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カルドア分配モデルに関する若干の考察

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(1)

カルドア分配モデルに関する若干の考察 1

カルドア分配モデルに関する若干の考察

児玉元平

1

所得分配の限界生産力理論のもつ限界を指摘し,ケインズ的な分析路線の 上で新な巨視的分配理論を最初に展開した人はボールデイングである。ボー ルデイングによれば,ケインズ経済学−ケインズ派の経済学ではない−

の弱点の一つは,その雇用理論とつり合いのとれた所得分配の巨視的経済理 論をあたえなかったということである。この弱点を補強することによってボ ールデイングはきわめて独創的な分配理論を提示したのであった。しかし,

そのわりに学界であまり注目されずに終ったのは,彼の理論の展開形式が簡 潔性に欠き,また使用されたバランスシート的手法についてもいろいろな難 点が含まれていたという点に一半の理由があったとも考えてよい。しかし,

経済現象の巨視的逆説を強調し,所得分配のWidow′s Cruse効果を明示 した点で,所謂所得分配理論のWidow′s Cruseの先駆者と看倣さるべき 人である。ただ,彼の分析モデルは彼自身も指摘するどとく,産出量が生産

(1)

能力以下の場合にのみあてはまる。このボールデイング分析と対照的に,完

〈2)

全雇用を仮定し,実質所得水準を所与としてケインズ的分配理論を展開した のはカルドアである。

(3)

カルドアの分配理論は今日ケインズ的分配理論−また所得分配のケンブ リッヂモデルとして−の最も代表的なものとしてあげられている。確か に,カルドアのモデルでは,所得分配の乗数分析が最も簡潔に使用されてい る。本来,ケインズ的な乗数分析は所得水準決定の分析であった。カルドア は,この乗数を所得水準を所与として所得分配率決定の分析ツールとして利 用した。「ケインズの乗数は,総所得を二つの要因,即ち,投資支出と貯蓄 性向の結果としてあたえた。同じ分析は,もし,賃金と利潤との問の所得分

(2)

配を所与として取扱うならば,実質総所得または産出量の決定に適用しうる し,また,実質総所得,産出呈を所与とすれば,賃金と利潤との所得分配l 適用しうる口」カ

j

レドアによれば,完全雇用の状態では,実質所得の水準は

( 4 )  

もっぱら資木ストックと生産技術の状態によってきまる。そこで,所得分配 率は一定の所得水準の下で貯蓄投資の方程式によってきまってくる。不完全 雇用状態の下では,生産がキャパシティー以下の水準では労働の限界生産物 はコンスタントであり,限界貿用はもっぱら賃金率によってきまるD 物価水 準はまた産出量に依存しない。所得分配は国民所得水準とは独立的であり,

生産物単位当りの賃金費用と価格の比率とによって一義的にきまる。もし,

乙の比率が所与であれば,投資の外生的な変化は遊休設備があるかぎり所得 水準に影響するが,所得分配には影響しない。以上がカノレドアのケインズ的 乗数分析利用における背景的な考え方である。

カノレドアの分配モデノレは,分配率を貨幣賃金率と物価の相対的変化を媒介 としてとらまえる完全雇用,所得水準一定の仮定一一厳密にいえば,労働の 完全雇用と資本設備の完全利用の仮定一ーの下で有効需要の構成変化が,実 質賃金率を変化せしめて分配率を変化せしめるロカルドアは,ケインズの分 析に言及してつぎのように述べている。

I

私の考えでは,貨幣賃金と実質賃 金とは根本的に異なった条件によって決定せられるという乙とを示した点 で,ケインズの分析の重要な貢献の一つがあった。労働市場で労働の相対的 稀少性によって直接影響されるのは貨幣賃金の水準のみである。実質賃金の 水準は全く異なった諸力によって決定されるO そして,労働が稀‑少な期間 (完全雇用) ,実質賃金はあらゆる程類の商品にたいする総需要が,商品の 総供給を超過もしなければ,不足もしないという条件によって決定されねば ならぬ。同ーの命題を別の言葉で示すと,実質賃金は,資本家と労働者の総 支出をして,その支出をみたすに足る供給lとちょうどひとしからしめるよう なものでなければならない。」カノレドアはとのケインズ的思考をさらにすす

( 5 )  

めていう

o

"……それ故に,どのような所与の状態においても,商品にたい する総需要をして総供給にひとしくならしめるような賃金と利潤との聞の生 産物の分配があらねばならぬD もし,賃金が乙の分配によって示されたもの

(3)

カノレドア分配モデルに関する若干の考察

より大であるならば,需要は供給を超過し,物価は不可避的に賃金にたいし て相対的に上昇し,そして,所得の分け前としての賃金を減少せしめるであ ろうO 同様に,賃金がこれよりも低いならば,需要は供給に不足し,物価は 低落し,賃金の分け前は上昇するであろうO 完全雇用の状態の下では,物価 と賃金との関係は,常に総需要の総供給にたいする超過或いは不足をふせぐ ようなものであらねばならぬD 同じ命題を別の表現でいうと,資本家の支出 は(相対的に)彼等の経常収入に依存せず,労働者の支出は彼等の収入に依 存するから,資本家は階級としては彼等が支出するものをえ,労働者は彼等 をうるものを支出する

o J

このカノレドアの最後の言葉は

Widow'sCruse 

(6) 

効果を端的に示したものであるが,この効果は伸縮的な物価の変動を前提と するO カノレドアの分配モデルは,賃金よりもより急速な物価上昇傾向を舛台 裏に伏在せしめる乙とによって投資所得比率と所得分配率との関係、を陽表的 に示しえたのである。

カノレドアの分配理論については,私は既に拙著「巨視的分配の理論」にお いて要約的な説明をあたえた。この小論ではこのカ

j

レドアモデルに若干の付‑

加物を添加することによって,そのモデノレの性格と結論がどのように変化す るかを吟味したい。

ここでカノレドアの分配モデノレというのは彼の初期の論文"

A l t e r n a t i v e   Theories o f  D i s t r i b u t i o n "  

(1

9 5 5 )でケインズ的理論として展閃されたモ

デノレをさす。カノレドアはその後成長モデノレを展開する過程の中で所得分配に 言及しているが,この論文でカノレドアの立場が明確に提示されおり,その後

(7) 

においても基本的な変化がないから,以下この論文に限定して考察する

o

カノレドアの単純な分配モデノレは成長モデ

j

レと直接的な関連をもっていな い。モデノレの基本的な仮定は,労働者の貯苔率と資本家一一ロビンソン的意 味でのレンテイヤ一階級一ーの貯蓄率は共に外生的にきまり,資本家の貯蓄

( 8 )  

率は労働者の貯蓄率より大であるという乙とである。賃金と財産所得の混合 所得を受け取る中間階級は無視される。また労働者貯苔の財産化体による所

(4)

得発生,即ちパシネテイ問題も無視される

o

実質国民所得は賃金と利潤として分配される口

Y=W+p 

総貯蓄は,

s  =Sw +Sp =Sw W  + S p  P 

均衡条件として投資貯蓄均等式をおく。

=swW+sp  P 

( 2 .

1) 

( 2 . 2 )  

( 2 . 3 )  

投資函数はこのモデノレでは導入されておらない

o ( 2 . 1 )

( 2 . 3 )

より,

1  =sw Y  + ( s p  ‑sw)  P  ( 2 . 4 )  

この式をYで割ると

̲  I 

( s p  ‑Sw) 

』 一 一

Y  Y  Y  ( 2 . 5 )  

利潤分配率は,

P  1  S w  

Y  Sp‑Sw  Y  Sp‑Sw  ( 2 . 6 )  

賃金分配率は,

W  S p   1 

( 2 . 7 )   Y  S p ー S w S p  ‑Sw  Y 

そこで,所得分配率は各所得階級の貯蓄率と投資所得比率に依存する

o

ドアのモデノレでは,

S p

, 

S w

, 

I / Y

はパラメーターである。

S p

S w

とを一定 とすれば

I / Y

の上昇は

P/Y

を上昇せしめる

o

投資支出の

Widow'sC r u s e

果であるO 資本利潤率は,

P  1  S w   Y 

( 2 . 8 )   K  Sp‑Sw  K  S p

S w K 

の式であたえられるO 資本蓄積率が大であるほど資本利潤率の水準は高い。

( 2 . 6 )

, (

2 . 7 )

, (

2 . 8 )

が経済的意味をもつためには,

S p

S w

の条件が 成立していなければならぬ。

sp>Sw

がカ

j

レドアモデ

J

レの安定条件であるD

Sw=O

であると,

S p   P  ( 2 . 9 )  

となり,

(5)

カ l

レドア分配モデルに関する若干の考察

P  1  1  y  Sp  Y 

Sp  K 

と乙ろで,

Sp  =  1

とおくと,

I=P  P  1  y  y  P  K  K 

( 2 . 1 0 )   ( 2 . 1 1 )  

( 2 . 1 2 )   ( 2 . 1 3 )   ( 2 . 1 4 )  

資本利潤率は資本成長率にひとしい。企業者は投資することによってそれに ひとしい利潤を獲得する。利潤が得られなければ,企業者は蓄積できず,蓄 積できなければ彼等は利潤を獲得できないD

労働者貯蓄率の変化は,

( 2 . 7 )

より

()

S p ‑ ÷  

aSw

( S p‑SW) 

各階級の所得分配率が正であるためには,

( 2 . 1 5 )  

与 > ÷ > s w ( 2 ω

の条件が成立していなければならないから,労働者の貯蓄率の上昇は賃金分

(9) 

配率を上昇せしめ,貯蓄率の低下は賃金分配率を低下せしめる

o

資本家の貯蓄率の変化は,

( 2 . 6 )

より,

θ (

手)

‑ J   +SW 

θSp ー ( S p‑SW) 

( 2 . 1 7 )  

そこで,資本家の貯蓄率の低下は利潤分配率を上昇せしめ,その貯蓄率の上 昇は利潤分配率を低下せしめるO 以上はまた消費支出の

W i d o w ' S  C r u s e

果を示している。

( 2 . 1 5 )

( 2 . 1 7 )

はまた弾力性によってつぎのように示

しうる。

。(手)/す=二

Sp ( 2 . 1 8 )  

S w   =  0

であると,この弾力性は

‑1

にひとしい。

Sw>O

であるとこの弾力

(6)

性は絶対値でlより大となるD 利潤分配率の上昇割合はその貯蓄率の低下割 合よりも大となる口

。(~)/-~=五

( 2 . 1 9 )  

この弾力性は

Sp>Sw

であると正値をとる

o

弾力性がlより大であるかどう かは

Sw

とらとの相対的差に依存するO 上述の分配命題はすべて資本家の貯 蓄率は労働者の貯蓄率よりも大であるという仮定に依存するD

カノレドアの最も重要な仮定は完全雇用では需要の増加は貨幣賃金よりも急 速に物貨を上昇せしめ,それによって所得分配は利潤に有利な方向にシフト せしめるということである。しかし,乙のことはモデノレの方程式には明示的 に示されていない

o Sp > Sw

であるかぎり,このことは総需要に対す│る安定 化要因として作用するD これは体系が完全雇用で安定的であるためにはまた 物価が伸縮的であることを意味する

o

貨幣賃金がもし物価よりももっと伸縮 的であるならば,労働者の貯蓄率が資本家の貯蓄率よりも大でないかぎり,

体系は不安定的である。

カノレドアは彼の分配モデノレは長期においてより妥当するとしてつぎのよう に述べている

I

実質賃金は短期においては,すべてに到達された水準にと どまって,下方へ非伸縮的であるかもしれず,それゆえに,

I/Y

を圧縮し,

またわ企業者の期待拡張率の上昇にもとづいておこる

I/Y

の上昇をさまた げるかもしれない。そこで,利潤と賃金の分け前とは,二つの具なった理由 で非伸縮的となる傾向がある。即ち,

P/Y

の下方非伸縮性と賃金率の下方 非伸縮性とによって

o J  I

所得の利潤分配率を,産出量にたいする投資の比率

U O )  

と,利j閏と賃金からの貯蓄性向とにまったく依存させるところの一一このモ デノレに依拠する分配理論は,ただ長期理論としてのみうけとられる。なぜな らば, これら要因の変化は短期においてはただ限られた影響しか及ぼさな いからである

o J

しかし,長期的に見て賃金が物価に対して相対的につねに

(11) 

非伸縮的であると考えてよいであろうか。インフレージョンの段階によって は賃金の変化率の方が物価の変化率よりも大である場合も考えられる

o

ミー ドもまたカノレドアの分配理論は長期よりも短期のインフレーシヨンの説明の

(7)

カノレドア分配モデルに関する若干の考案

方により適合しているとして,つぎのように述べている

o I

現実に,賃金率 が変化せず,すべての生産物の価格と販売予想とがはなはだしく改善された ときに,企業者が相に賃金をせり上げようとはしないと主張する乙とができ るだろうか。また評判の悪い賃金の浮動性という現象はどう説明できるの か。」短期的には物価が貨幣賃金率に比べて相対的に伸縮的であると,資本

( 1

2 )  

家の貯蓄率が労働者の貯蓄率より大であることが体系の安定条件である。

カノレドアの分配モデ

j

レに成長モデ

j

レの変数を組みこんで見ょうO 完全雇用 均衡成長であるから,所得の成長率と資本の成長率とは相ひとしく,またハ

ロッド的意味における自然成長率にひとしい。いま

Sw=O

とおくと,

( 2 . 1 1 )

より

r=p‑F2L 

一 一

K  Sp  Y  ( 3 . 1 )  

利潤率は自然成長率を資本家階級の貯蓄率で除したものにひとしい。

( 1 )

は又 つぎのごとく求められる

o

K  1  Y  1 

r

一 一 一 一 一 一 = 一 一 一 一 一 一 =

K  K  Sp  Y 

一一一

Sp 

( 3 . 2 )  

自然成長率は人口成長率と技術進歩率の和にひとしい。これらは共にパラメ ーターである

o

そ乙で利潤率は人口成長率,技術進歩率,資本家の貯蓄率に よってきまる

o

そこで,パシネテイによると因果関係の連鎖はつぎのように 示される。

( 1

3 )  

(1)  自然成長率は外生的要因によってきまる。

(2)  利潤率は自然成長率と資本家の貯蓄率とによってきまる。資本家の貯 蓄率はパラメーターである。

(3)  利潤率がきまると資本所得比率がきまる口この決定の仕方にはいろい ろある。五

r r

古典派的な分析では限界生産力の条件がみたされるような仕方で 資本所得比率がきめられる。

(4)  平均貯苔率

s

(=I/Y)は資本所得比率と自然成長率

K/K

との税に

(8)

ひとしい。そこで自然成長率は外生的にきまるから,

K/Y

がきまると,貯 蓄率

S (=I/Y)

がきまる。

(5) 

I/Y

がきまると,

( 2 . 1 0 )

より利潤分配率がきまる

o I/Y

はこの場合 もはや外生的にきまらない。

つぎに労働者の貯蓄が存在するとすると,

より

r = l J   ‑ ‑ ‑ ‑

Y  K  Y  ‑ Y 

Y  ~W K 

Sp ‑ Sw 

( 3 . 3 )  

( 3

.4)  この場合 rは又

Y/K

にも依存することになるD モデ、ルの解を求めること はできるが,上述のような因果的述鎖は存在しない。相互依存的な関係が存 在し,同時的な解を求める必要がある。

労働者が貯蓄するならば,その貯蓄によって彼等の所有する資本からも所 得が得られるD パシネテイが指摘した論理的スリップはこの点である口経済 の体系において今日存在する資本ストックは,過去においてそれに対応する 貯蓄を行った人々によって(資本家であれ労働者であれ)所有されるD そ乙 で,今,労働者が過去の貯蓄により,資本ストックの一部分の所有者である ならば,その所有資本に対し利子支出があるのであろうロその利子率は資本 利潤率にひとしいとするD 労働者はまさにその限りにおいて資本家と同じ地 位にある。資本家の所得の源泉は唯一つ利潤のみであり,労働者は二つの所 得源泉,賃金と利子支払ひをもっ。そこで,所得の利潤と賃金との聞の分配 と,所得の資本家と労働者との聞の分配とは区別して考えねばならぬ。も し,労働者は貯蓄しない,

sw=O

であればこの区別は必要でない。カノレド アのモデノレでもし,利潤よりの貯蓄率が労働者にとっても資本家にとっても 同一であれば,パシネテイのいう論理的スリップはない。しかし貯蓄率が労 働者と資本家とでは異なるとすれば,この論理的スリップの意味は重要であ

る。吟味を要するO

(9)

カノレドア分配モデ

l

レに関する若干の考察 資本家の受取る利潤を

Pp

,労働者の受取る利子(利潤)を

P w

で示そう

o

労働者の貯蓄は

S w   =  S w   (W+Pw ) 

資本家の貯蓄は,

S p   =  S p Pp 

均衡条件は,

1  =  S W   (W+ P w )   +  S p Pp 

1 1  

S W  Y+ ( S p ‑S w )   Pp 

この式から,

P p  S w  

s p   ‑ s w Y  s p  ‑ S W  

これは資本家所得の分配率を示す式である

o

カノレドア的な利潤分配率と同じ形式である

o

さらに,

P

S w  

K  S p ‑ S w   K  S P ‑ S w   K 

( 4 . 1 )  

( 4 . 2 )  

( 4 . 3 )   ( 4 . 4 )  

( 4 . 5 )  

( 4 . 6 )  

乙れは,カ

J

レドア的な形式ではあるが資本利潤率を示すものではない。

( 4 . 5 )

は資本家と労働者との聞の所得の分配を示す。そこで,賃金と利潤と の問の所得分配は,

P  PP . P w  

Y  Y .  Y  ( 4 . 7 )  

利潤率は,

P  PP . P 

一一=一一一+ーエ

K  K .  K  ( 4 . 8 )   ( 4 . 8 )

( 4 . 6 )

を代入すると

Kw

は労働者がその貯蓄によって所有している資本ストックを示し

r

は資 本に対する利子率を示す。(利子率は利潤率lとひとしいとする

o

)動的均衡 では,

Kw  S w   S W   (Y ‑Pp)  S w S P

一一一一一一二工ー

  ( 4 . 1 0 )  

K  S 

S P ‑ S w   S p ‑ S w  

(10)

乙の式を

( 4 . 9 )

に代入して,

Sw  / SwSp 

Sw 

K ¥ 

一 一 一 一 一 一 一 一

I ( 4 . 1 1 )   y  SP‑Sw  Y  sp‑sw' ‑ ¥  SP‑Sw 

SP‑Sw  Y  J 

=PjK

であるから,

P  S p  

(1 

‑swY) 

Sw Y 

いま,

‑Sw 

Y0 とおいて,

P  1  L 

S p  

P  1  1 

Y  s p   Y 

( 4 . 1 2 )  

( 4 . 1 3 )  

( 4 . 1 4 )   ( 4 . 1 5 )   Sw

Oの場合でも,カノレドアの分配モデノレの ( 2 . 1 0 )

( 2 . 1 1 )

にひとしく なる。この事は労働者の貸付資本に対する利子率が資本利潤率にひとしいと いう仮定に依存する。長期的には,労働者の貯蓄性向は資本家と労働者との 聞の所得分配には影響をあたえるけれども,利潤と賃金との聞の所得分配に は影響をあたえないD 乙の定理の背後にある主要命題の一つは,長期均衡で

( 1

は,利潤は貯蓄額l乙比例的でなければならぬということである

o

(利子率は 利潤率にひとしいとして)0 そこで,

Pw  Pp 

Sw  Sp 

(  4 . 1 6 )  

この式に貯蓄函数を代入して,

Pw  Pp 

Sw  (W 十 Pw) spPp  ( 4 . 1 7 )   Sw  W  = [(  1  ‑ sw) ー (l‑sp)]Pw ( 4 . 1 8 )  

即ち,賃金よりの貯蓄はつねに労働者の利潤からの余分の消賀にひとしくな

る(余分の消費とは資本家がその利潤を彼等に残しておけば消費したであ ろうものを超過した消費を意味する)1"結局のところ,このことは労働者 の側では利潤率は不決定であるということの複雑な表現方法にすぎない。彼 等は,長期においては,利潤率がどのようなものであれ,彼等の貯蓄額に比

(11)

カノレドア分配モデノレに関する若干の考察

1 1  

例した利潤を受取るであろう。」

( 1

6 )  

パシネテイはまたカノレドア分配モデノレの安定条件に言及し,

Sp  >  Sw

は短

期安定条件であって,長期的安定条件とし│てはお

> 0

であることを指摘し

ているO ところで,いま,

S w =   0

として見ょう

o

カノレドアモデノレの

( 2 . 1 0 )

(1

をして無意味ならしめるところの

Sp <  I/Y

の場合をパシネテイの長期安定 条件は含むであろうか。長期ではこの可能性は排除される。その理由はこう である

o Sp

rと

K/Y

の変化を通じて

I/Y

を決定する

o Sp

の低下はrを上 昇せしめ,

K/Y

を低下せしめて

I/Y

を低下せしめる

o

えうした推理は勿論 二つの仮定に依存する

o

労働者の所有資本に対する利子率は利潤率にひとし

く,資本家所得の唯一の源泉は利潤であるD

新古典派的分配理論では利潤率は資本の限界生産物にひとしく,賃金率は 労働の限界生産物にひとしい。したがって利潤分配率は,

θ Y  

Y  Y  Y 

( 4 . 1 9 )  

の式によってあたえられる。限界生産力の条件は要素比率があたえられた場 合にのみ利潤率を決定する

o

しかし,要素比率それ自体は新古典派理論とカ ノレドア的理論とを共にみたような仕方で決定される場合を考えることができ

o

一次の同次でハロッド的な中立的技術進歩を含む生産函数をおいてみよ

w

n‑ J 

(K ,  L * )   ( 4 . 2 0 )   L*

は能率単位で測られた労働を示す。技術進歩率をg,労働人口の増加率 nで示すと,

(g+n)t

L*=L 。 ( 4 . 2 1 )  

資本の増分を Kで示すと,

K =   sY  ( 4 . 2 2 )  

ここでは

S

は外生的なパラメーターではない。

( 2 . 1 0 )

の式で

S =I/Y

とお くと,

(12)

S=S,,~ . Y 

さらに,新古典派理論では,

P θ Y   K θ K  

( 4 . 2 3 )  

( 4 . 2 4 )  

そこで

( 4 . 2 0 )

から

( 4 . 2 4 )

の式と

Y

K

, 

L

S

P

の五つの内生的変 数が存在する

o YとKの成長率は L*

の成長率 (g

n)にひとしい。そこ

K  S 

g+n 

また,

( 4 . 2 3 )

( 4 . 2 5 )

より,

そこで,

K ̲  S 

Y θ . Y  

"'pθK 

g  +n.= 

Sp一 一 一θY 

θ K 8.Y 

k θ K   Sp 

( 4 . 2 5 )  

( 4 . 2 6 )  

( 4 . 2 7 )   ( 4 . 2 8 )  

乙の場合,二つの理論は共にみたされる。しかし gn, Spは外生的で あると仮定されているから,モデノレの構造があたえられるならば,これらは 最終的に利潤率を決定する概念であるということができる

o

Sp 

1である

と,レンテイヤー支出はないから,利潤率は成長率にひとしい。

(Sw= 0

仮定されている

o ) 

l図をみよう

o

生産函数の勾配は資本の限界生産物を示し,それは利潤 率にひとしい。均衡ではこれは (g

+  n) / s p  

にひとしい。この条件は要素 比率を決定しK/Yを決定する

o

利潤分配率P/Yは利潤率と K/Yとの積に ひとしいから,K/Yが線分 O Aの勾配によってきまると,利潤分配率は直に きまる

o

乙れはAB/ACの比で示される。もし gn, Spが変化すると,

利潤率は変化する。所得分配率がどう変化するかは生産函数より求められる 代替の弾力性に依存する。カノレドアのモデ

J

レで、は資本家の貯蓄率の低下は利

(13)

J

レドア分配モデ

J

レに関する若干の考察

1 3  

※ 

K

L

一 ※

1

潤分配率を上昇せしめる。この場合,

I/Y

が所与と看倣されているからであ る口しかし,

( 4 . 2 8 )

の式で見られるごとく,

Sp

の低下は

S

nとを不変 とすれば rを上昇せしめる。その結果

I/Y

を低下せしめることとなる

o

利潤分配率を引下げる傾向が示されるO

カノレドアの分配モデノレにロビンソン的な単一技術のケースを組入れてみよ O ロビンソンの資本蓄積モデノレでは二部門経済が仮定されているが,彼女 はその場合単一技術の場合から出発し,ついで技術のスペクトルを導入す

o

しかし,単一技術の仮定はロビンソンにとって特に怠味がある

o r

技術

が唯一つの場合の蓄積は最も重要な諸命題を含んでおり,したがって,本書 の残余の部分はこの中心核の周囲にある諸々の複雑且つ条件っきの諸問題を

(14)

取扱うものと考えられてよいであろう

o J

このような仮定は複雑なものをす

べて除外して資本主義的ノレーノレの本質を理解するのに役立つのであるD 単一 部門,固定的な生産係数を仮定する

o

同民所得は賃金と利潤とに分配される。

Y=W+p=wL+rK  ( 5 .

1) 

はYとは同じ単位で測られる

o ( 5 .  

i)より

,.̲ 

一一一 +r 一一一 =wb+

( 5 . 2 )  

この式より,

l‑ra 

w=~-.J, ( 5 . 3 )  

乙の式で実質賃金率と利潤率との関係が示されるO 要素価格方程式または要 素価格フロンテイアーとよばれるものであるD われわれが,

( 5 . 3 )

で示さ

(19) 

れた要素価格フロンテイアーを仮定する理由はこうである

o

カノレドアは両産 業部門間の生産要素集約度の相違を仮定するフインドレーモデノレを批判して

つぎのごとくいう。 r私は,資本財産業と消資財産業との相対的資本集約度 に関する特殊な仮定に依存するようなフインドレー氏の新古典派理論とケイ ンズ的分配理論との融合方法は説得的であるとは考えないロ」カルドア自身

( 2

1) 

は二つの生産函数の相違を想定することなくしてケインズ的マクロモデノレで 分配命題を誘導することができるとして rケインズ、的モデノレでは,より高 い資本支出水準は必然的に総供給函数に比して総需要函数を上昇せしめ,そ のことによって,完全雇用状態では,生産函数の等量生産物曲線や生産物変換 曲線上の移行とは関係なく,費用にたいして│相対的に諸価格を上昇せしめ

o

J乙のようにカルドアの分配モデソレでは本来生産函数で示されるような

( 2 2 )  

供給の技術的関係、は考察されておらず,また,二産業部門間の生産要素集約 度の相違を設定することすら否定的であるD 完全な分配の乗数理論である。

われわれは,このようなカルドアの分配モデノレに要素価格フロンテイアーの 概念を導入することによって,むしろ,カルドアモデノレの特徴がより鮮明に 示されると信ずる。

(15)

J

レドア分配モデ

J

レに関する若干の考察

1 5  

貯蓄投資の均衡条件をあたえようD

I  =  S  =  S p  r  K  +  S w   w  L  ( 5 . 4 )  

この式をYで除すと,

I  S 

‑ 一 = 一 一 =

S p   r  a  +  swwb  ( 5 . 5 )   Y  Y 

カノレドアの分配モデノレでは投資所得比率は外生的変数として取扱ばれてい D 乙の式と要素価格方程式とから r

w

の均衡値が求められる。

十=

S p  

+  S w  

(--.1了 ~)b

( 5 . 6 )  

十=

( s p  a  ‑swa ) 

S w   ( 5 . 7 )  

~I~ ̲  ̲̲Sw 

( s p  ‑sw)  a Y  ( s p  ‑sw)  a  ( 5 . 8 )  

利潤率は投資所得比率,貯蓄率と資本の投入係数に依存する

o

賃金率は,

一一一一一一一一一一

  ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ s ] '

1 I 

( S p  ‑sw) 

( s p  ‑Sw) 

b  Y 

( 5 . 9 )  

そこで,賃金率は投資所得比率,貯蓄率と労働の投入係数に依存する。利潤 分配率は,

1  I  SW 

a

一 一 = 一 一 一 一 一 一 一 一

( 5 . 1 0 )   Y  ( s p  ‑ S w )   Y  ( s p  ‑Sw) 

乙の式はカノレドアモデノレにおける分配率に関する基本方程式である

o

労働者は貯蓄しない。ロビンソン的なレンテイヤーは存在しないと仮定し ょう

o Sw=  0

, 

S p  =  1

である

o

そこで,

̲ I  

r  a 

( 5 . 1 1 )  

この式と要素価格フロンテイアーを示す式とから,利潤率,賃金率がきま る。第

2図を見る。 ( 5 . 1 1 )

は横軸に平行な直線で示される

o

r。とw。は 均衡利潤率と均衡賃金率を示す。利潤分配率は

r oa 

,グラフでは

Oro/OA

で示されるD 乙の場合資本成長率をgで示すと,

= g   ( 5 . 1 2 )  

となり,利潤率は成長率にひとしい。I/

Y

の上昇は利潤率をじに上昇せし

(16)

シ ' " l A  

r r o  

│¥ 

W 1 

l メ

2

め,賃金率を

W

1I乙低下せしめるD 利潤分配率は

r

1

I乙上昇する

o

投資支 出の増大によって物価は貨幣賃金率に比して相対的により早く上昇する乙と によって生じた

Widow's  Cruse

効果である

o

ここで,レンテイヤー支出を導入する

o

sw 

= 0

, 

1  > 

Sp 

>  0

である。上 述の諸式は

T4 

c u  

IY 一 一

( 5 . 1 3 )  

一 一 一 一 一 一

=_l__l__I_=~

sp 

a  Y 

Sp 

( 5 . 1 4 )  

( 5 . 1 5 )  

そ乙で,

I / Y

を 一 定 と し て , レ ン テ イ ヤ ー の 支 出 増 加 ‑ ‑Spが低下する ーーは,利潤率の上昇,利潤分配率の上昇,賃金率の低下を生ぜしめる。乙 れは消費支出の

Widow'sC r u s e

効果であるO 利潤は投資と資本家の消費 支出(レンテイヤ支出)との和にひとしい。ロビンソンの言葉で表現する

I

レンテイヤーの消費を考慮するために,われわれの分析においてなさ れる最も重要な修正は,利潤が純投資とレンテイヤー支出との和にひとしい

(17)

J

レドア分配モデソレに関する若干の考察

1 7  

ということであるO 利潤は純投資を超過するから,静穏な状態では,資本利 潤率は経済の成長率にひとしいということはありえない。一般的に利潤率は 成長率よりも著しく大である

o J

利潤率と成長率の差異は資本家の貯蓄性向

( 2 3 )  

に依存するO レンテイヤー支出を分配モデ、ノレに導入することによって,われ われは,資本主義経済において成立する企業者とレンテイヤーとの関係を明 らかにすることができるO この関係は,所得分配の

Widow's  Cruse

効果 に由来するのである。再びロビンソンの言葉を借用しよう。1"利潤からの消 費は投資に役立つ資源に喰いこんでゆくO しかし,それでも,消費の減少は 蓄積にとって不利なことがあるかもしれなし

h

企業者とレンテイヤーとの間 には二面的な関係が存在する口企業者は個人としては彼の労働者により少な く支払うことによって利益をうるが,他の企業者達が彼等の労働者により少 なく支払う乙とによって生ずる市場の喪失を通じて担失を被る。それと同じ 様に,各個の企業者は,自分の細君や株主には僅かなもので満足してもら い,そのことによって,自分の利潤の大部分を投資に(或いは将米の投資を 賄うための準備に)向けうるようなことを欲するが,その反田に,各企業 者,他の企業者遠の細君や株主の支出から利益を得ているのであり,その支 出が商居市場に活気をあたえているのである。」企業者とレンテイヤーが全

4 )

体として投資と消費により多く支出すればするほど利潤は増大する。

最後に労働賃金よりの貯蓄を導入しよう

o s w

O

である

o ( 5 . 5 )

より ‑ 一 一 一 一 一 一 一

=_J_~__l_ 1 ̲  ̲ 

一 一 一

~~__~

b  Sw  Y  Sw  b  ( 5 . 1 6 )  

乙の式と要素価格方程式とから均衡利利率,賃金率,分配率がきまる。

( 5 . 1 6 )

より

a

b h

ιIY

W 7 一一>

GIG

F

d Q U

( 5 . 1 7 )  

( 5 . 1 8 )  

(18)

. IA  i 3  

。 w w w  w 

3

3

図を見る。

( 5 . 1 6 )

C D

線で示される。

OC=

一 一 一 一 一 一

Sw 

1 1 1   OD=

Sp 

( 5 . 1 8 )

の条件により,

OC>OB

, 

OD<OA 

( 5 . 1 9 )   ( 5 . 2 0 )  

である

o E

点で rとwの均衡値がきまる。また

Sp

Sw

であると,

d w   a 

( 5 . 2 1 )  

となり,

C D

線は要素価格フロンテイヤー

A B

と同ーの勾配をもち,一志的 な解が求められない。カルドアの分配モデノレでは完全に経済的意味を失う。

しかし,次章で吟味するごとく二産業部門で生産係数の部門間の差異を設定 すると一一カノレドアはこの設定について否定的である

‑‑Sp

Sw

のケース

も意味をもつことになる。

3

図 で 示 さ れ る 均 衡 は 安 定 的 で あ る 。 賃 金 率 水 準 が w。であると,

(19)

カノレドア分配モデノレに関する若干の考察

1 9   W o 

bの賃金分配率で外生的にきまったI/Yにひとしい貯蓄率を生ぜしめ

るにはじ

a

の利潤分配率が必要となる。ところで,

r

,の利潤率では生産の 技術的関係から実質賃金率は

W

,の水準にきまらねばならない。しかし,

w, 

b

の賃金分配率で

I/Y

にひとしい貯蓄率を生ぜしめるには,利潤分配率 はじ

a

に上昇しなければならぬD むの水準では生産の技術的関係から実質 賃金率は

W

2の水準でなければならない。乙のようにして E点にいたるま で,実質賃金率の低下と利潤率の上昇が続くO 要素価格フロンテイヤーは生 産の技術的関係を示し,暗黙のうちに利潤極大化の仮定がおかれている。

C D

線は貯蓄投資均等という有効需要的側面が示されているO カノレドアの分 配モデノレに要素価格フロンテイヤーの概念を導入して,一つの分配に関する 単純な総合モデノレが示されたが, この総合モデノレは依然カノレドア的仮定を合

んでいるD

投資所得比率の上昇は

C D

線を上にシフトせしめる。実質賃金率の低下と 利潤率及び利潤分配率の上昇が生じる。

I/Y

を一定として

Sw

の低下は

C D

線を

C'D

にシフトせしめ(第

4

図),実質賃金率の低下と利潤率及び利潤分

A D r 1 4  

。 W ,  •• B  C 

m  4

C '  

(20)

A  D '   D 

r r  

r ( )  

。 W r 

いか¥ w 

W o  B  C 

第 5

配率の上昇を生ぜしめる

o Sp

の低下は C D線を CD'線 lζ シフトせしめ(第

5

図)賃金よりの貯蓄率が低下した場合と同じ効果を生ぜしめる

o

カノレドアのモデ、ノレでは分配率を規定するものは貯蓄率と投資所得比率であ

o

生産の技術的パラメーターの変化がどのような効果をもつかは全く吟味 されていない。完全な有効需要の分配モデノレであり,所得分配の

Widow's Cruse

を最も簡潔に示したモデルで、ある

o

しかし,いま, ここで

a

b

が変化した場合を考えてみようロ

( 5 . 8 )

r

bK

依存しない,

( 5 . 9 )

W

a

に依存しなし そこで,

b

の低下,労働生産性の上昇は利潤率に影響 しない。賃金率にたいする効果は,

( 5 . 9 )

より,

/ 只

1 1 ¥  d w   I-~

一一

一 一 一 一 ‑ ¥ 

Sp二竺

b 2 ' ¥ o

~p_...~w

Y

ー / ( 5 . 2 2 )  

そこで

bの低下は

wを上昇せしめる。さらに弾力性を求めると,

d w   b

db 

( 5 . 2 3 )  

bの低下率とwの上昇率とはひとしい。

賃金分配率

wb

は不変である。

a

の変化についても殆んど同ーの結果をう

(21)

カルドア分配モデソレに関する若干の考察

A  D 

( 5 . 8 )

より,

W ^ W   o  "1 

t r

ラ守2

B  B '  

一 (-~λ 七二:)/ハ

¥U 

a

の低下は

r

を上昇せしめる。 しかし,

~ ~--l

a  r 

2 1  

C '  

( 5 . 2 4 )  

( 5 . 2 5 )  

a

の低下率と

r

の上昇率はひとしい口 したがって利潤分配率

r a

は不変であ る。所得分配率をコンスタントならしめるような技術進歩を中立的とする , このような

b

の低下,或いは

a

の低下は共に中立的技術進歩である。 のような生産係数の変化は賃金率,利潤率lこ影枠をあたえるが,所得分配率 に影響しない。均衡所得分配率は

I/Y

Sr

, 

Sw

のみに依存するD jレドア 的分配モデノレの結果は生産の技術的係数を導入しても不変である。それで は,要素価格フロンテイアーの概念を導入したな味は一体何であるのか。

(22)

ノレドアの分配モデノレでは完全雇用が仮定され,実質所得水準は所与とされ,

貨幣賃金率よりもより伸縮的な物価が想定されている

o I / Y

の上昇は物価上 昇にたいする貨幣賃金率調整のオクレを生ぜしめ,その結果,利潤分配率の 上昇が生ずるのである。その思考が彼のモデノレの背景をなしているのであ る。しかし,乙れらの関係は彼のモデノレでは陽表的に示されていない。要素 価格フロンテイアーの概念を導入することによって,カノレドアモデノレにおけ

る賃金率と利潤率との相対的関係を明示することができるO

要素価格方程式,要素価格フロンテイアーの分析概念を資本財部門と消費 財部門の二部門モデノレにおいて使用しようD 単一資本財を仮定し,両部門で

白5 )

使用される

o

さらにまた資本財は同ーの能率でもって永久的に使用されると 仮定するD 減価償却の問題は生ぜず,資本財の生産は純投資にひとしい。完 全競争均衡では賃金率と利潤率は両部門で相ひとしい。生産物の価値は賃金

と利潤として分配される

o

価格方程式として,

P ム K

PK

wL

C

r

PK 2 十 wL 2

Pは消費財で測られた資本財の価格を示す。

L, 

P=rP 二三~ + w   ~~_ =  rpa

+ wb

K

K

Ko  L 9  

1  =rP  .L ~2 +w~ー= c  c  rPa2 

+ wb2 

上式より,

b I  

ra 1 

‑L=r  a21L+bz  w  w  w =  

1 ‑

ra

b2  + r  ( a2 b

‑a

1

b2 ) 

( 6 . 1 )  

( 6 . 2 )  

( 6 . 3 )   ( 6 . 4 )  

( 6 . 5 )   ( 6 . 5 )   ( 6 . 6 )  

ζ の式で

a 2

b

1 / a 1

= m

とおく

o

これは消費財部門の資本労働比率と資本財

(23)

jレドア分配モデソレに関する若干の考察

2 3  

部門の資本労働比率との比を示すD そこで,

w=‑‑

一 一

1‑ra

b

+  r  (m ‑ 1  )  a

b

( 6 . 7 )   ( 6 . 7 )

は要素価格方程式である

o

この式より,

dw  ‑ma

一一一一=一一一一一一

d r  [ b2  + r  (m  ‑1 

1 M 1  

~. < 

b2  ]  2 

要素価格フロンテイアーは右下りの線で示されるD

d2w  2m(m‑1)(a

1

b2 )2[b2 (m‑1)a

1

b2rJ ( 6 . 9 )  

dr2  [b2+r(m-1)alb2~4

( 6 . 8 )  

p>o

であるためには

(1‑a

1

r) >0

,そこで,

w>O

であるためには,

b2 r(m‑1)a

1

b2 >0 ( 6 . 1 0 )  

であらねばならぬD そこで

( 6 . 9 )

の正負は,

m (m ‑

(a

1 b 2)2 

の正負によってきまるD

(1) 

m =  

1,即ち,資本労働比率が両部門で同一であると,

( 6 . 1 1 )  

w  a

b

d

2

r

( 6 . 1 2 )  

要素価格フロンテイアーは直線で示されるD

( 2 )   m>l

,即ち,消費財部門の資本労働比率が資本財部門のそれよりも大 であると,

U

( 6 . 1 3 )  

となり,要素価格フロンテイアーは原点にたいして凸の曲線で示される

o

( 3 )   m

0

,即ち,資本労働比率は資本財部門の方が大である場合には,

竺ヰ r < 0 ( 6 . 1 4 )  

となり要素価格フロンテイアーは原点にたいして凹の曲線で示されるD

均衡においては生産要素の存在最はその使用量にひとしい。数量方程式と して,

(24)

K=a

1

ム K+a2 C L=b

1

ム K +b2C 

いま資本の成長率を

g

で示さう

o g  =ム K/K

。そこで,

K =a

g K   +a2C  L 

b

b

上式より,

t f = M + b 2 t  

去=bb

( J

1)

a 2 

b

1 / a 1 

b

2  =  m

を使用して,

L  1+(m‑1)a

1

K  ‑

a

2/b

賃金所得と利潤所得の比は,

万γ (-~i-)

( ‑ ‑ ; ‑ )  

(~-)

いま利潤分配率を

f

で示すと,

( 6 . 1 5 )   ( 6 . 1 6 )   ( 6 . 1 7 )   ( 6 . 1 8 )  

( 6 . 1 9 )   ( 6 . 2 0 )   ( 6 . 2

1) 

( 6 . 2 2 )  

( 6 . 3 3 )  

セ_~_ ~ ̲  {̲1̲} {  _~__-;_r_a_l_ }  (  1 ̲ ̲ ‑ t J 巴 z 山 王 ( 6 . 2 4 )

rPK  f ¥ r  

J¥ 

b

, ¥   a

2

/b

ニ(~~-) (うー-)千円乍l~_~_I~) (6.25) 

との式で

M =

一 一

m

一 一

(m 

1  ) 

a とおくo

M > O

である口

一 一 一 一 一 一

M  r  a l   一

1ー (1 ‑ M) 

r  a

( 6 . 2 6 )  

この式は利潤率と利潤分配率!との関係、を示す方程式である。 gを一定とし

( 2 6 )  

Ma1 ¥ n  

r ‑

[1 ‑ ( ‑M) 

r  a

, 

J 2   / '  

( 6 . 2 7 )  

(25)

カノレドア分配モデ、jレに関する若干の考察

2 5   Ma

1

> 0

であるから,

( 6 . 2 7 )

の符号は正,利潤率の上昇と利潤分配率の上 昇と結びつく。

d

2  Ma

12 

1  ‑M)  [  1

ー (

1  ‑M) r  a

1 ] 

d  r

[1 ー (1‑M)ra

1J4

1 一 (1‑M)  ra

1

> 0  

であるから,

2  Ma

1

(1 ‑M) 

の正負によって

( 6 . 2 8 )

の符号はきまるO

(1) 

m =   1

, 

M =   1

であると,

2  Ma

2 ( 

1  ‑M)  =  0 

( 6 . 2 6 )

は直線で示される。その勾配は

a

1で示される。

( 2 )   m>l

であると,

M>l

である

o

そこで,

2  Ma

12 

1  ‑M)  < 0  ( 6 . 2 6 )

は上に凸の曲線で示される

o

( 3 )   m<l

であると,

M<l

である。そこで,

2Ma

I2

(1‑M)>0 

( 6 . 2 8 )   ( 6 . 2 9 )  

( 6 . 3 0 )  

( 6 . 3 1 )  

( 6 . 3 2 )  

( 6 . 3 3 )   ( 6 . 2 6 )

は上に凹の曲線で示される。以上はすべて単一技術を仮定してい

最後に貯苔方程式をあたえる

o

カノレドア的な式で示さう

o

= Sw 

w  L  + 

Sp 

P  K 

賃金よりの貯蓄はないとするD 投資貯蓄均等の条件として,

P

K= Sp  r 一塁‑

Sp 

( 6 . 3 4 )  

( 6 . 3 5 )   ( 6 . 3 6 )  

利潤分配率方程式と合せて利潤分配率がきまる

o m =   1

の場合は第

7

図で示

される。 gが外生的にきまると,

( 2 . 3 6 )は S

山線で示される。

r

1/a

は極大利潤率を示し ,

s

曲線はA点より左側に位置することになるD

分配率は,

=  ̲ ‑̲..̲‑ e : !

I

J f  

Sp 

( 2 . 3 7 )  

(26)

5 '   S  S"  I A  

qIfrJ 

7

所与の技術水準の下では貯蓄率と資本成長率に依存するが

r

がきれば要素価 格式より実質賃金率がきまる

o g

を一定として

Sp

が上昇すると

S

曲線は左 にシフトするから利潤分配率は低下する

o

gの上昇は利潤分配率を上昇せし める

o

カノレドアの分配命題と完全に一致する

o

つぎに賃金よりの貯蓄を導入すると,

g  P  K  =  s ' "   W  L 

Sp  r  P  K  JL  SP 十 s~J~ì

r  ¥  rP K / 

=Sp 十 S w (

1) 

いまら

/ S w=H

とおくと,

swH  Sw(‑:

¥ 

( 6 . 3 7 )  

( 6 . 3 8 )  

( 6 . 3 9 )  

一 一 一 = 

(1 ‑

rsw 

H) 

r s w 

この式は

( 6 . 2 7 )

に類以しているD

( 6 . 4 0 )  

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