「アメリカにおける任意後見と法定後見の競合に関 する一つの判例 : マレー対マレー事件(Murray v.
Murray (S.C.1993), 426 S.E. 2d 781)」
著者 志村 武
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 4
号 4
ページ 191‑200
発行年 2000‑03‑10
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00008817
翻
﹁ 訳 ア メ リ カ に お け る任 意 後 見 と 法 定 後 見 の競 合 に 関 す る 一つ 判の 例︱
︱ マレ ー 対 マレ ー事 件
﹂
︵りヽ口﹃ヽ︐ ﹁く﹄昌口﹃﹃く︵∽
o Ho O
oO∞︶
・ 卜NO∽
・ N︒ 日鮎く∞卜︺
士心 掛側
武 訳
本 稿 は︑ ア メリ ヵ にお け る任 意 後 見 と法 定 後 見 の競 合 に関 す る 一 つ の 判 例 で あ る マ レ ー 対 マ レ ー 事 件 T・ h ミ電 メ 珂 S ス
・9∽ H8 0
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・国∽
・ド ヽ∞こ の全 訳 であ る︒ 高 齢 社 会 急の 激 な進
.展 を 背 景 と し て︑ 一 九 九 九 年 第 一四 五 回 通 常 国 会 提に 出
・審 議 さ れ 一九 九 九 年 第 一四 六 臨 時 国 会 で継 続 審 議 さ れ てい た
︑ 日本 の新 し い成 年 後 見 制 度 創を 設 す る民 法 改 正 案 な ど 関 連 法四 案
︵﹁民 法 の 一部 を 改 正 す る法 律
﹂︑ 法﹁民 の 一部 を改 正 す る 法律 の施 行 に伴 う関 係法 律 の整 備 等 に関 す る 法律
﹂︑ 意﹁任 後 見 契 約 に関 す る法 律
﹂︑
﹁後 見 登 記 等 に関 す る法 律 し は︑ 九一 ァ メリ カ にお け る任 意 後 見 と法 定 後 見 の競 合 に関 す る 一
九九 年 十 月一 二 四 日 に参 議 院 本 会 議 で全 会 一致 可で 決 さ れ衆 議 院 に送 付 さ れ︑ 一九 九 九 年 十 月二 一日 衆に 議 院 本 会 議 で可 決
︑ 成 立 し た︒ こ の新 し い成 年 後 見 法 は︑ さき に成 立 し た 介 護 保 険 法 と と も に 二〇
〇
〇 年 月四 一日 施に 行 され る予 定 であ り
︑ 両 法 が 相 挨 てっ 超 高 齢 社 会 と いわ れ る 二 一世 紀 おに い て︑ 高齢 者 な のど 要保 護 者 の 身 上監 護
・財 産管 理 が円 滑 に促 進 さ れ︑ も てっ 要 保 護 者 福の 祉 が 増 進 さ れ る こと が期 待 さ れ て いる
︒ 新 し い成 年 後 見 制 度 の特 徴 を象 徴 的 に示 す こと と し て︑ 従 来 用 つの 判 例
︱ マレ ー対 マレ ー事 件 一九 一
法 政 研究 四巻 四 号
︵二
〇
〇
〇年
︶ い られ てき た
﹁無 能 力﹂
︑
﹁無 能 力 者
﹂ と いう 概 念 が 廃 止 さ れ
︑ そ の代 り に
﹁能 カ ノ制 限
﹂ ︑
﹁制 限 能 力 者
﹂ ︑
﹁成 年 被 後 見 人
﹂ と いう 概 念 が導 入 さ れ た こと が あげ ら れ よ う
︵民法 十 九 条
︑ 二〇 条
︑ 一 二〇 条︑
一一 条 一︑ 五九 条︑ 四 四 九 条︑ 七 八
〇条
︑ 九 一七 条︑ 一〇
〇九 条 参 照
︶︒ これ は 単 に言 葉 の問 題 に と ど ま る も の で はな く︑
﹁自 己 決 定 尊 重 と本 人 保 護 の必 要 性 調の 和
﹂ と いう 新 し い成 年 後 見制 度 の理 念 を こ こ に看 て取 る こと が でき る の であ る︒ ま た︑ 自 己 決定 尊 重 の見 地 か ら 従︑ 来 存 在 し てき た 法定 後 見 制 度 に加 え て︑ 新 た 英に 米 法 を 参 考 に し つ つも 任 意 後 見 人 の権 限 濫 用防 止 のた め に家 庭 裁 判 所 よに る任 意 後 見 監 督 人 の選 任 を 停 止 条 件 と し て発 効 す る 日本 独 自 の任 意後 制見 度 が創 設 さ れ た こと は画 期 的 な こと と いえ よう
︒ こ の新 し い成 年 後 見 法 が 規 定 す る法 定 後 見 と 任 意 後 見 と いう 二 つの 後 見 制 度
︑ さ ら には そ の実 質 的 機 能 か ら広 く任 意 後 見 と と ら え る こと も でき る 従来 存在 し てき た任 意 代 理 のた め の委 任 契約 は 今 後 ど の よう な関 係 に立 つべ き であ ろう か
︒ メア カリ 合衆 国 の各 州 の制 定 法 な らび に裁 判 例 を 比 較 法 的 に検 討 す る こと に よ り︑ こ の日 本 法 上 の課 題 に対 す 示る 唆 を 得 た い︱
︱ こ のよ う な問 題 意 識 を も てっ 私 は 現在 研究 に取 り 組 ん で いる
︒
一九 二 新 し い 日本 の成 年 後 見 法 では
︑ 任意 後 見 と 法定 後 見 は いか な る 場 合 に も併 存
・競 合
・協 働 す る こと なく
︑ いず れか 一方 が 行 わ れ て いる と き は他 方 は行 わ れ な い と いう 構 成 が と ら れ て いる
︵任 意 後 見 契 約 に関 す る法 律 第 十 条︑ 第 条四 第 一項 第 二号
︑ 第 四条 第 二 項 参 照
︶︒ これ に対 し て︑ 一九 七 九 年 統 一継 続 的 代 理 権 法 の影 響 のも と に す で に全 州 で任 意 後 見 に関 す る制 定 法 を有 し て いる ア メリ カ合 衆 国 にお い て は︑ 各 州 の制 定 法 は︑ 自 己決 定 の尊 重 の貫 徹 と 本人 の 福 祉 を 図 る ため に︑ 任 意 後 見 制 度 と 法 定 後 見 制 度 の併 存 o競 合 を 認 め︑ 二 つの 制 度 を 協 働 さ せ る方 向 にあ ると いわ れ てい る
︵ア メ リカ 州各 の制 定 法 は︑ 任 意 後 見制 度 と法 定 後 見 制 度 の競 合 に つい て︑ 大 き く I全 面 的 競合 型 と
Ⅱ非 競 合
・自 動 消 滅 型 に類 型 化 され
︑ さら に I は① 統 一法 型
︑
② 任 意 後 見 優 先 型
︑
③ 調 和 型 に︑
Ⅱ
①は 全 部 消 滅 型
︑
② 一部 消 滅 型 に類 型 化 す る こと が でき る︒ こ の点 に つい ては
︑ 後 日 別稿 で詳 細 に論 じ た い︶︒
す で に私 は︑ 前者 の任 後意 見 と法 定 後 見 の競 合 に関 す る判 決 と し て︑ ユ﹁ ー イ ング の財 産 対 ブ ライ ア 事ン 件
﹂ 本 誌 第 二 巻 第 二 号 一二 五 頁
︱ 一四 五頁
︵一 九 九 八 年
︶︑ マ﹁ アブ リ ィ の後 見 に関 す る 事 件
﹂ 本 誌 第 二巻 第 二
・四 号 三 四三 頁
︱ 三 六 二頁
︵一 九 九 九
年
︶︑
﹁ラ イ ス 対 フ ロイ 事ド 件
﹂ 本 誌 第 巻四 第 一号 一五 五頁
︱ 一 六 八 頁
︵一 九 九 九 年
︶を
︑ 後 者 の継 続 的 委 任 状 に よ る法 定 後 見 人 指 名 に関 す る 一つ の判 決 と し て ス﹁ ミ ス の法 定 後 見 事 件
﹂ 本 誌 第 四 巻 第 二
・三 号 九 五 頁
︱ 一 一〇 頁
︵一 九 九 九 年
︶を
︑ 全 文 の翻 訳 と いう 形 でを 紹 介 し てき た︒ 本 マ ーレ 対 マ ーレ 事件 判 決 は傍 論 な が ら任 意 後 見 と法 定 後 見 の 競 合 に つい て︑ サ ウ ス キ・ ャ ロ ラ イ ナ 州 の制 定 法
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︲o︲8 じ
︵前 述 の類 型 化 の
Ⅱl
② に該 当 す る︶ を適 用 し てお り
︑ 前 者 に関 す る 一判 決 と し て位 置 づ け ら れ る
︒ 本 判 決 では
︑ 完 全 に障 害 を 負 い無 力能 なに てっ い る八 七 才 の夫 が 八
〇 才 の妻 対に し て︑ 任意 後 見 人 と し て の︑ 先 妻 と の間 の息 子
︵財 産 管 理 人
・法 定 後 見 人 を 兼 ね る︶ によ てっ
︑ 提 起 し た離 婚 を 求 め る訴 え が 認 め られ るか 否 か が 争 わ れ て い る︒ 下 級審 た る家 庭 裁 判 所 当は 該 離 婚 を 求 め る訴 え にお け る息 子 の代 理 権 行 使 を 任意 後 見 人 と し て では くな
︑ 財 産 管 理 人 と法 定 後 見人 と し て の能 力 に お い てと 修 正 し て離 婚 を 認 め た
︒ 本 サ ウ ス
・キ ャ ロラ イ ナ州 最高 裁 判 所 判 決 家は 庭 裁 判 所 の決 定 を
︑ 夫 の能 力 に つい て個 別 具 体的 な事 実 認 定 を 行 う ため に 一部 差 戻 し
︑ 制 裁 措 置 を 求 め る妻 の要 求 を 否 定 し た点 に つい ては 一部 維 持 す ると 判 示 し た も の であ る︒ メァ リ カ にお け る任 意 後 見 と 法 定 後 見 の競 合 に関 す る 一
私 の本 判 決 にお け る最 大 の関 心 は︑ 傍 論 な が 任ら 意 後 見 と法 定 後 見 の競 合 に つい て
・サ ウ ス
・キ ャ ロラ イ 州ナ の制 定 法
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︲い︲い日
︺ を 適 用 し て︑ 法 定 後 見 の範 囲 内 に お い て任 意 後 見 が消 滅 し︑ 両 者 は競 合 し な いと 判 示 し た こと であ る
︵該 当 部 分 は ゴ シ クッ 体 で表 示 し てあ る︶ が︑ 本 判 決 の主 要 な論 点 は︑ 法 定 後 見 人 無は 能 力 者 を代 理 し て離 婚 の訴 えを 提 起 でき る か︑ と いう 代 理人 の権 限 行 使 にお け る いわ ゆ る 一身 専 属 性 の問 題 であ り︑ さ ら に訴 訟 にお け 利る 益 相 反 の問 題 等 にも 本 件 関は 係 し て い る︒ 本 件 事は 例 的 にみ ても 大 変 興 味 深 く︑ 離 婚 が増 加 し てゆ く 傾 向 にあ る 日本 にお い ても 今 後 益 々 こ のよ う な事 例 は起 り やす く な ると 考 え ら れ
︑ ま た 自︑ 分 が本 当 に
﹁信 頼
﹂ きで る人 誰は な かの に つい て考 え さ せ ら れ る ケ ー ス であ る︒ こ のよ う な意 味 で︑ 本翻 訳 は 比較 法 的 な意 味 で の存 在 意 義 を有 す る と考 え る︒ な お︑ 日本 法 への 示 唆 を得 る た め の本 判 決 のよ り詳 細 な分 析 な ら び に法 定 後 見 と 任意 後 見 の競 合 や継 続 的 委 任 状 によ る法 定 後 見 人 指 名 に関 す る でき るだ 多け く の他 の ア メリ カ 判の 決 検の 討 に つ い て は︑ 引 き 続 き 後今 の私 の研 究 課題 と し た い︒
卜NO ∽﹄口
︒ Nヽ ﹃∞H つの 判 例
︱ マレ ー対 マ ーレ 事 件 一九 二
法 政 研 究 四 巻 四 号
︵二
〇
〇
〇 年
︶ 財 産 管 理 人 か つ法 定 後 見 人 の ア ラ ン
・マ ーレ を 代 理 人 と す る︑ フ レ チッ ーャ
・リ ー
・マ レ ー
︵被 上 訴 人
︶ 対 チ ーャ リ ー
・ベ レ
・ マレ
ト
︵上 訴 人
︶ 事 件 判 決 理 由 oZ
・器 ざ
﹈ サ ウ ス
・キ ャ ロラ イ ナ州 最 高 裁 判 所 九
九 二年 十 二月 十 一日 提 出 九九 二年 月二 一日 登 録 上 訴 人側 訴 訟 代 理人 リ ンダ
・ゼ トッ
・ジ ャ クッ ソ ン
︵ジ ャ クツ ソ ン ア ンド ジ ャ ツ ク ソ ン法 律 事 務 所 所 属
︶
﹇在 コ ロン ビ ア﹈ 被 上 訴 人 側 訴 訟 代 理 人 イエ チ
・レ イ
・ハ ム
﹇在 ケ イ ス ーィ
・ウ エス ト コロ ンビ ア﹈ 被 上 訴 人 側 訴 訟 後 見 人 フ ォ ー スレ ト
・ヶ イ
・ア ボ トッ
﹇在 ケ イ ス ィ ー﹈ 担 当 裁 判 官 ト ウ ル︑ ハー ウ ルェ
︑ チ ヤ ンド ラ ー︑ フィ ニー
︑ ム ー ア
一九 四 ト ウ 裁ル 判 官 が 判 決 理由 を 述 べた
︒ ト
ウ ル陪 席 裁 判 官 によ る 判 決 理由 本 件 上 訴 は︑ 離 婚 の訴 え を 却 下 す る よう 求 め る上 訴 人 であ る妻 の申 立 てな びら に妻 の求 め た制 裁 措 置 を 否 認 し た家 庭 裁 判 所 の決 定 を 不 服と し て上 訴 さ れ たも の であ る︒ 当 裁 判 所 原は 判 決 の 一部 を 差 戻 し 一部 を維 持 す る︒ 本
件 被上 訴 人 であ る 夫 は八 十 七 才︑ 妻 は 八十 才 であ る︒ か れ ら は 一九 七 二年 に結 婚 し た が
︑ こ の結 婚 は双 方 にと てっ 再 婚 であ っ た︒ 一 九 九
〇 年 月一 に夫 が 病 気 に な たっ
︒ 二週 間 入 院 し た 後 で︑ 夫 は最 初 の結 婚 で生 ま れ た息 子 であ る ア ラ ン
・マ ーレ
︵以 下
︑ 息 子 と いう
︶ の家 へ行 てっ
︑ そ でこ 昼 夜 を 問 わず 至 れ り尽 く せ り の 世 話 を受 け た︒ 夫 は 一九 九 一年 一〇 月 に ナー シ ング ホ ー ム に入 れ ら れ た︒ 一九 八 九年 十 二 月︑ 夫 は自 分 の事 業 を取 り 行 な う た め に︑ 息 子