解析
I
・講義ノート
第2回
(2020
年5
月26
日(
火)
配信分)
第2回本題
教科書
§ 1
の数列の極限に続き、§ 2
では1
変数関数の極限を扱っています。具体的には、
§ 1
では、無限数列a 1 , a 2 , . . . , a n , . . .
の収束もしくは極限値について
a n → α (n → ∞ )
すなわちlim
n →∞ a n = α
「
n
を十分大きく選べば、a
n はα
に限りなく近付く(
収束する)
」「
n
が限りなく大きくなるときのa
n の極限値はα
である」そして発散について
a n → + ∞ (n → ∞ )
すなわちlim
n →∞ a n = + ∞
「
n
を十分大きく選べば、a
n は限りなく大きくなる(
正の無限大に発散する)
」「
n
が限りなく大きくなるときのa
n の極限は+ ∞
である」などなど。
続く
§ 2
では、関数f (x)
の収束もしくは極限値についてf (x) → α (x → a)
すなわちx lim → a f (x) = α
「
x
をa
に十分近付けるとき、f (x)
はα
に限りなく近付く(
収束する)
」「
x
がa
に限りなく近付くときのf (x)
の極限値はα
である」そして発散について
f (x) → −∞ (x → a)
すなわちx lim → a f (x) = −∞
「
x
をa
に十分近付けるとき、f (x)
が限りなく小さくなる(
負の無限大に発散する)
」「
x
がa
に限りなく近付くときのf (x)
の極限は−∞
である」などなど。
教科書では、有限な値に収束する場合も、単に極限と呼んでいますが、この 講義では極限値と呼んでおきます。どちらでも間違いではありませんが、正負 の無限大に発散するときは「値」をつけないように。
万一、これらの用語そのもの、或いは等比数列が収束するため の条件などの基本的な事柄を忘れている人がいたら、
§ 1
をもう一度読み返し、今の内にしっかり復習しておいて下さい。
数学ではしばしば日常会話とは違った言葉遣いをすることがあります。収束 を表すときの「限りなく近付く」などもその類で、初めから収束する値そのも ので、ずっと一定だった場合も「近付く」に含めてしまいます。この意味合い の違いに気を付けましょう。
曖昧さを避けて厳密に述べるためには、実は細心の注意が必要です。この点 については、後の方でもう少しだけ触れます。
高校でも十分学んで来たと思うので、その繰り返しになると思 いますが、極限
(
値)
を求める際に気を付けなければならないのは、主に
0 × ∞ , 0
0 , ∞
∞
の場合です。
最近テレビのクイズ番組で、
0
0
は1
ですなどと平気で言ってい るのを見かけたことがありますが、これはもちろん間違いです。でも、もしこれが
x lim → 0
x x
は何でしょう?と言う問題なら、答えは
1
でよいわけです。x x
はx
が0
に近付く前からずっと1
ですから。0
x- 6
y
y = xx 1◦
極限値
−→ ←−
分母分子がどのように
0
に近付くのか、その速さの程度が重要 なことは、皆さんが高校で学んだ通りです。例えば
x
はx
より速く0
に近付くので、x lim → 0
x 2
x = 0
ですが、これは
x
が0
になる前に割り算して、x 2
x = x
としておけば、すぐにわかります。
x- 6
y y = xx2
◦0 極限値
この例では当たり前すぎるので、皆さんもよくご存知の公式
x lim → 0
sin x
x = 1
0
-x 6
y
y = sinxx
−π
−2π π 2π
1◦ 極限値
PP
を用いる例題を作ってみましょう。例えば
x lim → 0
sin x 3x
ではどうでしょうか?これは、あらかじめ
sin 2 x
3x = sin x
3 × sin x x
と変形しておけば、極限値の積の公式
(
教科書17
頁、極限が有限なものどうしの積は、極限値を先に求めてからかけてもよい
)
を用いて、極限値は
0
とわかります。本質的には同じことですが、あらかじめ分母分子を
0
に近付く速さが遅い方
(
この場合はx )
で割っておくと言う考え方もあり、実はこの方が応用が効いたりします。
sin 2 x 3x =
sin
2x x
3 = sin x × sin x x
3
分母と分子の少なくとも一方
(
上の例では分母)
が0
でない有限な値に収束する
(
上の例ではずっと3 )
状態に持ち込むのが重要な ポイントです。一方、簡単な例でも極限値が存在しない場合もあります。例 えば
x lim → 0
| x | x
などです。この例では
x
が右から近付くか(x → +0)
左から近付くか
(x → − 0)
で近付く(
と言うか、この場合ずっと同じ)
値が違うので、右極限値と左極限値を区別する必要があります。
0 - x 6
y = |xx|
◦ −1
左極限値
−→
1◦ 右極限値
←−
0
0
の例ではありませんが、x lim → 0 sin 1 x
のように、近付き方を左右に分けても極限値が存在しない例もあ ります。(詳しいことは、後半で。)
このように一般にはこの近付き方の扱いが難しく、極限
(
値)
が存在すると言うときは、近付き方によらないことが大前提です。
( 1
変数関数でもこのような例があるくらいですから、解析II
で学ぶ多変数関数ではもっと複雑で、どのような点列に沿って近付い ても同じと言う状況を考えなければならなくなります。
)
厳密には
ϵ-δ
論法と言うものがあり、数学科の学生などは初年次にこれで苦 労します。ただし、数学ユーザー(
予定)
の皆さんには、そこまでの厳密性は要 求しませんので、参考書等にその記述があっても、あまり気にしないで下さい。
どんなものか、一応簡単にご紹介しておくと、たとえばx
lim
→af (x) = α
つまり「
x
をa
に十分近付けるとき、f (x)
がα
に限りなく近付く」と言うことを、厳密には
∀ ϵ > 0, ∃ δ > 0, 0 < | x − a | < δ = ⇒ | f (x) − α | < ϵ
により定義します。これを漢文のように読み下すと、「任意の正の数
ϵ
に対し、ある正の数
δ
が存在して、0 < | x − a | < δ
ならば| f (x) − α | < ϵ
が成り立つ」となりますが、いくら翻訳調とは言え、慣れるまではこれではちょっとなの で、かみ砕いて言い直すと、「どんなに小さい正の数
ϵ
に対しても、それに合 わせて十分小さい正の数δ
をうまく選べば、a − δ < x < a + δ
かつx ̸ = a
を 満たす任意のx
に対して、α − ϵ < f (x) < α + ϵ
が成り立つ(
つまり十分a
に 近いx ̸ = a
に対してf (x)
の値がα
に十分近い)
ようにできる」となります。この講義では、この
ϵ-δ
論法には、これ以上深入りはしません。まあ、その ようなものがあって、極限に関する議論の厳密性は保証されていると言うこと を知っておいてもらえれば十分です。もちろん、その辺もしっかり身につけて おきたいと言う人は、取り組んでいただいても構いません。ところで、高校で学んだ対数関数は、
1
以外の任意の正の数a
に対し、それぞれを底とする
y = log a x
が、指数関数x = a y
の逆関数として定義されました。中でも特に
10
を底とするlog 10 x
は常用対数、
e
を底とするlog e x
は自然対数と、それぞれ呼ばれ ました。昔は常用対数の方が重要だったので、自然対数の方は別 の記号でln x
などと表されることが多かったようです。なぜ常用対数の方が重要だったかと言うと、
(
以下、高校でも教わった話かもしれませんが
)
今のように計算機が普及していな かった、いえ、そもそも存在していなかった時代に、桁数の多い 数どうしのかけ算をするのに便利だったからです。それは対数関 数一般に成り立つ、かけ算を足し算に変えてしまう性質log a (xy) = log a x + log a y
のおかげです。
10
を底にとる理由はもちろん、私達が10
進数を用いているためです。今
x, y
が共に桁数の多い正の整数(
実数でも構いません)
で、
x = p × 10 m , y = q × 10 n (p, q ∈ [1, 10))
と表せたとすると
log 10 (xy ) = log 10 (pq × 10 m+n ) = log 10 p + log 10 q + m + n
より、とりあえず
p
とq
の常用対数を足し算して(
かけ算より足し算の方が容易!
)
log 10 r = log 10 p + log 10 q
を満たす
r
を対数表から探し出し、log 10 (xy ) = log 10 r + m + n
= log 10 (r × 10 m+n )
より
xy = r × 10 m+n
を得る
(
あくまで「およそ」ですが)
わけです。しかし微分を考えるようになると、微分しても変わらないと言 う
e x
の性質は何物にも代えがたい。また積分を考えても1
x
の原始関数
(
の一つ)
であると言うlog e x
の性質も上に同じです。そこ で現在では、特に何も断らない限り、底と言えばe
を選ぶこととして、自然対数を底を明記せずに
log x
と表す習慣になっています。
ただ、何を底にとるにせよ、対数関数の重要な性質は、積を和 に変えること。そしてもう一つ、正の実数全体の集合
(0, + ∞ )
から、実数全体の集合
R
への全単射であることです。そうでなけ れば、対数表からただ一つのr (
あくまで「最も近い」ですが)
を選ぶことができなくなってしまいます。
さらに、特に底を
a > 1
で選んだ場合(
もちろん自然対数を含みます
)
、対数関数log a x
は単調増加で、かつx lim → +0 log a x = −∞ , lim
x → + ∞ log a x = + ∞
が成り立つことも、併せて重要です。
(
連続性や微分可能性など、重要なことはまだまだありますが、それはまた次回以降の話 です。
)
さて、極限についての続きです。今回前半で、極限
(
値)
を求める際に気を付けなければならないのは、主に
0 × ∞ , 0
0 , ∞
∞
の場合ですと言うお話をしました。これと同じくらい気を付けな ければならないのが
∞ − ∞
です。でも実はこれは本質的には
∞
∞
を考えることと同じです。
なぜなら、例えば
f (x), g (x)
は共にx = a
の近くで正値な(
正の値を取る
)
関数で、さらにx lim → a f (x) = + ∞ , lim
x → a g (x) = + ∞
を満たすものとします。ここで
log f (x)
g (x) = log f (x) − log g (x)
ですが、一方
x lim → a log f (x) = + ∞ , x lim → a log g (x) = + ∞
も成り立ちます。
つまり、極限として
∞
∞
を考える問題は、対数をとることで∞ − ∞
を考える問題に置き替えられるのです。元に戻すにはも ちろん指数関数に代入すればよいだけです。では、実際に極限を求める際、どちらで考える方が簡単かと言 うと、これは問題によるとしか言えませんが、一般に、正の実数 の積や商
(
=逆数との積)
に関する性質と、実数の和や差(
=− 1
倍との和
)
に関する性質とが、対数関数と指数関数と言う全単射とそ の逆関数を通して読み替えられることは、覚えておくとよいで しょう。数列と関数どちらの場合でも、極限値を求める際に重要な手段 として、和差積商に分ける以外に、はさみうちの原理
(
教科書9,20
頁)
があります。教科書
20
〜21
頁にも出ていますが、重要な例なので、ここで も次の極限値について考えてみましょう。x lim → 0 x sin 1 x
今回、この講義ノート前半で
x lim → 0 sin 1 x
は存在しないと言う事実に触れました。
それは
x
が0
に右から近付くにつれ、1
x
は+ ∞
に発散し、その途中で
2n − 1 2
π
と
2n + 1 2
π (n ∈ N)
を次々繰り返し通過するため、関数
sin 1
x
の値は− 1
と1
の間を無限回振動し続けるためです。
その結果、
x = 0
のいくらでも近くで、− 1
と1
の間の全ての値をとることになり、
x → +0
のときの極限値は存在しない。ま た、x → − 0
の時も同様と言うわけです。狭い所で無限回なので、絵には描けません。
0
x- 6
y
y = sin 1x
y = −1 y = 1
ところが、似たような関数
x sin 1
x
で、事情は変わります。大事なのは
sin 1
x
が( 1
x
と) sin
との合成関数であるばかりに、− 1
と1
の間の値しかとれない。つまり不等式− 1 ≤ sin 1
x ≤ 1
が任意の
x ̸ = 0
に対して成り立っていると言うことです。これから直ちに不等式
−| x | ≤ x sin 1
x ≤ | x |
も任意の
x ̸ = 0
に対して成り立っていることが導かれ、ここでx lim → 0 ( −| x | ) = 0, lim
x → 0 | x | = 0
ですから、
はさみうちの原理により、
x lim → 0 x sin 1
x = 0
が得られます。
0
x- 6
y
y =xsin 1x
@@
@@
@@
@@
@@
@@
y = |x| y = |x|
y =−|x| y = −|x|
(
この例は次回も登場します。)
はさみうちの原理と同じ考え方は正負の無限大に発散する場合 にも使えます。
例えば
f (x), h(x)
がx = a
の近く( x = a
自身は除く)
で定義された関数で、
x = a
の十分近くではf (x) ≤ h(x)
が成り立っているとしましょう。ここでもし
lim
x → a f (x) = + ∞
ならばx lim → a h(x) = + ∞
も成り立ちます。正の無限大
(
ある意味一番上)
に発散してしまうので、さらに上からg(x)
で はさむ必要はありません。負の無限大に発散してしまう場合は、どのような命題になるか、
書き下してみましょう。
例題として、次の極限を考えてみましょう。
x lim → 0
1 x 2
2 + sin 1 x
ここで任意の
x ̸ = 0
に対して1 ≤ 2 + sin 1
x ≤ 3
が成り立っていますから、
1
x 2 ≤ 1 x 2
2 + sin 1 x
≤ 3 x 2
も成り立ちます。左の不等式と
lim
x → 0
1
x 2 = + ∞
からx lim → 0
1 x 2
2 + sin 1 x
= + ∞
が得られます。
(
右の不等式は使いませんでした。)
これを
x lim → 0
1 x 2
2 + sin 1 x
= lim
x → 0
2
x 2 + lim
x → 0
1
x 2 sin 1 x
と分けて考えたりすると、ちょっと面倒なことになります。なぜ なら、第1項については、
x lim → 0
2
x 2 = + ∞
ですが、第2項の関数
1
x 2 sin 1
x
はx = 0
の近くで激しく振動して しまって極限x lim → 0
1
x 2 sin 1 x
を持たないからです。これは
∞ − ∞
以上に厄介です。第1回練習課題の解答
あくまで終集合は
R
として関数 定義域 値域 ?射
x 2 R [0, + ∞ )
どれでもないx 3 R R
全単射e x R (0, + ∞ )
単射log x (0, + ∞ ) R
全単射sin x R [ − 1, 1]
どれでもないcos x R [ − 1, 1]
どれでもないtan x ( ∗ ) R
全射√ x [0, + ∞ ) [0, + ∞ )
単射
( ∗ ) tan x
の定義域は(
x ∈ R
x ̸ = n
2 π (n
は奇数)
)