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商 法 会 計 規 定 改 正 に 関 す る 一 考 察

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(1)

商法会計規定改正に関する一考察

龍 家 勇 一 郎

目         次

一 ︑

序  

   

  言

二︑研究対象とする株ま会社の限定

三︑商法改正と財務諸表規則との調整の重要性

四︑商法会計規定の現状と改正の必然性

五︑財務諸表体系の調整について

六︑財務諸表の様式及作成方法の調整について

七︑繰延資産の調整

入︑財務諸表の公告制度について

九︑結    語

l   序         言

第二次世界大戦終了後わが国は連合国の占領を受け︑総司令部の管理の下に立ったので︑英米法殊にアメリカ法の

商法会計規定改正に関する一考察

(2)

経 営 と 経 積

第三九年第三冊

継受は全面的となり︑わが国の法制の各部門において︑ アメリカ法にならった改正が行はれるようになり︑商法殊に

その一分野たる株式会社法においても︑ いわゆるアングロ・アメリカ主義が優勢となり︑従来採用せられていたフラ

ン コ ・ ジ ャ

l

マン主義は漸次改められることとなった

c

昭和二十五年乃至昭和二十六年の商法改正は大陸法から英米法への大転換をとげ︑企業会計原則に倣って︑新らた

な資本及剰余金規定等を設け︑会社会計に対する認識を改めるに至っている

c

しかしそれらの規定自体も会計原則の

面からすれば︑充分満足すべき状態に達していないのである︒この間の事情は商法学者の見解からでも判明できる︒

例へば田中誠二博士は﹁経済安定本部に設置せられてある企業会計制度調査会の制定した企業会計原則及び財務諸表

準則に基づくアングロ・アメリカ主義の会計制度を全面的に採用することによる商法改正提案は今回の改正(昭和二

十六年法)に当って考慮せられたが︑なおその採否につき研究を要し︑時期尚早との説が有力となり︑また商法総則

中の商業帳簿についての規定との関係上︑株式会社の計算中の規定のみを改めることの当否についても考慮しなけれ

ばならないので︑今回の改正では︑ただ僅少部分においてのみ︑乙の提案の考えを採用したのに止り︑この提案に基

づく根本的改正は︑次回の改正に譲ったのであり︑これは次回の改正の諸問題中最も真剣に考慮すべき重要問題とな

ると思うのであることいわれている︒(註

1 )

商法が現在のま﹀では﹁企業会計原則﹂や﹁財務諸表規則﹂による株式会社会計が商法に違反するという問題をな

くする意味からも︑特に法文化された証券取引法に基づく﹁財務諸表規則﹂との調整が重要問題であると思うのであ

る︒ところで昭和三十三年(一九五八)の四月より再び法制審議会商法部会で︑ この計算規定の改正が議題として取

り上げられるに及びこの問題は世間の注目をあつめることとなった二

法制審議会商法部会の小委員会は同年七月四日に株式会社の内容並びに財務諸表の種類及株式に関する改正の問題

(3)

点を一応決定して︑乙れを発表している︒(註

2 )

これらの問題点はいづれも文字通りの問題点のみであって︑それらの問題点に対して︑ いかなる態度をとるのか全

く示されてない︒がしかし︑それに列挙されている問題点は︑そのま︑商法と企業会計原則乃至財務諸表規則との調 整に関するものであり︑非常に関心をひく問題である︒その各々の一つ一つの事項について互に対立する幾つかの質 問がなされている様式で発表されているが︑それについて我々は同じ問題について種々の意見があることがわかるの である︒筆者としては︑商法改正に当り先づ第一に取り上げなければならない問題は財務諸表の種類様式に関する問 題︑即ち財務諸表規則との調整から考慮せられねばならないと思ふので︑この問題点について若干考究してみたい︒

( 註

1 )

田 中 誠 二 博 士 著

H

確定改正会社法解説

d

四 一

頁 ( 註

2 )

﹁会計の計算﹂規定改正の問題点(株式会社の計算に関する問題点について抜粋)

一 ︑ 会 計 処 理 に 関 す る 原 則 規 定 を 設 け る べ き か

二 ︑ 資 産 に つ い て (企業会計叩巻!日号)

ト )

評 価 の 定 め 方 に つ き 最 高 限 を 定 め る の み で よ い か ︒

( 斗 流 動 資 産

川棚卸資産の評価は︑原価時価又は低価のいずれによるべきか又はそのうちの選択を認めるべきか

D

凶債権の評価は回牧不能のおそれある場合について規定を設けるべきか︒

間取引所の相場ある有価証券の評価は右

ω

の評価方法のいずれによるべきか

D

固定資産(有形︑無形を含む)

‑ E a ‑ 国

固定資産の評価は取得価格又は製作価格から相当の償却をした価格によるものとする必要はないか︒

商法会計規定改正に関する一考察

(4)

経 営 と 経

( 4 )   ( 3 )   ( 2 ) 済

第三九年第三冊

贈与を受けた財産等の評価について規定すべきか︒

暖簾について特別の規定を設けるべきか︒

設資有価証券の評価につき特別の規定を設けるべきか︒

資 産 延 ( 2 )   ( 1 )  

繰延資産として認められるものを規定する趣旨を明らかにする必要はないかロ

新たに繰延資産として認めるべきものはないか︒(例開業準備費用︑設立の際の株式発行費用︑社債の発

行費用︑開発費︑広告宣伝費︑試験研究費)

( 3 )  

現在認められている繰延資産につき

繰延資産として認めるべきでないものはないか︒

償却期間及び方法を改める必要はないか︒ (例新株発行費用)

(a) 

︑準備金について

(b) 

( 3 )   ( 2 )   ( 1 ) 資

本 準 備 金

資本準備金として認められるものを限定する趣旨を明らかにする必要はないか︒

新たに資本準備金として認めるべきものはないか︒

(4) 

現在認められている資本準備金につき

同第二入入条ノ二第3号を削る必要はないか︒

ω

第二八八条ノ二第 5 号のうち消滅会社の利益準備金及任意準備金相当部分に闘し規定を設ける必要は

な い

か ︒

資本準備金を資本の欠損損補以外の目的のれんめ取崩し得る場合を認めるべきか︒

(5)

( コ

( 3 )   ( 2 )   ( 1 ) 利

益 準 備 金

利益準備金の積立を

(例任意準備金︑利

商 法 第 五 十 三 条 に 依 れ ば

︑ 会 社 と は 合 名 会 社

︑ 合 資 会 社

︑ 株 式 会 社 の 三 種 で あ る が

︑ 会 計 規 定 の 特 別 な 強 行 的 規 定

商法会計規定改正に関する一考察 利益準備金の制度を廃止すべきか︒ 第二八八条の毎決算期の利益の範囲を明らかにする必要はないか︒ 資本準備金が利益準備金と合併して一定限度(例資本の四分の一)に達するときは︑

必要としないものとすべきか︒

三準備金の取崩し順序

資本の欠損のための準備金の取崩しにつきその順序を現行法よりくわしく定めるべきか︒

益準備金︑資本準備金等の順位)

同 負 債 に つ い て 国

(例従業員の退職給与引当金)

利益及損失について第二九

O

条第 1 項の規定をどう改正すべきか︒

財務諸表の種類と様式について

財産目録を決算報告書である計算書類のうちから除外すべきか︒

営業報告書の記載事項を決定すべきか

D

財務諸表の作成につき︑その記載方法その他の様式を定めるべきか︒ 負債性引当金につき規定を‑設けるべきか︒

付 同

日 肘

非常財務諸表につき特別規定を設けるべきか︒

研究対象とする株式会社の限定

(6)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊

を設けて債権者及び株主の保護を計っているのは︑株式会社のみである︒株式会社は物的会社であって︑対外的対内

的に人的信用を基礎としないで会社に存在する財産のみが基礎となっていることは周知の通りである︒

一概に株式会社といっても︑我が国ではその数三十数万大小軽重の種々雑多の株式会社が存在し︑それを規正する

共通の線を打ち出さうとすると︑迷える一匹の小羊の如く最小の線に後退せざるを得ない︒現行商法は株式会社の規

模について且つ資本が実質的に公開的であるか︑閉鎖的であるかについて余りにも寛大である︒会計規定に関する商

法の謙抑性のしからしめると乙ろとしては︑積極的でなく余りにも消極的であって︑最小限度の法定規整を義務づけ

ようとしているに止まる︒相当な規模に達し︑且つ資本が実質的に公開的な株式会社についての法的規整はすでに時

代遅れといっても過言ではない状態に達しているように感ずる︒もっとも企業会計原則は相当多額の資本額を有し︑

相当の事業規模を有する株式会社の計算経理を対象として構想されているので︑自然人である商人及び大小規模の雑

多な会社を対象として法規範を定立している商法上の一般的規定とは︑最初からその領域を異にしている乙とは当然

で あ

る ︒

筆者としては︑か﹀る意味において研究対象とする株式会社は証券取引法に基いて公認会計士の監査を受ける株式

会社に限定したいのである︒即ちこれらの株式会社はその会社の発行する株式を証券取引所に上場していて而も資本

の額が一億円以上であるもの及び一年間に五千万円以上の株式若しくは社債(無担保社債及転換社債﹀の募集又は壱

千万円以上の株式若しくは社債の売出をした会社でその資本の額が一億円以上であるものに限定したい︒

株式会社の財務計算に関する商法現行諸規定は相当な規模以上の会社に関する限り︑改善の余地が甚だ多いからで

ある︒故に大規模な株式会社即ち公開的なその株式が取引所に上場されているような会社の計算規定はどうあるべき

か︑特にその財務諸表の種類様式がいかにあるべきか又それが財務諸表規則といかに調整さるべきかを検討するには

(7)

一般株式会社を対象とするのではなく財務諸表規則の適用を受汁る一億円以仁の資本を有する株式会社としたいので

あ る

又か﹀る先例は一九三七年のドイツ株式法にみる乙とができるむこの株式法は一九三七年に商法から独立して単行 で

法として施行されたものであるが︑ 一九三七年当時五

O

万マルク以上の資本のものでなければ株式法の適用を受けさ

せないで︑それ以下の資本金のものは個人企業になるか︑別の会社になるかして何年かのうちに整理してしまう荒手

術をして大会社を対象とする法律とし五

Ol

六 OM

程度の会社を失格させた法律であったことは事実だからである︒

我が国商法も株式会社については終戦後雨後の街のように乱立したもので一応整理さるべき段階にあると思ふのであ

る が

乙の問題はこ﹀では一応考慮外において論を進める乙ととする︒

商法改正と財務諸表規則との調整の重要性

ベネット教授(の・回

g D

ごはその著院長︒︒︒

E

g z

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耳 目

ロ 己

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品 開

M

g n Z 8

3

ω0

w

に於いて商法と会計学は

手に手を携えて進む

( g

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Z

者 自 色

2

︒ ロ

三 吉

岡 向

︒ 冨

ロ 品

目 ロ

ES

品)と述べているが︑会計学はひとり商法

のみならず︑有限会社法︑証券取引法︑民法︑破産法その他各種の法律と極めて密接な関係がある︒特に株式会社の

計算に関しては︑その内容を直接的に規整するものではないが︑実際上重要な影響を及ぼし︑また商法その他との調 整が問題となるものとして法人税法がある︒更らに資産再評価に関する法的規整として資産再評価法(昭部︑法却) 企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法(昭却︑法問)︑株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律

(昭錦︑法国)なども株式会社の会計研究上看過し得ない法律である︒又最近では現在の株主ばかりでなく将来の株

主たらんとする一般投資家の利益保護を図るため︑証券取引法は証券取引所に上場されている株式の発行会社その他

商 法 会 計 規 定 改 正 に 関 す る 一 考 察

(8)

経 営 と 経 済

第 三

九 年

第 一

一 一

7¥ 

政令に定める者は前述の如く乙の法律によって提出する貸借対照表︑損益計算書その他財務計算に関する書類には︑

その者と特別の利害関係のない公認会計士の監査証明をうけなければならない規定がある︒(同法則条の

2)

そして

証券取引法によって提出されるこれらの書類を作成するための基準となるべき財務諸表規則(正確には︑財務諸表な

どの用語様式及び作成方法に関する規則)が制定され︑その規則を適用するために﹁財務諸表などの用語︑様式及ぴ

作成方法に関する規則取扱要領﹂が発表されている︒

乙の証券取引法により企業会計の進歩は目醒しきものがあり︑終戦後におけるアメリカ会計制度の導入が︑わが国

の株式会社会計の改善殊に外部への報告書としての財務諸表の改善に資したことは多言を要しない︒然るに商法は直

接企業会計を支配する基本法であるに拘らず実際の会計慣行や会計理論と矛盾する所が多く︑わが国では株式会社会

計の立場から﹁商法に対する意見書﹂及び﹁税法に関する意見書﹂が大蔵省企業会計審議会(もと経済安定本部に属

した)から発表されている︒従って今回の問題となっている商法改正も︑企業会計原則や財務諸表規則との調整が中

心となることは必須であって︑商法が現在のま冶では﹁企業会計原則﹂や﹁財務諸表規則﹂による株式会社会計が商

法に違反するという問題をなくする意味からも両者の調整が必要となるのである︒

﹁財務諸表規則﹂は︑﹁企業会計原則﹂の考え万に基いて︑そのうちの財務諸表の種類とか様式とかといふ面即ち

形式の方面を主として規定したものである︒然し間接的には会計の実質についても規制をおよぼすことになるのであ

る︒財務諸表の種類と様式といふ形式的問題と計算書類の確定手続会社の計算内容の問題即ち実質的問題とは密接な

関係があるからである︒形式と実質との相互関係は微妙であり︑実質が形式を規定するとともに︑文逆に形式が実質

を制約する面もあり︑両者は相互規定関係にあるとも考えられる︒

学問の歴史においては一般に先づ実質的研究がはじめられ︑それが一定の発展段階に達すると形式的研究が随伴し

(9)

形式的研究の成熟は︑やがてその学問の実質的研究領域を確定し︑その学聞を純化するに役立つからである︒

商法会計規定改正の基本問題として考えなければならない問題として︑最も望ましい姿として︑外部報告と配当計

算の要請が合致する限度で︑ 企業会計の実務と商法がある程度合致することであるとせられる︒(註

l )

これは終戦

前には企業会計の実務と商法がある程度合致していたため︑終戦後は特にこの感を深くするのである︒株式会社にお

ける会計のやり万を考究する場合︑当然実質的な面︑配当可能利益の計算の面と形式的な面︑即ち財務諸表の表示乃

至報告とが必要であることは︑知何なる論者も承認する所であると思ふ︒然し現実に法文化された大企業の企業会計

を規制するものとして︑商法と証券取引法の二種があり︑それが夫々報告様式が異なるといふ矛盾は︑どうしても早

急に解決しなければならない︒この問題の解決の仕方に実質的な面︑即ち配当可能金額の算定に中心を求めよ︹註

2 )

との考へ万もあるが︑筆者としては商法と企業会計原則との調整の問題は︑実質上の問題よりも表示上の問題にとど

まる場合が多いように見うけられる︒従って財務諸表の種類及様式を定める乙とは︑商法会計規定改正の実質的問題

の解決を容易ならしめると考へる︒然しこの場合に於いて企業会計原則も完全なものではなく改正すべき点あらば改

正し︑商法の会計規定の改正と歩調を合せて︑より新しい完全な企業会計法乃至株式会社法を制定すべきものと思ふ

の で

あ る

︒ ( 註

1

会 社

の 計

算 規

定 を

め ぐ

る 改

正 座

談 会

( 企

業 会

計 日

巻 の

日 号

) ( 註

2 )

江村稔稿

商 法

会 計

規 定

の 本

質 (

会 計

第 九

巻 の

6 号

) 四

商法会計規定の現状と改正の必然性

企業がその目的を遂行するために計算関係を明瞭にすることの必要性は︑個人企業たると会社企業たるとを聞はな

商 法

会 計

規 定

改 E

に 関

す る

一 考

(10)

経 嘗 と 経 済

第三九年第三冊

いコ商法総則の計算規定川第三十二条いわゆる日記帳とよばれるもの一会社ハ帳簿ヲ備へ之ニ日々ノ取引其ノ他財産

ニ影響ヲ及ボスベキ一切ノ事項ヲ整然且明瞭ニ記載スルコトヲ要ス﹂と﹁小売ノ取引ハ現金売ト掛売トヲ分チ日々ノ

売上総額ノミヲ記載スルコトヲ得﹂の適用を受ける︒更らに

ω

第三十三条で所謂貸借対照表の規定﹁会社ハ成立ノ時

及毎決算期ニ於テ貸方︑借方ノ対照表ヲ作ルコトヲ要ス﹂の規定

ω

第三十四条の財産目録で﹁会社ハ成立ノ時及毎決

算期ニ於テ動産︑不動産債権︑債務其ノ他ノ財産ノ総目録ヲ作ルコトヲ要ス︒﹂ 更らに﹁財産目録ニハ動産︑不動産

其ノ他ノ財産ニ価額ヲ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要ス︑其ノ価額ハ財産目録調整ノ時ニ於ケル価額ヲ超ユルコトヲ得

ズ﹂文﹁営業用ノ固定資産ニ附イテハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ取得価額又ハ製作価額ヨリ相当ノ減損額ヲ控除シタル

価額ヲ附スルコトヲ得﹂の財産目録を中心とする財産計算的思考に立つ︑債権者保護の理念にちとづく商業帳簿の規

定の適用を株式会社も商人たる以上当然受けるのである︒

株式会社については︑商法会社編の章︑第四節に﹁会社の計算﹂としてや︑詳細な規定が設けられている︒そのト

ップの条文で会計学で財務諸表とよばれるものが︑計算書類として列挙されている︒即ち

ω

財産目録

ω

貸借対照

ω

営業報告書凶損益計算書問﹁準備金及利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案﹂を株式会社の取締役は定時株主

総会の二週間前に作成して監査役に提出せよといっている︒(商法制条)

然し商法に存在する財産目録が︑企業会計原則と財務諸表規則の二つにおいて消滅しており︑﹁商法と企業会計原

則との調整の意見書﹂にも株式会社が株主総会に提出すべき計算書類から財産目録を削除すべきことが主張されてい

る︒会計学の動向が動態会計を指向する現在一億円以上の株式会社は︑財産計算より損益計算を重視せねばならない

ことはいうまでもない︒とこに財産目録削除の要望が生れてくるのである︒

昭和十三年の商法中改正法律施行法第四十九条では﹁株式会社ノ財産目録︑貸借対照表及損益計算書ノ記載万法其

(11)

他ノ様式ハ命令ヲ以テ定ム﹂といっているが︑未だにその命令が出ていないから︑計算書類の記載方法その他の様式

は法制化されていない︒昭和九年に商工省臨時産業合理局財務委員会から標準財務諸表準則が公表され︑昭和二十四

年に経済安定本部企業会計制度調査会から企業会計原則及び財務諸表準則が公表されたが︑いずれも守らるべきであ

るという事実上の勧告ではあるが守れといふ商法上の義務はないのである︒更らに昭和二十五年に証券取引委員会か

ら﹁財務諸表等の用語︑様式及び作成方法に関する規則一略称財務諸表規則が発表された

c

これは証券取引法上の義

務規定であって︑商法上の義務規定でない︒

然 し

こ冶で問題となるのは︑資本金一億円以上の株式会社では︑会社の採用する会計処理の原則及び手続が一般

に認められている会計原則乃至財務諸表規則に準拠することが要求されるのであるが︑又他方には商法の会社編の規

定によって会計処理することができるから︑財務諸表規則と商法との両者の聞に挟まって困ることになる︒公認会計

士監査の対象となるのは︑財務諸表規則に定める財務諸表であり︑監査役監査の対象となるのは︑商法第二八一条に

定める計算書類であり︑会社側では︑ それぞれの対象を異にするという割切った態度をとちぎるを得ないととにな

る︒乙れらはいずれも会社の財務計算に関する書類であり︑おおむね同様な目的のため作成されるものであるから︑

その前提となる会計処理も︑その結果としての財務諸表も︑実質的に同一性が要求されなければならない︒

更らに株式会社の会計規定として設けられているものを数えると二十ケ条余りあると思ふがその中心をなす計算理

念は株式会社が自由に処分し得る金額︑従って配当に当て得る金額としての﹁利益﹂の算定を課題として構成されて

いることは多くの論者の一致する見解である︒(註

1 )

即ち利益配当に関する第二百九十条の規定を中心として詳細

な計算規定をおいていると解せられる︒それを立証する規定として︑商法第二八八条の会社が利益の配当をする前提

としては︑会社はその資本の四分の一に達するまでは毎決算期の利益の二十分の一以上を利益準備金として積立てな

商 法

会 計

規 定

改 正

に 関

す る

一 考

(12)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊

ければならないといふ規定があり︑又商法第二八八条の二の額面超過金等五項目の金額は資本準備金として積立でな

ければならない規定︑そして商法第二八九条の利益準備金及資本準備金は資本欠損にあてる場合の外は︑取り崩して

はならないといふ規定が存する ζ

と で

あ る

そ乙で問題は﹁会社の利益﹂とは何か︒配当に当て得る金額としての﹁利益﹂とは商法上では一体いかなる内容を

もつかを考えてみる必要がある︒商法学者は︑これに対して一応の定義を与へていて通説は貸借対照表の積極項目に

対する消極項目の差額といふ形式︑即ち会社の純財産額が資本︑法定準備金及び任意準備金を越える差額をいうとす

る ︒

( 註

2 )

乙れは財産目録を極めて重要視する商法の立場としては︑当然であって︑財産目録は特定時点に於ける企業の保有

する一切の資産と負債とを︑もれなく調査して記載し︑かっこれを適当に評価して金額を付することによって作成さ

れるものである︒乙の結果として算出された資産と負債の差額即ち純資産から財産目録作成日における法定資本を減

じた金額をもって︑その期間の利益とするのである︒

しかし近代株式会社の計算体系は貸借対照表だけで会計が完全に成立するものでなく貸借対照表と損益計算書とを

一体とすることによって︑実際上の意味合がでてくるのであり︑貸借対照表は財産目録から作成される貸借対照表で

はなく︑正規の簿記の手続ぎにより作成された継続的な簿記を前提としての貸借対照表と損益計算書を指すのでなけ

れば無意味である︒然るにわが国の商法では損益計算書の内容になるものは︑殆んど触れることがなく︑貸借対照表

の内容になるものに︑若干の規定を設けているに過ぎない︒結局貸借対照表と損益計算書との基本的な関係について

︑は条文上では見当らないのである︒利益の配当について︑やかましくいっているような外観は備へていても︑利益

配当のもとになる利益そのものについての見解がハッキリしていないことには︑肝心の規定が十分の活動をする態勢

(13)

にならないと思ふ︒

更らに商法の計算理念を株式会社の自由に処分し得る金額︑従って配当にあてうる金額としての﹁利益﹂の算定を

中心として構成されているとしたら︑それと同様な思考方式によって︑株式会社は体系的

E

継続的な会計記録を作成

する義務を有することとなり︑商法の規定も乙れに及ばなければならない筈である︒現行商法は︑その総則第五章の

﹁商業帳簿﹂とくに第三十二条において商人の帳簿作成義務を規定しているが︑その内容は極めて不明瞭且つ不完全

であって︑条文の文言を修正する必要がある︒

又財産目録を作成して︑ これによって利益を算定することは︑特定期間中の会計記録を前提としなくとも︑可能で

あり︑かえって継続的且つ体系的記録を必要としない時点的計算たる本質をもっているからである︒商法第三十三条

以下における財産目録の重視を考へると現行商法の根底にある計算理念には継続的な会計記録なしでも行いうる単式

簿記的な利益算定方式があると考えられる︒か冶る計算理念が商法中に認められるとすれば︑企業会計が進歩した今

日︑少くとも一億円以上の上場株式会社の会計規定としては改正しなければならない問題である︒

従って将来再改正が商法に行はれるとすれば︑是非採り入れなければならない点は︑イギリスの一九四八年の会社

法改正に見られる如く︑又一九三七年のドイツ株式法の構想の如く︑商法上の計算書類︑つまり貸借対照表︑損益計

算書を中心とする財務諸表に成果計算動態会計の重視といふ考え方を打ち出して︑その趣旨を理念的に表現した改正

が望ましいとする(註

3 )

論者がある知く︑近代会計学の思想をもったものが必要であると思ふ︒ 乙﹀に商法再改正

の必然性を含むのである︒商法学者である田中誠二博士も︑会社会計法の最近の傾向として次の二点を列挙されてい

る ︒

( 註

4 )

一︑実質的理由に重きをおく傾向

商 法

会 計

規 定

改 正

に 関

す る

一 考

(14)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊

四 二︑社会本位的考察を尊重する傾向

︑英米法乙とにアメリカ法を重視する傾向 特に第三点は証券取引法に基く財務諸表の作成︑様式についての証券取引委員会規則において最も著しく表はれて いる︒故に従来の商法総則の商業帳簿及株式会社の財務諸表において財産目録を基本的なものとして定めている︑フ ( 註

1 )

ランコ・ジャ

l

マン主義は現行商法中にそのま︑残っており︑

(産業経理第凶巻7 号)

( 註

2 )

( 註

3 )

( 註

4 )

山 村 忠 平 氏 稿 忠

佐 市 氏 著

こ︑にも再改正の必然性を含むのである︒

P

企業会計法

d

p

商法︑税法と企業会計原則

MM

九入頁

H

商法会計規定の木質

d

(会計第九巻第六号 江 村 稔 氏 稿

P

商法概説

H

P

商法︑税法と企業会計原則

d

四九頁

F

会社会計法

d

( 入i

九一頁)現代会計学全集 田中誠二博士著

忠 佐 市 氏

財務諸表体系の調整について 著 財務諸表の体系に関して商法︑企業会計原則及び財務諸表規則の問に相異することは︑多くの論者によって指摘さ

田中誠二博士稿

五 商

れる所であるが次の通りである︒

( 4 )   ( 1 )  

財産目録 準備金及利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案

計算書附属明細書

(2) 

貸借対照表

( 3 )   損 益 計

( 5 ) 算

(15)

企 業 会 計 原 則

損益計算書

(2) 

貸借対照表

(3) 

剰余金計算書

( 4 )  

剰余金処分計算書

剰 余 金 計 算 書 凶 間 財 務 諸 表 附 属 明 細 表

以上三者の財務諸表体系をみると︑商法に存在する財産目録が︑他の二つに於いて消滅しており︑

同 財 務 諸 表 附 属 明 細 表 財 務 諸 表 規 則

' h u  

損益計算書

欠損金計算書

( 6 )  

(2) 

貸借対照表

(3) 

剰余金処分計算書

欠損金処分計算書

﹁商法と企業会

計原則の調整に関する意見書﹂にも株主総会へ提出すべき計算書類から財産目録を削除すべきことを主張しているこ

とは前述の通りである︒これに関して今回の商法改正上の問題点の一つとして財産目録を決算報告書である計算書類

から除外すべきかどうかが論ぜられている︒

商法の﹁準備金及び利益文ハ利息の配当に関する議案﹂は企業会計原則及び財務諸表規則の﹁剰余金処分計算書﹂

にほぼ該当するものである︒又財務諸表規則には欠損金計算書及び欠損金処分計算書が加えられている点で企業会計

原則と異なる様であるが︑企業会計原則でも欠損金が生じたときは︑これを作成すべきは当然であるから︑乙の点は

両者矛盾する所ではない︒問題は商法の損益計算書と財務諸表規則及企業会計原則の剰余金計算書との関係と商法の

計算書類附属明細書と後者の財務諸表附属明細表との調整である

o

M

財産目録について

商法における貸借対照表は財産の総目録たる財産目録を作成し︑ これにもとづきその摘要表として作成されるもの

であると通説はされている︒(註 l これは商法が第三十三条で財産目録及貸借対照表の作成を命じているが︑

こ れ

商法会計規定改

E に

関 す

る 一

考 察

(16)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊

‑L.. 

らの帳簿に記載する財産の評価については︑第三十四条において財産目録に関して規定するのみで貸借対照表につい

て規定していないし︑文その評価について実地棚卸を必要とする時価以下主義をとっているからである︒

然し︑現在決算時に作成される貸借対照表は財産目録から作成されるものでなく︑誘導法によって正規の簿記の原

則に基き歴史的記録によって作成されるものである︒乙の意味からすれば︑財産計算としての決算財産目録が企業会

計原則や財務諸表規則から除外されているのは当然である︒﹁商法と企業会計原則との調整に関する意見書﹂におい

ても決算貸借対照表は正規の簿記の原則に従って作成されなければならないから︑毎決算期には財産目録を省略し︑

貸借対照表と損益計算書の作成を要求する如く商法の改正を提案している︒乙れはわが商法がブランコ・ジャ

l

マ ン

主義からアングロ・アメリカ主義に転向しつ﹀ある際︑当然のことであるが︑現実の事態において証券取引法に基く

財務諸表規則において財産目録が消失し︑附属明細表を新らたに採り入れるに拘らず︑昭和二十五年の商法改正法に

おいては財産目録を存置しつ﹀附属明細書を規定していることである︒このことは企業側にとって商法と財務諸表規

則とでは︑取扱いが異なることは︑理論上あり得べからざることである︒然しある実務家の意見では︑実務家として

は財産目録存療論は大きな意義は認められないとする

0 (

2 )

その理由としては︑企業が外部へ公表する財産目録

は極めて簡単な形式にとどまっているのが実情であるが︑内部では資料として少くとも決算時には資産︑負債の詳細

な内訳明細を作成しなければならないから︑例へ商法規定から財産目録を削除しても︑財産の内訳明細を示す意味か

らも︑財産目録の作成を療止するわけにはゆかず︑た

僅かに株主総会に提出するための財産目録作成の労が軽減さ

J Y

れるだけであると︒

又少数の商法学者の中にも︑財産目録存在の必要性を棚卸法乃至財産目録法から財産目録が作成されるのではなく

商法第三十二条を根拠として貸借対照表は会計帳簿に基いて作成されるべきことが結論づけられるとし︑更らに財産

(17)

目録の作成が要求されるのは︑貸借対照表に一括記載きれた各勘定科目の内容の正確性を確認し︑その内容を補促す

る上重要だとする説がある口(註

3 )

こ の

説 法

商法第三十二条の会計帳簿を単に日記帳と考へないで︑ 一般に広汎

な会計帳簿として考えている事実は実際上行われている誘導法に商法の解釈を適応せしめ入︑かためである(

然し︑筆者としては昭和二十五年乃至昭和二十六年の商法改正がブランコ・ジャ

l

マン主義からアングロ・アメリ

カ主義に転向して改正された趣旨から︑英米において財産目録が財務諸表体系から消失して現在︑又会計学が動態会

計を主張する現在︑研究対象とする企業には多少の財産目録の必要性が認められるとしても︑財務諸表体系から削除

するのが理論上当然と思ふのである︒た

J Y

決算時に於ける資産負債の詳細な内訳明細の作成上必要だとすれば株主総

会提出義務又は財務諸表体系から削除して︑その本庖に備付と保存の義務を課し︑必要なときに株主その他利害関係

人民閲覧さすのが適当と思ふ︒

( ロ )

商法損益計算書と剰余金計算書との調整について

商法上の損益計算書は包括主義をとり期間中の損益は原則として︑すべて損益計算書に表示され︑従って当期純損

益に包含されるから︑この当期純損益が直ちに利益準備金設定の基礎となり︑またこの純損益と前期繰越利益剰余金

の合計が︑当期末処分利益剰余金となる︒乙れに反して財務諸表規則では︑当期業績主義にもとづき作成されるから

損益計算書における当期純損益は期間中の営業活動にもとづく期間的損益のみが表示され︑期間外損益は繰越利益剰

余金の増減高として︑利益剰余金計算書において表示されるから︑損益計算書には︑これらの臨時的︑非期間的損益

を除いたものが︑当期純利益金として算出される︒故に等しく損益計算書面では︑当期純利益金として表示される金

額が︑商法と財務諸表規則によるものとでは相違し︑株主債権者には仲々理解され難く︑実務上も損益計算書とは別

に︑利益剰余金計算書を作成しなければならない︒又現在の如き公示制度では︑貸借対照表のみ公示され︑剰余金計

商 法

会 計

規 定

E

に 関

す る

一 考

(18)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊

算書は一般に公表されないので︑財務諸表規則によった損益計算書の比較ができにくい︒アメリカにおいては︑株主

は新聞や経済雑誌に発表される会社の純利益によって株価を判断しようとするのが通常で非経常的損失が剰余金に課

"

せられること︑又その結果会社の利益配当可能性へ及ぼす影轡を理解しない︒従ってこれを避けるため損益計算書と

剰余金計算書との結合計算書が多く公表される︒(註

4 )

財務諸表規則でも同九十二条において︑損益計算書に利益剰余金区分を設けて記載することを認めているし︑企業

会計原則にも乙れを認めて︑ともに損益計算書及利益剰余金結合計算書の作成を許容している︒(企業会計原則第二損

益計算書原則第七)然し︑この記載万法は実務家の中に反対論がある

0

(

5 )

﹁乙の場合にも利益剰余金又ハ

欠損金に関する事項は︑規則の定める様式に従はなければならないから︑各種利益積立金の増減︑前期の利益金処分

即 ち

の記載を要するので︑ これでは損話計算書と利益剰余金計算書とを単に継ぎ合わせたものに過ぎず︑問題の解決とな

らないばかりか︑かえって複雑となるばかりで実務的には何ら使益を得られないこと︑そして更らに﹁剰余金計算書

の独立性を認めることは︑実務上の負担であるばかりでなく︑

財務諸表規則の改正を要望している︒ かえって株主︑債権者の理解を困難ならしめる﹂とし

その剰余金計算書の独立性を排除する理由は︑期間外損益を繰越利益金に直接チャージさせるような︑わかりにく

い方法を止め︑損益計算書の営業利益に続いて固定資産売却損益︑前期損益修正等の非期間的損益項目を特別の区分

筆者もこの点賛成で前述拙稿中にも述べている︒(註

6 )

成が積立金の増減内容を明らかにするも

ω

ならば︑資本積立金についてほ︑積立︑取崩の行ユれた事業年度の貸借対 を設けて表示すればよいとしている︒ 又剰余金計算書の作

照表に又利益積立金は前期利益金処分以外の原因による取崩のあっ仁事業年度の貸借対照表にその額を直接又は脚註

を以て示し︑損益計算書或は貸借対照表の記載万法により剰余金計算書の観念を商法に導入し得るとしている

c

(19)

この考え万は有力な学者(註

7 )

の 中

に も

あ り

今日一般に作成されている損益計算書の様式を変更して︑ 第一の

営業損益項目︑第二の営業外損益項目に追加して第三区分として期間外損益項目をおくならば︑その合計額は利益準

備金積立の基準額を表示し︑同時に当期業績の表示の目的をも達することができる︒しかしこれだけでは配当可能金

額は明示されないから損益計算書の末尾に繰越利益剰余金を掲げ当期純利益との合計額を以て未処分利益剰余金を表

示する乙とを主張される︒文他の論者(註

8 )

は以上の考慮の外に︑損益計算書を二区分とし︑前段を﹁当期純損益

﹂とし︑後段を未処分利益剰余金とすることにより︑利益準備金積立の基準額の表示と利益処分決定の基準額の表示

との二目的を損益計算書によって達する乙とができ︑又当期業績主義の表示も︑乙れによって示し得る点において最

も妥当な解決を示すものと思はれる﹂と︒これらの説に対し︑この結果利益処分の計算をどのようにして示すかが問

題となるばかりでなく︑最も根本的な問題である利益の計算万式は何等解決されないと反対する論者(註

9 )

もある

が︑現行商法と財務諸表規則との調整を考へるならば一応妥当な解決策ではないかと思ふ︒

i '  

tHr 

附属明細書についての調整

企業会計原則は財務諸表体系のなかに︑附属明細表

( ω

n z

a z

‑ ︒)をとり入れ︑また改正商法においても︑これに照

応して第二九三条の五の第一項において︑毎決算期より四ヶ月以内に計算計穎に関する附属明細書を作成すべきこと

を取締役に命じている

c

附属明細表とは財務諸表に記載された事項の内訳明細書にほかならない︒財産目録は財産の

増減の結果

r

けを示す︑全く静的なものであるのに反し︑附属明細表は財務諸表中のとくに重要な項目について︑そ

の期末の状態だけでなく︑更らに一定期間内における増減変化をも示す︑いわゆる動的財産目録ともいうべき性質の

ものである︒さらに財産目録は貸借対照表の補助的説明表であるのに.反し︑附属明細表は損益計算古にも附属する︒

財務諸表規則第九九条においては︑次の十一のものを掲げ︑その様式を具体的に表示している︒

商 法

会 計

規 定

改 正

に 関

す る

一 考

(20)

( 1 0 )   ( 7 )   ( 4 )   ( 1 )   経 蛍 と 経 済

第三九年第三冊 二 O

有価証券明細表

関係会社有価証券明細表

1 ) ( 8 )   ( 5 )   ( 2 )  

有形固定資産明細表

関係会社出資金明細表 無形固定資産明細表

長期借入金明細表

( 9 )   ( 6 )   ( 3 )  

関係会社貸付金明細表

社債明細表

資本金明細表 関係会社借入金明細表

減価償却費明細表

乙のうち

ω

から側までが︑貸借対照表の附属明細表であり︑

ω

は損益計算書の附属明細表である︒

商法第二九三条の五の二項において︑﹁会社の業務及び財産の状況を詳細に記載し︑殊に資本及準備金の増減︑取

締役監査役及株主との聞の取引担保権の設定︑金融を業とせざる会社に在りては金銭の貸付︑他の会社の株式の取得

並に固定財産の処分を明示する乙とを要す﹂として期末における財産の静態のみならず︑

をも記載するものであることを示している︒即ち附属明細書として商法上最小限作成を要求されると考えられるもの

争品︑

一営業期間内の財産の動態

'h

U

向 ︒

n o n u  

である︒この商法上の附属明細書と財務諸表規則の附属明細表とは可能な範囲で︑その内容を統一調整し︑企業に無 資本金明細書 準備金明細書 取締役︑監査役および株主との聞の取引明細書 各種資産明細書

( 4 )  

( 7 ) 種

負 債 明

美T

担保権設定明細書 損益明細書

金銭貸付明細書 株式明細書 ) 

nuU 

4lA 

(  固定財産処分明細書

用な負担を及ぼすことをさげるべきである︒商法上の附属明細書のうち﹁取締役︑監査役及び株主との聞の取引﹂以

外の事項は︑財務諸表規則の附属明細表又は剰余金計算書に重複するか︑或は有価証券報白書に記載される貸借対照

表及損益計算書の内訳明細に示されるから︑商法の附属明細書作成の手数を省くため︑有価証券報竹書を以て代用し

ている会社が少くないようである︒(註叩)

(21)

償の貢に任じ︑ 又附属明細書に記載すべき事項を記載せず︑ 又は不実の記載をした場合は︑取締役は連帯して会社に対し︑損害賠

出刷

ω

一地胞をつりる︒(商法第四九八条ヤ九甘)故に商法り安求する事副℃財務諸表規則の定める附

属明細表もしくは有価証券報告書の記載事項に不足のものを追加しさへすれば︑商法の附属明細表を作成する要はな

い乙ととなる

c

( 註 1 ) ( 註

2 )

( 註

3 )

( 註

4 )

( 註

5

( 註

6

( 註

7 三

へ 可 主

t t :  

岩田 教授稿 (会計︑復刊第一号)

H

商法における計理体系

H

H

経理実務からみた商法中会計規定の問匙点

d

(産業紙理︑第十八巻第6号) 佐

井滋稿

グ企業会計法

H

(産業経理第十九巻 5 号) 山村 忠 一 半 稿

F

期間外損益の表示と公開性(続首と経済第三七年第二冊)

P

前掲論文

d

三別措論文

H

H

剰余金計算書について

H

(企業会計6巻 8 号) 龍家勇一郎栴 佐 土

井滋稿

グ企業経理

H

(産業経理第十九巻包号 龍家勇一郎稿 太田 教授稿 グ商法会計規定の本質 u (会計第七四巻第六号 山村

忠 一 半 稿

百人調査

'

財務諸表の株式及作成方法の調整について

﹁ し

L4JJI︑

稔 稿

前述の如くわが国の商法と財務諸表規則とでは︑その体系が相違しているため︑わが国の上場株式会社では毎決算

企 業 い や 吟 協 会

期に商法上の財務諸表と証券取引法にもとづく財務諸表とを作成せねばならない♀故に両者中に同一であるべき貸借

商法会計規定改正に関する一考察

(22)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊

対照表についてさえ︑異なった様式によって表示されていることが多いっ商法は株主総会に提出する計算書煩の株式

については︑商法中改正法施行法四九条によりて︑﹁株式会社の財産目録︑貸借対照表︑損益計算占の記載万法その

他の様式は命令を以て之を定む﹂と規定されているにも拘らず今日に.主るも︑その命令は制定されていない事情から

いって︑準拠すべき表示方法が存在しない︒従って定時総会提出用の貸借対照表その他の計算書類は︑任意の様式で

作成されているに対し︑証券取引法は財務諸表規則により︑ そ用語︑様式及作成万法は統一的に定められている︒

が株主債権者のためといい︑他が投資家保護のためといっても︑財務諸表は企業の経営成績及び財政状態を明らかに

し︑その企業の財政及経営の状況に関する判断を誤らしめないために作成されなければならない'ものであるから︑表

示万法は両者統一さるべきものである︒企業者側では作成される財務諸表において︑商法上の財務諸表と財務諸表規

則のそれとは︑同一性のものでなければならない筈である︒

実務家の中には︑ 両者を一致させることはなかなか困難である︒(註

l ) といふ意居もみられ

これの投資家︑債権者保護の見地からいっても︑面白くなく︑ゃ︑もすれば両者の相違をよいこととして企業 現在の法制下では︑

る が

会計の粉飾に用いられる恐れが多分にある︒(註

2 )

故にこのような事態を改めるために︑速かに計算書類の様式を

定めるべきであって︑その制定に当っては︑おおむね財務諸表規則に定める様式︑作成万法を商法に導入すべきであ

る ( 註

l

佐土井

滋稿 府経理実務より見た商法中会計規定の問問問点

H

(産業鮮理第日巻 6 号) ( 註

2

龍家勇一郎稿

P

期間外損益の表示と公開性

d

(経営と経済第幻年二冊)

(23)

七 繰 延

調

商法が明文を以て繰延資産として認めているのは︑創業費(二八六条)新株発行費(二八六条の二)社債発行差金

(二八七条)建設利息(二九一条)の四項目に止まり︑極めて消極的態度である︒これはその容認について消極的で

あるのは︑債権者保護のため財産計算及び資本維持の原則重視のため︑換金処分して債権者の弁済に当て得ない性質

のものだからである︒

然るに財務諸表規則では商法に認める四つの項目の外に前払費用(一年以上)︑開発費試験研究費を繰延資産とし

て計上を認めている︒このように実質的な会計処理法について企業会計を規制する制定法相互間に相違のあることは

理論上に於いても︑実務上においてもこまったことである︒

元来繰延資産は会計上その本質として考えられるものは︑計算上の整理項目であり︑便宜上資産とみなして︑次期

へ繰越し︑分割償却するに過ぎないもので︑繰延資産とするよりも繰延%'とすることが適切なものである︒従って法

律論としては認め難いものであることは無理からぬことである︒然し商法が上記四つの・繰延資産を認めた順序をみる

に昭和十三年商法改正に当り︑ スイス債務法に従って設立費用を︑ ドイツ株式法にならって社債発行差金と建設利息

を︑更らに昭和二十五年改正法において新株発行費を認めている︒これは商法が従来の債権者保護のみに限らず︑

方株主の利益保護の要請も無視できず︑動態会計の思想をとり入れて︑商法が繰延%の項目を漸次増加したものと思

ふ︒若しそうであるとするならば︑企業会計の慣習的処理法として認められており︑実務上は創業費等四項目以上に

頻度が多く︑重要性の高い開発費︑試験研究費についても繰延経理を商法上も認めるべきである︒

商 法

会 計

規 定

改 正

に 関

す る

一 考

(24)

経 営 と 経 済

第三九年第三冊 二 四

八 財 務 諸 表 の 公 告 制 度 に つ い て

商法(第二八三条の二)に依れば︑代表取締役は定時株主総会の承認を得た後︑遅滞なく貸借対照表を官報又は日

刊新聞紙上に公告せねばならない口同様に証券取引法においても︑証券取引所に上場せる有価証券の発行会社は︑事

業年度毎に当該取引所に財務論表を提出するようになっている︒(同法十八条)そしてこれらの有価証券報告書は証

券取引委員会に備えおき︑一般公衆の縦覧に供し︑まに請求により騰本又は抄本を交付し︑会社の経理内容が投資者

に 公 開 さ れ る よ う 取 計 ら れ て い る

︒ ( 同 法 第 二 十 五 条 ) 前 者 は 一 般 に 株 式

︑ 後 者 は

現に投資している者ばかりでなく︑将来投資せんとする者をも含めて︑広く一般投資家大衆の利益を図るためといは

れる︒一が株主債権者のためといい︑他が投資家保護のためというものの︑財務諸表は前述の如く株式会社の財政状 債権者保護の目的のためといい︑

態及び経営成績を明らかにし︑その判断を誤らしめないために明瞭であらねばならない︒それが商法では貸借対照表

のみを公告し︑証券取引法では︑貸借対照表︑損益計算書︑剰余金計算書をも公表するのである︒若し両者が表示方

法で異なっているとすればどちらがより正しき財務諸表であるか判断に苦しむ乙とになる

c

か︑る観点からすれば︑

公告制度比おいても︑商法は証券取引法に公表する財務諸表と同一のものを公告するよう商法を改正すべきである

c

若し現状の如きものならば︑実務家の中に公告制度の廃止を主張するものあることは︑もっともなことであると思は

れ る

商法学者の中にも{註

1 )

立法論としては︑ 商法第二八三条において貸借対照表の公告義務を取締役に課して

いるが︑損益計算書にもこれを及ぼすべきであると考えるとする論者があるが︑筆者としては貸借対照表︑損益計算

書(剰余金計算書を含ト二を経理む開の限界とも関連するか︑併せてむ合すべきものと思ふ

( 註

1

Ll~

肘 忠平稿

H

株式会社の監査制度

H

現代会計学全集

(25)

以上われわれは商法会計規定の改正に当って先づ第一に取り上げなければならない問題は︑証券取引法にもとづく

財務諸表規則との調整であり︑そのために財務諸表体系の調整︑財務諸表の株式︑作成万法の調整︑繰延勘定の調整

及び財務諸表の公告制

p

反等について考究したが︑猶︑資本剰余金に関する問題︑評価規定に関する問題︑監査役監査

と公認会計士監査との調整の問題等考究すべき問題が残されていると思ふのであるが︑これは次の機会に譲りたいと

思 ふ

いずれにしても今後の商法改正においては︑証券取引法にもとづく財務諸表規則との調整が一つの先決

条件となると思ふ︒そして商法と証券取引法とが歩調を合せて︑大企業株式会社に適する会社法乃至企業会計法を制

要 す

る に

定することの必要性があるということは︑もはや動かすことのできない問題であると思ふ︒かくすることによって商

法と企業会計はベネット(回

25 2)

ではないが︑相共に進歩することができると信ずる︒

その他の参考文献

Z Y

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(E

n n

o c

m

‑ U

10

s n H

n

o ‑

‑ c

N 0

・ 同

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一 ︑

P

公認会計士監査制度前進のための課題

d

渡辺進稿(産業経理第凶巻 5 号) 一︑﹁会計の計算﹂規定改正をめぐって

H

座談会

d (

企業会計

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H )

一 ︑

H

商法計算規定の根本改正について a 内山徳治楕(産業経理第四巻

16

号 )

商法会計規定改正に関する一考察

(26)

経 営 と 経 済

第三九年第三時

一 一 六

一 ︑

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商法と企業会計原則の読整

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諾井勝之助積(簿記一九五八 lu 月号) 一 ︑

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会社の計算規定の改正に関する一考察

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田中寿稿(産業経理

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第日巻

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会計理論の展開

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田中誠二著 一 ︑

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株式会社会計と会計法規

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番場喜一郎稿

参照

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(評議員) 東邦協会 東京大学 石川県 評論家 国粋主義の立場を主張する『日

二月八日に運営委員会と人権小委員会の会合にかけられたが︑両者の間に基本的な見解の対立がある