血液ならびに胆汁から分離された Klebsiella oxytoca 株の 分子疫学解析と莢膜型および病原因子
1)椙山女学園大学看護学部,2)名古屋大学医学系研究科臨床感染統御学,
3)名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部,4)同 検査部
石原 由華
1)2)八木 哲也
3)望月まり子
4)太田美智男
1)(平成 23 年 9 月 30 日受付)
(平成 24 年 1 月 18 日受理)
Key words : Klebsiella oxytoca,Klebsiella pneumoniae, capsular typing, pulsed field gel electrophoresis, pili
要 旨
Klebsiella oxytocaはKlebsiella属においてKlebsiella pneumoniaeに次いで多く分離され,日和見感染の重要 な原因菌と考えられている.K. pneumoniaeの病原因子は莢膜が最も重要であり,各種線毛なども知られて いるが,K. oxytocaについては報告が無い.我々は 2009 年 5 月〜11 月の間に名古屋大学医学部附属病院に おいて収集されたK. oxytoca分離株のうち,血液,胆汁由来株全て(計 21 株)について,PCR による病原 性遺伝子検索,莢膜型別ならびにパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を行い疫学解析した.その結果 K. pneumoniaeの報告とは異なり K1,K2 型は見られず,K9,K15,K26,K31,K43,K47,K55,K70,K79 などの莢膜型株であった.なお血液由来の K55 型 2 株は PFGE パターンもほぼ同一であることから同一株 であり,院内感染の存在が示唆された.高頻度に分離された莢膜型 K43 の血液由来 3 株と胆汁由来 1 株は,
PFGE パターンが全て異なりそれぞれ別の株であった.また血液由来株と胆汁由来株に共通の株は無かった.
病原因子として 1 型ならびに 3 型線毛遺伝子は全ての株が保有していた.尿素分解に関与するureAも全て 保有していた.しかし鉄取り込みに関与するkfuBC,腸管定着に関与するcf29aを保有する株はそれぞれ 1,
2 株のみであった.莢膜の mucoid 性を高めK. pneumoniaeの病原性と強く相関するといわれるmagAおよ びrmpAを持つ株は見られなかった.したがってK. oxytocaによる敗血症と胆道感染に関係する病原因子と して,体内定着に関与する 1 型ならびに 3 型線毛の存在が重要であることが示唆された.
〔感染症誌 86:121〜126,2012〕
序 文
クレブシエラ(Klebsiella)はグラム陰性桿菌で腸内 細菌科に属し,主に病院内感染を起こす.全国の中心 静脈カテーテル挿入患者約 33,900 名の調査によれば,
敗血症の頻度はグラム陰性桿菌の中でクレブシエラが 最も高く,次いで緑膿菌,エンテロバクター,セラチ ア,大腸菌の順である1).したがって本菌種は日本に おける病院内感染起炎菌として最も注意を要するグラ ム陰性菌である.クレブシエラは感染抵抗力の低下し た入院患者に敗血症,肺炎,腹膜炎,胆道感染,尿路 感染等を起こし,日和見感染の原因菌としては比較的 病原性が高く,グラム陰性桿菌の中で大腸菌と並んで
重要である2).
Klebsiella属にはK. pneumoniae,K. oxytoca,K. plan- ticola,K. granulomatisなどが含まれ,臨床分離頻度は K. pneumoniaeが最も高く,次 い でK. oxytocaの 順 で ある.
Klebsiella属は菌体周囲に厚い莢膜を持ち,それに
よって乾燥に耐えるとともに食細胞による食菌に抵抗 性を付与する.また莢膜は化学構造の違いにより 81 種の血清型に分類されている.莢膜の型によってはバ イオフィルム形成に関与して病原性に関係する可能性 がある3).また K2 型の莢膜を有するK. pneumoniaeは 特に病原性が高いという報告4)があるが,ヒトに対し てはそのような傾向が見られない2),とする見解もあ り一定しない.莢膜の血清型はK. oxytocaとK. pneu-
moniaeの菌種に関わらず通し番号で分類されている
原 著
別刷請求先:(〒464―8662)名古屋市千種区星が丘元町 17 番 地 3 号
椙山女学園大学看護学部 石原 由華
が,25 年前の調査によれば K43,K54 などの血清型 を持つ菌株が日本には比較的多く見られた5).なお,
K43 についてはK. oxytocaとK. pneumoniae両方に高 頻 度 に 見 ら れ,K54 に つ い て はK. pneumoniaeとK.
planticolaに高頻度に見られたが,K. oxytocaには見ら れなかった.しかし多様な莢膜型の菌株が検出された ので,莢膜型は疫学マーカーとして菌株の分類に用い られている6).さらに莢膜に関連した病原因子として,
magA,rmpAなどの遺伝子が明らかとなっている7)8).
莢膜以外の病原因子としては大腸菌と同様に 1 型,3 型などの線毛が報告されている9)10).また鉄取り込み 能なども病原因子として報告されている11).しかしこ れらの病原関連因子について,K. pneumoniaeとは異
なりK. oxytocaの保有状況の報告は世界的にほとんど
見られない.
K. pneumoniaeとK. oxytocaの日本における分離割 合は,全国的な集計によれば,約 4:1 でありK. pneu-
moniaeの方が高頻度に分離される12).我々は,最近名
古屋大学医学部附属病院において消化器外科患者,特 に胆道系手術後の患者にK. oxytocaの胆道感染が増加 していることに気づいた13).そこで今回,これらの胆
汁由来K. oxytoca株ならびに同時期に同病院において
血液培養で分離されたK. oxytoca株について莢膜型 別,PCR による主要病原遺伝子の検索,パルスフィー ルドゲル電気泳動(PFGE)を行い,莢膜型および病 原性関連遺伝子保有状況に基づいてK. oxytoca株の病 原性について検討した.本報告はK. oxytocaに関する 我々が知る限り本邦での初めての病原因子解析の報告 である.
方 法 1.使用菌株と患者の背景
菌株は,名古屋大学医学部附属病院(総ベッド数約 1,100)において 2009 年 5 月〜11 月の間に入院患者よ り分離されたK. oxytocaのうち,血液由来 全 株(11 株),胆汁由来全株(10 株)を対象とした.ただし同 一患者からの重複分離株は,病原性関連遺伝子,およ び PFGE パターンの結果から除いた.なお 2009 年の 当該施設の全細菌検査検体数 20,766 から分離された K. pneumoniaeとK. oxytocaは重複分離を除いてそれ ぞれ 362 株と 162 株(2.23:1)であった.患者 入 院 期間などの背景については当該病棟より入手した.な お,患者個人情報は当研究では用いなかった.
2.莢膜型別について
−80℃ 保存菌より LB 寒天培地に培養し,LB 培地 に接種して 37℃ で一夜振とう培養後,菌液を遠心し 上清に 2 倍量のエタノールを加えて遠心後沈殿に滅菌 水を加えて溶解し抗原液とした.1% アガロースゲル 内沈降反応を行い莢膜型血清により莢膜型を決定し
た.必要に応じて一部は 1% アガロースを用いて免疫 電気泳動法によって確認した.莢膜型血清は,K1 か ら K81 までのそれぞれの血 清 型 標 準 株 を Edwards and Ewing の方法にしたがって家兎に免疫し作成し た14).
3.PCR 法による病原遺伝子検出
K. pneumoniae病原性関連遺伝子としてこれまでに
報告された遺伝子のなかで,主 要 な 遺 伝 子 と し て magA,fimH,rmpA,mrKD,kfuBC,cf29a,ureAを 検索した6).各遺伝子のプライマーは報告された配列 を用いた6).テンプレート DNA はコロニーより蒸留 水で菌液を調製し 100℃ 2 分煮沸後遠心した上清を用 いた.増幅条件は Brisse ら6)に基づいてそれぞれの プライマーによって条件を設定し,Thermal Cycler
(ABI 社)を用いて増幅反応を行った.Taq DNA poly- merase ならびに反応液は AmpliTaq Gold with Gene Amp(ABI 社)を用いた.反応後,定法にしたがっ てアガロースゲル電気泳動により増幅された DNA バ ンドを確認した.
4.PFGE 法による菌株の比較
−80℃ 保存よりK. oxytocaの各菌株を LB 寒天培地 に 37℃ で 15 時間培養後菌を TE-8 溶液(0.5M Trizma base,0.5M EDTA,pH8.0)に懸濁した.次いで 1.2%
Seaken Gold Agarose(Cambrex Bio Science Rock- land, Inc.)と混合してプラグモールドにてゲルブロッ ク を 作 製 し,lysozyme 溶 液(lysozyme 3mg!mL,
Trizma base,0.5M EDTA,NaCl,0.2% deoxycholate,
0.5% Na-N-dodecylsarcosine)で 37℃,6 時 間,pro- teinase K 溶液(proteinase K 1mg!mL,3% Na-N- dodecylsarcosine,0.5M EDTA)で 55℃,15 時間作用 させて溶菌した.TE-8 溶液にて 8 時間以上洗浄後,
XbaI(BIO-RAD)を 35℃ で一夜反応させて DNA を 切断した.電気泳動は 1% ゲル(BIO-RAD)CHEF- DR II:BIO-RAD を用い,50μM チオ尿素を添加した 0.5×TEB 中で行った.泳動条件は,14℃ パルスタイ ム 12.6〜40.1 秒 24 時間で実施し,泳動後アガロース ゲルを ethidium bromide 染色した.
結 果
1.胆汁ならびに血液由来K. oxytoca株の莢膜型に ついて
胆汁由来株では,莢膜型は 7 種類が検出された.11- 7 株と 15-20A 株は,K72(または K80)で同一であっ た.K72 と K80 は抗原性が類似しているために判別 不能だった.血液由来株には 6 種類の莢膜型ならびに 同定不能型が 1 株見いだされた.血液由来の 6385 株,
6398 株,6594 株と胆汁由来の 6-28 株は高 頻 度 型 の K43 であった.また,血液由来の 6477 株と胆汁由来 の 22-42 株は同一であった(Table 1).さらに,血液
Table 1 K-serotypes of K. oxytoca strains
origin hospital ward strain K-serotype
bile A 11-7 K72 or K80*
A 15-20A K72 or K80*
A 1-13*** K9
A 2-6A*** K9
A 10-9 ①**** K15 A 22-111**** K15
A 9-80 K31
B 10-26 K79
A 22-42 K47
A 6-28 K43
blood A 6430 K26 or K21**
C 6383 K26 or K21**
D 6652 K26
C 6385 K43
E 6398 K43
A 6594 K43
A 6538 K55
A 6543 K55
C 6477 K47
B 6552 untypable
A 6349 K70
*, **; Our typing sera were unable to distinguish these types from each other because of antigenic cross reactions.
***, ****; Strains 1-13 and 2-6A, and strains 10-9 ① and 22- 111, respectively, were isolated from the same patients, and were found to be identical. We then removed 2-6A and 22-111 in the subsequent results.
Table 2 Virulence gene content of K. oxytoca strains
origins strain magA fimH rmpA mrkD kfuBC cf29a ureA
bile 11-7 − + − + − + +
15-20 A − + − + − − +
1-13 − + − + − − +
10-9 ① − + − + − − +
9-80 − + − + − − +
10-26 − + − + − − +
22-42 − + − + − − +
6-28 − + − + − − +
blood 6430 − + − + − − +
6383 − + − + − − +
6652 − + − + + + +
6385 − + − + − − +
6398 − + − + − − +
6594 − + − + − − +
6538 − + − + − − +
6543 − + − + − − +
6477 − + − + − − +
6552 − + − + − − +
6349 − + − + − − +
由 来 株 の 6430 株 と 6383 株 は K26(ま た は K21)で あった.K26 と K21 は抗原性が類似し,今回用いた 抗血清では区別できなかった.6385 株,6398 株,6594 株は K43 であった.また 6538 株と 6543 株はともに 同一莢膜型であった.6552 株は保有型血清全てに反
応しなかったため同定不能で,untypable とした.胆 汁由来株,血液由来株ともにK. penumoniaeにおいて よく分離される K1,K2 型株は見られなかった.
胆汁由来株のうち,1-13 と 2-6A,および 10-9 ①と 22-111 は同一患者から短期間に分離された菌株であっ た.したがって以下の検討からは 2-6A,および 22-111 の 2 株を除外した.
2.K. oxytoca分離株の病原性関連遺伝子
Table 2に示すように,胆汁由来株ならびに血液由 来株の全てがfimHおよびmrkD陽性だった.したがっ てこれらのK. oxytoca株は 1 型線毛遺伝子および 3 型 線毛遺伝子の両方を有していた.腸管定着に関与する cf29a遺伝子は 11-7,6652 の 2 株が陽性だった.Hyper- viscosity 型莢膜多糖の生 成 に 関 与 す る と い わ れ る magAならびにrmpAについては,全ての株がどちら の遺伝子についても陰性だった.鉄取り込みに関与す
るkfuBCは血液由来 6652 株のみが陽性であった.尿
素分解遺伝子であるureAはK. oxytocaの同定にも用 いられる性質であり,当然ながら全ての株が陽性だっ た.
3.K. oxytoca分離株の PFGE パターンについて 胆汁由来株の PFGE のパターンでは,11-7 株と 15- 20A 株では,莢膜型が K72 または K80 で同一であっ たが,PFGE のパターンは異なっていた.他の菌株の PFGE のパターンは全て異なっていた(Fig. 1A).
血 液 由 来 株 の PFGE の パ タ ー ン で は,6538 株 と 6543 株のバンドパターンが 1 つのバンドを除いてほ ぼ同じであった.他の菌株のバンドパターンは全て異 なっていた(Fig. 1B).同一株と思われる莢膜型 K55
Fig. 1 PFGE of K. oxytoca strains isolated from bile (A) and blood (B), and the PFGE of the same K-sero- type strains (C).
(A) M: S. cerevisiae DNA size marker, 1, 11-7; 2, 15-20A; 3, 1-13; 4, 10-9 ① ; 5, 9-80; 6, 10-26; 7, 22-42; 8, 6-28.
(B) M: S. cerevisiae DNA size marker, 1, 6538; 2, 6543; 3, 6398; 4, 6385; 5, 6383; 6, 6430; 7, 6652; 8, 6594; 9, 6477; 10, 6552; 11, 6349. (C) M: S. cerevisiae DNA size marker, 1, 6398; 2, 6385; 3, 6594; isolaed from blood, 4, 6-28 isolaed from bile, 5, 6477 isolated from blood; 6, 22-42 isolated from bile. 1 〜 4: K43, 5 〜 6: K47.
の 6538 株,6543 株のそれぞれの保菌患者が同じ A 病棟に入院してため,これらの保菌患者の入院時期に ついて調べたところ,6543 株の保菌患者は 2009 年 8 月 2 日〜9 月 20 日まで入院していたのに対して,6538 株の患 者 は 2009 年 9 月 1 日〜18 日 ま で 入 院 し て い た.両者の入院期間は重なっていたことがわかった.
血液由来株について,莢膜型が同一であった 6383 株と 6430 株は,PFGE のバンドパターンは異なって いた.また莢膜型が K43 であった 6398 株,6385 株,
6594 株についても PFGE のバンドパターンは全て異 なっていた(Fig. 1B).
莢 膜 型 が K43 の 血 液 由 来 6398 株,6385 株,6594 株と胆汁由来 6-28 株では,PFGE のバンドパターン は全て異なっていた.また,K47 の血液由来 6477 株 と胆汁由来 22-42 株も PFGE のバンドパターンは異 なっていた(Fig. 1C).
考 察
今回の研究では,K. oxytocaの胆汁由来 10 株と血 液由来 11 株について,莢膜型別を定法の莢膜膨化反 応ではなくゲル内沈降反応および一部は確認のために 免疫電気泳動法によって決定した.莢膜膨化反応は手 技が簡便ではあるが,ときに膨化反応が弱く判別が難 しい株もある.また,莢膜の抗原性が一部共通で交差 反応を起こすことがある.今回我々が用いたゲル内沈 降反応による莢膜型別は,沈降線が形成されるために
は一夜必要であるが明確に区別でき,交差反応の判別 も容易である.さらに,O 抗原による沈降線は免疫電 気泳動によって区別できる15).
今回用いたK. oxytoca臨床分離株は敗血症および胆 道感染に由来する株であったが,全 21 株中に少なく とも 11 の異なった莢膜型を見いだした.したがって 今回の 1 施設由来菌株の解析においてさえも,K. oxy- tocaは多様な莢膜型を示した.K43 の株は 4 株あり,
全て異なる菌株であった.PFGE 解析によれば,別々 の患者血液由来の K55 型 6538 株と 6543 株は,PFGE のバンドパターン一つを除いて等しく,Tenover ら16)
のガイドラインに基づけば同一株であることが強く示 唆された.これらの菌株の感染患者は同じ病棟(A 外科病棟)の別の病室に同時期に入院していたことか ら,院内感染の存在が疑われた.感染経路は医療従事 者を介してか,あるいは病棟トイレ,水回りなどに本 菌株が汚染していたことなどが推測される.
血液由来 6398 株,6385 株,6594 株ならびに胆汁由 来 6-28 株は莢膜型が K43 と同一であったが,PFGE のバンドパターンが全て異なっていたため別々の株で あることが示された.なお K43 型株は,日本ではK.
pneumoniaeにも分離頻度が多いことが以前に報告さ
れている5).他に同一の莢膜型を示す菌株は 6430 株と 6383 株,11-7 株と 15-20A 株,6477 株と 22-42 株など だが,PFGE のバンドパターンが異なっていたため互
いに別々の株であった.
結果には示さないが,胆汁由来の 1-13 株と同一の 莢膜型および PFGE 型を持つ株が 7 日間の間隔を置 いて同一患者の胆汁から分離された.また 10-9 ①株 と同じ莢膜型ならびに PFGE 型を示す株が同一患者 から 12 日間の間隔を置いて分離された.したがって これらの患者は同一菌株の持続感染であることが明ら かとなり,治療による効果があまり見られなかったこ とを示している.
Klebsiella属の病原性に関与する遺伝子の研究報告
はこれまでに多くない.また主にK. pneumoniae株に ついて解析が行われてきた.今回我々はK. oxytocaの 臨床分離株について,これまで報告されたなかの主要 な病原性関連遺伝子のスクリーニングを PCR 法に よって行った.その結果全ての株に共通に見られたの はfimHならびにmrkDであり,それぞれ 1 型および 3 型線毛の遺伝子の一部である.1 型ならびに 3 型線 毛は生体内の定着(colonization)に関与することが 大腸菌において報告されている17).したがってこれら
の線毛はK. oxytocaの生体内定着において重要な役割
を果たしていることが考えられる.興味深いことには 莢膜の粘性増強に関係するmagAおよびrmpAは全て の株に検出されなかった.これらの遺伝子はK. pneu- moniaeの重症感染に関係する18)と言われている.magA
はK1-cps遺伝子領域中に見いだされた遺伝子である6)
が,今回のK. oxytocaの莢膜型株には見いだされな かった.なお,11-7 株(K72!80)ならびに 6652 株(K26)
はcf29aを保有していた.しかしこれらの株は莢膜型
が異なり,PFGE パターンも異なっていた.また多く の腸内細菌科菌種で病原性に関与するといわれる鉄取 り込みに関係するkfuBCは 6652 株のみに見いだされ た.6652 株は PFGE パターン,莢膜型がこの菌株の みに特徴的であり,類似の株は見られなかった.鉄取 り込みについては他の輸送系遺伝子も働いているの で,それらの輸送系の関与についてはさらなる解析が 必要と考えられる.今回の解析からK. oxytocaの敗血 症ならびに胆道感染の主要な病原因子として 1 型なら びに 3 型線毛が示唆された.しかし今回スクリーニン グしなかった他の未知の病原因子の関与も否定するこ とはできない.K. oxytocaの重症感染の発症には菌側 だけではなく宿主側の要因が重要であることも当然で ある.今回胆汁よりK. oxytoca株が分離された患者の ほとんどは肝・胆・膵の侵襲性の高い手術後であっ た.菌側の要因と宿主側の要因が複雑に関連しあって 本菌による重症感染が発症すると考えるのが妥当であ ろう.
最後に,Klebsiella属の莢膜型別は PFGE と並んで 疫学解析の方法として有効であることが以前に報告さ
れている19)が,今回行ったK. oxytocaの莢膜型別も疫 学解析の方法として一定の有効性を示したと考えられ る.院内感染の存在を調べる方法として PFGE はゴー ルデンスタンダードであるが,一般病院検査室で行う ことが可能な簡便な莢膜型別をまず行うことで迅速に 菌株の感染傾向等を知ることができると思われる.こ れまでK. oxytocaはK. pneumoniaeに比べてそれほど 注意されてこなかったが,K. pneumoniaeと同様に胆 道感染,敗血症など重症感染を入院患者に引き起こし,
詳細に調べれば院内感染も引き起こしていること20)が 考えられるので,我々はこの菌にもっと注目する必要 がある.また本菌による院内感染の経路は全く不明で あり,今後詳細な疫学解析を行うことによって感染経 路を明らかにしていかなければならない.
謝 辞
本研究は文部科学省科学研究費補助金「基盤研究:課題 番号 20350076」ならびに椙山女学園大学学園研究助成研 究助成 C によって行われた.
文 献
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1)Sugiyama Jogakuen University School of Nursing,
2)Department of Infectious Diseases, Nagoya University Graduate School of Medicine,
3)Department of Infectious Diseases and Center of National University Hospital for Infection Control and4)Department of Clinical Laboratory, Nagoya University Hospital
Klebsiella oxytocais an opportunistic pathogen and is isolated at the second highest frequency among ge- nus Klebsiella from hospitalized patients. According to previous reports, the major virulence factors of K.
pneumoniae include capsules and several kinds of pili, whereas the virulence factors of K. oxytoca have not been well investigated.
We noticed an increased frequency of K. oxytoca isolates from patients who had undergone a biliary tract operation in a general hospital from May through November, 2009. We then performed a PCR analysis of the virulence factors and an epidemiological analysis with capsular typing(serotyping)and pulsed field gel electrophoresis(PFGE)forK. oxytoca of 11 blood isolates and 10 bile isolates. As a result, serotypes of K9, K15, K26, K31, K43, K47, K55, K70, and K79 were identified in these strains, and K1 and K2 which are frequent serotypes in K. pneumoniae strains were not observed. Two blood isolates of the K55 serotype showed almost the same PFGE pattern, suggesting that these isolates were very closely related and caused cross-infection in a hospital ward. Strains of the K43 serotype were three blood isolates and 1 bile isolate, all of which showed different PFGE patterns. There were no common isolates among the blood and bile iso- lates. A PCR search revealed thatfimHandmrkDgenes which are relevant to type 1 and type 2 pili, respec- tively, were present in all strains, whereaskfuBC, an iron uptake gene, and cf29a were detected in only a few strains. Neither of the mucoid phenotype-related genes magA and rmpA was present in any strains.
These results strongly suggest that type 1 and!or type 3 pili would have important roles in the pathogene- sis of blood infection and bile infection caused byK. oxytoca.