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新 自由主義改革下 の 日本 の金融改革

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(1)

新 自由主義改革下 の 日本 の金融改革

野 崎 哲 哉

《目 次 》 I.は じめに

Ⅱ.日 本 における新 自由主義改革の特徴 とその展開 1.日 本 における新 自由主義改革の特徴 2.日 本 における新 自由主義改革の展開

Ⅲ.金 融分野 における新 自由主義改革 1.日 本への市場主義の導入

2.株 式資本主義 と「貯蓄か ら投 資へ」〜現代 日本 におけるマネー ダーム

3.金 融分野 における新 自由主義改革 とその問題点

Ⅳ.金 融規制緩和 お よび民営化 の問題点

1.資 本主義 における規制 と日本 における規制緩和 の進展 2.金 融分野 における規制

3.日 本 における民営化 の問題 点 4.日 本の金融改革の現状 と問題点 V.お わ りに

I.は じめ に

新 自由主義改革が浸透 し始めた今 日の日本社会は,か つてない格差社 会 となりつつある。一部の大企業は過去最高益 を記録 し続け,一 握 りの 富裕層が金融資産を拡大 し続けている。それに対 して,圧 倒的多数の中

(87)

新 自由主義改革下の 日本の金融改革

野 崎 哲 哉

《日 次≫

I.はじめに

Ⅱ.日本における新 自由主義改革の特徴 とその展開 1. 日本における新 自由主義改革の特徴 2.日本における新 自由主義改革の展開

Ⅲ.金融分野における新 自由主義改革 1. 日本‑の市場主義の導入

2.

株式資本主義 と「貯蓄か ら投資‑ 」〜現代 日本 におけるマネー ゲーム

3.

金融分野における新 自由主義改革 とその問題点

Ⅳ.金融親制壌和および民営化の問題点

1.資本主義における規制 と日本における規制緩和の進展

2,

金融分野における規制

3.

日本における民営化の問題点

4.

日本の金融改革の現状 と問題点

Ⅴ.おわ りに

Ⅰ.

は じめに

新 自由主義改革が浸透 し始めた今 日の 日本社会は,かつてない格差社 会 とな りつつある 一部の大企業は過去最高益 を記録 し続け,一握 りの 富裕層が金融資産を拡大 し続けている それに対 して,圧倒的多数の中

( 8 7)

(2)

小企業 は低迷 を続け,国民 ・労働者の大多数 には看過で きない貧困が広 がっている

この新 自由主義改革は,米国とそれに追随する日本の財界 (独 占資本) が求めた ものであ り,市場 メカニズムを信奉 し,競争遂行のための大幅 な規制の緩和 ・撤廃や,公的部門の縮小 ・民営化 を進めるものである̀1'。

今, この改革は,グローバ リゼーションとして世界的にも矛盾 を拡大 し 続けているが,国内で も格差拡大にとどまらず,ルールなき状況下での

不正 ・偽装」の事件 を頻発 させ,社会全体 を極めて不安定 にしている

ところで, この新 自由主義改革は,支配的イデオロギー として,社会 の各方面‑浸透 しつつあるが,中で もその中心的な位置づけを持つのが 金融分野である。新 自由主義改革は 「市場」 を重視 し, リスクを商品化 し,あ らゆるものの 「金融化」を推 し進めている(2)。新 自由主義の本質 は,資本 による労働者 ・国民への支配 と搾取の強化であ り,その改革は, あ らゆるものを市場の尺度 ‑貨幣によって測 ることを求め,市場主義の 徹底 を求める したがって, こうした市場主義に適合的な金融システム の構築 こそが求め られるのであ り,現代の金融改革はこうした観点か ら 把握 されなければな らない。

1 9 9 0

年代後半以降,日本 ビッグバ ン (金融大改革)が進め られ

,2 1

紀 に入 り,小泉構造改革下では,急速に改革が進め られた。「貯蓄か ら投 資‑」のスローガンによって,多 くの国民の資産が リスクマネーへ と転 化 され始めている また,様 々な自由化措置の中で,

M&A

(合併 ・買 収) も急増する一方,金融機関も極めて厳 しい競争の下で,大再編 を遂 げて きた。

しか し, こうした市場主義に基づ く金融改革は,富の偏在 と一層の市 場の不安定化 をもた らしている

。0 6

年のライブ ドア事件や村上 ファン ド事件 に見 られるように,国内的にはルールを無視 した拝金主義的傾向 を拡大 させ,投資家被害 も増大 させてきた。 また世界的にも

,0 7

年夏以

(3)

降,世界 を震掘 させている米国サブプライムロー ン問題 に見 られるよう に, リスク自体 を管理できず,市場の不安定化 を増幅 させている。つ ま り,新 自由主義改革 に基づ く金融のあ り方 自体の問題点が,今,顕在化 しつつあるのである

そこで,本稿では, 日本 における新 自由主義改革の特徴お よびその導 入の経緯 を明 らかにし,新 自由主義改革下の 日本の金融改革 を批判的に 検討することを課題 とする

以下, Ⅱでは, まず新 自由主義 とは何かについて述べた上で, 日本に おける新 自由主義改革の特徴 とその導入の経緯 について考察する。Ⅲで は,現代 日本のマネーゲームを念頭に置 きなが ら,金融分野における新 自由主義改革の現状 と問題点について考察するⅣでは, 日本 における 金融規制礎和お よび民営化の進展 とその問題点を考察 し, Ⅴでは本稿の

まとめを述べ結びとする

Ⅱ.

日本 における新 自由主義改革の特徴 とその展開

1.

日本における新 自由主義改革の特徴

(1)新 自由主義 とは何か

そ もそ も新 自由主義は,世界的には

7 0

年代 にケイ ンズ主義 に変わる 新たな資本主義体制擁護 ・強化のイデオロギー として登場 して きた。市 場メカニズムを信奉 し,競争 こそが経済の効率を高め,社会を活性化す ると考 える新 自由主義は,国家の経済への介入は極力抑 え,資本にとっ ての蓄積制限 となる規制は次々と緩和 ・撤廃するべ きであるとした。当 時の財政危機 に苦 しむ先進資本主義国は,大 きな政府」に変わる 「小 さ な政府」 を目指 し,公的部門の民営化や規制緩和 を推 し進めていった。

また,多国籍化 した独 占資本は自らの蓄積制限を乗 り越 えるための 「自 由」を確保す るために

,I MF

や世界銀行などの国際機関を通 じて,世界

(8 9)

(4)

的に新 自由主義に基づ く経済改革を拡大 し,今 日のグローバ リゼーショ ンを推進 していった。

新 自由主義はこうした世界市場全体 に広がる現代のイデオロギーであ り,先進資本主義国だけでな く,開発途上国にもその改革は浸透 してい また経済改革にとどまらず,政治や社会 などその国家のあ らゆる部 面に作用することによって,国民統合 を推 し進めようとする 新 自由主 義は,「個人的自由」は市場の商取引の自由により保証 されると考 えるた め,多 くのリベ ラルな国民 も 「幻想」を抱かされ,先進諸国の 「自由」

を求める様々な政治的 ・社会的運動 にもその影響力 を浸透 させて きた̀3) しか しなが ら,新 自由主義改革は資本 による労働者 ・国民への支配 と搾 取の強化 を推 し進めるところにその本質があ り,格差社会の現出に見 ら れるように,多 くの労働者 ・国民 との矛盾 を深めざるを得ない。実際, 新 自由主義改革による現実的弊害は世界各地で現れてお り,その問題性 も明 らかにな りつつある。ただ し,新 自由主義改革の矛盾の発現 は国に よって異なってお り,その国の新 自由主義改革が どのような特徴 を持ち 行 なわれてきたか,そ して現実的にそのイデオロギーが どの程度の国民 統合 を成 し得ているかによって も異なっている

(2) 日本の新 自由主義改革の特徴

日本の新 自由主義改革は

,2 1

世紀に入 り本格的かつ急速に進め られて きた。80年代の臨調路線下の民営化や90年代の平岩 リポー トに基づ く 規制媛和政策推進など,新 自由主義改革は部分的 ・段階的に進め られて

きたが,00年以降,米国ブッシュ政権下で対 日圧力が強化 され,それに 呼応 した小泉政権下で 日本の新 自由主義改革が本格的に進め られること

となった。

日本の新 自由主義改革の第

1

の特徴 として,何 よりも米国か らの外圧, すなわち多国籍化 した米国独 占資本の要求の押 し付 けによって規定 され

(5)

るという側面がある そ もそ も日本の資本および国家は,対米従属 とい う規定性 を帯 びている。世界的に新 自由主義改革が進展する

7 0

年代後 半以降, 日本の独 占資本 は資本蓄積 を順調 に推 し進め,英米のような差 し迫った課題 として新 自由主義改革を推 し進める必要性 に迫 られること はなかった。 しか しなが ら,80年代 には,米国が求める対 日要求の枠内 で新 自由主義改革を進めることとな り,極めて限定的に民営化 と一部の 規制緩和が行 われた。続 く

9 0

年代 には, 日本 にも本格的な新 自由主義 改革を求める米国か らの要請がさらに強化 され, 日本の独 占資本 もそれ に呼応 した対応 を示 しだす。 ここに, 日本の新 自由主義改革の第

2

の特 徴がある。すなわち,多国籍化する日本の独 占資本の要求に規定 される

という側面である。

しか しなが ら

,9 0

年代後半の 日本 において,第

1

の特徴 としての米国 か らの外圧 を受けなが らも, また第

2

の特徴 としての 日本の独 占資本の 要求 を受けなが らも, まだ部分的にしか新 自由主義改革を進めることが で きなかった。 というの も,当時はまだバブル後遺症か ら十分 に抜 け切 れてお らず,金融 システム不安 を解消するために莫大な公的資金 を投入 した り,赤字国債 による大規模公共事業 を行なった りする一方,新 自由 主義のイデオロギーは国民統合 を十分成 し得ていない状況にあったか ら である。こうした点か ら, 日本の新 自由主義改革の第 3の特徴 として, その導入に時間がかか り,部分的 ・段階的であったことがあげ られる

日本の場合,戦後復興期以来の国家主義的な政治経済の運営 システムが 根深 く定着 し,新 自由主義改革の浸透 を妨げてきた と言える

現在, 日本における新 自由主義改革は,イデオロギー的には,国民へ の市場主義の浸透 を図 りなが ら進め られている 市場 における評価 を最 重視 し,「貯蓄か ら投資‑」のスローガンに見 られるように,市場での金 融資産運用 を国民全てに求める,あ らゆるものの 「金融化」が図 られて いる さらに,具体的な新 自由主義改革のための柱 として,規制緩和 と

(9 1)

(6)

民営化が進め られている 規制緩和 は,現段階では 「規制改革」 と呼ば れているが,この内実は

「 De r e gul a t i o n

(ディレギュレーション)‑規制 廃止」であ り,資本蓄積 にとってあ らゆる面での制限 となる規制を撤廃 しようとするものである また民営化 は,公的部門を次々と市場化する ことで小 さな政府 を推 し進めようとしている これ らの点については後 述す ることとし,次にこれまでの 日本 における新 自由主義改革の展開を 概観 してお くことにしよう

2.

日本における新 自由主義改革の展開 (1)

1

段階

〔 1 9 8 0

年代 ‑部分的浸透期〕

英国のサ ッチ ャーリズム,米国の レーガノミックスの登場 は

,7 0

年代 までの先進資本主義国の資本蓄積 を推 し進めた支配的イデオロギーの, ケインズ主義か ら新 自由主義への転換 を意味 した。一方,当時の 日本は, 低成長に移行 しつつ も国際競争力 を早期に回復 し,米国 との経済摩擦 を 激化 させていた。 こうしたことか ら,新 自由主義 自体 は当時の臨調路線 に部分的に浸透 しつつ も,支配的イデオロギー とは程遠い位置にあった といえる(4)。なお, この時期の改革で特徴的なことは,公営企業の民営 化が先行 し,米国か らの市場開放などの要求に応 える形で̀5',あるいは

8 0

年代半ば以降のプラザ合意後の変動期‑の対応 として(6),その改革が 取 り入れ られるに過 ぎず,極めて日本的な資本蓄積様式は温存 されたこ

とである

(2)

2

段 階

〔 8 0

年代末

〜9 0

年代半ば ‑本格的導入への準備期〕

8 0

年代末以降, 日米構造協議

( 8 9‑9 0

年)などで見 られた米国の対 日要求 自体 は極めて保護主義的色彩が強 くなる一方̀7',国際社会全体で はソ連邦崩壊 など市場経済拡大の可能性が大 きくなる中で,米国は再び 新 自由主義改革 のグローバ リゼーシ ョンを推進 してい くこ ととなっ

(7)

た(8'。 日本資本主義 もバブル経済 とその崩壊 の時期 にあた り,米国の対 日要求の変化 に翻弄 されつつ も,新 自由主義 を支配的イデオロギー とし て受容する方向を模索 していた時期 と言える 詳 しくは後述するが,93 年の平岩 リポー トでは本格的な規制緩和推進が謳われ,その後の規制緩 和推進体制の礎 を築 くこととなった。

(3)

3

段階

〔 9 0

年代後半 ‑本格導入の試み とその挫折の時期〕

クリン トン政権 による対 日圧力の強 まりの一方で, 日本の政財界 も新 自由主義改革推進の機運を高めつつあったのであるが(9),バ ブル後遺症 の長期化 によって国内経済 自体が疲弊 し,規制緩和 に取 り組みつつ も徹 しきれない状況が続いた時期であった。大銀行 をはじめ とする日本の独 占資本 自体が不良債権処理に苦 しみ,経済危機 ・金融不安か ら脱 しきれ ず,地方の中小企業や労働者 ・国民が規制緩和 イデオロギーに幻惑 され つつ も,生活不安が増大する状況が続いた。新 自由主義改革を政治的課 題 とした橋本

6

大改革 も国民的には受け入れ られず,大型公共事業拡充 など従来型の政策対応 に一時的に回帰することとなった。ただ し,規制 嬢和 を軸 とした 日米間の協議や国内での新 自由主義改革推進の枠組みが 構築 され,経済戦略会議 (98年発足)による新 自由主義イデオロギーを 積極的に普及す る取 り組みも開始 された。

(4)4段 階

〔 2 0 0 0

年以降 ‑本格導入期お よび矛盾の発現期〕

9 0

年代末か ら経済の好調 を持続 して きた米国にも繁 りが見 え始めた

0 0

年 に,米国は対 日圧力 を一気 にレベルアップし(10',日本の新 自由主義 改革 を本格的導入へ と導いてい くこととなった。同時多発 テロやイラク 戦争など,国際政治面で も米英が進める新 自由主義改革への疑問が広が る中,世界各地でグローバ リゼーションへの国際的な批判的世論が高揚 する一方, 日米関係はさらなる緊密化の道 を進むこととなった。 日本国 (93)

(8)

内では,市場主義的な改革に 「賛意」を示す世論形成が進展 し,構造改 革の名の下に具体的な改革が進め られていった'11'。ただ し,一方では, 新 自由主義改革の矛盾の発現 としての格差の拡大 を実感 させる事態 も蘇 在化 してい くこととなった。

Ⅲ.金融分野 にお ける新 自由主義改革

1.

日本への市場主義の導入

新 自由主義改革は,市場 メカニズムを信奉 し,競争 こそが経済の効率 を南め,社会 を活性化するという考えに基づ き進め られる そのために 必要 とされるのが,国民への市場主義の浸透である。

例 えば,経済同友会の 「市場主義宣言

」( 9 7

年)では,「市場 は競争 を 通 じて効率的な資源配分 を実現する極めて優れた仕組みである」とされ,

経済社会の運営 を可能な限 り市場 に委ねることが基本 とされるべ き」

とされている この部分 を強調 し,実施するものが市場主義, または市 場原理主義である この考 え方は,「市場の失敗」といった市場 メカニズ ムの限界 をも考慮 に入れず,市場の評価や判断を過度に重視 し,そ こに 全幅の信頼 を寄せ るところにその特徴がある

ここでの市場の評価 とは,市場の尺度 (貨幣)に基づ き, どれだけ効 率的に貨幣を手に入れることがで きたか という点に求め られることとな り,極めて拝金主義的な傾向を礼賛することとなる また,本来市場 に おいて評価 されるべ きではないもの も,市場の判断に委ねるようになる

っまり,あ らゆるものを貨幣価値で計ることを求めること (‑あ らゆる ものの 「金融化

」 )

とな り,市場で売買 されるようになる このことは, 効率的に貨幣収入 を得 られない分野 を軽視する傾向とな り,社会に必要

な分野であっても切 り捨て られることとなる ちなみに,先の 「市場主 義宣言」では,「市場だけで国民が直面するすべての問題が解決で きるわ

(9)

けではない」とした上で,「市場 に委ねるべ き問題 と市場では解決で きな い問題 を峻別 し,個人,・企業,政府の役割 を再確認する必要がある

の指摘 はある。だが,市場主義 に基づ く資本の本質は,市場の評価 を最 重視するものであ り,問題 を 「峻別」 しない し,またで きるものではな い。そのことは,市場主義 を図る規制媛和や民営化推進の中で,安全軽 視や環境破壊,偽装 ・粉飾事件の多発 など,国民や社会 にとって多 くの 悪影響 をもた らしていることか らも明 らか と言えよう

2.

株式資本主義 と「貯蓄か ら投資へ〜現代 日本におけるマネーゲー

マネーゲームとは,実体経済の動向 とは無関係 に,より多 くの金融収 益 を得 ようとす る極めて投機的な投資行動のことを指 し,その金融収益 の源泉 を問わない ところにその本質的特徴がある マネーゲーム自体 は これまで も何度 も問題 とされ,約

2 0

年前の 日本のバブル経済で も,その 問題性 は深 く理解 されて きたはずである しか しなが ら,新 自由主義改 革の一環 として進め られる現代のマネーゲームは,新たな形態で,かつ 大規模 に行われつつある そこでここでは, まず今 日のマネーゲームを 象徴するライブ ドア事件,村上 ファン ド事件 について簡単に考察 し,現 代 日本のマネー動向を概観する。

(1) ライブ ドア事件

ライブ ドアは,新 自由主義改革による証券分野の相次 ぐ規制緩和の流 れにの り,株式分乳 株式交換,投資事業組合などを活用 しなが ら,会 社 を急成長 させ ていった

。0 5

2

月に時間外取引 を通 じてニ ッポ ン放 送株 を大量取得 したころか ら,マスメディアにも頻繁に取 り上げ られ, 時価総額 日本一 を目指すなどマネーゲームを礼賛する行動 を増幅 させて (12)

(95)

(10)

当時は 「現代の錬金術」 として もてはやされたものの,その実態は不 正,虚構 の成長であった。その手法は,株式分割を行い,株価 をつ り上 げ,株式交換 を通 じて企業買収 を繰 り返す とい うものであ り,その際に 投資事業組合 を用いるなど,極めて隠蔽的所業 を駆使 した ものであった

0 0 6

1

月の東京地検特捜部による強制捜査以降,風説の流布および偽計 取引の嫌疑で司法によって裁かれることとなった。

堀江元代表は 「金で買 えないものはない」 といった言動 を繰 り返 し,

0 5

年 には政界‑の進出も画策 したが,彼 を持ち上げ,後押 ししていった のが新 自由主義改革推進の当時の自民党および 日本経団連であったoこ こに,現在の改革の本質的側面が如実に表れているといっても過言では ない。

ライブ ドアは,東証マザーズに上場 していたが,事件以後,新興市場 全体が低迷 し

,I T

企業等の新興企業‑の資金供給が停滞するといった 事態 を招いた。実態のないマネーゲームを繰 り返 したライブ ドアは, 日 本の新興市場の形成 ・発展 にも悪影響 を及ぼす こととなった'13)。さらに 問題なのは,上場廃止に伴い,多 くの個人投資家に被害 を拡大 させたこ とである 株式分割 を繰 り返 し

, 1

株か ら株式 を購入で きるようにして いたため,事件当時には約

2 2

万人の個人投資家が存在 してお り,この多

くが被害者 となったのである

̀ 1

4)0

(2)村上 ファン ド事件

ライブ ドア事件か らわずか数 カ月後の

0 6

6

月には,「もの言 う株主」

として注 目を浴びていた村上ファン ド代表が,インサイダー取引容疑で 逮捕 された。 ライブ ドアがニ ッポン放送株取得 を目指 している時期 に, 内部者情報 を用いて巨額の資金 を得たことがその逮捕容疑 とされた'15)。

そ もそ も村上ファン ドの錬金術 は, まず,割安な上場企業の株式 を取 得 し,値上 り後,市場で売却するか,企業側 に高値で買い取 らせるとい

(11)

うものであった。表向 きはあ くまで も株主 としての権利 を強調 し,株主 還元 を強 く迫 りつつ,株価 をつ り上げるのであるが,その実態は 「金儲 け」を礼賛する悪質な投機家であった。 ファン ドとしての資金は,一部 の富裕 な投資家か ら集め, ライブ ドアの場合 と同 じく投資事業組合等を 活用 して資金 を運用するのであるが,明星食品や阪神電鉄の株式取得時 には,法の網の目を潜 り抜 け,密かに株式 を買い集め,経営参加 を画策 するなど,その行動 は極めて問題あるものであった。

村上 ファン ド事件 を契機 として,国内では様々な企業防衛策が構築 さ れ始めた。敵対的買収を防 ぐために,上場廃止 を選択する企業 も現れる など,今 日の企業経営に多大な影響 を与えた'16)。 さらに,深刻 な問題 と してあげ られるのが, 日本の国民, とりわけ若い世代のマネーに関する 意識 に大 きな影響 を与 えたことである。詳 しくは本稿の最後でも述べる が,マネーゲームを礼賛する意識の高まりという看過で きない事態 を引 き起 こした。ちなみに, ライブ ドア事件 ・村上 ファン ド事件は氷山の一 角であ り,規制緩和の下で,巧みな証券犯罪 を起 こし得 る環境が広が り つつあることも問題 といえよう

( 3)

活発化する

M&A

と低迷する株式市場

日本 におけるM&A(企業の合併 ・買収)は

21

世紀 に入 り激増 してき た。図表

1

に示 されているように,国内企業による国内企業の

M&A

加 えて,外 国企業による

M&A

も大 きく伸 びて きている

そ もそ もM&A自体は,それほど新 しい ものではない。 これまで も資 本主義経済の発展の中でも何度 もM&Aブームが起 こり,企業の再編成 が進め られて きた̀17)。 しか しなが ら,今次の

M&A

ブームは,メガコン ペティシ ョンと称 される

9 0

年代半ば以降の,各国独 占資本間の激烈な 競争 を背景に進め られてお り,マネーゲームとしての側面 を非常に強 く 醸 し出 している 日本ではまだ定着 してはいないが,外資系 ファン ドの

(97)

(12)

3, 0 00 2, 5 00 2, 00 0 1, 5 00 1, 000 5 0 0 0

図表 1 日本 にお ける M&Aの推移

田 Ⅰ N ‑ O U T

#1%

++

こ S / ‑ .

出所〕 レコフ調べ

注〕I

N‑ I N

B本企業同士の

M&A I N‑ OUT

日本企業 による外国企業‑の

M&A ouT‑ I N

外 国企業 による日本企業への

M&A

中には敵対的

TOB

(株式公開買付)を駆使するものも現れて きている

こうした中で

,0 7

5

月か らは三角合併が解禁され,外国企業による 日本企業の

M&A

がや りやす くなった と言われている̀18)。三角合併 と は,外国企業が 自社株 を用いて, 日本にある自らの子会社 と日本企業を 合併 させ,傘下 に収 める ものである こうした新 たな

M&A促進策に

ょってさらに件数お よび規模 ともに増大 してい くことが予想 されるが, 外資系によるM&Aの増加が,敵対的なものの増加 をも招 くことが懸念

される

一方, 日本の株式市場 は,中国やインド,米国等の株式市場下落の影 響 を受け,世界同時株安 となる事態を何度 も招 くなど,市場 自体が極め て不安定 となっている さらに,前述のライブ ドア事件以後 は,東証マ ザーズや大証ヘ ラクレスな どの新興市場 も低迷 を続 ける中,新規公開

( I PO)

の際に,公募価格 を下回る状況 も発生 している また,ネッ ト を利用 した国内の個人投資家の増加は見 られた ものの,投資家の中心は 外人投資家 となってお り, 日本では,市場全体がマネーゲームの場 と化

(13)

しつつあ り,新 自由主義改革の影響が着実 に現れつつある と言 えよう

(4)個人マネーをめ ぐる動向

今,「貯蓄か ら投資‑」によって 日本の個人金融資産 も動 き始めている

個人金融資産残高 は

1 555

3 989

億 円

( 0 7

6

月末)である (図表

2)

超低金利政策が継続 される中,国内外 の金融機 関が様 々な商品 を開発 し,個人金融資産の獲得 に しの ぎを削 っている 安全資産である預貯金 か らリスク資産である株式や投資信託‑ と個人マネーが シフ トし始 めて いる 株式の個人投 資家 は

06

年度 には

5

年前の約

2

割増の

3 928

万人 に 達 し̀19),投信残 高 も2倍以上 の

70

兆 円台へ と膨 れ上が ってい る ただ し,前述 の事件や トラブルの増加等 も影響 して,国民 の金融資産運用 に 関す る意識 は若干変化 して きているものの, リスク金融商品へ のマネー の流 れは停滞 し始 めている

以上の ように,現代 日本 のマ ネーゲームは,世界的な新 自由主義改革

図表2 個人金融資産の推移

(単位 :兆円,%)

2 0 0 2

年6

2 0 0 5

年6

2 0 0 7

年6 残 高 構成比 残 高 構成比 残 高 構成比 現金 .預金

7 6 5. 4 5 5

.4

7 7 9. 6 5 4. 2 7 7 8. 4 5 0. 0

債券

41. 8 3. 0 3 9

.4

2. 7 4 2. 8 2. 8

投資信託

3 0

.4

2. 2 41. 0 2. 8. 7 7, 6 5. 0

株式 .出資金

8 5

.4

6. 2 1 3 0

.4

9. 1 1 9 0. 0 1 2. 2

保険 .年金準備金

3 7 8. 6 2 7

.4

3 8 4. 2 2 6. 7 4 0 3. 2 2 5. 9

その他

7 8, 8 5. 7 6 4. 6 4. 5 6 3

.

4 4. 1

合計

1 3 8 0. 4 1 0 0. 0 1 4 3 9. 2 1 0 0. 0 1 5 5 5

.4

1 0 0. 0

資料〕 日本銀行 『資金循環統計』

〕2 0 0 7

6

月の係 数 は速報値

(9 9)

(14)

の中で,市場化の進展 とともに拡大 してきた。 リスクを商品化 し,あ ら ゆるものの 「金融化」を図 りなが ら,実体経済 とは無関係 に収益極大化 を目指 してきたのである ただし

,07

年夏以降のサブプライムロー ン問 題が示 したのは,今 日の金融変革 自体が リスクを拡散 して しまい, リス ク自体 を把握で きない事態を招いた とい うことである 今,マネーゲー ムの問題点が顕在化 し,世界的にもこうした金融改革の流れを見直 され なければならない事態に直面 している そこで,次節では金融分野にお ける新 自由主義改革の理論的および現実的問題点について考察を加 えよ

3 .

金融分野における新 自由主義改革 とその問題点

金融分野における新 自由主義改革は

,8 0

年代以降,米国を中心に進め られて きた。新 自由主義改革の展開については前章で考察 した通 りであ るが,金融分野における改革で特に重視すべ き契機 となったのが,金 ド ル交換停止以降の不換制への移行である 本来,あ らゆる商品の価値の 基準 となるべ き貨幣 自体がその現実的基準 を失い,市場において相対化 され, ドルが商品 として売 り買いされるといった事態が発生 し,ここか ら急速に金融変革が加速 されてい くこととなったのである 一方,先進 資本主義国の独 占的銀行資本 も,市場 メカニズムを信奉 し,一層の競争 政策を国家 に求め,金融 自由化 を実現するとともに,世界的にも新 自由 主義改革 を拡大 していった。

こうした金融分野の新 自由主義改革を理論的に支 えたのがファイナン ス理論である また現実的にその尖兵の如 く暗躍 しているのがヘ ッジ ファン ドであ り,現在,最 も問題 とされるべ き金融手法が証券化 と呼ば れるものである そこで続いて, これ らの点について考察 しよう

(15)

( 1 )

ファイナンス理論の問題点

90年代以降,急速にその影響力 を拡大 して きたのがファイナンス理論 である。 この理論は,貨幣の時間的価値 に着 目し,現在 と将来の貨幣価 値 を比較 し,その間にあるリスクを考慮 しつつ,いかに効率的に利益 を 得 るか,に最大の関心 をおいている 投資 とは,現在の支出と将来の収 入 との交換取引 と捉 えるのであるが, この理論はまずその前提 に問題が ある(20)0

1

に,市場への貨幣の投下により,効率的な利益獲得方法が必ずあ ると想定 されている点である いわゆる市場の失敗 などを考慮 した説明 も見受け られるものの,市場メカニズムに厚い信頼 をお き,利益 をいか に効率的に得 るのか という方法 自体 を追求する理論構成 となっている点 が問題である

2

に,現在価値 を計算する場合,その リスクを考慮 した割引率 を予 測可能 としている点である あらゆるものを貨幣 とい う尺度で計算 し, 現在 と将来の二時点間の貨幣価値の相違 を図るためには, リスクを計量 化 しなければならず,その割引率を予測可能 としているものの,実態は それ自体が予測不可能であ り, リスクの考慮 自体 に問題があると言わざ るを得 ない。

こうした 2つの問題点に加 えて, この考え方の最大の誤 りと言えるの が,金融収益の源泉 を考慮 していない点である 「リスクに見合 った リ ター ン」 といった場合の リター ンの源泉 を考慮 に入れていない点が問題 である 現実の金融取引に基づ く収益 は,実体経済によって生み出され た富の配分 にこそその源泉が求め られるべ きであ り,いわゆるゼロサム ゲームの ように,新たな富を創造せず,誰かの損失が利益の源泉である 場合 は,その取引はマネーゲーム以外の何物で もない。

以上のように,市場 に全幅の信頼 をよせ, リスクも不十分 しか掌握せ ず, リターン自体はその源泉を問わないことを前提 に組み立てられるこ

(101 )

(16)

の理論 こそが,現代 のマネーゲームの元凶である こうした問題点 を考 慮 もせず, リスクとリター ンの組み合 わせ を計算 し,投資手法の開発や 金融商品設計 を行 っているのが金融工学であ り,その さらなる批判的検 討が必要である

(2)ヘ ッジファン ド批判

9 0

年代 に世界の金融市場 に登場 して きたヘ ッジファン ドは,その当初 は実態がつかめず,極 めて投機的な投資集団であった。例 えば

,9 7

年の アジア通貨危機の際には, タイ ・バーツに狙いを定め投機的売買 を行 う など,その行動 は世界 的にも大 きな非難 を浴 びた。

そ もそ もヘ ッジファン ドは,少数の投資家か ら資金 を集め,株式や通 貨,各種 デ リバ テ ィブ (金融派生商品)な どへの投資 を行 う その際, レバ レッジをきか し,手持 ち資金 をはるかに超 えた額の取引 を行 うこと によって市場 を撹乱 し,利益獲得 を目指す とい う投機的な運用手法 を駆 使するところにその特徴がある

。9 8

年のロシア金融危機の際に,米国の 大手ヘ ッジファン ド

LTCM

(ロング ・ターム ・キャピタル ・マネジメン ト)社が経営危機 に陥るなど,その経営実態は不安定であ り,その後 も 多 くのヘ ッジファン ドが創設 される一方で,姿 を消 していっている

こうした状況 をふ まえて,ヘ ッジファン ドに何 らかの規制 を課すべ き とい う議論が何度 も持 ち上が るものの,多 くのヘ ッジファン ドを生み出 している米国や英国な どが反対 し,その行動 を規制で きていないのが現 状である̀21)。

そ もそ もこのヘ ッジファン ドは,前述のファイナンス理論 に従い,檀 めてハイリスク ・ハ イリター ンの投資行動 をとっている 大手米銀 な ど 世界の独 占的銀行資本 にとっては,尖兵的存在 と位置づけ られ,様 々な 金融商品におけるハ イリスク商品への投資 を担 うとともに,市場の乱高 下 を演出するとい うところにその存在意味がある。つ ま り,ヘ ッジフア

(17)

ンドは,現代のマネーゲームの特徴である投機性 にこそその本質がある

今,多 くのヘ ッジファン ドは,機関投資家のように多 くの企業年金や個 人か ら資金 を集め,各種金融市場に投資を行 っているが,その本質が投 機であるがゆえに,極めて不安定な経営 を余儀な くされているもの もあ り,例 えば,サブプライムロー ン問題で大 きな損失 を出 し,破綻 したヘ ッ ジファン ドも出ている ヘ ッジファン ドは法的規制が及ばず,実態 も不 透明であることか ら,早急 に何 らかの公的対応が求め られている

(3)証券化の問題点

金融仲介サービス 自体 を分解 し,様々なリスクを商品化 してい く金融 技術が

,7 0

年代の米国で開発 された。いわゆる狭義の証券化 (‑セキュ リタイゼーション)であるが,ここでの証券化 とは,経済主体の有する 資産を切 り離 して,それを裏付 けとした証券 を発行することで,資金調 達 を行 う金融技術」 と定義 される̀22)。ちなみに,広義の証券化 は,株や 債券など証券形態の金融商品が広 く普及することを通 じて,間接金融 に 代わって直接金融の比重が増大する事態を指 している̀23)

今,サブプライムロー ン問題で話題 となったのは,前者の狭義の証券 化である すなわち,低所得者向け住宅ローン債権 を証券の形 にして, リスクに応 じた リター ンが得 られる金融商品 として広 く投資家 に販売 し たのであるが,その問題点は,証券化 したことによって,損失規模 など 実態が見 えに くくなったことである ここでの リスクとは,証券化 した 資産が生み出すお金 の流れが滞 っていないか どうか とい うことである が,現実には米国住宅市場がバブル的状況であ り,その価格が右肩上が りであったために,そのリスク自体が正確 に計測できていた とは言い難 く,結局, リスク分散ではな く, リスクが拡散 し, どこにどのようなリ スクが存在 しているかがかわ らくなったのが実態である 市場では誰が リスクを負 っているのかがわか らず,その他の金融商品市場 にも影響 は (103)

(18)

波及 し,金融機関の場合 は短期資金調達 にも支障をきたすなど,かつて ない金融危機 に発展する可能性 を広げることとなった。

07

1

1月現在では,サブプライムロー ン問題のその後の展開は極め て不透明であるが,世界経済の成長 を減速 させ ることが懸念 されている

また,投機マネー自体は証券化商品か ら逃げ出 し,今度は商品市場へシ フ トし資源価格高騰 を引 き起 こしている。原油先物相場が過去最高値 を 更新 し続けるなど,新たな金融手法の広が りによって進め られてきた金 融分野の新 自由主義改革が,今後,実体経済への悪影響 を広げてい くこ

とが懸念 される

Ⅳ.

金融規制緩和および民営化の問題点

1

.資本主義における規制 と日本における規制緩和の進展 (1) 資本主義における規制の位置づけ

資本主義は,そ もそもレッセ ・フェール (自由放任)ではな く,ルー ル ・規制 を必要不可欠の もの として発展 して きた

。1 9

世紀か ら

2 0

世紀 にかけては,労働や金融,会計など様々な分野で公正なルールを作 り, それを守 ることで資本主義 自体 を維持 ・発展 させてきた。すなわち,規 制 自体 は資本が求めるものであ り,資本の存立条件および蓄積条件 を整 備するものであった

。2 0

世紀の独 占段階の資本主義では,独 占規制が資 本 にとって新たな競争促進条件 を生みだす もの として求め られるととも に,新たに公害問題や環境問題などを考慮 した社会的コス ト論の角度か らも新 たなルール化が行なわれてきた。 しか しなが ら,新 自由主義は市 場 における競争 を重視する一方,資本蓄積 にとってその制限 となる規制 自体 を撤廃することを求め

,2 0

世紀 に構築 してきた資本にとっての規制 の体系 自体 を根本的に覆す ものであった。

資本主義における公的規制 とは,一般 には,市場 に内在する問題 (

(19)

義の 「市場の失敗」)を是正 ・補正する目的で,政府が経済主体の行動に 関与 ・干渉する行為 とされる(24)。その規制の方法や対象 は多種多様なも の となってお り,法律だけでな く許認可等 を含 む行政の政策全てを含む もの と解 される ここでは公的規制に関する詳細 な議論には立ち入 らな いが,本来,資本 にとって蓄積条件 としての役割を果た してきたのが公 的規制であ り,今,その規制 自体が資本の蓄積制限に転化 し,新たな競 争条件 を創 出 しようとする動 きこそが規制緩和 ・「規制改革」の動 きであ ると理解 される

(2) 日本における規制緩和の進展

資本の要請 を反映 した日本での規制媛和 の動 きは,すでに高度経済成 長期か ら個別資本お よび業界利害 を反映 して進め られている また

8 0

年代 には臨調路線の下で, さらには米国の対 日圧力の強まりの下で,例 えば 日米円 ドル委員会が設置 され 日本の金融開放が進め られたように, 着実 に規制横和が進め られて きた。 こうした動 きは

,8 0

年代末か ら

9 0

年代初頭 にかけて日米構造協議などでも具体化 されていった。

しか しなが ら,新 自由主義改革の一環 として抜本的な規制緩和政策へ 進んでいったのが

,9 3

年の平岩 リポー ト以降の展 開である

。9 3

年 は

6

月に日米包括経済協議が始 まるとともに,細川首相が規制媛和促進政策

(8月) を打ち出し,経団連 も 「規制媛和等に関する緊急要望」 (9月) を出すなど,具体的な規制緩和計画が出されていたo こうした中で,首 相の私的諮問機関である経済改革研究会が年末に提出 した リポー ト ( 岩 リポー ト)において,「規制緩和の基準」が大 きく変更されることとなっ た。すなわち,公的規制の大 きな区分 としての経済的規制お よび社会的 規制 において,前者の経済的規制は原則廃止,後者の社会的規制は必要 最小限に縮小するとされたのである 総務省 によれば両規制の定義は吹 の通 りである

(105)

(20)

まず,経済的規制 とは,電気 ・ガス等の公益事業のように,市場の自 由な働 きにゆだねておいたのでは財 ・サービスの適切 な供給や望 ましい 価格水準が確保 されないおそれがある場合 に,政府が,個 々の産業への 参加者の資格や数,設備投資の種類や量,生産数量や価格等 を規制する ことによって,消費者の利益 と産業の健全 な発展 を図ろうとするもの」

である。次に,社会的規制 とは,「経済的,社会的な活動 に伴 う社会的な 副作用 を最小限にとどめるとともに,国民の生命や財産 を守 り,国民の 福祉の増進 に寄与 しようとするもの」である こうした規制の定義にも 示 されているように,平岩 リポー トの打ち出 した方向 とい うのは,市場 の限界や失敗 による副作用 を認識 した上で設けられていた公的規制を演 和 ・撤廃するものであ り,今 日の立場か ら見れば,こうした規制の緩和 ・ 撤廃が

,21

世紀 に入 って続発する重大な事故や多 くの消費者の不利益 に 直結 して きた面が大 きい と言わざるを得 ない。

さらに,総務省の98年版 『規制緩和 自書』では,副題が 「事前規制型 行政か ら事後チェック型行政への転換 を目指 して」 とされてお り,規制 緩和推進の一方で,問題が生 じた ときには事後規制で対応 してい く体制 が固め られた。 こうして規制緩和 による問題発生 を未然 に防 ぐことので きない体制 となったのである ちなみに,99年か らは 「規制改革」とし て進め られている日本の規制改革推進体制は,米国か らの要求 を恒常的 に受け入れるとともに, 日本の財界か らの要求をも受け入れる形で構築 されてお り,様々な分野で進め られている̀25)。その当初 は,主に経済的 規制に関連する分野の規制が対象 とされ,続いて社会的規制に関連する 分野にも議論が広がって きている

2.

金融分野における規制 (1) 金融規制 とは何か

そ もそ も金融 とい う分野は,極めて公共性が高い分野である そのた

(21)

めに,国内で も銀行法や金融商品取引法 (旧証券取引法),保険業法など の業法が存在 し,様 々な規制がかけられてきた。そこでここでは,まず 銀行,証券 における規制の根拠 とその目的を確認 し,その現状 について 簡単に見てお こう

まず銀行 は,銀行法第1条にもその文言が盛 り込 まれているように, 極めて高い公共性 を有 している̀26)。ただ し,一方で現実の銀行 は,利益 を追求 し,その多 くが株式会社 の形態をとる私的な存在で もある。こう した二面性 をもつ銀行の存在は,その業務 と機能か らその規制の根拠 を 把握する必要がある そ もそ も銀行は,その本業 としての預金 ・貸出 ・ 為替の三大業務 を併せ行 うことによって,信用創造 ・金融伸介 ・決済の

3

つの機能 を担 っている さらに, こうした果たすべ き銀行機能に基づ き把握 されるのが,「借用秩序の維持」,「預金者保護」お よび 「金融の円 滑」 といった銀行の公共性概念である したがって,銀行への規制 を考 える場合 には,銀行の公共性 をふまえて,その社会的役割を十分に担い 得るようにするところにその規制が置かれることになる ただ し,実際 には,私的存在 としての銀行の自主性に基づ く行動 をどこまで認めるの か,すなわち,利潤追求行動をどこまで規制できるのか といった問題が 残 されたままとなっている 業務分野規制や金利規制など,戦後の銀行 経営 を安定化 させつつ,上記の公共的役割を発揮 させて きた対応 は,80 年代半ば以降大 きく変質 し,金融規制緩和が進展することとなった。

次に証券 についてであるが,株式会社が支配的な形態であるのが資本 主義経済体制であ り,健全なる証券市場が形成 されていることがその大 前提 となっている したがって,証券取引に関わる経済主体 を厳 しく規 制するもの として,さらに幅広 く投資金融商品をも規制するもの として, 06年に旧証券取引法か ら発展 した金融商品取引法 (07年 9月施行)があ

る(27)。第

1

条の 目的規定で も,「有価証券の発行及び金融商品等の取引 等 を公正にし,有価証券の流通を円滑 にする」ほか,「資本市場の機能の (107)

(22)

十全 な発揮 による金融商品等の公正な価格形成等 を図 り」,「国民経済の 健全 な発展及び投資者の保護に資することを目的」 とされている ただ し,証券については,これまでの多 くの証券事件の存在が示 しているよ うに,フェアな投資環境 を形成することは極めて困難である そ して今, 新 自由主義改革によって,あ らゆるものの 「金融化」が進め られること

によって,その舞台が市場 となってお り,その新たなルール作 りが求め られなが ら,規制がなされていない状況が広範囲で生み出されている。

このように,銀行,証券分野の規制は今,その本来の 目的か らかけ離 れ,新 自由主義改革の流れの中で,大 きく変化 して きている そこで次 に, 日本における金融 自由化の流れについて概観することにしよう

(2) 日本における金融規制緩和 ‑金融 自由化の展開

日本の金融 自由化は,高度成長が終若 し,低成長経済へ移行 した

7 0

代後半か ら,「2つのコクサイ」 (国際化の進展 と国債の大量発行)に ょって進展 してきた。当時の 日本の大手金融機関も積極的な金融 自由化 要望 を公表 し,銀行 ・証券業務 をめ ぐって激 しい競争を展開 し始めてい た。 こうした中で,抜本的な金融 自由化 を進めるきっかけとなったのが,

8 3

年 に設置 された 日米円 ドル委員会であった。「昭和の黒船」 とも言わ

れた米国か らの金融開国要求は, 日本の金融 自由化 を加速度的に推 し進 めてい くことになった。

日本 における金融改革の第1の要因は,米国か らの対 日圧力であ り,

2

の要因は

,8 0

年代以降の 日本の独 占的銀行資本の金融 自由化 ・国際 化要求の高 まりであった。ただ し,バブル経済 とその崩壊 によって, 日 本経済が変調 をきたす中,新 自由主義改革を進める米国か らの対 日圧力 が強化 され, 日米構造協議か ら日米包括協議,そ しで恒常的な日米規制 緩和委員会の設置に見 られるように,第1の要因である米国か らの圧力 が より増 してい くこととな り, こうした流れは,後述の 日本版ビッグバ

(23)

ンにつ なが ってい った。 なお,国内の金融 自由化 は

,9 0

年代前半 に,金 利 自由化が完成 し,業務 自由化 も業態別子会社 方式 による銀行 ・証券分 野 の相 互参入 が実現 した。その後 は ビッグバ ンの進展 の中で,例 えば, 金融持株会社 の解禁や銀行 での投 資信託や保 険商 品の窓口販売 の解禁 な

ど,多 くの 自由化措置が進展 してい くこととなった。

(3) 日本版 ビッグバ ン

日本版 ビ ッグバ ンの流 れは,図表

3

の通 りであ る。世界的な金融変革 の流 れの中で,米 国か らの圧力 の強 ま りと, グローバ ル展 開 を進め る 日 本 の大企業か らの要請 を受 け,政治主導 で改革が進 め られた。当初 は こ

図表

3

日本の金融大改革の経緯 金融システム改革の主な事項

1 9 9 6 l l

日本版ビッグバ ン構想発表

1 9 9 7 1 2

金融持株会社関連法成立

( 9 8. 3

施行)

1 9 9 8 2

金融安定化二法施行

4

6

10 改正外為法施行,改正 日銀法施行

‑トビッグバ ン .スター ト

金融システム改革法成立

( 9 8. 1 2

施行) 金融監督庁発足 (

‑0 0. 7

金融庁発足) 金融再生法 .早期健全化法施行

1 9 9 9 8

10 みずほグループ .三行統合合意

‑メガバ ンク化のスター ト 住友 .さくら合併発表

2 0 0 0

5 三菱グループ .連合表明

7

UFJグループ .三行統合発表

2 0 0 1 4

小泉構造改革スター ト

2 0 0 2 9

10 金融審議会答申 「中期的に展望 した我が国の金融システムの 将来ビジョン」

金融再生プログラム

出所〕公表資料等か ら筆者作成

(109)

(24)

れまでの金融 自由化 とは異 なる抜本的な改革を目指す とされた。 しか し なが ら

,9 0

年代後半の 日本の最優先事項はバ ブル後遺症か らの脱却であ り,金融 システム安定化であるとされ,その改革は極めて漸進的なもの となった。 ここでは, この 日本版 ビッグバ ンが 目指 した改革の内容 につ いて簡単 に示す ことにする̀28'

日本版 ビッグバ ン構想 は

,Fr e e

(市場原理が働 く自由な市場 に)

,Fa i r

(透明で信頼で きる市場 に)

,Gl o ba l

(国際的で時代 を先取 りする市場 に) とい う

3

つの原則 を掲げ

,0 1

年 までに東京 を国際金融市場 にすることを 目的 としていた。 また,そのためにも 「新 しい金融の流れ」 を構築する ことを目指 し,伝統的な銀行中心の間接金融重視の金融 システムか ら, 資産運用 ビジネスに重点をお く金融システム‑ と,従来の業態の再編 を 企図するものであった。

具体的には,外為法改正や金融システム改革法 など,部分的な法改正 を伴 う改革は実施で きた ものの,根本的な金融システム改革には程遠い 改革 となった。その理由は,金融システム不安が長期化 したためである が,そ もそ もの金融 システム改革に対するコンセ ンサスが形成 されてい ない とい う問題 も存在 していた。 この点については,029月の金融審 議会答 申「中期的に展望 した我が国金融システムの将来 ビジ ョン

」(

以下,

将来 ビジ ョン

」 )

において,基本的な改革の考 え方 を整理 し,その後の 金融改革プログラム等‑引 き継がれ,実行 されてい くこととなった。

(4)金融改革プログラム

9 0

年代後半の金融 システム不安によって,日本版 ビッグバ ン構想 自体 の徹底が遅れ,「新 しい金融の流れ」に関する議論 も低迷 した,そ うした 中,市場主義の考 え方を浸透 させ,新 自由主義改革‑ と再度進むことを 示 したのが前述の 「将来ビジョン」である これは

,0 4

年末に提起 され た金融改革プログラムへ とつながる重要な文書 となった(29'。

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