地表面の被覆の地温に及ぼす影響について
松原 茂*・武政剛弘*.薦田広章*
The I n f l u e n c e o f C i r c u l a r S h a d e o n B a r e G r o u n d S u r f a c e o n S o i 1 T e m p e r a t u r e
by
S i g e r u MA TSUBARA
(Department o f C i v i l E n g i n e e r i n g )
T a k e h i r o T AKEMASA
( D e p a r t m e n t o f C i v i l E n g i n e e r i n g )
H i r o a k i KOMODA
( D e p a r t m e n t o f C i v i l E n g i n e e r i n g )
The t e m p e r a t u r e v a r i a t i o n i n t h e s o i l i s d i f f e r e n t a c c o r d i n g t o t h e v a r i o u s boundary c o n d i t i o n s on t h e s o i l s u r f a c e such a s a r t i f i c a l l y mulched s o i l i n t h e a g r i c u 1 t u r e .
Being c a u s e d b y . t h e t e r r e s t r i a l t e m p e r a t u r e , t h e temperature i n t h e a t m o s p h e r i c l a y e r n e a r t h e ground i s d i f f e r e n t c o r r e s p o n d i n g t o t h e s u r f a c e c o n d i t i o n .
I n t h i s p a p e r we w i l l i n t r o d u c e a mathematical method t o t r e a t t h e temperature v a r i a t i o n i n t h e s o i l under mulched s o i l .
1 .
まえがき地表面付近の地温変動は,植生とか人工物などの存 在による地表面被覆の状況に応じて著しく異なる.そ れに対応して接地気層内の気温の受ける影響も異なる.
このような気温環境の変化は都市計画の面で生活空聞 における環境問題を考える時に重要である.近年,都 市の巨大化とともに都市はコンクリートで覆われ地表 面の条件は変貌し,都市における気温は都市周辺の緑 地帯の多い農村部とは四季を通じて気温変化に顕著な 差異を生じている.また都市内部に限ってみても公園 などの緑地帯が存在する場所の周辺では他の部分に比
昭和田年
1 0
月1
日受理*長崎大学工学部土木工学科
して快適な気象環境を形成している.乙れは植生とか 人工的な建造物の存在の有無が地温変化に著しい影響 を与え,それに応じて接地気層内の気温も変化し,気 象環境の変化を惹起しているためである.一方農業面 でもマJレチ栽培などにより地温を昇げ有利な農業を展 開している.本論文ではとうした環境並びに農業問題 を解決する第一歩として,地面被覆の地温lと及ぼす影 響を解析した.その際,事柄を単純化して円形の被覆 が地表面に存在するときの地中温度を支配する徴分方 程式を導入し,乙れを数理的に取扱う方法の一端を示
した.
2.理論的考察
Fig.一1に示すように地表面に於いて半径αなる円 領域が被覆されている状況を考える.地表面の円領域 の中心を原点とする円筒座標系を考え鉛直下方に9軸,
これに垂直にγ軸をとる.任意の点の温度をθとす
るとこれは円周方向には変化がないとしてγ,9そし
て時間 の関数とする.さらにκを熱拡散係数としてこれは土壌中一定であるとすると土壌内部に於ける 熱伝導の方程式として次式を得る.
Shade
旨
、, l
l soil surface
一『一r
の式であり,よく知られた解で次式で与えられる.
角一一]振@一ゾ嘉)(5)
一方りについては
寄一・(∂2⑳ 1 ∂⑳ ∂2㊨∂7・+7∂。+∂9・)
珊一㎜一一
Ro
aψ
ZFig.1Model of soil surface condition.
誓一・(∂2θ 1 ∂θ ∂2θ∂。・+7∂。+∂9・) (・)
地表面での被覆した円領域と他の領域における温度変 化は太陽による日変化を考え,周期(1日)は二つの 領域では同じであるけれど温度振巾は異なるとして境 界条件を次のように与える.
=∵1瓢1謝撫1建1;}②
但し,σ,Tは角振動数,周期(1日)でσ=2π/T である.そしてθα+T)=θ(のである.(1}の解を(2)
の境界条件を用いて求めるために,今θ=θi+のとし てθ1,り両者で②の境界条件を満足するように工夫
して以下のような表現を行なって解法を行なう.
霧L影 (3)
1:蹴1徽∴∵}@》
これより得られる解は被覆の無い時の一次元の熱伝導
:1∵:響∵緩;}
を満足する解を求めればよい.
である.
は次式のようになる.
.σ⑳ ∂2の 1 ∂り ∂2り
zτ「癖「+7万一+葎
ここでさらにり=R(γ)・Z(9)とおくと⑧は
142.R 1 4R 142Z 。σ
(6}
(7)
但し(フ=一(・4一。8)
これを解くためにまずりαθ漏と考えれば⑥
(8}
π一戸「+一盃一『=一7涙+zア=一α2(9)
となる.αは或る任意常数である.(9}においてRに 関しては
42R
1 4R
沸一+7薪7+α2R−0 (1①
となり,この式の一般解はBessel函数を用いて R=D1/6(αγ)+D2yる(αγ) α1)
を得る.これに(7}の境界条件γ=0で⑳は有限の値 を取ることを考慮に入れるとα①の特解として次式を得
る.
R=D1/6(αア) 働 ここにD1は任意常数である.次にZに関しては⑨
より
窪一(α2+ゴ亘 κ)z
となり,
考慮すると㈹の特解として次式を得る.
z=θ一γ9
⑬ これに9=・・で㊨は有限な値をもつ条件を
ここにγイ創睾
である.さらに び
α』ρ2C・・ρ・一「一ρ2 sinψ とおくと
び
γ2;α2+ゴー=ρ2(C・Sρ+ゴsinの=ρ2θ砂
κ
従って
囮
⑮
α6)
・一 T+穏一二一ρ(…珍+∫・i・弩)αの
となる.ここにρ,ψは⑯より次式でもって与えられ
る.
壇糾÷ ・・np煮 ⑬
結局りの特別解の一つは
り一ゐ(α・)・一㌦・・ ㈲
であるから,これに働を代入して実数部分を取ると次
式を得る.酬・・)・…碕…(・卜ρ・・i・弩)⑳
次に
ヌ1;1=『(常数):;;劣} (21)
なる関数をBessel関数を用いて表現するとF(γ)は Fourier−Besse1積分によって
OQ α
Fω一 轣B∫。F(λ)ゐ@)ゐ(・λ)・一λ
の一K∫。∫。ゐ@)ゐ(αλ)・一λ⑳
と表わされる.従ってこの問題のすべての条件を満足 する解としては次式で与えられる.
ド
・一e
轣B綱評唖…@一評論)・4・α
・∫ ノ6(αλ) λ 4λ (23)
0
ここで(1①,(12から .
ゐ(・ト÷÷÷(・警γ))(2の
の関係が得られるから
ゆ ゆ
∫。ゐ(αλ)λ4λ一一幽∫。法
ゆ =一ゐ(αα)
α
( 賜(αλλ 4λ))4λ
㈱
となる.従って飼を⑳に用いるとりは次式となる.
り
曲∫!唖蜘卜蜘弩)
●ノ6(αγ)み(αα) 4α (26)
さてこの解の意味を読み取りやすくするために㈱を次 の形に置くと
り=PCOSσ +ρslnσ 伽
1),ρは次式でもって表現される.
や
P≡c・
轣B・ 唖蝉・鰐)・ノ6(αγ)五(αの4α ゼ
ρ一α∫!唖曲( .ψρgsm万)
・ノ6(αγ)ゐ「(αα)4α
この(劉の一般的な積分は簡単ではない.
の処の値を求めることとする.
㈱
そこで7・=0
γ=0の時にはゐ(αγ)=ゐ(0)・=1であるから被覆の中心点下の温度を与える 式においてP,ρは
り
P一伽∫!唖…(ρ・・i・署)綱4・
㈱
○◎ ψ
0
となる.尚この積分も直ちに行なうことは簡単ではな く近似解を求めることにする.今もしσ/κが非常に 小なる値を有するものとすれば
臨:罷一・} ③①
ρ一C・∫・ 唖・i・( . 〜oρ2Sln万)』( )4・
となる.この状態はσ→0又はκ→。。の時で定常状 態を仮定したことにほかならない.この時のP,ρを それぞれP ,ρ!で示すと第一近似としては
一∫ン胸ぬ一。潭穿
ρ 一鞭∫セ㎞(・)綱姻
従って(29)でP=P ,ρ一σとして
匹。 bシ+ω∫1〔・堪畦
・C・・( .〜oρgsln万)一・『つみ(・・)4・
ア
α一伽∫!唖轍鰐)綱4・
61)
(認)
を得る.つまり(29)は(31>の値とその補正項よりなると考
えたのである.この補正項も積分困難であるから,お よその概念を得るために数値計算を行なってみる.
5.数値計算
α=10cm,周期=1日即ちσ=2π/60×60×24,
κ=5×10辱3cm2/sec, C=2.5。Cとして9=10cm,
20cm,50cmの処の温度変化の振巾の円内外領域間
の相違を計算する.まず第一近似の圃のPノを各層に
おいて求めると次の如くなる.
三iiil llll羅講i}一謝
次に圃における補正項について9こ10cmでの値を計 算する.今計算を実行するに被積分項をαの関数と
して
タ
ξ(・)一〔・二μcos7…(飼・晋)
一・囎〕五(・・)
り
η(・)一〔・ 万・i・ψ・・i・号)〕五( )
圃
これのαの変化に対するξ(α),η(α)の値を図示す
るとFig.一2のようになる.これによると両者は共に
ξ
0
O
IO.08
一〇.Ol O.07
一〇.02 0.06
一〇.03 0.05
一〇.04 0.04
一〇.05 0.03
一〇.06 0.02
一〇.07 0.Ol
一〇。08 0.0
0.5σ
置覧
1
亀
竃
亀
監
、
竃
1
亀
竃 亀
1 1 覧
1 竃
1
重
1
覧 1 艦 1 、 薯 覧 覧 乳 1
、
、
、
1
、
、
、
、
、
1.OO ユ.50 2.00 2.50 10α
__L_____L_一_一一L一一一一一Lニ==二
一一 一 一
1 ! ! ノ 1
!ノ
1 1
ノ ノ
!
ξ(α)
ノ ノ
!
, ノ
ノ ノ
1
ノ
、 /
、 !
η(α)
! ノ
! ノ
η O.0 0,50 1.00 1.50 2.00 2.50 Fig.2 Values ofη(α)andξ(α)as a function ofαin depth of 10 cm.
10α
α=0.35ぐらいの値でほとんど零に収束している.そ こで図から両者の面積を求めてみると
1}1:::1:=1:1::1}岡
の値を得る.従って9=10cmにおけるりの値を求 めると
り=C〔(0.293−0.084)cos σ 十〇.1245sinσ 〕 =0.243() cos (σ 十329013ノ)
=0.61cos (σ 一f−329013ノ) (36)
結局地表面にて円形被覆を施したとき,その中心下10
cmの地中温度は被覆なき場合に比し㈱の値に相当する影響を受けている.しかしながら大体の形勢は第一 近似で見当がつくので,円被覆の中心下で被覆の影響
が0.1。Cになる深さ乃をG1)より計算:してみるとノ・+(会ゾ髪
一畢
ゾ・+(会ド
乃
24 これより一2「=一V『÷3・43となりα=10cmとすると乃一34.3cmとなる.
4.結び
地表面に円形被覆がある場合の地中温度の受ける影 響を算出する方程式を導いた.この解は複雑で実用に 供するには面倒な数値計算を行なう必要がある.尚こ
の式の解は地中温度のみならず一般のAustauschの問題など,環境問題の解決に利用される可能性が多い と思われる.今後は種々の境界条件のもとで野外観測 を行なうことにより,この式の有用性を確かめてゆく
所存である.5.参考文献
1)G.N. Watson:Theory of Bessel Function
P.453Cambride at the University Press 19662) フランク・ボウマン著平野鉄太郎訳:ベッセル
函数入門p.123日新出版3)寺沢寛一:数学概論p.492岩波書店