山 梨肺 癌 研 究 会 会 誌23巻2010
当院 にお けるエル ロチニブの使 用状況
山梨県立中央病院
内科 見高 恵子 深澤
一裕 宮下
義啓
要 旨:非 小 細 胞 肺 癌 に 対 す る2剤 目 のEGFR-TKI(Epidermal Growth Factor Receptor-Tyrosine Kinase Inhibitor)と して認 可 され た エ ル ロチ ニ ブ の効 果 お よ び 副 作 用 につ い て は 、 ゲ フ ィチ ニ ブ との 比 較 ・使 い 分 け が 実 地 医療 の 場 面 で しば しば 議 論 され て い る。 今 後EGFR遺 伝 子 変 異 の 有 無 が 、 両 薬 剤 の選 択 に おい て重 要 とな る こ とが 予想 され て い る。当院 で は エ ル ロチ ニ ブ発 売 開 始 の07年12月 以 降09年9 月 ま で15例(腺 癌11例 、 扁 平 上 皮 癌2例 、 そ の 他2例)に エ ル ロチ ニ ブ を使 用 し た 。 副 作 用 の 出現 頻 度 は 皮 疹 と下痢 が 多 くみ られ た が 、 ほ ぼ全 国 全 例 調 査 の も の と 同 程 度 で あ った 。15例 の うち11例 に先 行 して ゲ フ ィチ ニ ブ の使 用 が あ った が 、 ゲ フ ィ チ ニ ブ の 効 果 とエ ル ロチ ニ ブ の効 果 の 関 連 は 様 々 で あ り、今 後 とも検 討が必要 と思 わ れ た 。 キ ー ワ ー ド: 癌 エ ル ロ チ ニ ブ 、 ゲ フ ィ チ ニ ブ 、EGFR-TKI 、EGFR遺 伝 子 変 異 、 腺 は じめ に ア ジ ア に お け る化 学 療 法 未 治 療 、非/ 軽 喫 煙 歴 、腺 癌 の非 小 細 胞 肺 癌 患者 に対 し、ゲ フ ィチ ニ ブ投 与 群 が カル ボ プ ラチ ン/パ ク リ タキセ ル 併 用 群 に比 し、優 れ た有 効 性 、QOLの 改 善 、 同 等 の 症 状 の改 善 、良好 な 忍 容 性 を持 つ こ と を示 し た 第 皿 相 試 験(MASS試 験)1)の 結 果 を う け て 、 非 小 細 胞 肺 癌 に お け る EGFR・TK【 の 重 要 性 が 注 目 を あび てい る。エ ル ロチ ニ ブ は 本 邦 で はlstlineと して の 使 用 が認 め られ て い な い もの の、 07年12.月 の発 売 以 降 、実 地 臨床 の場 で の 症 例 数 の 蓄 積 が 各 施 設 か ら報 告 され て い る。 今 後2つ のEGFR・TKIを 使 用 す る例 も増 え る と思 わ れ 、当院 に て使 用 した15例 の現 状 を報 告 す る。 対 象 と方 法 07年12月 か ら09年9月 ま で 当院 に て 行 っ た 非 小 細 胞 肺 癌 の 化 学 療 法 の う ち 、 エ ル ロ チ ニ ブ を 使 用 し た15例 に つ い て レ トロ ス ペ ク テ ィ ブ に 検 討 した 。 結 果 患 者 背 景 を 表1に 示 す 。ゲ フ ィ チ ニ ブ の 先 行 使 用 例 が11例 あ り、 全 例 腺 癌 で あ っ た 。ゲ フ ィ チ ニ ブ の 服 薬 期 間 は 平 均 273.4日(範 囲;15∼731日)に 対 し、 エ ル ロ チ ニ ブ は 平 均98 .7日(範 囲;5 ∼288目)で あ り、 ゲ フ ィ チ ニ ブ 使 用 例 に つ い て は 、ゲ フ ィ チ ニ ブ 終 了 か ら エ ル ロ チ ニ ブ 開 始 ま で 平 均188日(範 囲;1 ∼831日)で あ っ た。 有 害 事 象 の 発 現 を 表2に 示 す 。 第2回 特 定 使 用 成 績 調 査 (全 例 調 査)中 間 解 析 結 果2)と 同 様 に 、 皮 疹 と下 痢 の 出 現 が 多 く み られ た が 、減 量 な どで 対 応 可 能 で あ り、重 篤 な も の の 出 現 は 見 られ な か っ た 。最 大 治 療 効 果 は 、 CRO例 、PR4例 、SD5例 、PD6例 で 奏 功 率(CR+PR)26.6%、 病 勢 コ ン ト ロ ー ル 率(CR+PR+SD)60% 、 一6一
平 成22年4月1日 PFS(progression丘eesuMvaD平 均 値 72.5日(範 囲;12∼288日)で あ っ た 。 ゲ フ ィ チ ニ ブ の 前 使 用 の あ る 例 に お い て 、ゲ フ ィ チ ニ ブ の 効 果 は 表3に 示 す と お りで あ り、ゲ フ ィ チ ニ ブ に 対 す る エ ル ロ チ ニ ブ の 効 果 は 様 々 で あ っ た 。今 回 の 解 析 で は 、非 腺 癌 患 者4例 の 治 療 効 果 は す べ てPDで あ っ た 。 以 下 に ゲ フ ィ チ ニ ブ と エ ル ロ チ ニ ブ を 使 用 した 症 例 を 示 す 。 表1患 者 背 景(n=15) 表3ゲ フ ィチ ニ ブ 前 投 与 例 の 効 果 ゲ フ ィチ ニ ブ の効 果 二ニ エ ブ ル ロ チ PR SD PD PR 2 1 1 SD 3 PD 3 1 PR:pa】ndalresponse SD:stabledisease PD:progressivedisease 性 別(男 女) (619)
年齢中央値(範 囲)
64.2(56・73) 喫 煙 歴((mrletgtne)(0/312)
組 織(腺 偏,他)(11/2/2)
前 治 療(1,2t3似 上)(2!2/3/8)
PS(0/1侶13)(5/513/2)
病 期(1皿BIVD(2113)
EGFR遺 伝 子 変 異(3*13/9) (陽 ノ陰 ノ未 測 定)*耐 性 変 異1例表2有
害事象
症 例1 60歳 男 性 、 事 務 職 。08年9月 右 下 葉 原 発 腺 癌 、cT4N3MlLYM、stage]Vと 診 断 され た 。 胸 水 よ りEGFR遺 伝 子 変 異 陽 性(exon19L747・P753ddinesS) で あ っ た た め 、1・tlineよ りゲ フ ィ チ ニ ブ250mg/日 を 使 用 す る も28日 でPD 判 定 で あ っ た 。細 胞 障 害 性 の 第3世 代 抗 が ん 剤 を 使 用 す る も 奏 功 せ ず 、09年3 月 意 識 障 害 が 出 現 し、癌 性 髄 膜 炎 、多 発 脳 転 移 を 併 発 した 。4thlineと し て エ ル ロ チ ニ ブ150mg/日 を 開 始 した と こ ろ 奏 功 し、歩 行 可 能 ま で 回 復 した 。(図1、 2) grade 発 現 率 副 作 用 123(%)報 告(%)皮疹
561#180.065.45下痢
121#226.621.96肝障害
11 13.36.08食欲低下
1 6.63.97その他
(結膜炎)
1u26.61.11 #1中 止#2減 量 全 例 調 査 第2回 中 間解 析 結 果 との 比 較 図1胸 部HRCT(症 例1) 左:エ ル ロ チ ニ ブ 開 始 前 右:開 始1ヶ 月 後 一7一山梨 肺 癌研 究 会 会誌23巻2010 図2頭 部 造影MRI(症 例2) 左:エ ル ロチ ニ ブ 開始 前 右:開 始2ヶ 月 後 症 例2 70歳 女 性 、 主 婦 。06年6月 右 中 葉 原 発 腺 癌 、cT3N2MO、stagel皿Aと 診 断 され た 。 臨 床 背 景 よ り1・t■neと し て ゲ フ ィ チ ニ ブ250mgを 選 択 しPRと な っ た が 、92日 でPD判 定 と な っ た 。 各 種 細 胞 障 害 性 抗 が ん 剤 を そ の 後 使 用 し た が 、09年3月 に 癌 性 胸 膜 炎 と な り 、 胸 水 よ りEGFR遺 伝 子 変 異 陽 性(exon21 L858R)で あ っ た た め 、5thlineと して エ ル ロ チ ニ ブ を 開 始 した と こ ろ 奏 功 し、 84日 間 継 続 した(図3)。 そ の 後PD判 定 と な っ た が 、本 例 は ゲ フ ィ チ ニ ブ の 再 投 与 を 行 っ た と こ ろ 、再 度 有 効 で あ っ た (図4)。 図3胸 部 単純X線(症 例2) 左:エ ル ロチ ニ ブ 開始 前 右:開 始1ヶ 月 後 図4胸 部 単 純X線(症 例2) 左:ゲ フ ィ チ ニ ブ 再 投 与 前 右:再 投 与1ヶ 月 後 考 察 エル ロチ ニ ブ は イ レ ッサ と比 較 し、最 大 耐 用 量 が そ の ま ま 推 奨 量 と して 用 い られ た観 点 か ら、毒 性 の 強 さが 懸念 され て い る が3)4)5)、 今 回 の使 用 例 に お い て は 問質 性肺 炎 の 出 現 はな く、ま た 減 量 に て継 続 可能 な 症 例 も あ った 。ゲ フ ィチ ニ ブ に お い て はPS不 良患 者 に お け る 救 済 初 回 治 療 で の 報 告 が あ り6)、今 後P S不 良 患 者 にお い て もエ ル ロ チ ニ ブ が 安 全 に使 用 可 能 で あ る か 検 討 が 必 要 で あ る。また 、今 回 の 解析 で は 非 腺 癌 患 者 で の 有 効 例 が な く、組 織 型 が 薬 剤 選 択 に 重 要 な 要 素 とな っ て い る現 在 で は 、症 例 数 を増 や して の 解 析 が必 要 と思 わ れ た。 さ らに、ゲ フ ィチ ニ ブ使 用 例 に お け るエ ル ロチ ニブ の効 果 も様 々 で あ り、今 後 多 く症 例 の解 析 が 必 要 と考 えた 。現在 当院 で はEGFR遺 伝 子 変 異 の結 果 を 参 照 し EGFR・TK【 の 使 用 に あ た っ て い る 。 EGFR遺 伝 子 変 異 の 有 無 お よび 組 織 型 に よる薬 剤 選 択 が 、非 小 細 胞 肺 癌 患 者 に お け る 化 学 療 法 に お い て 重 要 に な る と 思 われ る。 結 語 当院 に て15例 に エル ロチ ニ ブ を使 用 した 状 況 を報 告 した。ゲ フ ィチ ニ ブ 先 行 使 用 例 が11例 あ り、 今 後 多 くの症 例 の 検 討 が 必 要 と考 えた 。 一8一
平 成22年4月1日
引用文献
1) Mok TS, Wu YL, Thongprasert
S,
et
al.
Gefitinib
or
Carboplatin-Paclitaxel
in pulmonary
adenocarcinoma.
N Engl J Med 2009;
361: 947-957.
2)中 外 製 薬 タル セ バ 錠 特 定使 用 成 績 調 査(全 例 調 査)中 間 解析 結 果 の報 告
(第2回)