雑 俳 にお け る漢 字 使
用
状
況
︱
﹃ 青 木 賊
﹄ の 場 合 ( 二 )
︱
西譲二
はじめに
本稿は﹃成城文聾﹄第二二号(昭和六十年十月)において報告した「雑俳における漢字使用状況‑﹃膏木賊﹄の
場合‑」で掲げ得なかった次のものについて報告するものである。
一全‑振り仮名の与えられていない漢字およびその用例
71
振り仮名の与えられている場合の少ない漢字
漢字字種の使用度数
字昔の用法のみの漢字と字訓の用法のみの漢字
対象とした資料については可能な限りの分析を行うべきであるが'今回は右のものについて示すこととする。仮名遣
い、および字音語や仮名表記をとる語などについては別に譲ることとする。
前報告発表後も'ある一つの資料における使用漢字の総体を示す研究ならびに報告は'山田俊雄氏'山田貞雄氏'お#(I‑)よびエツコ・オバタ・ライマン氏により'着実に進められている。調査対象やその発表の方法等については多少の相異
はあるものの、比較することの可能な状況にあり'今後とも'このように結果が比べられるかたちで異なる資料の調査
が行われることが重要であると考えられる。
今回の報告にあたり'﹃青木賊﹄について細部にわたり再調査および漢字索引の見直しをした結果'さきに報告した
内容に変更を加える必要が生じたので、はじめに訂正をしておく。字種については、前報告で二二字としたが、こ
れを一一〇九字に'また総漢字数は五一二〇字を五一五三字に訂正する。振り仮名の与えられている漢字を四〇〇九字
としたが'これを四〇八五字に'また'振り仮名の与えられていない漢字を一二一字としたが'これを一〇六八字に
訂正する。従って、全体における振り仮名の与えられている漢字の割合'および振り仮名の与えられていない漢字の割
合は'前者を七八%から七九%へ'後者は二二%から二一%へそれぞれ訂正する。
一全‑振り仮名の与えられていない漢字およびその用例
全く振り仮名の与えられていない漢字について、以下掲げる。掲出にあたっては、まず該当する漢字を索引での掲出
順に配し、すぐ下に()で用例数を示した。また、用例そのものは索引での掲出法に従って用例数の下に示すことと注(2)した。これにより'どの漢字がどのような状況で振り仮名が与えられていないかということへの理解が深められるであ
ろう。全く振り仮名の与えられていない漢字は二七字である。
7 2
貫 合 晦 宇 匂 阿
( ( ( ( ( ( 2 1 1 1 1 1
l E 占 i 主 I J
ふ
‑波8
オ
8‑ふ13オ1一‑22オ5
大‑
日 4
6ウ 10
ク ワ イ
ーー 所
̲4 オ
2‑ ク ワ ン ー 五 ‑ 文
24 オ
7I ク ワ ン
百141
オ3九
(5 )
共
(‑ )
京
(5 )
計
(‑ )
蘇
(2 )
皇
(‑ )
侯
(2 )
七 (6 ) ク ー
ークーーク
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キ ャ ウ
ばかり
ケ ン ー
ー ワ ウ
そ
ろ
シ テ ー
ー シ チ I
‑百日25オ8源‑郎糾オ10
十八‑2ーウ3
7 3
かり子I45
ウ
3‑30オ
2 4
0オ346オ10 1伽 ウ 5 捕
オ6‑hノ
2 3 オ ー
ー 戒 2 2 オ
9‑ 九 郎
朗オ l
天智天‑10
ウ
3‑ 90 オ 3
93オ4
けん‑台
13
オ9
‑軒19 ウ 5
‑日4ウ2‑台入り95ウ9‑年M
オ9Jeく忠‑
兵衛27 オ 3
秩
(‑ )
戎
(‑ )
宿
(‑ )
鍋
(‑ )
八
(9 )
育(11)
ー シ ウ
ー‑えびす
セ
イーー ド ゥ
ハ
チ
ハ
チ ー
‑
ハ チー
ーハ
チ
ーハ
ツ ー
や ‑
ヒヤク
ヒ十クー 千‑柴
20 ウ
5初 ‑
30ウ
9‑書31ウ5
十二‑36ウ1
‑792
オ
9‑良兵衛96ウ10
ニーチ日93ウ8
五良‑36オ5
十
I
九21ウ386ウ8■▲‑古や9オ
5‑古屋警3‑重太夫堺警1‑糾ウ
5糾ウ
5まい‑ヅ110オ1
0 ‑ 人 1 首
30ウ8‑貫41オ
3‑度参りM オ
874
‑ヒ十クー五‑両‑
オ
6九 ‑
目25
オ8‑ヒヤク
五 ‑
80ウ
l‑ほ‑八‑や
9オ
5八‑屋37ウ3せうi ) ゆ う し や う か う
7 1
‑肖 ‑
に24ウ 1
0‑出来32ウ5
‑自 由 ㍊
ウ8‑義40ウ
5‑時なり81オーー 浮 90
ウ4‑ 孝 96
オ2あく‑ ビ サ ウ ー
悪七
‑衛27オ3か
言ヲーと20ウ3乗せた‑29ウ5お立チtと朗ウ7もふIイナ94ウ4用
(8 ) ヨ ウ
ー9オ
211ウ
117ウ439 オ 10
45オ5ヨ ウ ー
ー意8 ウ
1むな‑ ヨ ウ
胸ナ第 ‑ 3 8 ウ
7もちゐる‑ひたS3オ4
両
(3 ) リ ヤ ウ
ーー方に2
0ウ1‑川口47オ6‑ リ ヤ ウ 五
百‑ 7 オ 6 あね
ゑい郎(5 ) ‑ ラ ウ
姉女‑ 12 ウ 6
栄五‑16オ
ー源九‑糾オ1.台 (6 )
さま‑97オ1
′▲‑ さ
ま婆‑92オ3t さ ん と ゝ
‑16オ
4 おいはぎかゝ‑1ーウ
2朗オ2追剥‑49ウ10注(3)この二七字は、山田俊雄氏の﹃新木賊﹄の調査での字数である四三字に比べるとかなり少ない.﹃新木賊﹄と宴日木賊﹄
とで、共通して全‑振り仮名の与えられていない漢字は'
京七百不兵欺両郎
である。
また、山田俊雄氏が全く仮名の与えられていない漢字について指摘された性質も考慮に入れねばならない。その性質
とは次の五つである。
Hいはゆる漢数字「三・七・廿・百・六」を含む。
口「也・欺」のやうなもと漢文もし‑は書下しの漢文訓読に由来する助字。
臼「京・江・淀・伏」のやうに地名にかかはる用字。
㈲「衛・左・兵」のやうにもと官職名で、後に人名に用ゐられた語にかかはる用字。
㈲「不」のやうな漢語の語構成にあたって否定の意を付加する接頭辞。
この指摘は'﹃青木賊﹄においてもあてはめて考えられるものであろう。
なお'「妄」は接尾辞として右引用の性質に加えうるかとも考えられるが、「様」の方には振り仮名が与えられてい注(4)るなど、さらに調査すべきものとしてここでの判断はさしひかえる。また'「用」はこの五つの性質にあてはまらない
ものである。
二振り仮名の与えられている場合の少ない漢字
上記の全く振り仮名の与えられていない漢字を考える場合に考慮し吃‑てはならないのは'振り仮名の与えられてい
る場合が少ない漢字についてである。これら振り仮名の与えられる場合の少ない漢字の中には全く振り仮名の与えられ
ていないものに準じて考え得るものも含まれる可能性があるからであり、以下これらの漢字を掲げる。ただし、「振り
仮名の与えられている場合が少ない」というのはあいまいであるので'ここでは、用例のうち半数以上に振り仮名の与
えられていない漢字について取り上げることとする。掲出にあたっては'該当する漢字を索引順に配し'その漢字の全
用例中に占める振り仮名の与えられていない場合の用例数を分数で示す。
7 6
医
(2
一4 )
玉 (2
T4 )
事(1
3
一25
)旦
(2
一4 )
入(2
3
一43
)六 (4 一 6 )
1(18一2)見(S3178)
舟
(5
T7 )
中(1
0
一15
)女
(2
4一37) 香(5 一 6 )
戸(1
0
一20
)十(10一
1
1)
町
(7
一14 )
文
(8
一12
) 引(9
一12)五
(9
一10)也(3
5
一66)長
(6
一13)返
(3
一5 )
衛(4 一5 )
口(1
6
一27
)上(21一35)
帳
(4
一8 )
戻(1
2
一18
) 屋(22一30)令(16一26)
人(30一51)
弟
(2
一3 )
茂
(2 一 3 )
火(3 一 6
)今
(6
一12
)世
(4 一 8 )
田
(3 一5 )
也(1
9
一20
) 月(8
一13)≡(1
1
一15)折
(4
[LLB )
皮
(6
一10
)秦
(2
一3 )
負(2 一 4 )
兄(2 一 4 )
山(1
2
一18
)四(2 一 4 )
太
(w
l8 )
大(13
[E)那
(ヮ
こ4 )
二(1
1一15)又(ll1
3
)礼(ゥ
エ3 )
また'使用度数が二回で、その一方が振り仮名の与えられていない場合であるという漢字は'次に示す一三字である。
意加竿慶虎講春順
少
勢徳坂悌右に掲げた中で'振り仮名の与えられている場合が一例のみというものは'使用度数が二回でその中の一例が振り仮名
の与えられていない漢字の場合と、使用度数が三回でその中の二例が振り仮名の与えられていない漢字の場合とを使用
度数が少ないものとして除けば'次の六字である。
壱衛
五
十折也また'振り仮名の与えられている場合が二例のみというものは'使用度数が四回でその中の二例が振り仮名の与えられ
7 7
ていない漢字の場合をやはり使用度数が少ないとの理由で除‑と次の六字である。
舟太田返又六
次にこの「壱」以下「六」までの一二字について'その使用状況を略述する。「壱」は字音の例の「イチ
1
」と熟字訓として処理した「ひとり」の例のうち'振り仮名の与えられているのはひとり
「壱人‑」(28ウ
8 )
のみである。振り仮名の与えられていないもので「ひとり」と読み得る例は三例(39オ1 45
オ
9 97
オ5 )
であり、その他の二例(9
ウ9
43オ6 )
は数量にかかわる例である。▲ じ
「衛」は「ヱー」「‑ヱー 」
「‑ヱ」の字音の用法のみであるが'振り仮名の与えられているのは「 衛 士 」
(37オ5 )
のみである。振り仮名の与えられていない他の四例(25オ1027オ
3
47オ7
96ウ10)はすべて人名にかかわる例である。いつつさ「五」は字音の「ゴ」「ゴー
」
「‑ゴー」と字訓の「いつ」のうち'振り仮名が与えられているのは「五ツ月」(16
ウ10)のみである。振り仮名の与えられていない他の例は数量にかかわる例
(7
オ68 ウ 8 1
2オ
824オ7 4 7
オ9
80ウ101
‑1オ9 )
と人名にかかわる例(16オ136オ5 )
である。「
十 」 は
字音の「
ジフー」
「‑ジフ1」「‑ジフ」と字訓の「‑そ‑」のうち'振り仮名の与えられているのは「大みそか
三十日
」
(27ウ10)のみである。振り仮名の与えられていない一〇例(7
オ68 ウ 8
21ウ336ウ437ウ1038
オ
1
084
オ886ウ894 オ
1097オ6 )
は数量にかかわる例であり'このうち(84
オ8 )
と(94オ10)の二例は「大
三十日」の字面である。
7 8
「折」は「をる」「をり
」
「をり‑ 」
「をれ‑」の字訓の用法のみであるが'振り仮名の与えられているのは「(よさがお る
いかげん)姉のを着せて我折母」(29オ7 )
のみである。振り仮名の与えられていない他の四例(23ウ1
23ウ1024オ
5
33オ10)はすべて[リ」および「レ」というかたちで送り仮名がつけられている。I)ゝろ 上 め げ
こな り む
I1)げ こ
「也」はすべて字訓の「なり」の用法であるが、振り仮名の与えられているのは「( 心 は
ど)嫁 も 下
戸也
聾も下
戸」(82オ8 )
のみである。振り仮名の与えられていないのは一九例(9
ウ6
10ウ8
13オ113オ1019オ3
19オ819オ
8
21オ425ウ6
26オ228ウ7
33オ240ウ6 4 3
オ3
44オ5
88オ
1097ウ61‑1ウ9はウ10)である。
ふね
「
舟」は「ふね」
「‑ぶね」の字訓の用法のみであるが'振り仮名の与えられている二例は、「はしり舟」(83オ10)こはふねと「
木の葉丹」(88
ウ7 )
である。振り仮名の与えられていないものは「舟」(13ウ8 8
7オ5 )
と「ふしみ舟」(
10ウ
8 )
「わたし舟」(17
オ8
26ウ10)の五例である。た い こ
「太」は字音の「‑タ」「‑ダー」「タイー」と字訓の「ふとー」のうち'振り仮名の与えられている二例は「 太 鼓 」
ふとさせるI)まは(㍑ウ10)と「 太 煙 筒 」
(15ウ5 )
である。振り仮名の与えられていない例は'「駒太夫場」(1
1オ9 )
、「春太夫」∫‑(21ウ3 )
、「八重太夫場」(31
オ4 )
、および人名での「長太」(86オ1
93ウ7
mオ8 )
である。チ,eた