristicsof personality(Y-GTest)between2-yearNurseryCoursestudentsand4-yearChildDevelopmentStudiesstudents.These thingsweremadeclearthroughtheresearchofchildDevelopmentStudiesstudentsusing ego-gram .

1.TheaverageheightofChildDevelopmentStudiesstudents(2001Y)is159.03cm anditis2cm tallerthanthatof student20yearsago.(significantdifferenceis5%)Asforweightandgrip,thereisnobigdifference.

2.From theresultsofY-G Test,itbecomeclearthattodaysstudentsemotionalstabilityfactor(D.C.I.N)tendsto becomeunstable,andtheirleadingfactor(A.S)tendstohavecontrollingtendencycomparedwiththoseofNursery Coursestudents30yearsago.Asforthetypesofpersonality,studentsofB-type(delinquencytype) emotional unstabilitytype,lackingofadaptabilitytosocietytype,extrovertedtype increase.D-typestudentswhoare consideredtobesuitableforaninfantschoolteacherare47.7% inNurseryCourseand28.4% inChildDevelopment StudiesDepartment.

3.SpeakingofTEG Scale,ChildDevelopmentStudiesstudentsaremotherly,kind,helpfulandhaveoriginalityand expressivepoweralthoughtheylackobjectivejudgment.Thereforeitcanbesaidthattheyhavesuitablepersonality asstudentsmajoringinChildDevelopmentStudies.

physical constitution, physical strength, personality, training.

Ⅰ.はじめに

本学は1999年4月より二年制(短期大学・保育科)

から四年制(学部・幼児発達学専攻)へと保育者養成 が改組された.そこで,どのような特徴をもった学生 がこの専攻を選択しているかを把握し,その実態を明 らかにすることをねらいとして1999年から調査研究を 行っている .

私たちは幼児発達学専攻学生の入学時,卒業時,卒 業後と継続的に追跡研究をおこなっていくなかで,こ れからの保育者に求められる資質とは何か,また,保 育者養成はどうあるべきか追求していきたいと えて

いる.

光岡らは「のぞましい保育者の資質とは何か」とい うことを継続的に研究してきた.その中で YG,TPI, HTPなどの検査を実施し保育志望学生の入学時の性 格特性,2年間の変化,保育者としての意識,対人関 係,学業成績,休学者,退学者などについて分析し,

2年間の学生生活で経験するさまざまな教育現場の働 きかけで保育者としてのぞましい人間像へ変化してい る傾向が示されたと報告している .

また,近年ではエゴグラムを用いた保育者養成に関 する研究も行われるようになり,各自の性格特性を 知った上で保育者としての資質をより高めるためにど のようにすればよいか え る 手 段 と し て 活 用 し た り ,学生の職業選択も視野に入れた性格特性の分 析に利用されている .

私たちのこれまでの調査で二年制・四年制ともに,志 1)日本女子体育大学(助教授)

2)日本女子体育大学(名誉教授)

3)日本女子体育大学(助教授)

4)日本女子体育大学体育学部付属みどり幼稚園(園長)・日本女 子体育大学(教授)

(2)

望理由は子どもが好きであることや,保育者のイメー ジを好意的にとらえていること .子どもに対して親 和的で暖かく受け入れ,働きかける態度を持っている ことなどについて明らかになった .

本研究では身体特性(身長・体重),体力(握力),

性格特性(YG検査)について二年制の保育科生と四年 制の幼児発達学専攻学生との比較を行った.また,幼 児発達学専攻学生を対象に交流分析理論をもとに開発 された「エゴグラム」を用いて性格検査を行ったので 結果を報告する.

Ⅱ.対象者および検査方法

1.対象者

本研究の対象者は本学幼児発達学専攻学生1999年度 入学生43名,2000年度入学生51名,2001年度入学生60 名である.退学者,編入学者は除いた.

2.検査実施日は表1に示した.

3.検査方法

身長・体重については健康管理センター実施の健康 診断データを採用し,新体力テスト,YG性格検査(一 般用),TEGについてはそれぞれの実施要項に基づい て実施した.

4.分析方法

①新体力テストについて

文部科学省は,これまで実施されてきたスポーツテ ストを様々な観点から見直し平成11年度に「新体力テ スト」を決定した.新体力テスト移行後も同じ種目で 比較できるのは反復横とびと握力である.ただし反復 横とびはラインの幅が120センチから100センチに変更 されたので20年前のデータと単純に比較することはで きない.

② YG性格検査について

YGはパーソナリティーを多次元的にとらえる特性 論の立場に立脚し,簡便で信頼性の高い質問紙法の検 査として,臨床,教育,採用といったさまざまな場面 で広く用いられている.YGは日常的に見られる12の パーソナリティー特性を測定している.各尺度は以下 のようになる.

D 抑うつ性(悲観的,罪悪感)

C 回帰性(気分が変わりやすい,感情的)

I 劣等感(自信がない,自己の過小評価)

N 神経質(心配性,ノイローゼ気味)

O 客観性欠如(空想性,過敏症)

Co 協調性欠如(不満が多い,不信感)

Ag 愛想の悪さ(短気,攻撃的)

G 一般的活動性(活発さ)

R のんきさ(気軽,刺激追求)

T 思 的外向(思慮不足,大雑把)

A 支配性(指導性)

S 社会的外向(社交的)

また,YGでは系統値によってプロフィールを分け て全体的なパーソナリティをとらえることができる.

典型例は以下の5つである

A型(平凡型):尺度に偏りがなく,目立った特徴が ない

B型(非行型):バランスを欠いた性格で,反社会的 行動に出やすい

C型(鎮静型):安定しているが消極的 D型(適応者型):情緒安定,活動的,外向的 E型(ノイローゼ型):内向的で過敏,無気力になり

やすい

③ TEGについて

交流分析とは,対人関係で起こっている交流のパ ターンを分析する方法で,自我状態について大きく3 つに「親の自分(ParentP)」「大人の自分(AdultA)」

「子どもの自分(ChildC)」そしてさらに細かく合計5 つに分けて説明している.

a.P−親(Parent)の自我状態:幼い頃から自分を 育ててくれた親またはそれに準ずる人から取り入れた 部分.以下の二つに分けられる.

・ CP;批判的な親(CriticalParent)−自分の え や価値観を正しいものとしてそれを主張する部 分.良心,理想などと深く関連し,規則などを教 える反面,支配的で命令調,ほめるより批判する 傾向が高くなると言われる.

・ NP;養育的親(NurturingParent)−思いやり,

保護,受容など,子どもの成長を促進させるよう な母親的な部分.人を励ましたり世話をしたり,

保護的で優しいが,反面押しつけがましくなって しまう.

b.A−大人(Adult)の自我状態:客観的事実に基 づいて物事を判断する部分.感情に支配されず,合理 表1 検査実施日

(3)

的・論理的冷静な思 傾向が強い.A的な思 態度は,

日常生活では非常に必要なことであるが,過度になる と,情緒に乏しい無味乾燥なコンピュータ人間になり かねないとされている.

c.C−子ども(Child)の自我状態:人間が持って 生まれたままの姿で,本能的な直感や感情など生命の 原点の部分.以下の二つに分けられる.

・ FC;自由な子ども(FreeChild)−親の影響を受 けない本能的で感覚的・ 造的な部分.直感的な 感覚や 造性の源で,豊かな表現力は周囲に明る さ・温かさをもたらすが,反面過度になると自己 中心的でわがままとなり周囲との協調性に欠けて トラブルを起こしやすくなる.

・ AC;順応した子ども(AdaptedChild)−親など の期待に沿うように常に周囲に気兼ねをし,本来 の自分の自由な感情・欲求を抑える「イイ子」の 部分.協調性があり,控え目で慎重な反面,簡単 に妥協してしまったり,自発性を欠き,依存心が 強くなったりしてしまう.

Ⅲ.結果と 察

1.身体特性と体力について

身長,体重,握力について20年前の保育科生値 と比 較して表2に示した.2001Y生の平 身長が159.03cm で約2 cm 高くなっている(有意差5%)が,体重,握 力ともに大きな違いは見られない.

次に,幼児発達学専攻学生の体格・体力と全国平 値 を 比較して表3に示した.20年前の保育科生値は全 国値に比べ18,19歳ともに体重が重く,反復横とび,

立位体前屈に劣るが,19歳では垂直とび,背筋力が優

れていると報告されている が,1999Y生は全国値に 比べ体重が4.5kg多く,反復横とびが優れている.2000 Y生,2001Y生ともに全国平 より体重がやや多く,

反復横とび,握力ともに優れているという結果であっ た.

体育学部の幼児発達学専攻としては「心身ともに健 康な保育者養成」を目標の1つにしているので今回測 定した2種目(反復横とびと握力)が全国値より優れ ていることから目標にあった学生が入学していること が明らかになった.

2.YG性格検査について

保育者志望の学生が入学時にどのような性格特性を 示しているのかについて比較するため,1970年に光岡 が行った保育科生の検査結果 と幼児発達学専攻学生 の結果をあわせて表4・図1に示した.幼児発達学専 攻の学生が約30年前の保育科学生に比べて高かった尺 表2 体力 20年前との比較

表3 体格・体力の平 値と標準偏差および有意差検定

表4 尺度別粗点平 3.70

5.10

(4)

度は,D抑うつ性,C気分の変化,I劣等感,N 神経質 で,O主観的,Co非協調的,Rのんき,A支配性,S 社会的外向であった.つまり,幼児発達学専攻の学生 は情緒安定因子(D,C,I,N)は不安定の方向に,主 導性因子(A,S)は主導権を握る方向にあることがわ かる.

性格類型を表5に示した.保育科生は D型47.7%,

B型17.9%,A型15.2%,E型9.9%,C型9.3%であっ たのに対し,幼児発達学専攻学生は B型40.5%,D型 28.4%,A型21.0%,E型6.0%,C型4.1%であった.

つまり B型(非行型)情緒不安定,社会不適応,外向 タイプの学生が増加した.光岡は「D型の性格特性は 情緒的に安定し社会適応も良く対人関係もうまくいく タイプで保育者の人格的資質として最も望まれるもの で,保育科生の47.7%が D型であった」と報告してい る .幼児発達学専攻学生の D型は28.4%で約20%減 少した.一方,平 型,安定適応消極型と,不安定不

適応積極型と不安定不適応消極型のうちその傾向が明 確でない混合型をあわせ「一応問題のない性格傾向を 備えている学生」は保育科84.1%であったのに対し幼 児発達学専攻91.9%であった.

保育者の人格的資質として最も望まれる D型の学 生は減少したものの,問題のない性格傾向を備えてい る学生が増加していることは,4年間の保育者養成期 間を生かして安定したパーソナリティーの形成に取り 組むことが可能であることの示唆を得た.

3.TEGについて

交流分析理論のもとに開発された「エゴグラム」を 用いて幼児発達学専攻学生の性格特性を分析した.

TEG尺度ごとの平 値を図2に示した.幼児発達学専 攻学生の特徴をみると,CP値が高く,批判力があり人 の意見に流されにくい.NP値も高く,ほどほどの優し さを持ち合わせている.A値が低く客観的な判断能力 に乏しい.FC値が高く, 造性や表現力が豊かである 一方自己中心的な面も持ち合わせている.AC値が高 く,協調的・従順であるが依存心が強い傾向がある.こ のことは,齋藤が 福祉・教育学生と他学科専攻生を比 較し,「福祉・教育学生は CPが低く NP・FCが高いと いうことは,彼等が子ども・老人・障害児者に接する 福祉・教育職に対して適性を持っていることを示して いよう」と述べていることと同じ傾向を示している.

さらに,1年次と2年次のエゴグラムを比較して「大 学生活全般が A値を高める方向性を持っている」「福 祉・幼教の教育内容が NP値を伸ばすような内容であ る」と述べていることから,幼児発達学専攻学生も4 表5 性格類型

▲ 保育科学生

● 幼児発達学専攻 図1 粗点平 によるプロフィール

(5)

年間の学生生活を通して A値や NP値が高くなるこ とが えられる.

Ⅳ.ま と め

本研究では身体特性(身長・体重),体力(握力),

性格特性(YG検査)について二年制の保育科生と四年 制の幼児発達学専攻学生との比較,幼児発達学専攻学 生を対象に「エゴグラム」を用いて検査を行った結果,

以下のことが明らかになった.

1.身長,体重,握力について20年前の保育科生値と 比較した結果,幼児発達学専攻2001Y生の平 身長 が159.03cm で 約 2 cm 高 く なって い る(有 意 差 5%)が,体重,握力ともに大きな違いは見られな かった.幼児発達専攻学生は全国平 値と比較して 体重が多く,反復横とび,握力は優れている.

2.入学時の YG性格検査の結果について30年前の 保育科学生と比較した結果,幼児発達学専攻学生は

情緒安定因子(D,C,I,N)は不安定の方向に,主 導性因子(A,S)は主導権を握る方向にあることが わかった.

また,性格類型を比較すると B型(非行型)情緒 不安定,社会不適応,外向タイプの学生が増加し,

幼児教育者に適していると えられる D型(適応者 型)が保育科47.7%,幼児発達学専攻28.4%であっ た.一方,一応問題のない性格傾向を備えている学 生は保育科84.1%,幼児発達学専攻91.9%であった.

3.幼児発達学専攻学生についてエゴグラムを用いて 性格特性を調査し,TEG尺度でプロフィールをみる と幼児発達学専攻学生は客観的な判断力は乏しい が,母性的で優しく世話好きで, 造性や表現力が あることなどから保育者養成課程に学ぶ学生として の特性を持ちあわせていると えられる.

今後は YG・TEGなどの性格検査を学生にフィー ドバックすることによって各自が自分を良く知り,

保育者の資質を高めるためには何が必要かを える 資料として生かしていきたいと えている.また,

体力テストについても同様にフィードバックし,体 力の維持増進に関心を持って授業に取り組むよう指 導していきたい.

これらの結果をふまえて,体力や性格特性,保育・

教育実習効果などについて追跡研究をしていきたいと えている.

この研究は平成13年度の共同研究費でおこなったも のである.

引用文献

1)石井美晴,光岡摂子(1974):保育者の資質に関する研 究・第2報,そのⅠ保育者としての意識,日本女子体育大 学紀要第4巻,118∼126

2)石井美晴,光岡摂子,常田奈津子,秋山邦子(1975):

保育者の資質に関する研究−保育者志望学生の母子関係 検査法にみられる特性−,第12回委託研究等研究紀要東 京都私立短期大学協会,55∼67

3)光岡摂子(1971):保育科生にみられる性格特性,日本 女子体育大学紀要第3巻,52∼62

4)光岡摂子,石井美晴(1972):保育者の資質に関する研 究 第二報−そのⅡ 保育者志望学生にみられる性格特 性−,日本女子体育大学紀要第4巻,127∼147 5)中村陽一,渡邊ユカリ(1997):エゴグラムからみた保

育者養成短期大学生の傾向,日本保育学会第50回大会研 究論文集,204∼205

6)中村陽一,渡邊ユカリ(1998):保育者養成におけるエ ゴグラム分析の効果,日本保育学会第51回大会研究論文 図2 TEG尺度ごとの平 値

(6)

集,680∼681

7)中村陽一,渡邊ユカリ(1999):保育者養成におけるエ ゴグラム分析の効果⑵,日本保育学会第52回大会研究論 文集,398∼399

8)文部省体育局(2000):平成11年度 体力・運動能力調 査報告書

9)二 階 堂 邦 子,千 葉 裕 子,常 田 奈 津 子,西 田 ま す み

(2000):四年制保育者養成に関する研究⑴ − 学生がイ メージする保育者 −,日本女子体育大学紀要第30巻,

155∼164

10)西田ますみ(1984):日本女子体育短期大学 保育科生 の体格・体力に関する研究,日本女子体育大学紀要第14 巻,143∼152

11)末松弘行,和田 子,野村 忍,俵里英子(1992):エ ゴグラム・パターン,金子書房

12)齋藤 裕(1995):エゴグラムを用いた福祉・教育系短 大生の特性分析,日本保育学会第48回大会研究論文集,

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13)齋藤 裕,島崎敬子(1996):“保母”に求められる資質 に関する研究調査⑴,日本保育学会第49回大会研究論文 集,862∼863

14)常田奈津子,西田ますみ,二階堂邦子(2001):母子関 係検査法にみられる保育者志望学生の大学入学時の特 徴−四年制保育者養成に関する研究−,日本女子体育大 学紀要第31巻,77∼86

15)東京大学医学部心療内科編著(1995):新版エゴグラ ム・パターン,金子書房

16)渡部洋編著(1993):心理検査法入門,福村出版

平成13年9月21日受付 平成13年11月26日受理

参照

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