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カテゴリー判断課題を使った共表象効果の検討

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問題と目的

我々は他者の行為によって自身の行動を計画す ることで円滑に日常生活を送ることができる。例 えば,道を歩いている時,前から人が歩いてきた とする。この時,我々は「相手が左に寄ったら自 分は右,相手が右に寄れば自分は左」と行動を計 画している。他者の行動に限らず,他者が存在す ること自体が個々の行動に変化をもたらすことも ある。例えばある課題を行う場合,家でひとり黙々 と行うよりも,カフェなどの誰かが見ている,あ るいは自習室などで同じ課題に取り組む他者が傍 にいる方が,課題の遂行量や遂行の質が高まるこ とがある。反対に他者の存在によって課題の遂行 が阻害されるという場合もあるだろう。

この優れた社会性(hypersociality)は,人類 の 長 い 歴 史 に お け る 進 化 の 産 物 と も い え る

(Pinker,2010)。社会的行為は社会的認知を規定

し,逆に社会的認知は社会的行為を規定する。し たがって,社会指向性のある行為は,他者と共同 で行うための情報を,他の種類の情報よりも優先 的に受け取る認知システムによって確立してきた と考えられる。

この認知システムを示す証拠は,課題を二人で 遂行する一連の研究によって示されている。この ような研究で用いられる課題は認知心理学の分野 で伝統的に扱われてきたものである。中でも最も 多く検討されているのが,刺激と反応の競合を解 消する課題(刺激反応適合性パラダイム)を応用 したものである。これらの研究では,他者と課題 を共有する際に,他者の課題表象,つまり共表象 が形成されることが明らかにされた(サイモン課 題,Dittrich,Bossert,Rothe-Wulf,& Klauer, 2017;Sebanz,Knoblich,& Prinz,2003;フラ ン カ ー 課 題,Atmaca,Sebanz,& Knoblich, 2011;Dittrichetal.,2017)。これらに共通する 要旨

他者と課題を共有する場面では,自身の課題はもちろんのこと,相手の課題表象も形成されることが多くの先行 研究によって示されている(e.g.,Sebanzetal.,2003)。本研究では,多くの共表象に関する研究で使用されてき た刺激-反応適合性パラダイムではないカテゴリー判断課題を用いて共表象効果が認められるかを調べることで,

課題共有事態での共表象の形成の一般性についての検討を行った。実験は,若齢者(N=40,Mean age=20.4)

と高齢者(N=24,Mean age=70.1)のそれぞれのペアがモニター画面に向かって左右に座り,呈示された単語 が自分に割り当てられたカテゴリーに属するか否かの判断を行った。参加者二人に同じカテゴリーを割り当てる same条件と異なるカテゴリーを割り当てるdifferent条件の2条件が設定された。若齢者は,same条件よりも different条件でカテゴリー判断時間が遅延したが,高齢者はそのような遅延は無かった。若齢者は,different条 件においてパートナーのカテゴリーも活性化されたことで,参加者自身のカテゴリー判断が妨害されたのに対して,

高齢者はパートナーの課題表象の活性化が生じにくかったため,そのような妨害による遅延がみられなかったと推 察された。これらの結果は,ワーキングメモリ容量の少ない高齢者とは異なり,ワーキングメモリの低下が見られ ない若齢者でパートナーの課題表象が形成されることを示した。

キー・ワード:共表象,課題の共有,カテゴリー判断課題,エイジング

カテゴリー判断課題を使った共表象効果の検討

澤 田 萌 乃・吉 崎 一 人

(2)

のは,課題のタスクセットの一部を担当し一人で 実施する個人条件と,二人で課題を遂行し,各自 が異なるタスクセットを担当する共有条件が,設 定される点にある。この2つの条件の認知成績の 差から,他者の課題表象(タスクセット)の形成 が推察される。この差を共表象効果と呼ぶ。

例えばSebanzetal.(2003)は,サイモン課 題を使って,他者と課題を共有しているときに,

共表象が形成されることを明らかにした。一人で 行う典型的なサイモン課題は,画面の左右どちら かに呈示された刺激に対して,左右に配置された キーで反応する。事前に刺激(ターゲット)と反 応すべきキーの対応は教示される。反応すべきキー の位置と画面上の刺激呈示位置が同じである一致 条件と反応すべきキーの位置と刺激位置が異なる 不一致条件が設定される。このとき,刺激の呈示 位置は課題遂行には無関係な情報であるが,我々 は自動的に無関連な刺激の位置を符号化する。そ の結果,一致条件では符号化された刺激位置と反 応すべきキーの位置が同じであるため反応時間は 速くなるが,不一致条件では符号化された刺激位 置とキー位置の間に競合が生じ反応時間が遅くな る。この競合がもたらす一致条件と不一致条件の 認知成績(反応時間や誤答率)の差がサイモン効 果である(Simon,1990)。

Sebanzetal.(2003)はgo/no-go課題をサイ モン課題に適用し,個人条件,共有条件でそれぞ れサイモン効果が認められるかを検討した。go/

no-go課題では,参加者は指定された刺激(ター ゲット)のみに反応しそれ以外の刺激には反応し ないように求められた。彼女らの実験において,

個人条件では画面の左あるいは右側に,共同条件 では二人が画面の左右の座席に分かれて着席した。

画面中央には,赤色または青色のリングをはめた 指が左右いずれかを指差す画像が画面中央に呈示 された。参加者は指定されたリングの色(ターゲッ ト)の時にだけキー押しによって反応することが 求められた。共同条件では,ターゲットの色は参 加者間で異なった。ここでの一致条件は,参加者 が反応すべき際に,参加者側を指さしている事態 で,不一致条件は反応すべき際に反対側の席を指 さしている事態であった。

結果は,共同条件で一致条件の方が不一致条件 よりも反応が速いサイモン様効果がみられたが,

個人条件では見られなかった。つまり,共表象効 果 が 認 め ら れ た 。 こ の 結 果 をSebanz et al.

(2003)は以下のように説明した。つまり,他者

(パートナー)と共に課題を遂行することで(共 同条件)自動的に課題表象の中に他者(パートナー)

のタスクセット(反応すべき刺激と反応方法)が 形成され,リングの色が反応すべきターゲットで,

指さしがパートナー側を向いている際には,パー トナーが押すべき色も活性化され,それが妨害し,

反応に遅延をもたらすと説明したのである。

本研究は,課題共有事態での共表象の形成の一 般性について検討することを目的とした。これま で多く報告されてきた競合検出解消を伴う課題と は異なる認知課題で,共表象の形成について検討 した。具体的には,カテゴリー判断課題を実施し,

共表象効果に注目した。

本研究で用いるカテゴリー判断課題は,共同条 件,つまり,モニター画面の左右に座った二人で 実験に参加する条件だけが設定された。各参加者 は,呈示された単語が自分に割り当てられたカテ ゴリーに属するかの判断を行った。重要な操作は,

参加者二人に同じカテゴリーを割り当てるsame 条件と異なるカテゴリーを割り当てるdifferent 条件の2条件を設定した点であった。参加者二人 は課題遂行のために,画面に呈示されるカテゴリー 判断処理を行った。もし,パートナーの課題表象 も形成されているとすれば,different条件の判 断時間が,same条件のそれよりも遅延すること が予想される(共表象効果)。different条件では,

課題遂行中に自らに割り当てられたカテゴリーだ けでなくパートナーのカテゴリーも活性化され,

適切な判断に負荷がかかると推測される。same 条件では,自らが担当するカテゴリー以外の活性 化は生じないため,選択時の負荷はないと推測さ れ,反応時間はdifferent条件に比べ速くなると 予想される。

本研究での第2の目的は,共表象効果の個人差 を検討することにある。今回のカテゴリー判断課 題では,課題遂行のために,遂行中に自らに割り 当てられたカテゴリーをワーキングメモリに維持

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しておく必要がある。加えてパートナーが担当す るカテゴリーの活性化も生じるとすれば,さらに ワーキングメモリに負荷をかけることにつながる。

したがって,ワーキングメモリが低い場合は,共 表象効果は生じないことが予想される。このこと を検証するために,本研究では健常若齢者に加え,

健常高齢者も対象に検討する。

多くの研究で指摘されているように,加齢に伴 う認知機能の低下は,前頭葉機能の低下が主たる 原因となっている (加齢の前頭葉仮説,West, 1996)。エピソード記憶,実行機能と同様に,ワー キングメモリ容量の年齢に伴う低下は多くの研究 で示されている(e.g.,McCabe,RoedigerIII, McDaniel,Balota,& Hambrick,2010;Quentine

& Cohen,2019)。

このことに従えば,ワーキングメモリ容量が少 ない高齢者群では,パートナーの課題表象が形成 されず,カテゴリー判断時間は,different条件 とsame条件間で差が見られないことが予測され た。反対に,ワーキングメモリの低下が見られな い若齢者は,パートナーのカテゴリーの活性化が 生じるためdifferent条件がsame条件よりも判断 時間が遅延する,つまり共表象効果認められるこ とが予測された。

方 法

実験計画 年齢(若齢者/高齢者)×課題割り当 て(same/different)の2要因混合計画であっ た。

実験参加者 同意書に署名した66-74歳(M=70.2 歳)の健常高齢者24名(男性11名,女性13名)と 18-23歳(M=20.4歳)の若齢者40名(男性10名,

女性30名)が実験に参加した。全参加者は裸眼も しくは矯正で正常視力を有した。高齢参加者には 認知症スクリーニングテストであるMini-Mental State Examination(Folstein, Folstein, &

McHugh,1975)を実施した。全参加者の得点は 24点以上(M=28.5/30)であり,参加者全員が 認知症ではないことが確認できた。高齢参加者は シルバー人材センターに在籍するものであった。

実験参加謝礼として高齢参加者にはセンターから

賃金が支払われ,若年参加者にはクリアファイル が渡された。

刺激 課題に使用された単語は, 松井・中坪

(2007)が作成した,55の各カテゴリーに属する 単語とその出現率が記された表を参考に,上位8 単語の出現率が17%以上の8カテゴリーを使用し た。用いたカテゴリーは雑誌や有名人といった年 齢層によって回答に偏りがあると考えられるカテ ゴリーを除いた,「果物」「昆虫」「体のパーツ」

「色」「野菜」「家具」「乗り物」「動物」で,計64 単語を用いた。各単語はMSゴシック体50ポイン トで表示され,白色の背景に黒色で,32インチ TFTモニターの中央に横書きで呈示された。

実験装置 刺激はPCとそれに接続された32イン チTFTモニターによって呈示された。刺激呈示 の制御,並びに反応の記録は,Cedrus社製Super Lab(Version5.05) を使用した。反応キーボッ クスが各実験参加者に1つずつ割り当てられた。

パートナーのキーを押す音が聞こえるのを防ぐた めにヘッドホン(BOSE社,QC15)を使用した。

手続き 実験は二人で行われた。若齢者の実験参 加者に対しては予め友人を一人連れてくるように 依頼し,2人1組で実験に参加した。高齢者の参 加者に対しては,実験者が決めたペアで実験を行っ た。各ペアは同一の画面を見ながら課題を遂行し た。1試行の流れは以下のようであった。凝視点 が250msまたは750ms呈示された後,単語刺激 が1500ms呈示された。さらに500msのブラン ク後,次の試行が開始された。参加者の課題は,

割り当てられたカテゴリーに属する単語が画面に 呈示されたら,できるだけ速く,できるだけ正確 にキー押しによって反応することであった。

実験は,参加者二人が同じカテゴリー判断を行 うsame条件と参加者二人が異なるカテゴリー判 断を行うdifferent条件の2条件を実施した。ど ちらの課題を先に行うかはペア間でカウンターバ ランスされた。各ペアの実験参加者は,モニター 画面に向かって左側か右側にそれぞれ着席した。

パートナーの参加者が見えないように2名の実験 参加者が席に着いてから実験が終了するまで,実 験参加者の間に仕切りが設置された。全体の流れ は,最初に二人で行う課題であることを伝えた後,

(4)

練習試行の教示を行った。その後,本試行を行っ た。

本試行の教示についてはそれぞれの条件の課題 前に行った。教示は,実験者がモニターの横に立 ち,座っている参加者二人にむかって同時に行わ れた。same条件の教示については,反応すべき カテゴリーと反応すべきでないカテゴリーを伝え,

different条件では,参加者が反応すべきカテゴ リーとパートナーが反応すべきカテゴリーが伝え られた。

各条件はそれぞれ64試行で,計128試行を実施 した。練習試行は,本試行の最初に行う条件の練 習だけを行った。練習試行のカテゴリーは本試行 とは異なる4カテゴリー(時代/装身品/スポー ツ/文房具),16試行からなった。本試行がsame 条件から始まる場合,2名の参加者は「時代」,

「装身品」が反応すべきカテゴリーとして割り当 てられ,different条件から始まる場合は,反応 すべきカテゴリーとして,左に座った参加者は

「時代」と「装身品」,右に座った参加者は「スポー ツ」と「文房具」がそれぞれ割り当てられた。

本試行ではsame条件とdifferent条件で異なる カテゴリーを2つずつ割り当てた。使用した8つ のカテゴリー(果物/昆虫/体のパーツ/色/野 菜/家具/乗り物/動物)は「果物」「体のパー ツ」と「昆虫」「色」のグループ,「野菜」「乗り 物」と「家具」「動物」のグループに分けた。最 初の条件で「果物」「体のパーツ」と「昆虫」「色」

のグループのどちらかを割り当てられた場合,次 の条件の課題では,「野菜」「乗り物」と「家具」

「動物」のグループのどちらかのカテゴリーが割 り当てられた。どのカテゴリーもターゲットとな るよう,条件とターゲットとなるカテゴリーの組 み合わせを8パターン作成した。same条件,

different条件の順で実施した4パターンをTable1 に,different条件,same条件の順で実施した4 パターンをTable2に示す。

2条件からなるカテゴリー判断課題終了後,課 題内容についてのアンケートを行った。アンケー トは2問で構成され,全8カテゴリーの中から参 加者自身とパートナーが割り当てられたカテゴリー にそれぞれ〇印をつけるよう求めた。参加者自身

のカテゴリー,並びにパートナーのカテゴリーに おいて,それぞれ2個正答した場合は2点,どち らか1つのカテゴリーを正答した場合は1点,2 カテゴリーとも間違っていた場合は0点とした

(4点満点)。各年齢群の平均点は,高齢者では 3.8点,若齢者では3.9点であった。

倫理的配慮 本研究の手続きは,愛知淑徳大学心 理学部倫理審査委員会(ECP2019020)の承認に 基づいて行われた。

結 果 カテゴリー判断課題

正答に要した反応時間を実験参加者個々に算出 した。反応時間が200ms以下もしくは1500ms 以上の試行は外れ値として分析から外した。外れ 値は全試行中の0.02%であった。Miss(参加者 自身に割り当てられたカテゴリーを見逃した試行)

については,各群の平均値と標準偏差を算出し,

平均から3SDを超える参加者と,FA(参加者自 身が反応すべきでないカテゴリーにもかかわらず 反応した試行)についても各群の平均と標準偏差 を算出し,平均の3SDを超えるデータは以下の 分析から除外した。この基準に該当したのは,高

VDPH GLIIHUHQWࠪӊʥ Վ෼ʀର͹Ϗʖς ໼ࡌʀ৒Ε෼Պ۫ʀಊ෼

໼ࡌʀ৒Ε෼ Վ෼ʀର͹Ϗʖςࠝமʀ৯ ࠝமʀ৯ ໼ࡌʀ৒Ε෼Պ۫ʀಊ෼

Պ۫ʀಊ෼ Վ෼ʀର͹Ϗʖςࠝமʀ৯ Table1 ターゲットカテゴリーの組み合わせ

4パターン(same条件→different条件)

(左/右)は左右各側に座る参加者にそれぞれ割り当 てるカテゴリーを示す。

GLIIHUHQWࠪʙӊ VDPH Վ෼ʀର͹Ϗʖςʙࠝமʀ৯ ໼ࡌʀ৒Ε෼

໼ࡌʀ৒Ε෼ʙՊ۫ʀಊ෼ Վ෼ʀର͹Ϗʖς Վ෼ʀର͹Ϗʖςʙࠝமʀ৯ Պ۫ʀಊ෼

໼ࡌʀ৒Ε෼ʙՊ۫ʀಊ෼ ࠝமʀ৯ Table2 ターゲットカテゴリーの組み合わせ 4パターン(different条件→same条件)

(左/右)は左右各側に座る参加者にそれぞれ割り当 てるカテゴリーを示す。

(5)

齢者は1名,若齢者は3名で,以下の分析対象と なったのは高齢者23名,若齢者37名であった。

条件別のHit率と,誤答率をMiss率,FA率に 分け,その平均と標準偏差をTable3,Table4,

Table5にそれぞれ示す。FA率は,参加者二人 の合計FAがカウントされ,参加者どちらが押し たかを特定できなかったため,FAの平均を各課 題の全試行数(64試行)で割り,算出された。

正答に要した平均反応時間について年齢(高齢 者/若齢者)×課題割り当て(same/different) の2要因分散分析を行った。その結果,年齢の主 効果が有意となり(F(1,58)=34.395,p<.001, ηp2=.372), 若齢者 (672ms) よりも高齢者

(808ms)の方が反応時間は長かった。課題割り 当てについては,same条件 (712ms) よりも different条件(736ms)で反応時間が長い傾向 がみられた(F(1,58)=3.285,p=.075,ηp2= .054)。重要なことに,年齢×課題の交互作用が 有意となった(F(1,58)=6.540,p=.013,ηp2= .101)。そこで,各年齢群における課題割り当て

の単純主効果検定を行った。若齢者では,same 条件(650ms)よりもdifferent条件(694ms) で反応時間が長くなった(F(1,58)=9.548,p= .003,ηp2=.141)。 一方で, 高齢者においては same条件(811ms)とdifferent条件(804ms) で反応時間の差はみられなかった(F(1,58)=

0.277,p=.600,ηp2=.005)。年齢群別の平均反 応時間をFigure1に示す。

共表象指数

年齢群間の比較において,Leveneの等分散性 の検定の結果,年齢群間の分散の等質性が保証さ れなかったため,反応時間を使って共表象効果の 比率を算出した(([different-same]/[different

+same])×100)。算出した比率を以下,共表象 指数とした。t検定を使って両群間の共表象指数 を比較したところ,高齢者群(M=-0.39,SD= 5.24)に比べて若齢者群(M=3.37,SD=5.22)

の方が共表象指数は高かった(t(58)=2.709,p

=.004,d=.719)。つまり,2要因分散分析の結 果と同様に高齢者よりも若齢者の方が共表象効果 は大きいことが示された。

考 察

本研究は,カテゴリー判断課題を用いて,ワー キングメモリの観点から共表象効果の生起並びに その加齢変化について検討することを目的とした。

本研究の結果から,若齢者で共表象効果が確認さ れ,これまで行われてきた刺激反応適合性パラダ イムを用いた検討(e.g.,Sebanzetal.,2003)

VDPH GLIIHUHQW

߶ྺं 0.93(0.07) 0.95(0.06) ऑྺं 0.97(0.04) 0.96(0.07)

Table3 条件別の平均Hit率と標準偏差

( )内は標準偏差を示す。

VDPH GLIIHUHQW

߶ྺं 0.07(0.07) 0.05(0.06) ऑྺं 0.03(0.04) 0.04(0.07)

Table4 条件別の平均Miss率と標準偏差

( )内は標準偏差を示す。

VDPH GLIIHUHQW

߶ྺं 0.03(0.03) 0.04(0.03) ऑྺं 0.03(0.02) 0.03(0.02)

Table5 条件別の平均FA率と標準偏差

( )内は標準偏差を示す。

Figure1.年齢群ごとの条件別平均反応時間

(エラーバーは標準誤差)。

(ms)

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での知見を支持した。この共表象効果の生起は以 下のようなメカニズムによるものと考えられた。

ワーキングメモリが,効率的に働く若齢者では,

パートナーと自らに割り当てられたカテゴリーが 異なる場合(different条件),課題遂行中にパー トナーの課題表象も形成された。したがって,同 一カテゴリーを割り当てられた場合(same条件)

に比べ,判断時に負荷が生じることで反応が遅延 したと推察された。

この生起メカニズムの妥当性は,ワーキングメ モリの低下が想定される高齢者で(e.g.,McCabe etal.,2010;Park etal.,2002),共表象効果が 認められなかったことから確認された。ワーキン グメモリの低下により,異なるカテゴリーがパー トナーに割り当てられた事態では,パートナーの 課題表象が形成されず,カテゴリー判断時に競合 は生じなかったと考えられた。

ワーキングメモリの低下が共表象形成の不全に つながるという考えは,ワーキングメモリの加齢 変化の研究知見からみても整合的に解釈できる。

McNabetal.(2015)は,高齢者はワーキング メモリに情報を符号化するときよりも,維持して いる時に妨害を受けやすいことが示されている。

本研究のカテゴリー判断課題では,課題遂行が進 むにつれ,維持されていたパートナーのカテゴリー 情報が,次々に呈示される単語のカテゴリー判断 を行う中で妨害され,維持出来なくなった可能性 がある。このことがパートナーの課題表象(タス クセット)を含む共表象の維持につながらなかっ たと推察される。

これまで多くおこなわれてきた刺激反応適合性 パラダイムを応用して共表象効果に焦点を当てた 研究(Atmacaetal.,2011;Dittrichetal.,2017; 木村・吉崎,2011;Sebanzetal.,2003)と,今 回用いた手続きは大きく異なっていた。最も大き な差異は,Sebanzらのパラダイムでは一人で実 施する個人条件と二人で課題を共有した共同条件 の差から,共表象効果を推定しているのに対して,

今回用いた課題では二人で実施する事態で,参加 者二人に割り当てたターゲットの異同を操作した 点にある。Sebanzらのパラダイムにおける2条 件では,社会的促進に代表されるように,他者の

有無が遂行成績自体に影響する可能性がある

(Allport,1924;Bond & Titus,1983;磯 崎, 1985)。さらに,パートナーとの関係性や,対人 反応性の個人差が,社会的状況(個人/共同条件)

の差異に複雑に影響するともいえる。このような 剰余変数の介入を回避できるという点においては,

今回のパラダイムは優れているといえる。

しかしながら,今回のパラダイムにも問題点が 残されている。ワーキングメモリ容量やその脆弱 性によって,観察される共表象効果の生起を説明 するため,年齢差などの個人差を検討する際には,

ワーキングメモリ容量等の個人差も同時に測定し た検討が必要となる。さらに,共有する課題遂行 にかかるワーキングメモリの負荷の操作が共表象 効果に及ぼす影響も検討すべきである。ワーキン グメモリ容量やその脆弱性によって共表象効果の 生起が規定されるなら,課題負荷の増大によって,

今回のパラダイムでの共表象効果の低下が予想さ れる。

高齢者の共表象効果がみられなかった理由とし て,別視点からの解釈も考えられる。Reuter- Lorenzetal.(2000)は,脳機能イメージング を使って,言語刺激に関連したワーキングメモリ 課題遂行中の脳内活動を若齢者と高齢者で比較し た。その結果,若齢者では左半球の上頭頂小葉の 活性化が認められたのに対して,高齢者では左右 半球両側の活性化が認められた。さらに彼女は,

この現象は認知成績の高い高齢者で強く認められ ており,処理に関与する領域の反対側半球の領域 がその認知活動を補っていることで脳機能の脆弱 性を補償していると主張した (Reuter-Lorenz, 2002)。Cabeza(2002)は,このような脳機能の 補償作用によって高齢者のラテラリティが減弱す る と い う ,HAROLDモデ ル(Hemispheric AsymmetryReduction in Olderadults)を提 唱している。つまり,高齢者は広い範囲の脳部位 を活性化させることで成績の低下を防いでいると 考えられるのである。本研究の高齢者にもこのよ うな左右半球の過活性化が生じ,自らの課題を効 率的に遂行するために,活性化されたパートナー のカテゴリー情報を抑制したとも考えられる。実 際,課題終了後に行った課題内容のアンケート結

(7)

果から明らかになったように,実験に参加した高 齢者は,パートナーのカテゴリーを若齢者と同等 レベルで想起できた。また,カテゴリー判断時間 は若齢者よりも遅延しているものの,再認成績

(Hit率,Miss率,FA率)は若齢者と同レベルで あった。したがって,参加した高齢者は高次認知 機能が比較的高く保たれており,課題遂行中に脳 の脆弱性を補っていたとも推察された。

まとめると本研究は,カテゴリー判断課題を二 人で共有して実施するパラダイムを用いて,若齢 者が共表象を形成していたことを確認した。具体 的には,二人で異なるカテゴリーに対して反応す る条件では,同一カテゴリーに対して反応する条 件よりも反応が遅延した。ワーキングメモリの低 下が想定される高齢者では,そのような差異は認 められず,共表象が形成されなかった可能性を示 唆した。

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Formingtaskco-representationswhensharingcategoryjudgmenttaskswithapartner MoenoSawadaandKazuhitoYoshizaki

Abstract:

Mostpreviousstudieshavedemonstratedthattaskrepresentationsfortheselfandothersareformed whensharingataskwithanotherperson(e.g.,Sebanzetal.,2003).Weinvestigatedthegeneralizability offorming co-representations when task-sharing by examining whether task co-representations are formed when using category judgment tasks instead of stimulus-response compatibility paradigms similartomoststudiesonco-representation.Pairsofyounger(N=40,Meanage=20.4)andhealthy olderadults(N=24,Meanage=70.1)wereseatedsidebysidefacingamonitorandjudgedwhether apresentedwordbelongedtoanassignedcategoryornotundertwoexperimentalconditions:assigning theidentical(samecondition)oradifferentcategorytothetwopeople(differentcondition).Theresults ofyoungeradultsshowedthattheresponsetimesforcategoryjudgmentswereslowerinthedifferent thanthesamecondition,possiblyduetoobstructionofjudgmentsderivedfrom activatingthepartner's category.Onthecontrary,olderadultsdidnotshow suchadifference,possiblybecausetheactivation of the partner's task representation was absent.These results suggest that younger adults with abundantworking memory capacity form theirpartner'stask representation,unlikeolderadultswith lessworkingmemorycapacity.

Keywords:co-representation;task-sharing;categoryjudgmenttask;aging

Tabl e5にそれぞれ示す。FA 率は,参加者二人 の合計FA がカウントされ,参加者どちらが押し たかを特定できなかったため,FA の平均を各課 題の全試行数(64試行)で割り,算出された。

参照

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