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楽しい理科授業への模索

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(1)

Bulletin of Faculty of Educa.tion,Nagasaki UniversitylCurriculum and Teaching l992,No.19,11−31

   楽しい理科授業への模索

(IV)小学校における水溶液と濃度に関する学習

橋本 健夫*・岩本 昌弘**・枡田 忍***・西川 敏宏****

(平成4年2月29日受理)

Experiments for the pleasant Science Teaching       (IV)AStudyontheUnitabout

Solutions and their Concentrations in Elementary Schools

Tateo HASHIMOTO,Masahiro IWAMOTO,

Shimobu MASUDA,Toshihiro NISHIKAWA

(Recelved February29,1992)

はじめに

 1960年代にアメリカで盛んになった理科学習の目標と内容,そして,その方法の改善を 求める運動,いわゆる理科の現代化運動は,高等学校から小学校までのカリキュラムの改 善を提案し,さらに各学校でその実践をしたのち,!970年代の半ば頃にアメリカでの活発 な活動を終えた(1)。

 この間,理科の現代化運動は世界に広がり続け,日本の教育界も大きな影響を受けた。

この運動の成果を一言で述べることはできない。それは,理科の学習目標のみならず,学 習方法などにも大きな変化をもたらしたからである。しかし,その始まりから約30年を経 過した今,その全ての成果が肯定されているわけではない。各々の国が,各々の実状に併 せてさらに改善を加える形でカリキュラム改革を進めているのも事実である(2β)。この状 況下で,成功裏に日本の理科学習に根付き,発展されつつ引き継がれてきた一つに,児童 の活動を重視する探求学習がある。

 もちろん,児童の活動を重視する理科学習論は,探求学習に始まったわけではない。し かし,それが,教材の精選や構造化とともに論じられることはほとんどなかった。

 さらに,理科学習においては,児童・生徒が自主的に活動することにより,探求能力を 獲得していくことが重要であるとの強調が,多くの賛同者を得た結果,この学習論が世界

*:長崎大学教育学部(理科教育)

****:長崎市立佐古小学校

**〜***:長崎県西彼杵郡長与町立長与小学校

(2)

各地で推進されていったと考えられる。

 そこで,どうすればこのような児童・生徒が,自主的にしかも楽しく行える理科学習が,

可能になるかを,日頃の身近な実践の中で探ってみたいと考え,現在研究を続けている。

そして,この追究にあたっては,児童・生徒の思考の流れを重視するとともに,彼らの活 動の流れも大切にしなければならないとの結論も得ている(4)。

 一方,各小学校においては,その設立されている地域環境や児童の実態などに合わせて,

それぞれの教育目標が掲げられ,それらの達成を目指して,その学校の教科指導や,生徒 指導,さらには学習環境の整備といった幅広い教育活動が編成されている。

 また,学校によっては,この教育活動に加えて教科や特別活動などに関する実践研究に 学校全体で取り組んでいる場合もある。そして,これらの実践研究が,ある一つの地域の 教師達の実践能力向上に寄与している場合も多い。

 そこで,今回の研究が,それらと相補うことができれば,教育現場への還元がよりスムー ズになるのではないかと考えた。さらに,この研究にあたっては,学校全体で取り組んで いる教科研究(理科〉で浮かび上がった問題点の解決に寄与することも大きな目標にし

た。

 幸い,長崎市及びその周辺部には,理科に関する実践研究を行っている小学校が二校あ り,一つの小学校の研究の過程で浮かび上がった「溶液」に関する問題点の解決を,もう 一方の小学校の研究過程で模索できるのではないかとの感触を持ったこともこの研究のきっ かけとなった。

理科に関する実践研究校の研究概要

A 校

 理科の研究実践校として永年の実績を持ち,長崎における理科学習指導のリーダーとし ての役割を果している。ここでの研究の概要を,研究紀要に記載された文言によって紹介

したい(5〉。

◆学校全体でめ.ざす児童像

 ・自主創造の精神を養い,意欲に満ちた学習力を身につけた児童  ・平和で豊かな情操及びその実践力を身につけた児童

 ・明るく,心身ともにたくましい児童

◆理科学習を遣して育てた 児童

 ・自然の事物・現象に対し,自ら興味・関心を持ち,疑問を解決していこうとする児童  ・学習問題に対し,自分なりの考えを持ち,自らの力で粘り強く探求していくなかで,

  科学的な見方や考え方を身につけていく児童

 ・自分の考えを整理して表現できるとともに,自他の意見を尊重しながら正しい自然   の事物・現象についての理解を図れる児童

◆研究主題

 ・意欲的に学ぶ力を高める理科学習指導法の研究

◆研究仮説

 1.児童が主体的に解決したいという意欲を持つような事物・現象を提示するととも

(3)

橋本・岩本・枡田・西川1楽しい理科授業への模索 13

に,個々の児童の考えを生かすような場を設定し,一人ひとりの探求を援助する手 だてをとるならば,すべての児童が自らの探求方法にそって学習を進め,問題解決 を行い,成就感を味わうことができるであろう。

2 教師が,単元でねらう科学的な見方や考え方をとらえ,単元全体を見通した指導 計画及び単元全体の具体的目標を明確にした指導を進めることができれば,児童は

「問題解決の過程」を身につけるとともに,科学的な見方や考え方を養うことがで  きるであろう。

3 問題解決のまとめの場面において,共有化の場を設け,各自がそれぞれの探求の 過程で得られた情報を共有化することができれば,正しい自然の事物・現象につい ての理解が図られ,基礎・基本を児童一人ひとりに定着させることができるであろ

 う。

 つまり,「教師が理科学習,具体的には一つ一つの単元で学習すべきことがらを明確に 把握して,個々の段階での学習目標を分析し,それに従った教材の配列を工夫するならば,

児童の自主的な活動を引き出すことができ,またそれを持続させることができる。この活 動を連続させることによって,児童には探求能力が徐々に備わっていく。さらに,探求過 程で楽しさを感じることができれば,次のステップヘの意欲も生まれてくるであろう。」

という仮説のもとに,個々の授業が展開されていくのである。

 従って,ここでの研究は,児童の自主的な活動を前面に唱っているものの,それを引き 出す教師のあり方を追究することに比重がおかれているとみるべきであろう。

 また,実際の問題解決の過程,つまり,それぞれの学習過程は,次のように表現されて

いる。

 この学習過程は,個別的 な学習指導を強調している ものの,一斉学習で始まり,

一斉学習でまとめるという 形態をとっており,個性化・

個別化学習についての報告 で言及した数珠玉型の個別

学習に分類される(6)。

 この学習形態は,児童の 自主的な活動を尊重する形 はとるが,教師の描いた路 線の上を児童が進んでいく

というものであり,効率的 な目標達成と,学習主体の 尊重という観点から近年日 本各地で採用されている典 型的巻学習方式でもある。

       表l A校で採用された学習過程

学習過程 学習場面 培われる問題解決の能力

間題を

 か む

問題把握の    面

自然の変化や提示された事象を客観的 みる能力

提示された事象とこれまでの経験を比 して違いや疑問をもつ能力 追究する 予想を立てる

   面 想の情報 換をする    面 証方法を える場面 証する場面 証結果を とめる場面

・事実に基づき,筋道を立てて考える能力

分の考えと他の考えの違いに気付く能力

情報を集めるための観察,実験を計画 る能力

観察実験に必要な条件を整える能力 実験器具を正しく扱う能力 比較観察する能力 定量的にみる能力 資料・材料を集める能力 まとめる 共有化の場面

活に生かす    面

・図表やグラフに表現したりする能力 事実から推量する能力

筋道の通った考え方をする能力 総合的に判断する能力 普遍化する能力

(4)

B 校

長崎市のベッドタウンとして発展しつつある地域の伝統校として,理科学習の研究に力 を注いでいる。研究紀要に従って,この学校の研究概要を紹介したい(7)。

◆学校全体でめざす児童像

 ・すすんで学び,よく考える児童(確かな学力)一自主・積極・想像一

 ・よく働き,みんなとともにやりぬく児童(がんばる精神〉一勤労・協力・忍耐一  ・なくましく,心ゆたかな児童(丈夫な体)一鍛錬・心身の健康・規律一

 ・明朗で思いやりのある児童(やさしい心)一明朗・親切・愛情一

◆理科学習を通して育てたい児童  ・積極的に活動にかかわっていく児童  ・友達と協力し,助け合って活動する児童

 ・発見したことを自分なりの方法で表現できる児童  ・課題解決に向けて,意欲的に学習する児童

◆研究主題

 ・一人ひとりが生き生きと活動する理科学習指導

◆研究仮説

 ・問題追究の過程において,興味ある事象との出会いを図り,一人ひとりの児童に豊   かな体験活動を工夫させることによって,問題解決への意欲と見通しを持たせ,生   き生きとした主体的学習態度を身に付けさせることができるのではないか。

また,ここで採用された学習過程は,表2として示す。これらからわかるように,

○つかむ

1灘

○さぐる

(予想)

(検証計画)

(検証活動)

Oたしかめあう

 1

  (一般化)

  (適用)

○まとめる   (概念化)

事象の観察や自由な試行活動により、学習課題をつ かむ段階

問題解決への意欲と見通しをもった追究活動を行う 段階

追究活動によって得られた知識・技能を基にしての 観察・実験及び製作活動を通して、科学的な見方・

考え方の定着、発展を図る段階

自己の追究したものをまとめ評価する段階

表2 B校で採用された学習過程

       B校 もA校と同じように 児童の主体的な活動

を前面に押しだした 理科学習を提唱して

いる。

 しかし,A校がど ちらかと言えば,教 師の指導性に比重を おいて研究を進めて いるのに対して,B 校では,児童の活動 の連続に焦点を合わ せていると考えられ

る。

 だから,A校の研 究成果としては,学 習指導の一つの型が 期待できる。またB 校の研究は,児童の

(5)

橋本・岩本・枡田・西川:楽しい理科授業への模索 15

活動を連続させるものを浮かび上がらせる可能性を持っている。

「水溶液と濃さ(小学校5年生)」の学習の間題点

「水溶液と濃さ」の単元の学習指導要領による目標と内容は次のようになっている(8)。

◎個体が水に溶ける量を調べ,水溶液の濃さと重さの関係を理解させる。

アイウエ 物は,水に溶けてもその重さは変わらないこと。

濃さの違う同体積の水溶液は,重さに違いがあること。

物が水に溶ける量には,限界があること。

水溶液の水が蒸発すると溶けていた物が水と分かれて出てくること。

指導内容

 水溶液の濃さや溶ける限度などを水溶液の重さを手がかりにして調べ,濃さと重さ との関係についての規則性を発見することに興味を持たせるようにする。

 その過程を通して,物が水に溶ける過程と,物が水と分かれて出てくる過程の両面 から,水溶液の濃さと重さとの関係を理解させることがねらいである。

第1次食塩水作り (2時間)

食塩水を水に溶かし, 様子を観察する。(1)

濃い食塩水とうすい食塩水を見分ける。 (1)

食塩水は濃さによって重さ 水溶液の水を蒸発させると

が違うようだ。 溶けていたものが出てく る。

第2次食塩水の濃さと重さ 第4次 うすい食塩水の調べ方

(4時問) (2時間)

・濃さの違う 2種類の食塩水の濃さ うすい食塩水と水を蒸発乾固で調

を, 重さで比べる。 (1:本時) べる。 (1)

・水と食塩、 できた食塩水の重さの 水道水,池の水,水酸化カルシウ

関係を調べる。 (2) ム水溶液などにもわずかに物質が

・体積と濃さの違う3種類の食塩水 溶けていることを調べる。 (1)

の濃さを工夫して調べる。 (1) うすい水溶液は、蒸発させることで 食塩水の重さは,溶かした食塩の分 調べることができる。

だけもとの水より重くなる。

第3次食塩が水に溶ける量

(4時間)

溶け残りに差のある食塩水の濃さ

を調べる。 (1)

・食塩水が水に溶ける量を調べる。

(2)

溶け残った食塩を溶かす工夫をす

る。 (1)

食塩が水に溶ける量には限りがある。

 この目標を達成し,かつ研究主題に沿ったかたちで平成元年度にA校で採用されたこの 単元の指導計画は,表3の通りである。

      この学習過程        において,一つ        の問題点が浮か        び上がった。そ        れは,児童自身        の思考だけでは,

       水溶液の濃さと        重さについての        関係を明確にす        ること力書できな        いということで        ある。この際用        いられた手法は,

       うすい食塩水を        濃い食塩水に,

       濃い食塩水をう        すい食塩水に一        滴ずつ落とした        時の様子を観察        し,その関係を        推測するという       表3 A校における指導計画(平成元年度〉      ものであった。

(6)

しかし,この活動を繰り返しても両者の関係に気付く児童は少なく,教師による誘導が必 要であった。

 「水溶液の濃さと重さ」の学習は,質量保存や比重の概念を形成する一歩として,この 単元に組み込まれているのであるが,後述の実践報告でもわかるように,また各地の実践 研究発表会でも常に展開の難しい箇所であるとの指摘が強かった。

 この教育現場の意見に耳を傾ける形で,平成元年に改訂された学習指導要領(理科編)

では,次に見られるように水溶液の濃さと重さを直接に考える学習が,この単元から削除

されている(9)。

◎物を水に溶かし,水の温度や量による溶け方の違いを調べることができるように   する。

 ア 物が水に溶ける量には限度があること。また,物が水に溶けても,全体の重さ   は変わらないこと。

 イ 物が水に溶ける量は水の温度や溶ける物によって違うこと。また,この性質を   利用して,溶けている物を取り出すことができること。

 ウ 水溶液の水を蒸発させると,溶けていた物が水と分かれて出てくること。

 ここでは,物に水を溶かしたとき,ある量を過ぎると加えた物が水に溶けずに残る こと.から,物が水に溶ける量には限界があることをとらえる。また,物を水に溶かし ても,物と水の全体の重さは変わらないことを定量的にとらえるようにする。

 いくつかの物を別々に水に溶かし,物が水に溶ける限度は,溶かす物によって違う ことを見つける。また,ある物は,水の温度を上げると,溶ける量が増し,その水溶 液の温度を下げると,溶けていた物が水と分かれて出てくることをとらえる。さらに,

水溶液の水を蒸発させ,溶けていた物が水と分かれて出てくることをとらえる。

 これらの活動を通して,物を水に溶かし,量的変化に目を向けて結果を整理し,物 が水に溶けるときの規則性についての見方や考え方を養うとともに,水の温度や量に

よる溶け方の違いを意欲的に追究する態度を育てるこζがねらいである。

 しかし,水溶液に関する学習の中でその濃さと重さに着目しなくてよいのだろうか,ま た,密度や比重の概念獲得のためのレディネスを提供するのに絶好な学習経験を,単純に 削除してしまってよいのだろうか。

 また,海水と真水が混ざる河口付近では,干ばつの際に上部の水を田や畑に引き入れて いた歴史的な事実があり,その付近ではメダカが川面を泳ぐことも観察される。その他,

いろいろな水溶液を調製し飲用する際に,「よくかき混ぜなさい」という言葉が発せられ るが,その意味ともからんでくる。このように,水溶液の濃さと重さは,児童の生活の中 ではかなり身近なものとなっているのも事実である。このような生活に身近な事象を理科 学習に取り込み続けることによって,理科の知識や考え方を生活に返していける楽しい授 業の展開が可能になっていくと考えられる。

 そこで,平成4年度からは学習されなくなるが,あえてこの「水溶液の濃さと重さ」の 関係にスムーズに気付く学習展開を追究することにした。

(7)

橋本・岩本・枡田・西川 楽しい理科授業への模索 17

「水溶液の濃さ」の実践研究報告の分析

 上述したように,水溶液の濃さと重さに関する学習をスムーズに展開するための方策を 探るために,過去10年間に雑誌等に報告されたこの単元の実践結果を分析した。実践例の 概要を示したものが表4である。

番号 実施年 実施県 単元構成 時間 単元の導入実験 教  材 備    考

1979 愛知県

    (10)ア→イ→ウ→エ

14

食塩が水に溶ける様子の観察

  函薗闘 食   塩

○食塩水を蒸留することによっ て、水蒸気の中に塩分が含ま れないことで、単元のまとめ とした。

2 1981 大阪府 12

食塩が水に溶ける様子の観察

    薗 食   塩

O食塩が水に溶ける様子の観察 から食塩の重さの保存や食塩 水は水より重いといった意識 を持たせ、学習意欲の持続を 図った。

3 1982 埼玉県 12

食塩を入れ、物を浮かす実験

 国、薗薗 食   塩ヤガイモシゴム

0教材の順序性を工夫すること によって子どもが、主体的に 取り組み、学習内容を理解し ゃすいようにした。

4 1983 新潟県 14

食塩が水に溶ける様子の観察

 薗画。蘭 食   塩

O食塩の量と水の量と濃さの関 係をモデル化することによっ てまとめた。

5 1986 北海道 11

食塩が水に溶ける様子の観察

   箇薗 食   塩

○子どもが 自己のイメージを容させそいくように実践し たが、そのイメージを授業に いかに生かすかの課題が残っ

たQ

6 1988 徳島県 9

食塩が水に溶ける様子の観察

    蘭・ 食   塩

0豊かな発想を生かした学習に よって学び合う喜びを味わわ せられたが実験方法の多様

が課題とLて残った。

7 1989 栃木県 10

        水に、色つきの

、...鱗灘 食   塩   水

○事象の提示の什方によって元全体を見通した疑問を痔 たせられることも知った。

8 1989 広島県 7

        水に、色つきの

_鱗灘 食   塩   水 ○発展教材として、  食塩結晶のトンボ製作①簡易比重計  食塩と生命のかかわり などを試みた。

9 1990 東京都

    (18)ア→ウ→エ→イ

12

食塩が水に溶ける様子の観察

    薗・ 食   塩

○単元の導入では この学習で決していく問遮がすべて出てくるように心が1ナた。

10 1980 埼玉県     (19)→ア→ウ→エ 12

濃さの違いを見分ける方法を考える

   団Lゴ     濃い  薄い 食   塩

○食塩水の濃さの違いを見分け るのに、自作の浮きはかりが 効果的であった。

ll 1981 青森県

食塩が水に溶ける様子の観察

    自 食   塩

0生活における溶ける事象の活 用を積極的に行うべきであ

る。

12 1981 新潟県 15

食塩が水に溶ける様子の観察

    薗1・ 食   塩

○子どもにとって、濃さと重さ との関係付けは難しかった。

13 1982 兵庫県

    (22)ウ→ア→エ→イ

13

色付けした食塩水や水を使っての層の観察

 酷藁鵡1 食   塩   水

○色水による層作りは、3段重 ね、4段重ねを演示するとい食塩水作りへの意欲を喚 起しやすい。

14 1985 沖縄県

    (23)ウ→イ→ア→エ

15

濃さの違いを見分ける方法を考える

   ■目     濃い  薄い 食   塩

○児童の思考の流れに沿った展 開を心がけた。

15 1986 千葉県

   (24)

→イ→エ  ァは不明 12

2つの溶質の溶け方の観察

   鴇笛 食   塩 ウ 酸

○児童が事象に働きかけ、多面 的に調べたり 考えたりする

間を+分に乏った.

16 1987 新潟県

   (25)エ→イ→ウ

 アは不明

11 食   塩 0身近な日本海と関川の水から

水溶液の濃さと重さとの関係 を考えさせた。

表4 「水溶液と濃さ」の実践研究報告の概要

(8)

 このように,学習指導要領(理科編)に述べられた目標をアから順番に展開している実 践が多いことがわかる。また,単元の導入実験として物の溶け方を観察する実験を用いて いる場合も多いようである。さらに,食塩の溶け方の観察を導入実験として用い,目標の イ,つまり, 「濃さの違う同体積の水溶液は重さに違いがあること」から学習展開を行っ た場合には,児童にとって濃さと重さの関係付けは難しかったとの指摘も見られる。

 これらの実践の考察や反省などで,この単元の学習に興味・関心を持たせ,積極的な活 動を引き出す演示実験として一部で評価されていたのが,色を付けた濃度の異なる食塩水 を用いての層作りの実験である。中間色になると考えていた児童にとって,2色の層の水 溶液が出来上がるのであるから,興味・関心を示すのは当然かも知れない。さらに,層作

りの活動に夢中になることから,単元を通しての学習意欲も生じてくると考えられる。

 そこで,この層作りの活動を組み込むとともに,単元の展開を修正して実践を行うこと によって濃さと重さの学習をスムーズに展開できるのではないかと考えた。

問題解決に向かってのA校での実践

第1次溶かしてみよう(2時間)

食塩とホウ酸の水溶液作りをする(2)

水溶液の水を蒸発させる、と 溶けていたものが出てくる。

食塩水は濃さによって重さ が違うようだ。

第2次溶けている物を蒸発させて    出てくる物   (3時間)

・食塩水とホウ酸を蒸発乾固で見分 ける         (1)

・水道水,池の水,水酸化カルシウ ム水溶液などにもわずかに物質が 溶けていることを調べる。 (2)

水溶液に溶けている物は蒸発乾固さ せることで,調べることができる。

第3次食塩水の濃さと温度         (4時問)

・濃さの違う2種類の食塩水を重さ で比べる。    (1:本時)

・できた食塩水を重さで比べる。

       (2)

・体積と濃さの違う3種類の食塩水 の濃さを工夫して調べる。 (1)

食塩水の重さは,溶かした食塩の分 だけ,もとの水より重くなる。

第4次食塩が水に溶ける量         (4時間)

・溶け残りに差のある食塩水の濃さ を調べる。       (1)

・食塩が水に溶ける量を調べる。

       (2)

・溶け残った食塩を溶かす工夫をす る。         (1)

食塩が水に溶ける量には限りがある。

表5 A校における指導計画(平成2年度)

 A校では平成 2年度は,探求 過程をふませる ための単元・授 業の構成に焦点 を合わせ,児童 に明確な問題意 識を持たせる事 象提示を行うこ とを心がけた。

 注目の第3次 では,濃さの違 う食塩水を用い,

濃い食塩水は透 明なままで,う すい食塩水には 色を付け,静か にビーカーに入 れると2層に分

かれるという7寅 示を行った。こ の際,共に食塩 水であることを告げるとともに,児童に確認をさせた。その後,この2種類の食塩水をビー カーに入れるとどうなるかを予想させた。「赤色と透明だから,一緒にするとピンク色に なる。」との答えに,2層の食塩水を作ってみせた。児童は驚きの声をあげるとともに,

「どうしてだろう」と考え始めた。

(9)

橋本・岩本・枡田・西川:楽しい理科授業への模索 19

 最初の内は,「不思議だな」,「何故かな」という声が多く,なかなか解決の糸口がつか めない児童が多かったg「ビーカーに注いだ順番でそうなるのでは」とか,「着色している からかも」と考える児童もいたが,「一方の食塩水が重いから下に沈んでいる」と重さに 着目している児童が20%に達していた。そこで,「二つの食塩水の重さは違う」との予想 のもとに,その違いが分かる実験方法を考えさせることができた。

 このように,前年度の学習に比べて教師の誘導が少なくなった点で,学習展開にスムー ズさが現れてきたと感じることができた。この点においては,当初の目的を達成したと考 えられる。しかし,全ての児童が納得して次の段階に進んでいったのではないため,まだ 改善の余地もあると判断している。

B校における問題解決のための模索  前述したように,B

校はA校に比べて児童 の活動に比重をおいた 学習展開を試みようと

している。

 それは,同校の研究 紀要に次のように述べ

られている。

 「今までの教師側の 理科学習指導の進め方 を振り返ってみると,

教師主導で学習を進め はないかと反省してい

る。

 すなわち,学習課題 を提示することから始 まり,実験の方法を考 え,その準備から結果 の考察にいたるまで,

       り 子ども達の思考,活動 する場が少なく,教師 側の指示,指導が中心 となって学習が進めら れることが多かったよ うに思われる。

 そこで,まず児童一 人ひとりが主体的に学 習を進める態度や能力        1        3        の        藁        を        ろ        つ        5        H

ることが多かったので  2

       髪

       ξ

食塩水で3層作りをして 層ができるわけを考えよう。

1H._._...

  濃さあ蓄達ちあゼばな、、か    なめて調べよう

1H

2H 1H

1H

1H

・コilめ芳が薄い     下あ芳が董 同じ体積の食塩水は 濃いものは重たい

濃い食塩水を作ろう

盤が違うめでは輔力・…9 体積を同じにして調さ志.う

    上の方寮軽い

100㏄の水にどれだけの食塩が溶けるか調べよう  溶け残りも放置して溶けるか調べよう  溶け残った食塩を温度を上げて溶かそう

かきまわした食塩水の中の、重さ比ぺをして食塩の広がり万壱調閥まぢ…

食堪水のどΦ陽所を取っても同じ体積で比べると、同じ重さである。

食塩が、一定量の水に溶けるのには限界がある 濃さの違う食塩水を作り・層作りをしよう

溶けた食塩は 食塩水のどこにあるのだろうか。

液の中では、食塩は一様に広がっている 食塩は水にとけても その重さに変化はないかを調べよう。

食塩を溶かす前、溶かした後でその重さに変化はない 一度溶けた食塩を食塩水から取り出そう・

 取り想まう.

3丁

取り出せない

HH

   水を蒸発させて    取り.世ぐう   1…   1

ゆっくり無させて・急い磁発させて:

取り出そう     取り出そう 取り出せた     取り出せた

晶ができた

ホワ酸ζは ってあまり くは取り 食塩水の中の水が蒸発すると 溶けていた食塩が出てくる 出せない 濃い食塩水 薄い食塩水、精製水で結晶のでき方に違いがあるか調べよう。

濃い食塩水ほど結晶が多く、大きい できるだけ大きい結晶を作ろう

表6 B校における指導計画(平成3年度)

冷やしそ…9:

 1

ホウ酸とは

(10)

を育成することを目的として研究に取り組んだ。」

 そこで,この方針を着実に実行し,,かつ上述の問題点の解決を図るために,実践報告例 の分析結果も参考にして,表6に示すような指導計画を考案した。

 この際,次の点に留意した。

①B校で採用されている学習過程の一番最初の段階,つまり「つかむ」段階で,児童   が自主的な活動を十分できるようにすること。

②①のために,教師は,まず児童の興味・関心を喚起する演示教材の提示を行うこと。

  そして,児童が「同じ物を作ってみたい」とか, 「原因を追究したい」というような   意志表示をしたならば,活動の目的を確認する位にして,その後は児童の自由な活動   に任せること。

③従来から学習のスムーズさに欠けると指摘されている「濃さと重さ」の学習を,単   元の導入部に位置づけ,ここでの活動を楽しくすることによって,単元全体を通した   学習意欲の持続につなげること。

④水溶液の層作りが児童の興味・関心を喚起するとの報告をもとに,全国的にあまり   実践報告がみられないものの,より児童の自主的な活動を引き出すために,「3層の   水溶液作り」を試みること。

⑤できるだけ多くの児童が当初の目的を達成するように,教師は活動をスムーズに進   めている児童を学級全体に紹介するなどして,児童間の啓蒙活動を援助すること。

 「水溶液の濃さと重さ」の学習から展開していく指導計画や単元導入部の授業の実際に ついては,資料として掲げる学習指導案を参照して頂きたいが,実際の授業を観察した結 果,また授業のVT Rを分析した結果,さらには授業担当教諭との質疑応答結果から,次 のことが明確になった。

 ①色を変えた3層の水溶液を,教師が児童の目の前で作って提示することは,予想以   上に児童の興味・関心を喚起することができたこと。

 ②3層になる理由や,その作り方についての意見を学級で集約せずに,まず一人ひと   りの児童にその製作に熱中させたことは,それ以降の学習においての意欲の持続や積   極的な活動の展開などの面で効果的であったと判断することができたこと。

 ③ほとんどの児童は,層作りの活動に没頭しながらも,その過程で気付いたことをノー   トに書き入れていたこと。また,これは児童自身の中で濃さと重さを関連させる重要   な資料になっていたこと。

④他人と違った3層の水溶液を作りたがる児童が多かったが,それがうまくいかない   ため,活動を鈍らせる児童もみられた。これは予想されることであった。しかし,3   層になる理由を考えるためには,全員同じ結果が得られたほうが良いと判断して実践   した。だから,児童各自が作成した食塩水を使っての層作りに挑戦する時間を,再度   設けたのであるが,導入部でのより自由な活動が必要かも知れないこと。

 ⑤層作りなどの活動中に児童問の啓蒙活動を促すことは,各児童の活動をより促進し   て,目標の達成を早めること。

 また,他の単元の学習も含めて考えた場合,「つかむ」段階で児童が意欲的に活動し,

気付きなどが十分にノートに記入できた時は,教師にとってその後の学習展開が非常に楽 になり,また,児童も学習を楽しんでいる様子であった。このことは,従来からいわれて

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橋本・岩本・枡田・西川:楽しい理科授業への模索 21

いるように単元の導入部の重要さを再認識させてくれた。同時に,児童の興昧・関心を喚 起する教材の開発,並びにその提示の仕方を十分検討しなければならないこと,加えてそ の基礎的な資料となる教育現場の実践の積み重ねが必要であり,またそれを十分活用しな ければならないことも痛感させられた。このためには,各地の教育現場で毎年行われる実 践研究の成果を有機的に関連させる場やシステムの整備を急ぐ必要があろう。

B校における児童の反応

 B校での試みを,児童はどのように受け取ったのであろうか。また,上述のように学習

、を展開させた時の知識や技能,そして科学的な思考の定着はどうなっているのだろうか。

巻末に資料として掲げた学習指導案通りに授業が進められた学級の児童を対象に,これら の調査を行った。

      まず,一年間の理科学        習の中で,児童が楽しい        と感じた単元を三つ挙げ        てもらった。その結果が,

       表6である。

      この表中,半数以上の        児童が楽しかったと答え        た単元は,いずれも児童        の学習意欲の喚起がスムー        ズに行え,彼らが夢中に        なって活動した単元であ       り,B領域のものが大半        を占めている。しかし,

       「メダカの育ち方」の単        元のように,産卵や艀化        の様子が観察でき,元の        池に返すことができた単        男子:17名 女子:!6名

       元も含まれている。

      一方,この「水溶液の      表7 各単元の学習に対する児童の反応

       濃さ」の単元の中で,児 童にとって楽しかった,あるいはもっと時間をかけたかった活動はどのようなものであっ たのだろうか。また,他にやってみたかった活動は何だったのであろうか。

 学習が楽しかったことと,その学習が知識や考え方などの定着に効果的であったことは 必ずしも一致しないが,一般的には,児童が好イメージを抱いたほうが,学習結果の定着 率もいいと考えるべきであろう。

 この観点にたてば,「水溶液と濃さ」の単元で身につけなければなら・ない知識や考え方 が,学習終了後3ヵ月を経過している現在(平成4年2月),どの程度児童に保持されて いるかを知りたいと思った。

 これら2種類の調査を上述と同じ学級の児童を対象にして行った。調査は,表6に示し 番号 単  元  名

楽しかった 楽しくなかった 男子 女子 割合 男子 女子 割合

1 植物の作りとはたらき[1]

種の発芽

名2 名2 %12 名7 名5 %36

2 メダカの育ち方 kll 8 58 0 2 6 3 植物の作りとはたらき[2]

ウキクサの育ち方 1 2 9 3 閣2 15 4 天気と気温の変化[1] 0 1 3 5 5 30 5 実や種のでき方 1 1 6 4 3 21 6 天気と気温の変化[2] 0 0 0 4 8 36 7 水よう液とこさ 9 12 64 0 0 O 8 光の進み方 4 2 18 3 3 18

9 6 8 42 1 0 3

10 てこのはたらき 15 ll 79 0 1 3

(12)

た実験を図示して,どの実験が楽しいと感じたか,もっと時間をかけたかった実験はどの 実験だったか,さらにどのような物を実験材料として使ってみたかったかなどを尋ねると ともに,単元に掲げられている濃さと重さに関する目標の達成やその保持が,どの程度な されているかを記述させることによって行った。この結果を表8として示す。

 表8からわかるように,

児童が楽しく感じた実験 は,結晶作りの実験であっ たり,自分達で作った食 塩水を使っての層作りの 実験であった。

 また,もっと時間をか けてみたかった実験には,

溶けている物を取り出す 実験も含まれていた。さ らに,食塩水だけでなく 砂糖水でも行いたかった

との明確な意志表示もし ており,この単元の好印 象が続いているものと考 えられる。

 一方,単元の濃さと重 さに関する目標の達成や その保持については,

「同体積によって比べる」

という記述が予想よりも 低い感じがしたが,「濃

さと重さ」の関連に言及

各実験に対する児童の反応

・実 験 内 容 楽しかった もっと時問をかけたかった 男子 女子 割合 男子 女子 割合

1 3層を作る実験

名1 名1 %6 名0 名O %0

2 同体積での濃さと重の比較実験 0 0 0 0 0 0 3 食塩の溶ける限界をべる実験 1 1 6 0 O 0 4 温度を上げてさらにかす実験 0 0 3 2 1 9 5 濃さを変えての層作の実験 4 6 29 3 5 24 6 溶けた食塩のあり場を調べる実験 0 1 3 0 0 0 7 食塩を溶かす前後で重さの比較実験 0 0 O 1 0 3 8 温度を下げて,食塩取り出す実験 0 0 O 0 1 3 9 濾過して,食塩を取出す実験 1 1 6 1 1 6

10 水を蒸発させて,食

を取り出す実験 3 0 9 1 0 3

ll 結晶作りの実験 6 7 38 9 9 53

目標達成の程度 設     問 正 答 誤 答 無 答 その他 なぜ,3層の水溶液がで

るのですか。 31踏1

91%)

1人 3%)

2人 6%)

どのようにして,水溶液

重さを比べますか。 16ぺ2

41%)

7人 26%)

2人 6%)

12礎3

35%)

名名

17

7

舞 度  

                    

のの実  反もも︐  る賄讐のす     寸てて及も ←メしべ言るに明述はい験噺墜は実か要要明各係必必説 の鰐麓童さににな児重積積作と体体操 8醗黙表

ln乙QJ***

して回答している児童が90%に達しており,学習成果の定着率は高いと判断していいので はなかろうか。

 また,これらの結果は,単元の学習終了直後に行った知識や技能などのテスト結果とほ ぼ同じ傾向を示している。従って,上述の判断も大きくは外れていないと考えている。

考察

 今回は,教育現場における実践研究から浮かび上がった問題点を,その実践研究校のテー マと大きく外れることがないように注意しながら,またその問題解決が,児童にとっての 楽しい理科学習につながっていくようにと思いながら研究に着手した。

 このため,平成元年度に理科の実践研究校であるA校で,学習の展開がスムーズにいき にくかったとされる「水溶液の濃さと重さ」に関する学習のあり方をテーマにしたのであ る。従って,A校やもう一つの研究校であるB校での学習展開や指導計画を具体的に考え,

各校でそれを実践してもらい,その実践結果をもとに,このテーマ追究についての考察を

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橋本・岩本・枡田・西川:楽しい理科授業への模索 23

せざるを得ないという制約から抜けることはできない。

 しかし,学校全体で取り組む実践研究の中に,外部からの思惑を持ち込むことは,非常 に難しい状況にあると言える。これは,研究にとりかかる前からある程度予想されたこと ではあるが,教育現場に実践研究の質的向上に幾分かでも寄与できればと考え,あえてこ の方法をとったのである。

 A校が理科の研究実践校としての伝統を持っているが故に,研究のテーマやその方法・

内容が歴史的な流れに束縛されるため,結果的には,B校での問題解決に多くの時間をか けざるを得なかった。しかし,A校での問題解決も一つの方法であると確信している。ま た,この研究を通して問題解決の二つの考え方を示せたことは,これからの実践研究に役 立つと考えている。

 もっとも,児童にとって楽しい理科学習は,彼らが意欲的に活動に取り組む場が多く,

かつ長く保証される学習であろう。これは,行きつ戻りつする試行錯誤の時問が十分にあ ることを意味している。この時間に児童がいかに活動に熱中することができるかが,児童 にとっての学習に対する評価になると考えられる。

 この点からいえば,B校の実践のほうが,児童には好評を博したかもしれない。それは,

教師の指導性を実践研究の前面に打ち出した場合,ともすれば児童の一見無駄に見える活 動に要する時間の割当をできるだけ少なくしようとする傾向が見られるからである。しか し,理科学習においては,一見無駄に使われているように見える時間が,児童にとって非 常に重要であり,楽しい理科学習の構築になくてはならない場合も多い。今回の研究を通

して,それを強く感じた。

 さらに,濃度の異なる三つの食塩水を用いての3層の水溶液作りは,この単元の導入部 における演示教材として十分に使用できること,また「濃さと重さ」の学習をスムーズに 進める原動力になることが判明した。それは,児童の興味・関心を喚起するとともに,層 作りの活動に児童を熱中させ,単元を通しての学習意欲を引き出したことや,懸案の濃さ

と重さを関連させる気付きを,児童が多数書いたことなどからも言えるだろう。

 加えて,児童が意欲的に活動を行い,積極的に学習に取り組んだ単元は,そうでない単 元に比べて児童の好印象を与えている。これは当然のことであるが,教師側としては何故 そのような活動の差が生じるのか理解に苦しむ場合がある。何故ならば,いつも万全を期

して準備をしているはずなのである。

 これは,教師の勝手読みに起因しているのであろう。児童の把握や,学習環境の整備に 若干の思い違いが生じ,学習そのものが,児童の身近なものになっていないことから起こ ると判断したい。この解消にあたっては,それ以前の実践記録を詳細に調べることや,実 験や製作の過程など細部にわたって事前に入念なチェックをすることが必要となろう。

おわりに

 従来から学習展開のスムーズさに欠けると指摘されている,「水溶液の濃さと重さ」の 学習を取り上げ,そのあり方を教育現場の実践研究校のテーマに合わせる形で追究した。

しかし上述したように,協力関係を維持するには限度があり,十分な追究が行えたかは評 価の分かれるところであろう。

 また,このような研究では,児童一人ひとりの変容の客観的な把握も必要となるが,今

(14)

回はそれを担当教諭の主観に任さざるを得なかった。次の研究の機会には,心理学的な調 査も含めて,新しい領域も加えて追究したいと考えている。

要約

 教育現場の実践研究の過程で問題点として浮かび上がった,「水溶液の濃さと重さ」に 関する学習展開のあり方を研究テーマとして取り上げた。そして,その追究にあたっては,

小学校全体で取り組む実践研究に少しでも寄与できればと考え,理科の実践研究校の主題 から大きくはみ出すことのないように配慮した。

 この単元の学習に関して効果的であると判断した「異なる濃度の水溶液を使っ、た層作り」

を,「濃さと重さ」の学習に適用した。その結果,児童は濃さと重さの関連を意識するよ うになり,課題の解決に向かって一歩前進した。

 さらに,この「層作り」を単元の導入部に位置づけるとともに,児童の意欲的な活動を 十分保証する指導計画を考案して,それを実施した。その結果,予想以上に児童が意欲的 に学習に取り組むようになり,知識や技能などの修得にも好結果をもたらした。

 このように,児童の意欲を喚起する教材の開発と,児童の活動を重視する姿勢が,楽し い理科学習を展開するうえで必要不可欠な要因となることを実感した。

引用文献

(1)野上智行:アメリカの理科教育改革運動 日本理科教育学会編 現代理科教育大系 Vol.1  東洋館出版 1978

(2)学校理科研究会:現代理科教育学講座 第2巻 内容編 明治図書 1986

(3)学校理科研究会:世界の理科教育 みずうみ書房 1982

(4)橋本健夫他:楽しい理科授業への模索 一小学校における燃焼単元の学習一 長崎大学教育  学部教科教育学研究報告 VoL8 1985

(5)佐古小学校:平成3年度研究紀要 1991

(6)橋本健夫:理科学習における個別化・個性化教育 長崎大学教育学部教科教育学研究報告  Vol.ll l988

(7)長与小学校:平成3年度研究紀要 1991

(8)文部省:学習指導要領一理科編一  (昭和53年改訂版)

(9)文部省:学習指導要領一理科編一  (平成元年改訂版)

(10)鈴木利男:物のおもさと濃さ 初等理科教育 Vol.13 No9 初教出版 1979

(ll)吉武・土屋:食塩水の濃さと重さ 初等理科教育 Vol.15 NolO 初教出版 1981

(12)加藤 勘:子どもの思考のプロセスを重視した教材化 初等理科教育 Vol.!6 No5 初教

 出版1982

(13)木村喜恵子:食塩水の濃さと重さ 初等理科教育 Vol.17 NolO 初教出版 1983

(14)作原逸郎:自己のイメージの変容を求めて 初等理科教育 Vol.20 Noll,初教出版 1986

(15)福井健:水溶液の濃さと重さ初等理科教育VoL22Nol 初教出版

(16)田村秀明:水溶液の濃さと重さ 初等理科教育 Vol.23No2 初教出版

(17)宗本祥子:水溶液の濃さと重さ 初等理科教育 VoL23 Nol3 初教出版

(18)川俣 徹:対話による見方・考え方の変容 初等理科教育 Vol,24 Nol2 1988 1989 1989

初教出版 1990

(15)

         橋本・岩本・枡田・西川:楽しい理科授業への模索      25

(19)山田陽一:食塩水の濃さと重さ 初等理科教育 Vol.14 No9 初教出版 1980

(20)千葉 稔:場の構成を変えると子どもの分かり方はどう変わるか 初等理科教育 Vol.15  No l 初教出版 1981

(21)熊谷厚子:事実に即した自然認識 初等理科教育 Vol。15No4 初教出版 1981

(22)森本 撰・川淵:食塩水の濃さと重さ 初等理科教育 Vol.16 NolO 初教出版 1982

(23)普天間・田港・安村:食塩水の濃さと重さ 初等理科教育 Vol.19 No l 初教出版 1985

(24)斉藤勝彦:水溶液の濃さと重さ 小学校理科教育研究 Vol.4 No7 全教図 1986

(25)中村俊枝:水溶液の濃さと重さ 小学校理科教育出版 Vol.5 No7 全教図 1987

参照

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