長野工業高等専門学校紀要第
3 6
号(2 0 0 2 ) 35
複合高分子絶縁体における電荷の蓄積および減衰特性
村 上 義 信 山 田 達 朗
C h a r a c t e r i s t i c s o f A c c u m u l a t i o n a n d D e c a y o f C h a r g e in the Multi‑layer Insulation of Polymer
Yoshinobu MURAKAMI and Tatsuro YAMADA
Thi S paperdeal swi t h t he s pac e c har ge ac c umul at i on and dec ay att he i nt er f ac e bet ween l ow・ denS i t y・ pol yet hyl ene( LDPE)andet hyl ene・ vi nyl ac et at ec opol ymer( EVA) .whenDCvo l t agewas appl i edt ot he
LDPE/EVAS heetS PeC i men8 ,pol ar it yof8 paC eC har g eatt hei nt er f ac eagr eedwi t hi tof EVA 8 i de・The8 PaC eC har geac c umul at edatt hei nt er f ac ?wasi n j ec t edi nLDPE・Asar es u
lt ,t he 8 paC eC har gequant i t yi nLDPEwasdec r e as e d.I twass ugges t edt hatt heS pac eC har gemovedf r om t hei nt er f ac et oLDPEwasneut r al i z e dbyhet er 08 paC eC har g ei nLDPE.I twasal s oC OnS i der edt hat 8 paC eC hangeatt hei nt er f ac ewoul d beS e par at ed i ti nj ec t ed f r om t hei nt er f ac eand i ton t he i nt e r f ac e.
キ ー ワー ド :複 合高分子 絶縁体 ,界面 ,空間電荷
1.は じ め に
高分子絶縁体に直流電圧を印加すると空間電荷が形 成され,内部電界が変盃 して絶縁破壊特性に影響を及 ぼす ことが知 られている
1 ) .
この現象は,ポ リエチ レ ン伊E)についてはよく研究されてお り,その原理の解 明は進みつつある.しかし,空間電荷測定時に使用さ れる半導電電極および半導電電極と絶縁体との界面が 空間電荷形成に与える影響については不明な点が多い.半導電層は電力ケーブルにおいて導体と絶縁体との間 に巻き付けられてお り,高電圧においてコロナ放電を 防止するとともに,耐電圧を上昇させる働きをしてい る.このように電力ケーブルにおいて半導電層は重要 な役割を果たしてお り,したがって,半導電電極と絶 縁体との界面が絶縁体中の空間電荷形成に与える影響 を考察することが重要になっている.
そ こで本論文では,半導電層のベース樹脂であるエ チ レン酢酸 ビニル共重合体
( E
v九)と低密度ポ リエチ レ ン( LDPE)
フイルムを熱敵着させた複合絶縁体を用・ 本研究は,平成
1 3
年度長野高専教育特別経費の助 成を受けて行われた日 電気工学科助手
=+ 電気工学科教授
原稿受付
20 02
年5
月1 7
日図 1 試 料 形状
いて,パルス静電応力(
PE
A)法によ り空間電荷分布の 時間変化を測定 し,複合絶縁体界面,LDPEおよびEVA
中に形成される空間電荷の蓄積および減衰特性 を考察 したので報告する.2.
試料および実験方法試 料 は 同一厚 さ
1 00L l m
のLDPE
フ イル ム とEVA(
酢酸 ビニル含有量 :1 0wt %)
フイルムを熱融着 し た ものを用 いた.熱融着 は,温度30
℃お よび圧 力50kg / c m 2
の条件で1
0分間熱プレスを行 った.熱融着 後,試料の両面には直径1 0mm
の金電極を真空蒸着 に よ り施 した.試料形状を図1
に示す.この試料に直流‑定電圧を印加 し
,pEA法によ り試
料内の空間電荷分布の時間変化を測定 した.また,直 流電圧印加後,両電極を接地 し,短絡状態での空電荷 分布の時間変化を測定 した.測定時間は電圧印加中お3 6
0 0 0 0 20 40 .6 ′0 4 つ▲ I t
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村上義信 ・山田達朗
1 0 0
bca t i o n
(lun)200 図
2 1 5 k V
印加1 0分後の空呪電荷分布
(LDPEまたはEVA陰極)
よび短絡状態共に
600
秒 とし,空間電荷分布は1 0
秒 おきに測定 した.印加電圧は1 5kV, 20kVおよび 30kV
とした.なお,印加電圧の極性は上部電極に一致させ た.3.
実験結果および考察3‑ 1
界面 に蓄積される電荷の極性図
2
にLI ) PE
側を陰極あるいはEVA
側を陰極とし, 直流1 5kV印加 1 0分後の空間電荷分布を示す.同図
よ りLDPE
が陰極の場合,界面には正極性の空間電荷 が形成されていることがわかる.また,EVA
が陰極の 場合,界面には負極性空間電荷が形成されていること がわかる.したがって,界面にはEVA
側極性の空間 電荷が形成されやすいと考え られる.EVA
側が陰極の場合,界面における負極性空間電荷 とLDPE
中の負極性空間電荷の境が明確でない.界面 の空間電荷の蓄積および減衰特性を把握するため,壁 間電荷分布の時間変化の測定ではLDPE
側を陰極 とした.
3‑2
空間電荷分布の時間変化図
3
に直流1 5kV印加中の空間電荷分布の時間変化
を示す.横軸に位置および縦軸に時間を表 してお り, 国中の数字は空間電荷密度を示 している.同図より界 面には正極性空間電荷,EVA
中には正極性空間電荷お よびLDPE
中には負極性空間電荷が形成されている.EVA
単体に直流電圧を印加すると陽極か ら正極性電 荷が注入されやすいこと2 )
や,正極性空間電荷が形成 されやすいこと3 )
が報告されている.したがって,罪 面の正極性空間電荷は陽極か ら注入された正極性電荷 が界面に蓄積 したものと考え られる.図2
においてLDPE
側が陰極の場合,EVA
中にほとんど空間電荷の0 0 0 0 0 0 0 0 5 4 3 2 (S
)9tm 1
1 0 0
Lo c a t i o n
(叩1)図3直流電圧
1 5 k V印加中の空間電荷の時間
変化00 00 00 00 5 4 3 2 (
S)atE TT1
100
L
ec
at i on (pm )
図4短絡状態での空間電荷
分 布の時間変化
(直流電圧 15kV印加 10分後に短絡)
形成がみられないのは,このことを指示 しているもの と思われる.
図
4
に直流1 5kV印加後,短絡状態での空間電荷分
布の時間変化を示す.界面に蓄積 していた正極性空間 電荷は時間と共に減衰 した.LDPE
中では短絡後,正 極性空間電荷が界面か らLDPE
中へ移動している.図5に直流 1 5kV印加 1 0
秒後と600
秒後の空間電荷分 布を示す.600秒後の界面ピークが 1 0秒後の界面 ピ
ークよ りLDPE
側へ移動 していることがわかる.した がって,電圧印加中に界面に蓄積された正極性空間電 荷 の一部はⅠ . DPE
中に移行 し,短絡状態 においてLDPE
中に形成された負極性空間電荷と中和すると考 え られる.3‑3
各電圧における界面電荷量の時間変化 図6
に各電圧における界面電荷量の時間変化を示す.横軸において
600
秒までは電圧印加中,以後は短絡状 態での界面電荷量を示す.電荷量は空間電荷分布を積 分することにより求めた.同図より各電圧において電複合高分子絶縁体における電荷の蓄積および減衰特性
3 7
o o o o
o20 40 60 80 00 ∠U 4 2 一 ■ l (
Et m D Tl
)^l !S U
aQ邑htq u a U邑 S
1 0 0 I . oc a t i on
(I⊥m)図
5 1 5 k V
印加1 0
秒後と6
00 秒後の空間電荷分 布 (IDPEまたは EVA陰極)0 00 6
42
01 b
po
Tx)
倉stT30 品 J q u
v o l t a g C 4 I l . I p l 3 i c 0 a k t i V o n や S h o r t F l i r c u i t
l l l l
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2
0k V ; l I l l k W
運筆
3 0 0 6 0 0 9 0 0 1 2 0 0
¶me( 〜 )
図6 各電圧における界面電荷量の時間変化 圧印加中は界面に正極性空間電荷が形成されている.
また,短絡状態においては印加電圧が高いほど減衰が 大きくなっている.これは,印加電圧が高いほど界面 に蓄積される電荷量が多 く,短絡 した場合,拡散によ って減衰するためと考 え られる.
3‑4
各電圧 におけるLDPE
中の電荷量の時間変 化図
7
に各電圧におけるLDPE
中の電荷量の時間変 化を示す.各電圧 において電圧印加 中はLDPE
中に負 極性空間電荷が形成されている.また,印加電圧30
kV
ではLDPE
中の電荷量の時間変化にピークがあら われた.これは図5
のように界面に蓄積された正極性 空間電荷の一部がu) PE
中へ移動 し,その界面近傍の 正極性空間電荷 とLDPE
中に形成 された負極性空間 電荷が中和 したためと考え られる. このピークが現れ る時間は電圧印加1 50
秒後であるが, これは図6
の30kV
印加において界面電荷量が飽和する時間 にほぼ 一致する.さらに,電圧30kV
よ り20kV
の方が蓄(u P1
01×) )( )
!StIa C r
払hq u
0 30 0 6 00 9 0 0 1 2 00 T
ime ( S )
図7 各電圧におけるIDPE中の電荷量の時間 変化
3
21 0 1 I
(
08.
OtX)倉stn Q a S J
qU0 3 0 0 6 00 9 0 0 1 2 0 0 Ti me ( S )
図
8
各電圧におけるEVA中の電荷星の時間 変化積 された電荷量は多 くなっているが
,20kV
の電圧で は界面か ら正極性空間電荷があま り移動せず,中和が 起きないため と考え られる.短絡後は
LDPE
中の電荷の極性が負か ら正へ変化 している.これは,電圧印加中に界面か らLDPE
中へ 移動 した正極性空間電荷 とLDPE
中の負極性空間電 荷が中和するが,界面近傍の正電荷員の方がLDPE
中の負電荷量よ り大きいためと考 え られる.
3‑ 5
各電圧にお けるEVA
中の電荷量の時間変化 図8に各電圧にお ける EⅥ
l中の電荷量の時間変化 を示す.各電圧にお いて電圧印加中はEVA
中に正極 性空電荷が形成 されている. また,LDPE
と同様にEVA
中の電荷量の時間変化 も印加電圧30kV
で ピーク をもっている.陽極よ り注入または発生 した正極性空 間電荷が界面に達す るまではEVA
中の電荷量は上昇 する。電圧が30kV
では高電界のため,図5
の電圧印 加600
秒後以上に界面に正極性空間電荷が蓄積 され,38
村上義信 ・山田達朗図9 界面および界面付近の電荷形成モデル
EV A
中の電荷量が減少す る と考 え られ る。穂積 らはLDPE侶V A
複合層 にお いてEⅥ
1側か らL DPE
側へパ ケ ッ ト状の電荷が移動す ることを報告 4)してお り,本 実験結果 と矛盾 しない. EV A
中において も短絡後 に正 電荷量が上昇 して いる. これ は,EVA
の方がLDP E
よ り体積抵抗率が低いため
5 )
,界面 に形成 されて いた 正電荷がEV A
中へ移動 したため と考 え られ る. ここ では図9
に示すよ うに,界面か らu) P E
中へ移動 した 正極性空間電荷 と界面 に存在する正極性空間電荷 を分 けて考えて いる.4.
ま と め半導電電 極 と絶縁体 との界面が絶縁体 中の空間電 荷形成 に与える影響を考察す るため,半導電層のベー ス樹脂である
EVA
と低密度ポ リエチ レンLDP E
フイ ルム を熱融着 させた複合絶縁体を用 いて,パルス静電 応力伊E
A)法 によ り空間電荷 の時間変化 を測定 した.主な結論は以下の通 り.
(1) LDPE侶Ⅴ
Å界面 に蓄積 され る空間電荷 の極性はEVA
側 の極性で ある.(2)
LDP E/ EVA
界面 に蓄積 され る正極性空間電荷の 一部は電圧印加 中にLDPE
側 に移動 し,電圧 印加 中お よび短絡状態でL DP E
中に形成 された負極性空間電 荷 車中和す る・(3)
LDP E
界面に蓄積 された正極性空間電荷は上記( 2)
の正極性空間電荷 と区別でき,回路 を短絡する と体 積抵抗率の低 いEV A
側 に移動す る.参 考 文 献
1) 李 保田 高田:
以 XI RE
中の架橋残液が空間電荷分 布形成 に及 ぼす影響",電気学会論文誌 A,Vol.112,.pp. 209‑ 21 4( 1 992)
2)Y. Suz uokiH. Mut oT. Mi z ut a miM. I e da:
山n er o l eof s pa c ec ha r gei nt hee l e c t r iC a l c onduc t i o nofe t hyl e nc ‑ Vi nyl a c et a t ec opoI y m e r
s" ,J o uma lofPhys i c sD:Ap pl i e dPhys i
cs,V