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学力格差の経年変化

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(1)

学力格差の経年変化

一東京都S区の事例‑

はじめに

藤 田 武 志

さまざまな側面 における社会的格差が指摘 され るなか,学力 について も階層による格差 が拡大 してい ることが指摘 されている しか し多 くの場合,10年余 りの ときを隔てた学 力の変化 とその規定 因が検討 されている。つ ま り,異 なった子 どもの学力 を比較分析 して, 格差の拡大 を兄いだ しているのである。では,同一の子 どもについては,階層による学力 差 はどのように変化 してい くのだろうか。 また,その変化 には, どの ような要因が関わっ ているのだろ うか。

これ まで,学力の規定因について横 断的に検討 した研究や,学力の変化 について異なる サ ンプルを用 いて継時的に分析 した研究は見 られ る ものの (苅谷他 2002,苅谷 ・志水編 2004な ど),パ ネル調査 によって学力の変化 と,そこに及 ぼす社会的な要 因の影響 を探 っ た ものは少 ない*1。そ こで本研 究では,東京都S区の2つの中学校 の1年生 に対 して行 われた学力テス トと質問紙調査,その学年が3年生 になった ときに行 われた学力テス トと 質問紙調査 を比較分析することによって,学力格差 とその規定 因について検討す る。

1.研究方法

調査 に回答 して くれたのは,東京都S区立の2つの中学校 (SW 中)に20034 月 に入学 した生徒 たちであ る。生徒 たちが 1年生 時の20042‑ 3月 と,3年生時の 20062‑ 3月の2回,学力テス トと質問紙調査 を行 った。なお,分析 の対象 とす るのは,

ふ じた ・たけ し ′上越教育大学

キーワー ド/学力格差,経年変化,階層格差,事例研究

*1パネル調査によって継時的な変化への社会的な要因の影響を分析したものもあるが (たとえば,耳塚1983. 1986など),学力として成績の自己評価を代替的に用い,それを独立変数として分析を行っており.学力の

経年変化を直接的に扱ったものではない。 o

(2)

2回 とも回答 した135名 の生徒 たちであ る (S中 :93名,W中 :42名)。

学 力 テス トの 内容 は,第 1回が小学校6年 間の学 習 の総復 習 (以下,「国語 (2003)」, (2003)と表記 す る), 第2回が 中学校3年 間の学 習 の総復 習 で あ った (以 下 ,「国語 (2005)」,「数学 (2005)と表記 す る)。 また,質 問紙 調査 の内容 は2回 と もほぼ同 じで, 家庭学 習 の様 子 ,学校 での学 習態度,保 護者 の行 動 や属性 ,保護者 に対 す る意識 な どを尋 ね てい る。

東京都S区は23区の西部 に位 置 してお り, 人 口50万 人 を越 える比較 的大 きな 自治体 で あ る 対象校 の教 師 に よれ ば,教 育 に対 す る住民 の意識 や子 どもた ちの学力水 準 も高 い と

目され る地域 であ る。

質 問紙 調査 を実施 した2校 の プ ロ フ ィール は次 の とお りで あ る*2。 まずS中 は,学級 8,住 宅街 に位置 してお り,落 ち着 いた環境 の なかで生徒 たちは 自由 な校風 の もとでの びの び と した学校生 活 を送 ってい る学校 で あ る。一方W中は,学級 数6,商店街 と住 宅街 の混在 した地域 に位 置 してお り,先生 と生徒 の きめ細 やか な コミュニケー シ ョンの もとで, 生徒 たちが活気 のあ る生活 を送 ってい る中学校 であ る

2.調査結果の概要

まず,2回た った学力 観しう 。

表 11・2明 らうに, で は語 と数学両方も平均値 が 大 幅下が り,散 もき くなって お り, 2年 の間に,の差 が確 実 に広ってい るとがる。特 に, 数学つ いて2極 化向が顕著 に 見 られ る。

1 学力テス ト正答率の分布 (2003)

05050505050544332211

第 1回 (20

0 3

),2回テ (200 5 )

最小値 最大値 平均値 標 準偏 差 (2003) 39.1 100.0 86.6 10. (2003) 21.7 97.7 76.2 14.9 (2005) 11.5 100.0 57.4 21. (2005) 13.0 100.0 67.7 21.3

1 学力テス トの記述統計重

囲 2 学力テス ト正答率の分布(2005)

⊂=2003数学

2003匡儲

9%10%台20%台30%台40%台50%台60%台70%台80%台90%以上

50

45 40 35 30 25 20 1 5

10 5 0

E2005数字

2005回議

I

〜9% 10%台20%合30%台40%合50%台60%台70%台80%台90%以上

*2以下の記述は.S区教育委員会のホームページに掲載されている各学校の紹介文を参考にした。

80

(3)

藤田 /学力格差の経年変化

では, このような違いの見 られる2003年 と2005年では,学力に対する社会階層や努力 の影響のあ りようは異なっているのだろうか。また,そこには国語 と数学 という科 目によ る違いはあるのだろうか。 さらに,個人個人の変化 にはどういった要因が関係 しているの だろうか。

これ らの点について検討するため,第 1に,2003年 と2005年の学力テス トの全体的な 規定要因について探る。そ して第2に,2つのテス トの間の個人の変化 に及ぼす要因を分 析する。 これ らの作業 を通 して,学力格差の経年変化のあ りさまの一端 を明 らかに してい

くことに したい。

3.学 力 の 規 定 要 因 一社会階層と努カー

まず,学力 に対する社会階層 と努力の影響 について見ていこう。ここでは,社会階層の 指標 としては父親の学歴 (大卒か非大卒か) を用い,努力の指標 としては家庭での学習時 間を用いることにする。

まず,表2に学力テス トの平均正答率 を社会階層別に示 した。いずれのテス トにおいて も,父親が大卒の場合の方が平均正答率が有意に高い。2003年 と2005年の両方 とも,社 会階層の影響 を受けていることがわかる。

全 体 国語(2003) 国語(2005) 算数 (2003) 数学 (2005) 父 大卒 89.5 62.5 80.0 73.7 父 非大卒 82.3 47.4 70.9 56.8

N 124 124 128 124

有意確 率 (T検定) 0.000 0.001 0.001 0.000 2 社会階層別に見た平均正答率 (%)

次に,努力の量 によって学力が異なるか どうかを確かめよう 3には,それぞれの学 力 テス トを行 った時期の家庭学習時間別 に,学力テス トの平均正答率 を示 した。2003 の学力テス トでは,学習時間が異なって も平均正答率があま り大 きく変化 しないのに対 し, 2005年 には,一部例外があるものの,学習時間が多い方が平均正答率が高 くなるとい う 傾向が見 られる。分散分析 の結果,2003年の学力テス トは国 ・算両方 とも学習時間の影 響が有意ではないのに対 し,2005年の学力テス トでは,国 ・数いずれ も有意である。

全体 回語(2003) 国語(2005) 算数 (2003) 数学 (2005) 15分まで 84.0 47.8 73.6 61.2 30分まで 89.3 48.3 77.9 50.2 1時間まで 86.4 53.2 75.9 63.7 1時間以上 87.1 64.0 77.9 74.3 合計 86.7 56.9 76.3 67.1 有意確率 (分散分析) 0.2'54 0.003 0.576 0.001

表3 勉強時間別に見た平均正答率 (%)

(4)

この ように,社会階層 については2003年 と2005年の両方 において影響が見 られ る一方, 努力 については,2005年のみに影響が見 られることがわかった。2003年の学力テス トは, 小学校6年 間の復習 とい うすでに履修済みの内容であるため,学力テス トを行 った中学校

1年の2月時点 における学習時間の影響が見 られないのか もしれない0

では,社会階層 と努力の量 を同時 に考慮 した場合 には,学力 に対 して どの ように影響 を 及 ぼ しているのだろうか。その点について,重回帰分析 によって検討 していこう。

まず,2003年 の学力 テス トの規定要 因について検討す る。投入 した変数 は,モデル1 が社会階層 (父大卒 ダミー),モデル2が家庭学習時間,モデル3が社会階層 と家庭学習 時間である なお,性別 による違い を統制す るため,女子 ダミー をいずれのモデルにも投 入 した。

45に示 した ように,2003年 の学力 テス トについては,国語 も算数 も社会 階層 だ けが有意であ り,先 ほ どと同様の結果が得 られた。 しか し,国語 と算数のモデル1を見 て みると,国語 (2003)の調整済みR2乗値が0.139であるのに対 し,数学 (2003)ではO.071 にす ぎない。つ ま り,社会階層の影響 は国語の方が大 きい ようである

続いて,2005年の学力テス トについて見てい こう。投入 した変数は先 ほどと同様である。

国語 と数学の両方 とも,父親の学歴 と学習時間は ともに有意 な影響 を与 えている (モデル 1・モデル2)。 なお,モデル 1の調整済みR2乗値 を見 る と,国語 (2005)0.113,数 (2005)0.127であ り,2003年の結果 とは異 なって,社会階層の影響力が数学 に も大

きく及ぶ ようになっていることが うかがわれる。

国語 (2003) モデル1 モデル2 モデル3

B β B β B β

(定数) 77.430 *** 79.589 *** 76.102 ***

性別 3.488 0.175 * 4.360 0.202 ** 3.508 0.175* 父大卒ダミー 7.236 0.352 *** 7.388 0.356***

家庭勉強時間 0.014 0.071 0.018 0.100

4 国語 (2003)の規定要因

算数(2003) モデル1 モデル2 モデル3

B β B β B β

(定数) 70.163 *** 74.948 *** 69.112 ***

性別 0.543 0.018 0.204 0.007 0.343 0.011 父大卒ダミー 9.043 0.293 ** 8.919 0.289**

家庭勉強時間 0.027 0.100 0.023 0.086

5 算数 (2003)の規定要因

82

(5)

藤田 /学力格差の経年変化

国語 (2005) モデル1 モデル2 モデル3 モデル4

B β B β B β B β

(定数) 38.135 ***45.160 *** 36.483 *** 80.287 ***

性別 6.645 0.147 T 3.259 0.074 5.369 0.119 0.191 0.004 父大卒ダミー 15.169 0.325*** 13.400 0.287 ** 4.121 0.090 家庭勉強時間 0.071 0.264** 0.044 0,165 T 0.005 0.020

塵語 03正答率 1,557 0.706 ***

6 国語 (2005)の規定要因

数学 (2005) モデル1 モデル2 モデル3 モデル4

B β B β B β B β

(定数) 58.328 *** 63.104 *** 55.963 *** 9.101 性別 ‑1.070 ‑0.025 3.016 ‑0.070 2.898 ‑0.067 3.436 0.079 父大卒ダミー 16.806 0.374*** 14.273 0.318 *** 5.942 0.132 *

家庭勉強時間 0.083 0.315*** 0.063 0.245 ** 0.050 0.194 **

算数03正答率 0.950 0.659 ***

7 数学 (2005)の規定要因

さらに,父親の学歴 と学習時間を同時に投入 したモデル3を見 ると,国語 (2005)では, 父親の学歴 は1%水準,家庭勉強時間は10%水準でそれぞれ有意 に影響 を与 えている と い う結果になった。数学(2005)もまた,父親の学歴 と家庭学習時間を同時に考慮 した場合, 父親の学歴やミ0.1%水準,家庭勉強時間が5%水準でそれぞれ有意 な影響 を及ぼ している。

す なわち,2005年 の学力テス トでは,学力 に対 して社会階層 と努力 はそれぞれ独 自の影 響 を及 ぼ しているのである

それゆえ,モデル3の結果は,社会階層 にかかわ らず努力次第で学力が伸 びうることを 示 している とも考 え られる。 しか し,努力 に よって学力が伸 びる とはいって も,2003 のテス トで点数 の低 か った者 は,努力 に よってそれ を挽 回す ることはなか なか難 しいの ではないか。 しか も,2003年の学力 テス トの結果は,すでに社会階層 によって刻 印 を押 されているのである。2003年のテス ト結果 にかかわ らず,2005年の学力テス トの結果 に は努力 の影響が見 られ るのだろ うか。その点 について考察す るため,モデル3に加 えて

2003年のテス ト結果 を投入 した (モデル4)

モデル4を見 ると,国語 と数学で異なった結果が得 られている。 まず,国語 (2005)では, 調整済みR2乗値が大幅 に上昇 してお り,2003年学力テス トの結果が大 きな影響 を与 え ていることがわかる。 しか も,父親の学歴 と家庭学習時間が ともに有意ではな くなってお り,係数の値 も大幅 に小 さ くなっているのである。'その一方で,数学 (2005)では,調整

(6)

済みR2乗値が大幅に上昇 しているのは国語 と同 じであるが,父親の学歴 と家庭勉強時間 は, ともに係数の億が小 さくなっているものの,有意な影響が残 っている

ここか らは,小学校 までの内容 をどの くらい身につけているのかが,中学校卒業直前の 学力 に も大 きな影響 を与 えていることがわかる。特 に国語では,2003年テス トの正答率 を分析 に投入す ることによって,学習時間の効果が消 えて しまう。 この結果は,国語の学 力がかな り早い うちに固まって しまうことを示 しているのだろうか。 また,数学で学習時 間の効果が残 ることは,中学校 において小学校 とは異なる分野の学習 をも行 うという教科 の特徴 を表 しているのか もしれない。

いずれにせ よ,学力の規定要因を検討 してい く際には,時期の問題,教科の特徴の問題 をも考慮 してい く必要があ りそ うである。

4.個人の学力の変化

これ までの分析 は,2003年 と2005年の学力テス トの全体的な規定要 因に関す るもので あった。それゆえ,その2時点 間で個 々の生徒が どの ように変化 を したのかはわか らな い。テス トにおける相対的位置は固定的なのか,流動的なのか。2003年のテス トに比べ, 2005年のテス トで相対的な位置が上昇 した り,下降 した りした生徒 は どの くらいいるの か。相対 的位置の変化 には社会階層などの要因が関わっているのか。以下,それ らの点に ついて考 えてい くことに したい。

それぞれの学力 テス トにおいて,生徒 たちを正答率の高い順 に上位 ・中位 ・下位 とい う 3つのグループに等分 した*3。そ して,2003年の結果 と2005年の結果 をクロス させたの が表8と表9である。

まず,国語の結果 を検討 しよう。表8は国語の結果 を示 してお り,網 をかけたセルが 両方のテス トで同 じ位置 にとどまってい る人数 と割合 を示 している。移動 しない割合 は, 2003年 に下位であったグループがいちばん高 く (80.9%),続いて2003年上位 グループ

(62.2%)で,2003年 中位 グループ (30.2%)は移動す る割合がいちばん高い。全体 的に 見 ると,約6割が固定的で,上昇移動 と下降移動がぞれぞれ約2割 とい うところである。

次 に,数学 を見 てみ よう (表 9)。国語 に比べ,下位 グループ と上位 グループの流動性 がやや高い。す なわち,移動 していないのは,2003年下位 グループの71.4%,上位グルー プの55.0%と,国語 よりも若干少 ないのである。それに対 し,中位 グループは,国語 より も固定的で,48.0%となっている。

全体的には,国語 と同様,固定的なのが約 6割,上昇移動 と下降移動がそれぞれ約 2割 ずつ となっている

*3正答率が同じ場合があるため,上位 ・中位 ・下位の3つのグループが同じ割合にならない場合もある。

84

(7)

藤田 /学力格差の経年変化

国語(2005) 合計 下位 中位 上位

国語 (2003) 下位 N 38 6 3 47

国語(2003)中の% 80.̲9 : 12.8 6.4 100.0 総和中の% ..28.1 4.4 22 34.8 中位 N国語(2003)中の% 27,129 3亡13).2 ‑̲≡ 4118.9 43100.0

総和中の% 8.9 9.6 ̲ 13.3 31.9 回語(2003)中の% 4.4 33.3 ∴622 :̲ 100.0

合計 N国語(2003)中の% 3852.5 3425.2 4936.3 ̲ 113500.0

8 学力テストにおける相対的位置の変化 (国語)

数学 (2005) 岳計 下位 . 中位 上位

総和中の% 9.4 1713窯 9.4 36.0 上位 算数N (2003)中の% 00.0 1845.0 工55二+:::.蒙を‑ 40100.0

総和中の% 0.0 12.9 膏 5B宣 28.8 合計 N算数 (2003)中の% 4834.5 38.548 3726.6 113900.0

9 学力テストにおける相対的位置の変化 (数学)

では,2003年 に比べて2005年の相対的位置が上昇 した者,下降 した者 には,移動 しなかっ た者 と比べて,社会階層や努力に何 らかの違いが見 られるのだろうか。その点 を検討する ため, まずは父親の学歴 と,相対的位置の変化 との関係 を検討することにしよう

10は,2003年の国語テス トでの学力 グループ別に,相対的位置 と父親の学歴 との関 係 を見た ものである。2003年 に学力が下位のグループだった者は,両者の関係が10% 準で有意であ り,父親が大学 を出ていないほうが下位 にとどまる割合が高 く,大学 を出て いるほうが 「上昇の割合が高 くなっている。 また,中位だったグループは,残差分析の 結果,「変化 な'についてのみ父親の学歴 との関係が有意であ り,父親が大学 を出てい ないほうが中位 にとどまる割合が高い。

それに対 し数学では,表11に示 したように,2003年 に学力が上位のグループだった者 についてのみ,相対的位置 と父親の学歴 との関係が10%水準で有意であ り,父親が大学

(8)

を出ていないほうが 「下降」の割合が高 く,大学 を出ているほうが 「変化 な し」の割合が 高いのである。

次に,努力 と,学力の相対的位置の変化 との関係はどうだろうか。その点について検討 するため,両時点で変化がなかったグループと,移動 したグループ との間で家庭学習時間 の平均値 を比べてみた。

国語(2003) 05年の変化 お父さんは大学を出ている 有意確率

いいえ はい

20 21

中位 下降 23.1 33,3 0.130 上昇 23.1 44.4

13 27

上位 下降変化な し 28.71.64 34.65.46 0.768

10 父学歴と学力の相対的位置の変化の関係 (国語)

算数 (2003) 05年の変化 お父さんは大学を出ている 有意確率 いいえ

下位 変化な し上昇 80.20.00 63.36.64 0.241

20 22

中位 下降変化な し ・30.53.88 25.40.06 0.442 上昇 15.4 34.4

13 32

変化な し 十25卦 .. .;:.:;.62木

11 父学歴と学力の相対的位置の変化の関係 (数学)

国語 について見てみると,表12に明 らかなように,変化 な しグループと移動 したグルー プの間には,いずれにおいて も平均値の差は有意ではなかった。

それ'7に対 し数学では,2003年 に下位 グループだった者 については,家庭学習時間 と父 親の学歴 ともに,有意 な差が見 られなか った。 しか し,中位 グループでは,上昇移動 し た者の家庭学習時間が変化 な しの者 に比べて10%水準で有意に長い ことがわかる。 また, 上位 グループを見てみると,下降移動する者の家庭学習時間が変化 な しの者 よりも5% 準で有意 に短い。

86

(9)

藤田 /学力格差の経年変化

国語(2003) 05年の変化 N 平均値 有意確 率 下位 変化な し 38 70.3

上昇 9 103.3 0.220

中位 下降変化な し 1123 8210.65.2 0.509

上昇 15 130.0 0.515

上位 下降 16 131.3 0.746 12 家庭学習時間と相対的位置の変化の関係 (国語)

算数 (2003) 05年の変化 N 平均値 有意確率 下位 変化な し 35 78.0

上昇 14 115.7 0.157

中位 下降変化な し 2132 8858..46 0.908

13 家庭学習時間と相対的位置の変化の関係 (数学)

以上のように,個人を単位 として分析 した場合,学力の相対的位置が固定的な生徒が約 6割お り,上昇や下降移動する者が約4割いることがわかった。そ して,相対的位置が変 化 した りしなかった りするところにも,社会階層 と努力が影響 を及ぼ しているが,その影 響のあ りようは教科 によって異なっていた。先ほどと同様,教科 による違いを考慮する必 要があ りそ うである。

おわりに

以上,中学1年生時 と3年生時のパ ネル調査 によって,学力の規定要因を探 って きた。

その結果,第 1に,学力に対する社会階層の影響力が中学 1年次よ りも3年次において強 まっていること,第2に,小学校 までの内容が身についているか どうかが,中学卒業時点 での学力にも大 きな影響 を及ぼ していること,第3に,学力の規定構造 には科 目による違 いが見 られること,第4に,個人の学力の変化 に着 目すると,約6割が固定的,上昇 と下 降移動 はそれぞれ約2割程度であったこと,第5に,個人の学力の変化 にも社会階層が影 響 を及ぼ してお り,そこにも第6に,教科 による違いが見 られることが明 らかになった。

では,これ らのことか らは,今後の研究の展開に向けてどの ような示唆が得 られるだろ うか。 ここでは3点指摘 したい。

第 1に,個人の移動メカニズムの問題である。出発点のグループが下位,中位,上位の

(10)

いずれであったかによって,移動 に際 して異 なった要因が働いていることが うかがわれた。

それぞれの相対的位置による移動メカニズムの違いが検討 される必要があ りそうである。

2に,学力の可塑性 と時期の問題である 社会階層 などの要因によって学力が固定化 して しまう時期があるのか どうか,時期 を遅 らせた り,早めた りす る要因があるのか どう かなど,学力の規定要因を考える際には,時間や時期 とい う要因 も考慮する必要があるか

もしれない。

3に,国語 と数学 とい う教科の違いをどう考えるか とい う問題である 教科の性格の 問題 として必然的に生み出される違いなのか,それ とも,教科 に関する私たちのコンセプ トや教育方法 などの問題 として構築 される違いなのか,学力の規定要因を考える際に, 力」自体 を規定 している「教科」のあ りように も目を向ける必要があるのではないだろうか。

では,本研究の残 された課題 を指摘 して稿 を閉 じたい。第 1に,調査のサ ンプル数が少 ないため, もっと大 きなサ ンプルによって検討することである それ と関連 して第2に, ここで兄いだされたことが どの くらいの広が りをもつのか,事例研究にとどめずに探究 し てい くことである

学力テス トが さまざまなレベルで盛 んに行 われるようになった現在,明確 に目的をもっ て きちん とした分析 をしてい くことが望 まれる。

引用 ・参考文献】

苅谷剛彦他 学力低下」の実態』岩波書店,2002年。

苅谷剛彦 ・志水宏吉編 『学力の社会学岩波書店,2004年。

耳塚寛明 「中学校 における教 育選抜過程一成績の 自己評価 と進路展望 に関する追跡的研究」国立教育 研究所 『研究集録』No.13,昭和61。118頁。

耳塚寛明 ・苅谷剛彦演名陽子 ・庄健二 「/ト 中学校 における学校生活の変容過程 に関する継時的研究()

東京大学教育学部紀要』第23.1983,77110頁。

付記〕本研 究 は 日本学術振興会科学研 究費補助金 (課題番号16530543,代表者 :藤 田武志), お よび東京大学大学院教育学研究科基礎学力研究開発セ ンターによる研究成果の一部である。

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