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低経済成長下の賃金格差はどう変わるか(PDF:132KB)

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Academic year: 2021

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日本労働研究雑誌 1  賃金は,月給・賞与・福利厚生・退職給与を含 む報酬制度の一端。大まかにいえば,現金給与も 福利も退職給与も,よいところは総じてよい傾向 がある。さらに重要なことは,この報酬制度は人 事慣行の一角を成しているから,各企業の経営慣 行に依っていることだ。これも大まかに言えば, 日本的経営の人的資源管理システムが今後どのよ うに変容するかによって賃金格差が変わるという ことになる。ここでは数多くの呼称のある賃金体 系にはこだわらず,賃金の格差に焦点を当てた い。 ●日本的経営雇用慣行の特徴とは  日本的雇用慣行は,人的資源を重視しつつ共同 体志向が強いから人材の囲い込みが重要な戦略 だった。そのため,新卒採用・継続的訓練・内部 異動が盛んで,雇用保障や年功的慣行が定着し た。その成果としては,チームワークや職場規律 が尊重され,組織への一体感や協調的労使関係が 醸成された。そして高度経済成長下では,それが 労働生産性や品質の向上をもたらして企業の成長 に結び付いた。  ところが 1990 年代よりの経済低迷期に入ると, このような日本的雇用慣行の強みが弱点と変わ り,大きな問題となった。要は,グローバル化に 対応した競争力がないこと,雇用の囲い込みはコ スト高になること,激しい技術進歩に対応した人 材が育ち難いこと,集団主義が若い世代の価値観 に合わないことなどが指摘された。かたや雇用の リストラに直面し,賃金制度については年功制を 変えようという圧力が強くなった。 ●変わることと変わらないこと  日本の企業が強みと考えているものは変わり難 い。この 20 年の正規従業員の人事慣行について, 変えようとしていないのは何だろうか。変えたい と考えているのは何だろうか。 ①変えたくない日本的慣行は「新人採用と企業内 人材育成」 ②変えたいが変え難いややフラット化する程度の 「年功的昇進・定期昇給による年功的賃金」 ③変えたくないが背に腹は換えられない「雇用保障」 ●なぜ賃金制度は変わり難いのか  賃金の序列は企業内の秩序を反映し,在籍年数 を単位として受け継がれてゆく。企業横断的な基 準が弱い日本的慣行の下では,企業別のタテ型の 序列が強くなりがち。企業内賃金格差は過去の労 使合意の履歴を表している。このような制度の維 持が難しくなっても,いまのところ長期勤続層が 影響を受け,中堅層には至っていない。 ●正規従業員を補完する非正規労働力  現場では,正規従業員はいわば管理監督職であ り,実際の仕事は外部のプロや流動的労働力に頼 る仕組みができている。つまり,日本的雇用慣行 を守るためには,非正規労働力の活用が不可欠で ある。非正規労働力については年功性や雇用保障 は薄く,低成長下では非正規労働者の増加ととも に問題が大きくなっている。非正規労働の賃金は 差が大きく,社長よりも高給をとるプロもいる し,最低賃金に近いパートタイマーも多い。 ●低成長下の賃金格差は?  低成長で高齢化が進む場合,その賃金はどうな るか。まず,大企業では日本的雇用慣行が主要戦 力層で維持され,年功性はそれほど薄まらない。 他方,非正規労働力グループでは,賃金制度は柔 軟である。ニーズの高いプロ集団にはそれなりの 報酬が支払われるが,希少性の低い労働力は最低 賃金が一つの下支えとなるだろう。要するに,特 別の法的措置が取られない限り賃金格差を縮小す る方向に働く力は弱そうだ。 (さのようこ 嘉悦大学名誉学長)

提 言

低経済成長下の賃金格差はどう変わるか

佐野 陽子

参照

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