アルコール依存者のロールシャッハ・テストについ て
その他のタイトル A Rorschach study of alcoholics
著者 高橋 雅春, 村井 隆文
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 17
号 2
ページ 49‑56
発行年 1986‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00022726
関西大学『社会学部紀要」第
1 7
巻第2
号,1 9 8 6 , p p . 4 9 ‑ 5 6 . ISSN 0 2 8 7 ‑ 6 8 1 7
アルコール依存者のロールシャッハ・テストについて
高 橋 雅 春 ・ 村 井 隆 文
A Rorschach study of alcoholics Masaharu Takahashi and Takafumi Murai
a b s t r a c t
A c k e r m a n , M . ( 1 9 7 1 ) a t t e m p t e d t o v a L i d a t e t w e n t y h y p o t h e s e s r e p o r t e d o v e r t h e p a s t t h r e e d e c a d e s p r o f e s s i n g t o d i f f e r e n t i a t e a l c o h o l i c s f r o m n o n ‑ a l c o ‑ h o l i c s u s i n g t h e R o r s c h a c h T e s t . H e f o u n d o n l y t w o s i g n i f i c a n t d i f f e r e n c e s
w h i c h w e r e c o n t r a r y t o t h e r e s u l t s p r e d i c t e d .
T h i s , s t u d y a i m s t o r e e x a m i n e t h e v a l i d i t y o f t w e n t y h y p o t h e s e s c u l l e d f r o m t h e l i t e r a t u r e o n a l c o h o l i s m a n d t h e R o r s c h a c h T e s t , a n d t o a s s e s s c h a r a c t e r i s t i c s o f t h e a l c o h o l i c p e r s o n a l i t y .
T h e e x p e r i m e n t a l g r o u p c o n s i s t e d o f 1 5 0 m a l e a l c o h o l i c s a n d t h e c o n t r o l g r o u p c o n s i s t e d o f 1 0 0 m a l e n o r m a l s .
I n t h i s s t u d y , 1 . ( ¥ ' l l l + J K + x ) : R < 3 0 % , 3 . M: r : C : 5 1 , 4 . F + % < 6 5 % , 6 . L o w m , 7 . P o o r M : 5 1 , 9 . H i g h W % a n d L o w . D % ,
11. K: 5 1 , 2 0 . H i g h ( A + A d ) % , w e r e f o u n d t o d i f f e r e n t i a t e t h e c o n t r o l g r o u p .
key words : Ackerman, a l c o h o l i c s , R o r s c h a c h T e s t , v a l i d i t y , p e r s o n a l i t y .
抄 録
Ackerman, M. ( 1 9 7 1 )
は,過去3 0
年におよぶロールシャッハ・テストの研究によって,アル コール依存者とそうでない者との間に差異があるとみなされてきた仮説を2 0
項目にまとめ,その 妥当性について検討した。彼の検討結果は,過去の知見と異なり,有意差の検出された仮説はた だ2つで, しかも両者とも予測に反するものであった。今回の研究では,
Ackerman, M.
のまとめた2 0
項目の仮説の妥当性を再検討し, それによっ てアルコール依存者のパーソナリティ特性を把握しようと試みた。実験群は男性アルコール依存者
1 5 0
名であり,統制群は男性正常者1 0 0
名であった。本研究でアルコール依存者に有意に多かった項目は,
1 . ( ¥ l l l + J X + X ) : R<30%, 3.M: I : ; C : : , ; : 1 , 4 . F+96<65%, 6 . Low m. 7 . P o o r M : : : : ; : 1 , 9 . High W % and Low D 9 6 , 1 1 . K : : , ; : 1 , 2 0 . High(A+Ad)5)
ん の8
項目であった。キーワード:アッカーマン アルコール依存者 ロールシャッハ・テスト 妥 当 性 パ ーソナリ ティ
関西大学『社会学部紀要」第
1 7
巻第2
号目 的
アルコール依存者のロールシャッハ・テストについては,
B i l l i g ,0 .
ら( 1 9 4 3 )
の論文をはじ めとして多くの研究がみられる。たとえばアルコール依存者はW
彩が高く,Fe
ゃFK
などの陰 影反応が多いとか,M
が少なかったりFM>M
となることが多く, またCF+C
の 値 が 大 でFC<CF+C
となりやすいことなどである。さらにこのほか,水に関連した内容や口唇性に関連した内容が特徴的であると考える研究者も多い。
ところで
Ackerman,M. ( 1 9 7 1 )
はそれら多数の研究者による過去30
年におよぶロールシャ ッハ・テストの研究結果を整理し,アルコール依存者とそうでない被験者との間に差異があると みなされてきた上述のような仮説をT a b l e1
のように20
項目にまとめ, その妥当性について検 討した。彼によると20
項目の仮説のうちで有意差の見出されたものは,ただ2
つの仮説のみであ り, しかも両者とも予測に反した結果であった。すなわち非アルコール依存者の方が,アルコー ル依存者と比べて水に関連した内容が多く,またh i g hCF w i t h C
の出現率が高かった。この ように彼は,過去の知見に反して,アルコール依存者と非アルコール依存者との間に大きな差異 を認めておらず,彼の見解が妥当か否かが論点となっている。今回われわれは,
Ackerman,M. ( 1 9 7 1 )が取り上げた2 0
項目の仮説について,その妥当性を 再検討するとともに,それによってアルコール依存者のバーソナリティ特性を把握しようと試みた。
方 法
被験者
本論文の被験者は,昭和5
2
年から昭和56
年にわたり藍陵園病院に入院した男性アルコール依存 者1 1 1
名と,昭和54年と昭和55
年に水間病院に入院した男性アルコール依存者39
名の総計1 5 0
名 である。彼らの平均年齢は,4 3 . 7
歳(標準偏差8 . 4 )
であった。手続き
精神科医によりアルコール依存症と診断された
1 5 0
名に対して,入院後1
カ月以上経過し精神 的に安定した後,ロールシャッハ・テストを個別に実施した。スコアリングは,K l o p f e r ,B .
ら( 1 9 5 4 )の方法に準じている高橋・北村 ( 1 9 8 1 )
の方法により行った。そして20
項目の仮説につ いて,このアルコール依存者1 5 0
名のロールシャッハ反応を検討していくにあたっては,高橋( 1 9 7 8 )が報告した正常者のうち,男性 1 0 0
名のロールシャッハ反応を比較の対象とした。まず 本研究の被験者であるアルコール依存者1 5 0
名と正常者1 0 0
名のうちで,各仮説の基準に該当す‑ 5 0 ‑
アルコール依存者のロールシャッハ・テストについて(高橋・村井)
る人数をそれぞれ調査した。そしてアルコール依存者群の該当者数と正常者群の該当者数につい てが検定を行った。
なお
2 0
項目の仮説に関するスコアの基準については,T a b l e 1
にある9 . 1 0 . 1 2 . 1 3
番目の仮説 以外は,すべてAckerman,M. ( 1 9 7 1 )
の採用したものに従った。9
番目と1 2
番目の仮説で彼 は,K l o p f e r ,B .
ら( 1 9 5 4 )
の甚準に従い,W %
の普通域を20 30%, D %
の普通域を45 55%
にしているが,日本人の
W
彩は一般に諸外国に比べて高く,ここでは高橋( 1 9 7 8 )
の基準を用い た。すなわちW %
の普通域を41 66%, D %
の普通域を29 51%
とした。また1 0
番目の仮説ではT a b l e 1
にあるように, 分子は各群における全被験者のP a s s i v eM
の総反応を, 分母は彼ら のM
の総反応数を示した。さらに
1 3
番目のP h i l l i p s ,L .
ら( 1 9 5 3 )
の仮説では, 判定の困難な項目があるため, われわ れは以下の基準を設定した。① 始発反応時間が遅れることや速くなること〔高橋
( 1 9 7 8 )
の基準により,始発反応時間がI
図版において3
秒以下であるか1 6
秒以上であるとき,あるいはI I
図版において4
秒以下 であるか2 3
秒以上であるときで,このどちらかに該当すること〕。R 反応の拒否。
⑧ Wの欠如。
④ 最初の反応として Ddが出現すること。
⑥ 紋切型。すなわちPだけの反応。
⑥ Pの欠如。
R
F
だけで他の決定因子を欠如すること。⑧ 反応内容に
S e x ,Anal
のどちらか1
つがあること。⑨ 動物反応と結合した
M, I I
図版にC
の出現すること。以上の
9
項目のうち,I
図版もしくはI I
図版にいずれか1
つでも当てはまればショックとみな した。結 果
アルコール依存者群と正常者群における各仮説の基準に該当する人数の比率(彩)_ただし
1 0
番目の仮説にある数字だけは実数一ーと,が検定の結果をT a b l e1
に示した。T a b l e1
に みられるように,本論文で検討した2 0
項目の仮説のうちで,1
彩の有意水準でアルコール依存者 群が正常者群よりも該当者の多かった仮説は,1 .
(珊十IX+X):R<30
彩,3 . M:
エC~l,4 .
F+
彩<65
彩,7 . P o o r M~l, 9 . High W
彩andLow D
彩,1 1 .
K~l の 6 項目であり, 5 彩の水準で有意差が認められたのは,6 . Low m, 2 0 . High (A+Ad)
彩の2
項目である。また,
5 . High(k+K+FK), 1 7 . Water r e s p o n s e s
の2
項目は1
彩の有意水準で,1 6 . O r a l
関西大学「社会学部紀要」第
1 7
巻第2
号Table 1 P e r c e n t a g e o f R o r s c h a c h R e s p o n s e s i n A l c o h o l i c s and Normals
I
I A l c o h o l " I Normals
H y p o t h e s i s N=150 l ( C %) S N=lOO (%) I
がt e s t 1 . (VIII+IX+X) : R<so
彩4 4 . 0
'
1 8 . 0 * *
!
2 . (FM+m)
く(Fc+c+C') 2 0 . 0 1 6 . 0
3 . M: : E C : s ; ; : 1 6 9 . 3 3 6 . 0 * * 4 . F
十彩<65% 4 8 . 7 1 1 . 0 * * 5 . High (k+K+FK) 2 . 7 1 3 . 0 * * 6 . Low m 9 8 . 7 9 4 . 0 * 7 . Poor M : , ; ; : 1 5 7 . 3 1 6 . 0 * * 8 . High CF with C~3 5 . 3 4 . 0
9 . High W % and Low D
彩4 2 . 7 2 3 . 0 * * 1 0 . P a s s i v e M ( 1 0 0 ) / ( 2 6 8 ) 1 1 ( 1 7 6 ) / ( 4 3 1 ) 1 1
1 1 . K : : ; ; : 1 9 4 . 7 7 9 . 0 * * 1 2 . Low W % and High D % 1 2 . 0 2 1 . 0
1 3 . Shock on Card I a n d / o r I I 6 . 7 1 0 . 0 1 4 . R e j e c t i o n o r a g g r e s s i o n on Card IV 1 0 . 0 1 5 . 0 1 5 . A n t . L3 1 3 . 3 1 2 . 0 1 6 . O r a l r e s p o n s e s
O r a l r e s p o n s e s 2 : : 1 4 8 . 0 5 9 . 0
O r a l responses~2 2 6 . 0 3 9 . 0 *
O r a l responses~3 1 3 . 3 2 4 . 0 *
O r a l responses~4 6 . 7 1 2 . 0 O r a l r e s p o n s e s 25 3 . 3 6 . 0 1 7 . Water r e s p o n s e s
Water r e s p o n s e s Ll 7 2 . 0 9 5 . 0 * * Water r e s p o n s e s
茎4 6 . 7 8 1 . 0 * * Water r e s p o n s e s
苓2 7 . 3 6 5 . 0 * * Water responses~4 1 6 . 0 3 7 . 0 * * Water r e s p o n s e s 25 1 0 . 0 2 6 . 0 * * Water responses~6 6 . 7 2 0 . 0 * * 1 8 . Flower r e s p o n s e s
Flower responses~1 5 0 . 7 5 7 . 0 F l o w e r responses~2 2 7 . 3 3 4 . 0 F l o w e r responses~3 1 2 . 0 1 6 . 0 F l o w e r responses~4 6 . 0 1 1 . 0 Flower r e s p o n s e s : ; ; : ; : 5 1 . 3 1 . 0 1 9 . F a b u l i z e d r e s p o n s e s Ll 7 . 3 1 1 . 0
2 0 . High (A+Ad)% 3 2 . 0 1 8 . 0 *
# F i g u r e i n P a r e n t h e s i s i n d i c a t e s a r e a l number. * P<o. 0 5 * * P<o. 0 1
responses
(カッティング・ポイントが「2
以上」および,「3
以上」のとき)は5
彩の有意水準 で,それぞれ正常者群がアルコール依存者群よりも該当者が多いという結果を得た。そして両群に有意差の認められなかったのは,
2 . (FM+m)
く(Fc+c+C'), 8 . High CF with C(L3), 1 0 . Passive M, 1 2 . Low W
彩andHigh D
鍬1 3 .Shock on Card I and/
‑ 5 2 ‑
アルコール依存者のロールシャッハ・テストについて(高橋・村井)
o r l [ , 1 4 . R e j e c t i o n o r a g g r e s s i o n on Card N, 1 5 . A n t . : Z 3 , 1 8 . Flower r e s p o n s e s , 1 9 . F a b u l i z e d r e s p o n s e s
の9
項目であった。考 察
アルコール依存者の性格特性に関しては,現在までにさまざまな心理テスト所見からの発表が なされており,なかでも投影法ではロールシャッハ・テストにおける研究がもっとも多いようで ある。
B i l l i g , 0 .
ら( 1 9 4 3 )
をはじめ多くの研究者は,ロールシャッハ・テストからの特定のサ インアプローチにより,アルコール依存者に特異なバーソナリティ特性を把握しようと試み,興 味深い研究を行ってきている。一方,
K l o p f e r ,B .
ら( 1 9 4 2 )
やSyme,L . ( 1 9 5 7 )
は,彼らの研究結果とそれまでの文献か ら考えて,アルコール依存者に典型的なロールシャッハ・バクーンはみられないと報告した。こうした状況の中で
Ackerman,M. ( 1 9 7 1 )
は,1 9 4 0
年から1 9 6 8
年にわたり多くの研究者が アルコール依存者について行ったロールシャッハ・テストの研究を基にし,アルコール依存者と 非アルコール依存者との間に差異があるとみなされてきた仮説を2 0
項目にまとめ検討を加えた。既述のように彼の結果では,仮説はすべて検証されなかった。そこでわれわれは,それら
2 0
項目 の仮説の再検討を行ったが,本研究では2 0
項目の仮説中,8
個の仮説(1, 3 , 4 , 6 , 7 , 9 , 1 1 , 2 0 )
が支持された。そこでこれら有意差の認められた項目についての検討を次に行う。( 1 )
仮説1 .
(憧十IX+X):R<30
彩と仮説3 . M:
エC~l は,ロールシャッハ・テストの体 験型に関するものである。仮説1 .
より,アルコール依存者は正常者と比べ,現実からの情緒刺激 を避けて引きこもろうとする傾向がある。( 2 )
仮説3 . M:
エC~l は,仮説 7.Poor
M~1 との関係から,アルコール依存者の体験型 にはM
がほとんどない極端な色彩型のものが多いと推測される(ちなみに本論文におけるアルコ ール依存者の体験型の比率は,色彩型ー4 7
彩,運動型ー21%,
等価型ー13%,
収縮型ー1 9
彩で あった)。すなわちアルコール依存者は, 現実の状態を正確にとらえるための内省をしないで刺 激に直ちに反応しようとするため,情緒の安定性を欠き衝動的な行為に走りやすい。なお体験型 からみて,仮説1 .
では内向型の傾向を,仮説3 .
では外向型を示しており両者には矛盾がみられ,アルコール依存者はパーソナリティ構造内になんらかの葛藤を有すると考えられる。
B i l l i g , 0 .
ら( 1 9 4 3 )
も,このような矛盾がパーソナリティ構造の異なる水準内の緊張を表わしており,こ れがアルコール依存者のパーソナリティの特色であろうと述べている。( 3 )
仮説4 . F
十彩<65
彩は,一般に自我の力を示す指標と考えられ,アルコール依存者は自 我が弱く,現実吟味力が低下しており,予測できない行動をとりやすいと思われる。( 4 )
仮説6 . Low m
は,B u h l e r ,C .
ら( 1 9 4 7 )
が検証したものであるが,彼らはアルコール依 存者の特徴として,(k+K+FK)
の増大とm
の減少をあげている。そしてこのことから,アル‑ 5 3 ‑
関西大学『社会学部紀要』第
1 7
巻第2
号コール依存者の不安の増大と緊張に対する耐性の低さを示唆した。 しかし本研究では, 仮説
5 . High (k+K+FK)
は支持されず,むしろ逆に正常者群の方が多いという結果を示した。仮説6 . Low m
の解釈は,前述の仮説1 .
と3 .
との関係から,アルコール依存者がなんらかの葛藤を有するにもかかわらず,その葛藤を解決してパーソナリティを安定させようと努力していないと考え られる。
( 5 )
仮説7 .Poor M : : ; ; : 1
からは, アルコール依存者の自我水準の低さが推察される。つまり 彼らは,自己の衝動や空想を受け入れることができず,それと同時にほど良い対象関係を維持す ることもできないのである。S e l i g e r , L .
ら( 1 9 4 5 )
は, この知見をアルコール依存者の人間関 係における基本的な障害を意味するものと解釈した。( 6 )
仮説9 . High W
彩andLow D
彩は, アルコール依存者の特徴という点で, 過去の知 見がほぽ一貫している。上述の仮説7 . P o o r M : : ; ; : 1
と考えあわせるなら,彼らは能力以上の高 い要求水準を持つと考えられる。またW彩の高さと同時に,アルコール依存者がロールシャッハ 図版に反応する際の言語表現がきわめて弱々しくあいまいなことから,彼らはばく然とした場面 を処理する能力が低く,場面依存的f i e l dd e p e n d e n t ( B a r n e s , G . 1 9 7 9 )
であり, 自信に乏し く,自己を他者に過剰なまであわせようとする傾向があると考えられる。そしてこのような自信 欠如や自己肯定感の欠如を反動形成し,アルコール依存者は現実ばなれした高望みを抱くようになると推察できる。
( 7 )
仮説1 1 . K : : ; ; : 1
は,K a r l a n , S .
ら( 1 9 4 6 )
が報告したものであるが,仮説2 0 . High (A+Ad)
との関係から,アルコール依存者は知的活動が不活発で, 自己内省や客観的な批判能 力に乏しいといえる。( 8 )
仮説2 0 . High (A+Ad)
彩から, アルコール依存者は情緒的に未成熟で, 興味の範囲や 生活空間の狭いことが知られる。 また仮説7 . P o o r M : : ; ; : 1
と考えあわせると, 彼らは不安や抑うつ気分が強く,創造性や自発性に乏しいと考えられる。
なお本研究で,正常者群の方がアルコール依存者群よりも有意に該当者の多かったものは,仮 説
5 . High (k+K+FK), 1 6 . O r a l r e s p o n s e s , 1 7 . Water r e s p o n s e s ,
の3
項目であった。この点については被験者の年齢や反応数の問題も考えられ,今後さらに研究をすすめていきたい。
以上をまとめてみると,アルコール依存者は正常者と比べて全体的な気分は抑うつ的で不安が 強く,知的活動が不活発で自己内省や客観的な批判能力に乏しい。また彼らは自信に乏しく,現 実からの情緒刺激を避けて引きこもろうとしており,創造性や自発性を欠く。そして能力以上の 要求水準を有しており,情緒的には未成熟でどうかすると衝動的な行為に走りやすく,他者との 間で暖かい人間関係をもてない。
このような結果からアルコール依存者のパーソナリティは,全体としていわゆる不適応な状態 にあるということができる。
ところで本論文は,
Ackerman,M. ( 1 9 7 1 )
の調査を基にし,アルコール依存者を一群と考え‑ 5 4 ‑
アルコール依存者のロールシャッハ・テストについて(高橋・村井)
た上でのロールシャッハ研究であった。しかしながらアルコール依存者が必ずしも等質の集団で はなく,神経症傾向の強い者や性格的な歪みの目立つ者などの存在することは,臨床場面でわれ われがよく経験するところである。したがって今後,アルコール依存者を臨床像から細分類して 検討していきたいと思う。
要 約
Ackerman, M. ( 1 9 7 1 )
は,過去30
年におよぶロールシャッハ・テストの研究によって,アル コール依存者とそうでない者との間に差異があるとみなされてきた仮説を20
項目にまとめ,その 妥当性について検討した。彼の検討結果は,過去の知見と異なり,有意差の見出された仮説はた だ2
つで,しかも両者とも予測に反していた。そこで本研究では2
0
項目の仮説についてその妥当性を再検討し,そこからアルコール依存者の パーソナリティ特性を把握しようと試みた。( 1 ) 2 0
項目の仮説のうち,今回の研究では8
つの仮説が支持され,Ackerman,
M.( 1 9 7 1 )
の 調査とは異なり,過去の知見をかなりうらづける結果となった。(2) 有意差の認められた8つの仮説を検討し,アルコール依存者を一群とみなした上でのパー ソナリティ特性を考察した。
付記本論文作成にあたり御援助いただいた,藍陵園病院今道裕之院長,水間病院付属臨床心理学研究 所西尾博行所長,久本博行氏,並びに藍野病院岡本哲男氏に感謝します。
参 考 文 献
Ackerman, M. J . ( 1 9 7 1 ) A l c o h o l i s m and t h e R o r s c h a c h . J o u r n a l o f P e r s o n a l i t y A s s e s s m e n t . 3 5 : 2 2 4 ‑ 2 2 8 .
B a r n e s , G . E . ( 1 9 7 9 ) The a l c o h o l i c p e r s o n a l i t y : A r e a n a l y s i s o f t h e l i t e r a t u r e . J o u r n a l o f S t u d i e s on A l c o h o l . 4 0 : 5 7 1 ‑ 6 3 4 .
B i l l i g ,
0.,& S u l l i v a n , D . J . ( 1 9 4 3 ) P e r s o n a l i t y s t r u c t u r e and p r o g n o s i s o f a l c o h o l i c a d d i c t i o n . A R o r s c h a c h s t u d y . Q u a r t e r l y J o u r n a l o f S t u d i e s on A l c o h o l . 3: 5 5 4 ‑ 5 7 3 .
B u h l e r , C . , & L e f e r v e r , D . W. ( 1 9 4 7 ) A R o r s c h a c h s t u d y on t h e p s y c h o l o g i c a l c h a r a c t e r i s t i c s o f a l c o h o l i c s . Q u a r t e r l y J o u r n a l o f S t u d i e s on A l c o h o l . 8 : 1 9 7 ‑ 2 6 0 .
K a r l a n , S . C, & H e l l e r , E . ( 1 9 4 6 ) C h r o n i c a l c o h o l i s m : P s y c h i a t r i c and R o r s c h a c h e v a l u a t i o n . J o u r n a l o f C l i n i c a l P s y c h o p a t h o l o g y . 8 : 2 9 1 ‑ 3 0 0 .
K l o p f e r , B . e t a l . ( 1 9 5 4 ) D e v e l o p m e n t s i n t h e R o r s c h a c h t e c h n i q u e . I . Technique and t h e o r y . N . Y . : World B o o k .
K l o p f e r , B . , & K e l l e y , D . ( 1 9 4 2 ) The R o r s c h a c h t e c h n i q u e . N . Y . : World B o o k .
P h i l l i p s , L . , & S m i t h , J . G . ( 1 9 5 3 ) R o r s c h a c h i n t e r p r e t a t i o n : Advanced t e c h n i q u e . N . Y . : Grune
& S t r a t t o n .
S e l i g e r , R . V . , & C r a n f o r d , V . ( 1 9 4 5 ) The R o r s c h a c h a n a l y s i s i n t h e t r e a t m e n t o f a l c o h o l i s m .
関西大学『社会学部紀要」第
1 7
巻第2
号M e d i c a l R e c o r d . 1 5 8 : 3 2 ‑ 3 8 .
Syme, L . ( 1 9 5 7 ) P e r s o n a l i t y c h a r a c t e r i s t i c s and t h e a l c o h o l i c s : A c r i t i q u e o f c u r r e n t s t u d i e s . Q u a r t e r l y J o u r n a l o f S t u d i e s on A l c o h o l . 1 8 : 2 8 8 ‑ 3 0 2 .
高橋雅春・北村依子
( 1 9 8 1 )
ロールシャッハ診断法I , J I .
サイエンス社高橋雅春