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内田滋内田滋

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(1)

公的金融とサービス需給に関する視点

内田滋

(2)

Abstract 

In this  paper we would like  to  reconsider certain managerial and  economic items of some controversial topics of public finance especially  concerning the typical nationrun financial organization, the Postal Sav ing Institution in ]apan. 

Even in the long recession, the deregulation policy program toward  banking and financial services industries could be effected, it  is  observ ed. 

Whether or not discussions concerning the privatization of the Postal  Savings would become more popular among certain stakeholders in c1uding the household sector, it  sti11 should be expected that the more  continuous and overall managerial restructuring policy with virgorous  strategies to pursue the very effeciency in the business by the Institu

tion could be retained. 

As the organization of public enterprise, the domain and scope of  business would also involve fields of financial services for households  and smallsized firms in local areas, whi1giving some adequate con sideration to meet the customer' s satisfaction and R&D that could to  some extent cover and develop the loan business, as well as play the  role of being public incubator, and also to cope with the case of market  failures. 

は じ め に

わが国経済のグローパリゼーションならびに主要先進諸国 (G5G7)  間での国際経済政策協調は,一般にもなじみがあるものになりつつある。圏 内経済動向に呈示される諸相のいくばくかは,海外における関連諸要因との 依存関係が相互に強められて惹起されるところのものとして観察されてい

それは,短期ないし中期の景気循環など経済の変動面のみならず,たとえ

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ば日本的雇用慣行にまで及びうるところのわが国経済の構造変化といった長 期的側面にも関わりを持っている。

80年代以降における国内経済とこれを取り巻く国際経済の諸状況は,相互 に政策面をはじめとする依存性を強めながら,他方で国内経済政策を対外事 項に優先させるよう配慮する努力が傾けられてきたはずである。

近時における産業経済面での規制緩和政策についても,そのような動きと 必ずしも独立ではない。ただ,公的金融を含む金融部門にあっては,たとえ ば一部の価格規制の緩和策が預貸金利などについてお年から94年までの概ね 10年間を要して実施されてきたように,流通分野ほかのケースとは少なから ず異なる趣きを示している。

それには,いうまでもなく金融諸産業が第3次産業部門に分類されるほか,

消費者と生産者サイドに直結するサービスを供給する社会的役割を担ってい るからとされる。とりわけ,信用創造・仲介等のきわめて固有かつ影響力が 大きい重要な産業特性を有し,または付与されていることが関係していると 指摘されてきた。

規制緩和ないし自由化の政策スタンスと経済活動や成果については, 90 代に入ってから次第に論議が高まってきている。 80年代後半から90年代にか けてのバブル・ブームとその崩壊に続く平成不況においては,わが国産業経 済の国際化ないしグローバル化の進展と商慣習・取引様式の国際的標準化・

ルール対応などが議論された。日本的経営の変化についても,広範な領域で の質的および量的成果の向上を考える上で,長期にわたる経済構造のあり方 や方向性の検討とそれにもとづく生産・消費面の双方向に成るグランド・ビ ジョンの有用性,ならびにこれと企業経営面での長期経営計画との対照や整 合化の必要性が指摘されてよい。

次に,規制政策と市場原理については,後者にもとづく基本的な枠組みに こそ共通の認識が得られるであろう。ただ,たとえば「市場の失敗」が関わ り得るところにあっては,先の方向性やビジョンを参考情報にして,ヨリ有

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効で国益にかないしかも国際的に通用しうる形での政策的対応(行政行動) が求められることになる。

すなわち,このことは,全くの市場原理に依拠した形で経済活動なかんず く資源配分と成果(所得)分配が実行される場合に生じうる限界を,いかに 補完し管理していくかの問題が十分政策的に調整される必要性を示唆してい

本稿では,近年において提起されているこれらの諸ポイントと関連させる 形で,公的金融とその機関,なかでも主要な地位を占める郵便貯金等の役割 と事業経営について,地域におけるサービス需給との関わりの観点から諸問 題点を整理し,経営経済的および制度的な基礎的考察を試みることにする。

先ず,次節において規制緩和の進展と郵便貯金事業に関する現状を概観し たあと,皿節で,地域及び地方経済における金融サービスについて,生活設 計と家計ニーズのポイントを含めて検討する。そして,経営組織と事業多角 化の問題がN節で扱われ,経営効率とリストラクチュアリングについても論 及される。最後に,民営化問題へもいくばくか触れる形で, V節においてい

くつかの課題とコメントが結びにかえて示される。

II.規制緩和の進展と公的金融機関

自由化の進展と市場競争 (1)  金融自由化の意味

規制緩和すなわち金融自由化の動きが顕在化したのは,たとえば日米円ド ル委員会で、の合意状況が報じられた頃とする見方もあろうが,一般には預貸 金利に関する自由化プログラムの段階的実施によってであろう。

預金ならびに貸出に関する利子率の決定については,戦後わが国の金融構 造の代表的特徴と見なされたように,公定歩合を中心(起点)とする規制金 利体系に基本的には依存するものであった。

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高度成長期以降,金融部門とその活動の国際化が進展したことや, 73年の オイル・ショックに続く長期不況と低成長化に伴なう赤字国債増発と財政の 国債依存度上昇,企業ファイナンスにおける直接金融の増加,家計可処分所 得上昇と資産残高の増加などとも相侯って,市場性金利への移行すなわち規 制金利体系からの離脱圧力が強まった。

金融自由化は,たとえば内田(1995)においても論じられているように,

金融部門とその活動に対する公的規制水準の低下すなわち政府規制の緩和に もとづくものである。 10年を要して94年に概ね自由化されたところの預貸金 利は,今後に予定される(証券業務分野のものを含む)手数料と合わせて価 格に関する自由化アイテムである。)

価格以外の大きな区分としては,参入・業務・財務などがあげられる。参 入には,新規参入・業際参入などがあり,業務面における規制区分には,広 告・庖舗設置・設備投資などがあげられる。財務規制では,株式保有・大口 融資・配当・財務指標などである。

金融自由化の効果としては,

)市場効率の増大 首)x‑非効率の低減 出)対外コンフリクトの低減

などがあげられる。 i)は,金融に関する資源の配分効率を高めようとする ものであり,ありうべき社会的経済厚生損失を極小化させることに貢献する。

ii)は,市場競争においてi)と密接に関係するもので,通常,企業など個 別組織(内部組織)に存在しうるであろうスラックにもとづく非効率(ライ ベンシュタイン(1966)に準じてx‑非効率)を減少させて生産費用の低下

(原価低減)に資するものである。

出)については,たとえば海外取引や貿易活動に関する対外政府間交渉な ど通商面において考えられる諸陸路・紛争などの対立レベルの低減をはか り,それらが及ぼし得たマイナス効果を回避ないし減殺しようとするものと

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いってよい。その際,自由化項目がもたらしうる何らかのコストの算定と評 価については,一定の社会的合意による手続きと基準にもとづいて,誰のた めに,いかほど,どのように自由化プログラムが計画・実施されるのかが検 討され執り行われるものである。

(2)  金融サービス・商品の基本特性

金融部門における経済主体とその活動,取引の場としての市場等について は,周知のように産業分類としての第3次産業部門におけるものとして取り 扱われる。当該産業部門には,公的および民間金融部門のすべてが包括され ている。

したがって,サービス生産物の基本特性である在庫不可能性すなわち生産

・販売・消費の同時性などについても,金融サービス・商品に対して殆んど の場合に妥当するといってよい。

このことは,以下でみる経営経済上の諸問題について少なからぬ関わりを もたらすものとなる。生産コストに集約される直接および関接部門に要する 費用構造については,近年の電子機械化 (ME化)の進展の影響はもとより,

サービス機能の見直しから供給方法・生産体系に至るシステムの吟味・再検 討(リエンジニアリング)の動向に依存するところが大きい。

そこでは,誰の為に,いかなるニーズに対して,どのような方法で, どん なサービスを供給するかが経営戦略上配慮されることになる。すなわち,金 融に関するニーズの範囲とその分野区分の設定,商品性ないし市場性を勘案 した金融サービス・商品の構成とシリーズの展開・拡充について,顧客範囲 と販売方法・チャネル,庖舗網,審査機能の付与と業務担当管理などのあり 方を,生産コスト面や顧客取引関係の持続性 (Persistence)の面から総合的

にサービスの質的水準を維持・向上させながら,組織的に対応することが効 果的に企図・実行されねばならない。

それは,他方で,その主体が公的機関であると民問機関であるとに拘らず

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妥当することである。とりわけ前者においては,国民経済的視点からの検討 から出発されねばならないであろう。場合によっては,いくばくかの国際的 視点たとえば国際開発への協力政策との関連からするものや, G 5 . G 7 かのリーデイング・カントリーとの金融・財政など経済政策面での協調ない

し相互協力といった視角も不可欠となる。

通信・情報分野における技術革新とこの部門における規制緩和の進展は,

唯にわが国の当該分野の経済活動とその成果が国民経済的便益を増大させる のみならず国際競争力のレベルいかんとも相侠って,次世代ないし近い将来 における広範囲の関連諸産業部門の盛衰や動向にも影響をおよぼすものであ

同様のことが他の分野においても可能であろうから,創造的ないし応用的 技術革新とその成果の動向は,複合的あるいは新規の金融技術革新をもたら しうる契機となったり,それにもとづくニーズを発生せしめることは大いに 期待されるところである。

そこでは,今日の代表的な金融機能である信用創造・仲介などについてさ えも,少なからぬ変質や変性が生じたり,その実現・実行に関わる方法・手 段の予想し難い変革が呈示されることもありえよう。その限りにおいては,

資金の不足部門(取り手)と余剰部門(出し手)を結ぶパイプに関する時間

・危険(リスク)・市場参加者のほか制度・政策・海外要因などの諸条件が,

直接にパイプ自体の大きさや形態,性能等に作用するものとなるのである。

(3)  市場領域と競争

第三次産業(サービス)部門に分類される金融部門の産業は,たとえば投 資顧問業においてみられたように,所定のルールの中で既存産業を中心とす る親企業からの出資や出向のほか,顧客渉外管理,営業情報管理といった事 業遂行上のノウハウを授受しあいながら,業務ないし事業領域の拡張から市 場種類の多様化と市場規模の拡大をもたらしてきた。

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戦後の専門化規制にもとづく市場領域区分の見直しは,内外分断規制によ る外貨・為替管理などの内外金融市場領域の区分が国際収支とりわけvisible goodsの輸出増大による貿易収支尻の黒字基調定着と相侯って二国間ないし 多国間交渉で見直されてきたことよりも遅れをとっていた。

一部のOECD諸国が実施した金融自由化とその政策メニューについて は,夫々の国内諸制度と取引様式・商慣習などとも関連するものであるが,

比較制度的視点からすれば市場の枠組みのなかでも競争にもとづく価格メカ ニズムの重視を市場制度の基本として依拠するケースが一般的である。

国際市場の個別ないし全体領域についても,実体経済および金融経済の諸 活動におけるニーズの多様化とハードおよびソフト両面での技術革新によっ て少なからぬ変革が予想される。

したがって,市場参加者に関する評価やそれら相互の市場競争レベルも,

変革への対応によって可変的である。とりわけ,海外市場での競争にあって は,経営戦略のみならず租税制度など現地法制や本国法令・行政ガイドライ ンへの適切な対応・管理のいかんが海外戦略の成否に影響を与える要因とな っている。

わが国金融部門についても,国際的地位としての相対的シェアの低下にも とづく金融の空洞化問題が指摘されている。)これには,圏内主体(居住者・

市場参加者)とその活動が,外国および海外市場へ向かつて国内市場と代替 的に流出する場合に限定して定義されるケースもある。そして,いわば狭義 における空洞化としては深刻視する段階でないとする考え方も付帯される。

現実にも,夫々の定義における状況が政策的に許容範囲にある限りでは妥当 とされよう。しかし海外諸要因ならびに圏内の経済構造の変化などに基づ いて取引様式や内外市場環境が変化すれば,企業の経営戦略に対して国際競 争力の面からヨリ広範な市場行動の選択領域を提示する方向に作用すること が十分に考えられる。

そこでは,かつて60年代を中心に展開されたわが国製造工業部門の企業に

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おける国際競争力向上への経営努力と,それに貢献した(通商)産業政策が 示唆するところは大いに参考となるであろう。すなわち,輸銀や開銀の融資 活動を含めて,公的金融としての財政投融資システムをはじめとする財政金 融面での国際化ないしグローバル化を市場中心の国際標準ルール採択の検討 と共に適切に管理・推進することが示唆されていると考えられるからであ

基本的業務分野とその機能 (1)  貯金業務

わが国の郵便貯金事業は,主として郵政省貯金局ないし約24千局の郵 便局から成る組織によって担当されている。本来,国民の小口資金による貯 蓄行動を奨励保護し,国民経済のマクロ面での投資活動を主として財政投融 資制度を通じて社会・産業基盤への資本形成に導き資するものであった。

戦後,高度経済成長期を経た70年代半ば以降の低成長ないし安定成長期に おいては,家計所得水準の上昇がもたらした家計資産の蓄積や企業ファイナ ンスの多様化,内外金融市場の諸変化などわが国金融構造が変化するのに伴 なって,郵便貯金事業の役割やその内容にもいくばくかの企業家精神性が求 められ且つ醸成されるようになってきた。

ここにいう貯金業務分野には )貯金受入れ業務

)内・外国郵便為替・振替 )外国通貨両替・旅行小切手売買

などがあり,さらに, 1)については,条件付きの貸付業務として自動貸越 制度が含まれている。

)のサービス・商品としては,通常・積立・定額・定期・ニュー定期・

貯蓄・教育積立・住宅積立などの貯金種類が提供されている。貸越について は,定額・積立など定期性貯金の元本90%までに対して可能であり「ゅうゆ

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うローン」と呼ばれているが,ローン事業としては限定的なものである。

従来,公定歩合を起点とする規制金利体系にあっても,景気循環の各局面 における金利政策でいわゆる民間金融機関と郵便貯金問すなわち官・民にお ける金利水準決定プロセスに関わる金利一元化問題が議論されたりした。

ただ,自由化の傾向も含めて,官民棲み分けないし相互補完に関する議論 は依然として続いている。周知のように, 90年代初めのバブル経済の崩壊で 顕著になった不良債権問題にもとづく民間銀行部門(とりわけ中小企業金融 機関)の信用状態に対する預金者の予想や態度によっては,その行動結果に ついて更なる議論の高まりも考えられる。)

)は,圏内および国際郵便局振替・送金サービスならびに,内国・国際 郵便為替の取扱いである。

これには,民間金融機関との当該手数料における差異により差別化戦略も 結果的に有効である。ただ,官民いずれの部門にあっても,予算管理を含む サービス生産の原価体系の洗い直しとディスクロージャー対策は少なくとも 当面要求される事項といってよい。

)では,円高傾向や生活様式の変化なども関係して,外貨両替とトラベ ラーズ・チェ、ソク売買の取扱件数・金額ともに増大しているご

ここでも,官民の棲み分けと原価管理問題とに関連するが,機械化の推進 を含む利用者利便の向上から「市場の失敗」に関わりうるであろう領域にお けるサービス供給の改善問題までが論議されるところとなっている。すなわ ち,公共性にもとづく事業特性を整備した上で,ニーズに対応した事業経営 と組織管理をおこなうことに加えて,財政投融資問題の各プロセスや金融 サービスのR&Dを含む事業ドメインに関して,公共性に属する観点、から公 的インキュベータとしての役割を担当する事業(分野)とその展開などが考 えられるであろう。

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(2) 簡易保険業務

郵便局が取り扱っている保険事業は,民間保険会社がおこなっている事業 範囲と比較して限定された業務領域となっている。たとえば,保険金額も概 ね l千万円以下で,一般には厳密な医師による事前審査等を前提とせず,そ の意味でも簡易・簡便な手続きによって契約される事業である。

この簡易保険については,たとえば次のように区分することもできる。

)保障性保険 )貯蓄性保険 )その他保険

このうち, 1)には,終身保険・定期保険・夫婦保険などが含まれる。前 者は,保障期間が生涯にわたるもので,有期限のものが次の定期保険である。

後者は,その対象が夫婦である保険種類となっている。

)には,養老保険および終身・定期・夫婦の各種年金保険がある。前者 については,かつて80年代のいわゆる財テク・ブーム期に,一時払い方式に よるものなどの利回りの高さで販売高が上昇して広く知られた。しかし 5 年ないし10年後の収益率実績は景気変動(不況)もあって当初の予想収益率 を下回るところが多くなった。ただ,これに限らず,金融資産の収益率(利 回り)は,他種類の金融資産との相対的比較において論じられるべきもので もある。

簡易保険に占める割合は,近時たとえば新契約のうち約半分が普通養老保 険となっている。

)その他保険

これには,主として学資保険が分類される。もとより,学資保険は所定の 条件下での子女に対する学資を支給するものであるから 1)に類似するもの といえるが,たとえば育英年金付学資保険の場合のように付帯サービス機能 を有するものなどがあって新たに別区分とすることができるであろう。

以上1) '"''  3 )のいずれにおいても,近年さまざまな組合せないし複合的

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な保険サービス商品が開発・販売されるようになっている。また,各経済主 体における諸種のニーズ属性に対応するサービス機能と,それらの組合せ比 率にもとづいて商品設計と料率設定がおこなわれるようになってきた。ただ,

自由化の進展に応じて,他産業 業態の金融商品との競合性・競争性をも織 り込む必要に迫られてきたといえる。

事業計画と課題 (1)  事業経営計画

事業経営計画については,計画主体や経営戦略の主要内容などに影響する 要因として,時間の長さすなわち経営計画期間のとり方がいかなるものであ るかが指摘される。

一 般 に 年 間 を1期間とする通常の経営計画に加えて 3年 .5年・ 10 年の中・長期ならびに 1ヶ月・ 3ヶ月(四半期) ・6ヶ月(半期)の月次 短期ベースの経営計画がある。

これらの各期間の長さ(タイム・スパン)については,個別の経営目標な いし経営管理上の中間 最終目標とそれに関する達成度(計画進捗度)を総 合的に把握し,フィード・バックさせるためにヨリ有効となるよう設定され

したがって,そこには,地域とその特性における(地域間)差異も関係し てくる。とりわけ,地域ニーズや需要者行動などが供給サイドにおける市場 要因と共に大きく関わっている口このため,地域における需給状態の情報を いかに正確に且つ速やかに収集・分析し管理することができるかは,各期間 における経営状況特に経営パフォーマンスを把握し次期間以降の計画にフ

ィード・バックさせるために不可欠である。

諸種の評価基準にもとづいて,計画とそこでの予算カテゴリーへの実現値 予測と実行プロセスを吟味・判定することは,いわゆる予実対比とこれによ るフィード・パック・プロセスを通じて行なわれる。それは,経営計画の定

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期および不定期における見直しと修正に資するところが大きい重要な役割を 持つものである。同時に,それは,スパン・オブ・コントロールの大きさや分 権的管理レベルの高さのいかんに拘らず,各事業(業務) ・担当地域などの 区分に応じて夫々に所定の水準で組織的に実施可能であることが求められる。

(2)  計画作成と市場競争

経営計画の期間に関わるもう一つの視点として,市場競争状況の推移との 関係があげられる。

いうまでもなく,計画の作成段階では,対象期間が短いほど,内生および 外生変数とそれらの変動状況に関する情報の信頼度が高くなるものと推量さ れる。さらに,事後的評価とそれにもとづく経営成果貢献レベルの判定ない しは経営管理能力の査定や人事考課などを予測して,ヨリ正確で堅実な策定 値を提示するというケースが少なくない。

逆に,長期になるほど直接の事業担当各部門の有する将来ビジョンが,諸 変数の制約範囲とそれらの条件(値)をクリアーしながらも色濃く前面に推 し出されるという傾向があることも無視できない。それは,組織自体が本来 的に持つところの組織維持に関わる基本的属性のーっといってもよいもので ある。

すなわち,そこでは全体組織の構成員という帰属意識ないし忠誠心と,担 当事業部門あるいは部分組織におけるそれとの相克関係が,計画策定者の判 断や意思決定水準にも少なからず関わりうることを示唆している。

事業領域や規模に関して,自ら縮小ないし廃止への計画策定を課し,関係 する(直接及び関接)部門との調整作業を最も適切な時期に最も効率的に実 施しうることは極めて困難なことである。通常は,少なからず遅れたタイミ ングにおいてなされる場合が多い。すなわち,このことが,民間企業におけ る事業部制組織そのものの限界を構成する要因の一つであるといえる。

経営計画におけるそのような機動性に対していかに配慮するかは,官民の

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競合ないし競争がとりわけ市場メカニズムにもとづく取引の枠組みの付与さ れる場が広がるにつれて,特に官業に対して必要とされているものといえよ o 市場競争への戦略策定が重視されるゆえんであるが,それはやがて内外 両市場におけるものへと拡大することが考えられる。

(3)  新規事業について

既存事業に関する経営計画とは別に,関連事業ないし派生事業の開発や営 業(操業)に関する計画の策定は,通常,管轄事業部門で行なわれるほか,

特定の重点(とみなされる)事業計画にあっては全体組織の総合企画・調査 部門が執り行なうことが少なくない。

新規事業については,複合生産物(サービス商品)の供給や商品シリーズ の拡充・展開のケースのみならず,全体組織にとって全く新規の(従来の事 業領域との関連のない)機能や市場特性を備えた商品の開発・事業化などの 生産・販売計画にもとづいても実施される。

一般に,新規事業のイニシャル・コストとその回収については,数ヶ年に わたる経営期間を要することが多いため,全体組織がこれをサポートするこ とになる。すなわち,従来からの累積便益(利益ないし剰余)を以って充当 するか,当期以降における他事業部門からの内部補助としての便益移転によ って補填することになり,これは,経時的な組織内部・事業部門間でのリス ク・シェアリング行動にほかならない。

ただ,政府部門ないし公共事業部門が担当する政策パッケージにおいては,

何らかの特定事業(たとえば幼稚産業やその蔚芽的事業)に対して立案・実 施される高速償却ほかの財政手段や政府系金融機関による優遇金利などの金 融措置といったものが組み入れられることも十分可能である。

それは,とりわけ高度経済成長を支えてきたわが国産業政策の財政金融政 策面における有効性を示すものでもあった。しかも,官民における事業主体 の別や,長期的経済構造のあり方などにもいくばくか関係する。そのような

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政策パッケージの応用ケースが新規事業(特にソフトやハードの先端科学技 術分野のもの)に対しでも妥当しうるかどうか,またその有効性の大きさや 市場原理による枠組みとの整合性のレベルがいかなるものであるか,等の検 討・評価は,適用の可否やパッケージ内容を考える際に不可欠となってくる

ものである。

また,事業展開についても,かつての富山の薬売り方式としての巡回販売

・渉外活動から常設庖舗網(営業ネットワーク)設置を経て,メール・オー ダーからコンビュータ一決済にいたるプロセスが考えられる。そこでは,電 子マネーやカード(プラスチック)マネーなどコンビューター(パソコン) アクセスと中継処理によるサービス需給調整方式のあり方が問われることに なり,金融工学におけるものを含む金融技術革新の進展に対応した新規事業 分野が予想されるであろう。

ID. 地域と金融サービス

地域経済における金融サービス需給について (1)地域産業と金融サービス

地域経済の主要な担い手は,第l次産業から第3次産業まで夫々の地域特 性に応じて多岐にわたっている。地域によっては,従前からの特色ある地場

・伝統産業に加え,新興産業も新しく経済活動を支えている。

伝統的な農・林・漁業に彩られる地域であっても,生産体系に占める技術 革新の進展度は,品種改良や機械化などソフトおよびハード両面のものを含 めて,製造工業を追って上昇しつつある。すなわち,省資源、化ないし電子機 器装備の普及にもとづく省力・増産・更新設備投資の展開は,当該産業に属 する中小企業家ないし自営業者に対して,資金収支計画を含む事業経営計画 の重要性と生産・販売面における取扱い商品(生産物)の質的および量的管 理基準の不断の見直しを求めている。

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もとより,このことは各種の製造工業(第2次産業)に特徴づけられる地 域にあっては一層鮮明なものとなっている。しかも,産業聞のライフ・サイ クル交替すなわち基幹であると否とに拘らず産業の盛衰動向が長期において 顕著に観察される経済にあっては,一層厳しい中・長期の企業ないし産業間 競争が各種の経営資源配分をめぐって展開されることになる。

そこでは,マクロ産業金融面のみならずミクロ面での企業金融ならびにフ ァイナンス技術・手段といった分野のあり方がいかなるものであるかが問わ れることになる。同時に,そのニーズに対応できない金融サービス生産者は 地域市場から脱落して行くことにもなる。さらには,地域社会での各経済主 体(部門)が有する域内外での活動目標・動機づけや貢献方法と評価につい てらそれらが地域にいかほど固有のものであるかということにも配慮が必 要となるであろう。

(2) 需給サイド

地域における企業部門の金融サービス需要は,全国型大企業の地方事業所 (本社部門以外の製造所・工場や支社・支庖・営業所など)の経常的取引 サービス需要も含まれるが,大部分は地域社会で生まれ育った中小ないし零 細企業や自営業者による需要である。先に触れたように,自営業にあっては 農・林・漁業を含めて考えられるが,たとえば農業協同組合がおこなってい る信用‑共済事業サービスの供給は当該組合員に向けたものであり,漁業に おいてもこれに準じている。

23次産業部門に属する企業体・個人事業主の場合にも,商工組合中 央金庫や地方銀行のほか主として都道府県ないし広域的市町村部を営業エリ アとする信用金庫や信用組合などの中小企業金融機関が各種の金融サービス をおこなっている。

いうまでもなく全国的営業ネットワークを有する都市銀行も地域型中堅企 業へのR M(リレーションシップ・マネジメント)などで取引比率を高めつ

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つある。いわゆる「卒業生全融」)の存在も含めて,自由化の進展は,各業種

・業態における垣根の低下や業際業務の拡大をはじめとする参入と,それに も大きく関係する価格との両面における競争増大効果をもたらし始めてい

90年以降の平成不況期に呈示された不良債権問題等にもとづく金融機関の 経営改革ないし金融行政のあり方は,長期的な金融構造の方向性や金融自由 化の今後のプログラム内容にも少なからぬ影響を与えつつある。

そこでは,住専(住宅金融専門会社)問題を含めて,農林組合中央金庫を 頂点とする農協金融制度とそこでの経営管理・経営効率の見直しゃ,中小企 業金融機関の経営改善など地域金融サービスの生産・供給主体をめぐる制度 的再検討も必要とされている。

他方,需給調整を担当する市場面での技術革新にもとづく効果の一つに,

通信・情報分野における規制緩和とこれによる当該分野での研究開発・応用 技術化などが,各種のニーズに対応したサービスの出現を可能にし,且つ新 たなニーズの創造やニッチ(すき間)ビジネスの開拓とその市場化を容易な

らしめるように作用しつつある。

メインバンク制の変化についても,徐々に安定株主化政策の変化と相侠っ て生じうることであろう。ただ,企業金融そのものが日本的経営と密接に関 係し且つこれを支えてきたともいえるものだけに,その動向も経済構造から 経営風土・企業文化に至る広範囲での諸要因に依存するものといえる。

それは,たとえば欧米タイプのベンチャー・ビジネスに対する資金供給(ベ ンチャー・キャピタル・サプライ)のあり方から,ひいては日本的慣行特に 雇用・労働問題,人材の流動化,企業部門の活性化,創造性の増大などにも 関わるすそ野の広い重要な経営経済問題である。

(3)  郵便貯金事業と地域社会

地域の産業ないし企業部門の諸金融サービス・ニーズに対して,公的金融

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機関である郵便貯金事業は供給可能な領域が限定的なものとなっている。そ れは,一つには公的金融の特性にもとづくものであり,もう一つには地域経 済における官民間の棲み分けともからむものであるからといえよう。これら は,いずれも表裏をなすものであり,民営化論議には必ず提起されるポイン

トである。

企業ニーズに対応するべく,業務内容の拡張とその経営能力の向上に努め る場合に先ず求められるのは,必ずしもそれら業務や関連市場におけるリス ク管理への対応のみでなく,先ず公共性に基礎づけられる公的金融機関とし ての事業理念ないし経営方針をいかに設定して(地域)社会の合意を得るか

ということである。

通信・情報化の進展は,企業活動のさまざまな分野(研究開発・生産技術 から販売管理や資金回収まで)の付加価値生産性に対する貢献度や生産費用 を評価し見直すことを促す重要な要因のーっとなっている。なお,これは,

同時に中・長期における日本的経営のみならず金融諸機能の変容にも結びつ く可能性を持つものでもある。

これらのことは,企業部門の金融ニーズへの対応という狭い視点からでは なく,逆に企業の事業経営における生産から販売,さらには間接部門活動を も含む本来の生産物・サービスの生産活動といった(本業における)分野に 対するアクセスからのニーズ対応という,もっと広い観点からアプローチす

ることの可能性と有効性を示唆するものである。

郵貯事業経営にとって,地場産業の動向や地域経済の推移から個別企業レ ベルでの景況ないし業績見通しなどにいたるさまざまな情報は,とりわけ生 産・販売といった営業展開のものも含めて,諸分野での顧客行動に関する貴 重な参考データを構成するものである。その意味において,役職員(職員お よび管理職)各層に応じた渉外活動と情報管理ないし営業管理の新たな政策 展開が必要となろう。

(19)

家計と生活設計 (1)  家計と家族のあり方

わが国家計の経済行動については,従来から家計ないし家庭の経済問題や 生活経済・生活経営といった諸領域において取り組まれてきた。しかしシ カゴ学派におけるようなアプローチや,消費行動・貯蓄行動に関する諸研究 を除くと他の経済主体に関するものと比較して,必ずしも十分な蓄積がある ものではない。

たとえば,労働供給をめぐる家族メンバーの新たな追加的労働市場参加と 家事労働・家事サービスへの家族コンセンスの問題は,追加的賃金所得の恒 常化と実物・金融資産蓄積をめぐる家計予算問題に関係するものとなる。そ こでは,予めもしくは併行的に,家計内部における家族関係や生活様式(ラ イフ・スタイル)など,どちらかといえば非経済的もしくは経済外的要因が 関与するところの影響が大きい。

しかも,当然のように,時間的経過と共に各家族メンバーの思いや好み(選 好状態)がいくばくか変化することが考えられるから,家計としての経済行 動における意思決定も異時点間で異なる内容となってくることが少なくない。

また,地域や社会全体との関係から,個別家計が他の平均的家計の行動様 式(またはそのイメージ)から全く独立した行動をとるとは考え難い。特に,

わが国のように,いわゆる中流意識が強く経済的にも社会的にも平等でいわ ば無階級社会の思潮が一般的であるところでは,一層類似したライフ・スタ イルが呈示される条件が整っていると考えられる。

ただ,このようなマクロ的レベルでの観察とは別に,逆にそれがためにミ クロ面では消費行動などでの他者との差異化ないし差別化が志向される。高 度経済成長による家計の可処分所得上昇と家計貯蓄額の増大にもいくばくか 依存しながら価値観が多様化し,これにもとづきヨリ広範に行動様式の選択 領域が拡大してきたことも指摘される。

たとえば,個性化・個別化・少子化…といった諸現象や考え方などもそれ

(20)

に関連するものとして把握することができる。家族構成や家族関係のあり方 そのものから間い直されるようになっているほど,諸種の社会現象が少なか

らず提起されている。

これらについては本稿のテーマを超えるものでもあり別の機会に譲ること として,ここでは,家族メンバーによる労働供給時間と余暇ないし家庭・生 活時間との著しいアンバランスが,家族関係のあり方に対して「共有時間」

の不足ないし欠如を通じて,所得増加の対価ないし費用として何らかの少な からぬマイナスの影響を及ぼしてきたのではなし、かという点を指摘しておく ことにとどめよう。

(2)  生活設計と生活様式

家計とその構成員(家族等)が計画する生活設計は,それぞれのメンバ一 間での調整プロセスを経て家族合意の後に策定されるものである。そこでは,

個人ないし家族全体の主観的自律的思考,選好,行動様式にもとづきながら も,短期ないし長期の経済的社会的環境要因とその推移や変化の予想値をい わば外生的与件として織り込む形で,所定期間内での家計効用の最大化がは かられるものと考えられる。

すなわち,家計とその外的環境との相互関連の程度にも依存して,計画の 作成方針と内容が作成時点における諸種の流行を含む経済状況や社会的背景

.思潮などの影響を少なからず反映したものとなる。

それは,わが国が直面しているたとえば主要欧米先進国に比して急速に高 齢化社会へ移行しつつあることや多様化を志向しつつある教育制造などをは じめとして,家計とそのメンバーが直接関わりうる多くの生活ないし職業上 の現行制度・慣行の動向と密接に関係するものである。

もとより,日本的経営の特徴でもある暗黙的長期雇用慣行すなわち終身雇 用制度における労働供給への家計ないしそのメンバ一個人の考え方や態度 は,長期ないし短期における生活設計の作成にも勤労所得の流れ(フロー)

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の把握(予想値)を通じて少なからず影響してくる。

しかも,主勤務先の定年退職制度の変化や定年前後における(退職後の) ライフ・プランへの考え方などによって,高齢化社会に対する家計や個人の 生活方針ないし生活様式についても従来とは違って多様で幅のあるパターン が見られるようになっている。

生活設計の主体については,たとえば10年タームで主体者自身の職業ない し職業上の立場(主たる職務内容・職位など)の推移がみられたりする。家 庭および家計の社会的経済的構成状況(所得階層・家族構成などを含む)な らびに地域社会(コミュニティ)環境要因の変化などが惹起することなどに よる主体行動への諸影響も併せて考慮されねばならない。

1 生活設計での重視事項

(2項目以内での複数回答,単位:世帯割合%)

ど 住

199 3 31.  22.8  50.8  31.  13.4  6.0  10.3  199 4 30.9  24.0  53.6  34.6  14.2  7.1  9.9  199 5 34.1  24.7  57.3  31.  12.4  6.3  10.7  20 歳 代 38.0  48.0  16.0  46.0  0.0  12.0  14.0 

30 歳 代 32.8  42.4  17.9  64.9  4.6  9.5  7.6  40 歳 代 27.9  22.5  41.  56.8  16.0  7.0  6. 1  50 歳 代 29.8  22.7  74.3  14.5  20.8  4.3  11.  60 歳 代 42.2  18.6  77.9  5.9  7.1  5.9  15.9  70  歳以上 50.4  15.3  80.2  4.6  3.1  3.8  13.0  (貯蓄広報中央委員会 (1995)より)

表 3 個人部門バランス・シート(英国) (単位: 1 0 億ポンド) ;;‑‑‑‑一一三里 1 9 9 0  1 9 9 3  1 9 9 4  1 9 9 5 *  国 民 貯 蓄 3 6  4 7  5 1  5 2  銀 行 預 金 1 5 4  1 6 6  1 6 7  1 7 2  住 宅 金 融 組 合 預 金 1 6 0  1 9 8  2 0 8  2 1 2  英 国 企 業 証 券 1 2 6  1 9 1  1 7 9  生 命 保 険 及 び 年 金 基 金 5 2 8  8 8

参照

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