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氏名 住田

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Academic year: 2021

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氏 名 住田

ス ミ タ

博子

ヒ ロ コ

学 位 の 種 類 博士(政治学)

学 位 記 番 号 社博 第26号 学位授与の日付 平成29年2月23日 課程・論文の別 学位規則第4条第2項該当

学 位 論 文 題 名 国家教会体制の共同体論的基礎と抵抗権思想―カルヴァン政治思想 の発展

論 文 審 査 委 員 主査 教授 大澤 麦 委員 教授 河野 有理

委員 教授 田上 雅徳(慶應義塾大学)

【論文の内容の要旨】

本論文は、

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世紀の宗教改革者ジャン・カルヴァン(Jean Calvin, 1509-1564)の国家教会 体制と、それに起因する彼の政治思想の諸相を、共同体論の観点から分析することを目的 とした。

カルヴァンは宗教改革者の中でも、政治との関連において語られることの多い人物であ るが、その語られ方は、自由主義思想の唱導者か、あるいは専制支配者かという極端に分 かれる傾向がある。

しかるに本論文は、神による予定という教説が、カルヴァンにおいては自由として観念 さ れ て い た こ と に 注 目 し 、 彼 の 特 殊 な 自 由 概 念 で あ る 「 キ リ ス ト の 自 由 」

Liberte

Chrestienne

に基づいて実際の共同体論が構成された次第を明らかにした。カルヴァン時代

のジュネーヴの現象の表層でなくテクストそのものに立ち返ってカルヴァンの政治構想を 理解することを目指した。本論文の構成は、以下の通りである。

第1章では、都市国家ジュネーヴの独立過程を描いた。1520年代にジュネーヴのサ ヴォワ公国からの独立の動きが始まる。この政治的気運に連動してカトリック教会からの 独立の欲求が生まれ、宗教改革が引き起こされた。独立後のジュネーヴにおいては、市政 府と教会がそれぞれ独自の機構を有し、いわゆる神政政治の形態とはなっていなかった。

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章はカルヴァンの自由論を考察した。彼の自由概念が自力救済からの解放および神 への服従を内容としたことを確認した。それは、人間の予定が不可知であるとする、いわ ゆる予定説と密接な関係にある。救いに定められた真の信者はそれに見合う行動をとるは ずであるとして、救済と外面的行為を緩やかに関係づけてはいた。っしかしカルヴァンは、

人間の外面的行為を救済の原因とも救済の確証とも決して考えなかったのである。真の信

者、すなわち救済が確定した聖徒であることの中心的意味は、立派な行いをする点ではな

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く、神に全てを委ね服従する点に存していた。

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章は、 「神の民」共同体としてのジュネーヴの様相を描いた。その結果、聖俗両権力 の協働のもとに共同体全体として神に奉仕することを目指し、ジュネーヴ市(同時にジュ ネーヴ教会)が全体として「神の民」に相応しい姿になるよう導いたことが明らかになっ た。具体的には、婚姻生活の管理を題材にとり、ジュネーヴ教会と市政府が一体となって 市民の清い生活を担保しようとした様子を描いた。そして、聖俗両権の最大の提携を、長 老会の存在に見出した。長老会は、聖俗両領域からの人員の供出によって構成された組織 であった。市民の日常生活を取り締まったが、現実のジュネーヴ領域教会の中には、聖徒 らしからぬ行ないを示す者が存在した。しかし、それらの人々をも含めた共同体全体を、

教会は「神の民」共同体にしようとしたのである。信仰上の目的に、ジュネーヴ市政府も 全面的に協力した。これが、ジュネーヴ領域教会制の聖俗協働であった。

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章では、カルヴァンの再洗礼派批判を題材として、ジュネーヴ共同体を構成した原 理を解明した。手掛りとして、聖礼典論に焦点を当てた。教会が、神との間に契約を結ん だ「神の民」の共同体であるとするならば、契約を表象する聖礼典――具体的には洗礼と 聖餐――への参加資格が、共同体メンバーシップを規定し、ひいては共同体の性格を決定 する要素となると考えたからである。検証の結果、包摂的な聖礼典論と共同体論を導くこ とができた。カルヴァンは神と「神の民」の間の契約を、集団を単位として設定していた。

神との契約責任を課せられるのは個人ではなく、共同体であった。洗礼は本人の意思では なく先祖が洗礼を受けた信者である事実に基づくと観念するような洗礼論、しかも先祖を 含めた教会共同体が神との契約の締結主体であると前提するような洗礼論により、共同体 は包摂性を付与された。また聖餐停止が共同体からの排除を意図するものではなかった事 実も、やはり共同体の包摂的性格に寄与したと考えられる。セクトが、信仰上の志を同じ くし一定の資質を満たした人間のみから共同体を構成するのとは対照的に、領域教会は教 会教区の領域内に入ってきた様々な人間たちを一つの共同体として編成するものであった。

後者を可能にした思想的基礎は、この包摂的な共同体論にあった。さらに領域教会は、現 世の論理に則った政治権力を包含するものでもあった。 「神の民」として信仰の論理を生き ながらも、同時に現世の論理を排除しない態様が可能になったのは、この共同体論の包摂 性に理由を有すると本論文は主張した。

本論文第

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章は、ジュネーヴで見られた共同体論が、次の世紀のカルヴァン派に生まれ

た新しい論理的展開の礎になったという思想継承関係を示した。カルヴァンは、為政者が

神によって設置された点を重視し、為政者への抵抗を認めなかった。抵抗権論者は、為政

者が神の意図に反するような支配を行った場合には、共同体を構成する他の部分(下位の

為政者や民衆)が、為政者の行為を止めさせなければならないと考えたのである。カルヴ

ァンとカルヴァン派抵抗権論者は、権力について正反対の立場をとった。にもかかわらず

両者の間には共同体論について一致が見られるのである。この章では、抵抗権論を主張し

た17世紀カルヴァン主義者のジョン・ノックスおよびユニウス・ブルートゥスのパンフ

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レットを検討し、彼らの論理のうちに、カルヴァンに見られたのと同様の共同体論が存在 することを確認した。すなわち為政者と民が一体となって神との間に契約を結ぶことによ り成立する、契約者の共同体である。

カルヴァンにおいては、聖礼典に与った人間は、神との契約関係のうちにある人間であ るという原則論が維持され、それゆえ包括的な共同体像が生じた。同じ共同体論でありな がら、見做しの論理ではなく、契約義務を厳格に解釈する方向を採ると、抵抗権という答 えに至る。本論文では、カルヴァン派抵抗権論についてカルヴァン共同体論との継承関係 を強調するために、クェンティン・スキナーの説との対比を示した。スキナーとの対照の 内に、抵抗権論がカルヴァン神学の基盤の上に成立したことを論証し、抵抗権思想の共同 体論的性格を明らかにした。

本論文は全体として、人間の自由意思や個人主義の有無を評価の軸としないよう留意し

ながら、共同体の論理の解明に努めた。その結果、抵抗権が、人間中心主義や個人の権利

という概念から出てきたのではなく、共同体的思考から生じたことを明らかにした。

参照

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