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井口富夫著 現代保険業研究の新展開⎜

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Academic year: 2021

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井口富夫著 現代保険業研究の新展開⎜

競争と消費者利益

NTT出版,2008年2月,はしがき2頁,目次4頁,本文173頁,

あとがき3頁,参考文献15頁,索引3頁 ⎜

本書は,その はしがき および第1章に記載されているとおり,消費者 利益の確保・増大を目的として,経済学における一般的な分析手法を用いて,

産業組織論の立場から保険業を分析するものである。特に, 保険の機能 とは何か,また 保険会社の役割 とは何か,といった原理原則に立ち返っ ているところに大きな特徴がある。

以下に各部・各章の概要を記す。まず第Ⅰ部 保険業の全体像:多変量解 析による実証分析 では,保険業に関わる膨大なデータを広く収集・利用の うえ因子分析とクラスター分析を行うことで保険業の全体像を掌握する。

こうした分析の結果,損害保険業(第3章),生命保険業(民間生命保険 会社。第4章)ともに, 企業規模 と命名された因子が抜群の説明力を有 することが判明したとする(ただし,この因子の説明力は,損害保険業では 全体の60%弱に達するが,生命保険業では30%強である)。なお, 企業規 模 因子を除くと多様な共通因子が発見されている。

また,簡易保険やJA共済も加えた広義の日本の生命保険業全体の分析に より,簡易保険では養老保険が中核事業であり,JA共済が大規模民間生命 保険会社に極めて相似すること等が明らかになっている(第5章)。

第Ⅱ部は, 保険の機能 に着目することによって, 保険会社の役割 を 明らかにするものである。第6章 カルテル事件と保険法の現代化⎜保険の 機能と消費者利益 では,公正取引委員会の課徴金納付命令内容の是非が裁 判で争われた日本機械保険連盟事件を題材として, 保険の機能 と 保険 189

【書籍紹介】

(2)

会社の役割 の峻別を説いている。保険は保険契約者の経済的損失を補塡す る社会的制度であるものの, 保険会社の役割 は,付加保険料という対価 を得て,保険制度を維持するサービスを提供しているにすぎないとする(つ まり,純保険料は,保険契約者から保険金受取人への 移転所得 であり,

保険会社は,保険契約者から拠出された純保険料を基金として管理するサー ビスを提供しているだけである)。また,保険法(2008年6月6日公布)の 立法過程で示された中間試案(2007年8月14日)に関する著者の意見が掲載 されている。

第7章 生命保険業と産業連関表 では,産業連関表において,生命保険 業の生産額の全額が家計消費支出に配分されている問題を指摘する。

第8章 相互会社の株式会社化とコーポレート・ガバナンス では,相互 会社・株式会社間の効率性(事業費率)比較(日米ともに,生命保険会社の 効率性は相互会社の方が高いとの結果である)などを行う。

第9章 限界供給者としての生命保険会社 では,特に企業集団に属する 生命保険会社について,資金の 限界供給者 的性格の有無を検証する。

第10章 保険販売チャネルの多様化 では,保険の販売チャネルが単に保 険を販売しているだけでなく,保険の生産の一部を行っていると指摘する。

また,今後の保険規制のあり方についても論じている。

最後の第Ⅲ部 保険業研究の新たな展開 では,保険制度と消費者利益の 係わりについて,特にこれまで十分に議論されていない論点に触れている。

第11章 保険に係わる消費者の意識調査結果 には,簡易保険民営化論議が 高まる前に著者が学生およびその父母を対象に行った保険に関するアンケー ト調査の内容と結果が掲載されている。

第12章 保険の個人輸入と消費者利益 では,保険の個人輸入の原則禁止

(保険業法による海外直接付保規制)の問題を指摘する。

最後の第13章 産業政策と産業振興保険 では,公保険としての貿易保険 と信用保険を紹介しつつ,公保険のあり方を論議すべきだと提言する。

(紹介者:東京海上日動火災保険 吉澤卓哉) 井口富夫著 現代保険業研究の新展開⎜競争と消費者利益

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