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わが国損害保険企業における株主資本 コストの推計

山 﨑 尚 志

■アブストラクト

本研究では,わが国における損害保険会社の株主資本コストの推計を行っ ている。1990年以降の損害保険会社の株主資本コストについて,CAPMお よびFama and French3ファクター・モデルを使って推計を行った結果,

以下のことが明らかとなった。⑴CAPMによる推計資本コストは検証期間 で一貫して低下していく傾向にある一方で,FF3Fによる推計資本コストは 計測初期を除いて5〜6%で安定していた。⑵保険業法が改正された1996年 前後に注目すると,規模要因およびBPR要因の感応度に大きな変化が見ら れた。業法改正等による規制緩和の影響が,損保業のリスク要因に大きな変 化を及ぼしていたことが推測される。

■キーワード

株主資本コスト,CAPM,Fama and French3ファクター・モデル

1.はじめに

井上・加藤・山﨑(2007)は,1990年代から直近にわたるまで日本の損害 保険企業の株価がその財務水準から見て割安な水準にあることを報告した。

彼らは,その原因として業界規制の問題や裁定取引の限界を挙げている。し かし,割安になったそもそもの理由としては,従来損保会社の経営が保険契

*平成18年10月29日の日本保険学会大会(中央大学)での報告による。

/平成19年8月31日原稿受領。

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約者保護の観点のみに重きを置く一方で,株主価値最大化に対する配慮を欠 いていた点が挙げられよう。

当時の損保業界は旧大蔵省の強い規制の下にあり,たとえ株が割安であっ たとしても,外資による買収の脅威はさほどなかったと言える。しかし,一 連の金融ビッグバンによる業界の規制緩和や近年のM&Aブームから,損 保会社も買収の脅威に立たされるようになり,経営の安定上株の割安を見過 ごせない事実として認識するようになった。現在,多くの損保会社が自社株 買いなどを積極的に行い,余剰資本を減らすことで経営効率を高める政策を 取っている。このことからも分かるように,最近の損保会社の課題として株 主重視の経営戦略への転換がある。

コーポレートファイナンスの教科書通りに話を進めていけば,企業価値を 高めるためには資本コストを上回るプロジェクトを採択することが必要であ る。したがって,損保会社の経営者がその企業価値を高めるためには,まず 適切な株主資本コストを推計する必要がある。

Cummins and Phillips(2005)は,米国における損害保険企業の資本コ ストの推計を行っている。彼らは,現在の標準的な株主資本コスト推計モデ ルであるCAPMやFama and French3ファクター・モデルによって損保 企業の株主資本コストを推計し,さらにコングロマリット企業で使用される Full‑Information Industry Beta(FIB)法を用いて,各保険商品の資本コ ストの推計を行っている。白須・小守林・森平(2007)は,前述したCum- mins and Phillips(2005)のフレームワークを用いて日本の損保会社を対 象にした資本コスト推計を行っている。とは言え,アカデミックな分野にお いて損保会社の資本コスト推計に関する詳細な研究はまだそれほど多いとは 言えないのが現状である。

本研究の目的と意義は大きく分けて2つある。第1に,上記の理由からわ が国の損害保険会社の株主資本コストを推計すること自体に意義があるとす る点である。資本コストの推計は,実務レベルにおいてはCAPMでされる のが主流となっている。しかし,数多くの研究は,Fama and French3フ

(3)

ァクター・モデルの方が将来の株式収益率への高い説明力を有していること を示唆している。本研究では,このモデルにおける推計資本コストを測定し,

CAPMのそれとの比較を試みる。

第2に,井上・加藤・山﨑(2007)で報告された損保株のディスカウント の要因として,損保業全体のリスクに時系列の変動があったかどうかを検証 することである。損保業は1996年の業法改正や1998年の保険料率の自由化,

2000年前後の業界再編など,ここ10年の間に大きな構造変化があった。この ことにより,この期間の業界のリスクに大きな変化があった可能性がある。

そのため,本研究ではリスク要因に何らかの変化が見られたかどうかを検証 する。

本論文の構成は以下の通りである。第2節では,井上・加藤・山﨑(2007)

で報告された損保株のディスカウントはどういったものかを報告し,その現 象が資本コストにどのように影響すると考えられるかについて論述する。第 3節では,株主資本コストの推計方法について説明する。本研究で用いられ る推計モデルは,⑴CAPMと⑵Fama and French3ファクター・モデル の2つである。第4節では,本研究で用いられるデータについて説明する。

第5節で,検証結果を報告し,その結果に関する考察を行う。第6節で,全 体を総括する。

2.損保株のディスカウントと資本コストの関係

⑴ 損保株のディスカウント

井上・加藤・山﨑(2007)は,損保企業の株価がその財務状態からみて,

長期にわたりディスカウントされていることを報告した。図1は,わが国主 要損保企業8社のPBR(=時価総額╱自己資本) を示したものである。こ の図を見ると,1991年から2003年までほぼ全ての損保企業においてPBRの

1) 1991年度から2000年度の期間は時価会計制度導入以前であるため,この期間 に関して自己資本に税控除後の保有有価証券評価益を加えた値で

PBR

の計算 を行っている(修正

PBR)。

(4)

1割れを起こしていることが分かる 。

損保企業の財務諸表において特徴的な点は,その資産の60%〜70%が有価 証券で占められていることである。これら有価証券は時価での評価が容易で ある,すなわち換金することが容易であるため,損保の企業価値が,保有有 価証券の時価評価を考慮した自己資本を大きく下回る事態は通常想定しづら い。

こうした損保株のディスカウントの原因として,⑴本業である損保業のリ スクが高いためその分を割り引いて株価が付けられていた,⑵損保株のディ スカウントはパズル(従来のファイナンス理論での説明が困難な事象)であ り,ディスカウントが解消されなかったのは裁定取引に制限があったため,

という2通りの説が考えられる。

損保業は規制産業であるため,裁定機会があったとしても投資家に裁定行 動をとるインセンティブが得られなかったことは十分考えられる。しかし,

図1 主要損保8社の修正 PBR の推移

2) 測定期間の開始を1991年にした理由は,保有有価証券の時価情報が注記条項 として有価証券報告書に記載されるようになったのが同年度であったためであ る。

(5)

1996年に保険業法の改正によって規制が幾分緩和されたにもかかわらず,

PBRの1割れが解消されたのは2003年以降であり,1996年の業法改正から7 年のラグが生じている。この原因に関して,規制緩和によって裁定取引のイ ンセンティブが生じた一方で,損保業の競争が激化しリスクが高まった可能 性が考えられる 。

⑵ 理論的背景

上で述べたように1996年の保険業法改正による子会社を通した生損保の相 互参入や,1998年の保険料率の自由化によって,損保業界の競争の激化が予 測された結果,投資家がより高いリスクプレミアムを要求したことから,

1996年以降も損保の低株価が続いた可能性が考えられる。

一般に,株式の理論価格は以下の式のように表される。

P=BPS+ EPS −(R+R)BPS

(1+(R+R)) ⑴

ここで,Pはt期における理論株価,BPSはt期における一株当り自己資 本,EPSはt期における一株当り利益,Rはリスクフリーレート,R はそ の会社に対するリスクプレミアムを表す。したがって,投資家は要求収益率 としてR+R分の収益率をその会社に要求する。

EPSはBPSとROEの積として表されるため,ROEが投資家の要求収益 率(株主資本コスト),すなわちR+Rを下回るときにPBRが1を切るこ とを,⑴式は意味している。

図2は,わが国主要損保8社のROEを示したものである。測定開始時期 の1991年度以降,損保各社の修正ROEは1%〜3%の水準で安定している。

3) 井上・加藤・山﨑(2007)は,裁定投資家である外国人投資家が2003年以降 積極的に日本市場に参入してきたことが損保株ディスカウントの解消の一要因 となったことを指摘している。

(6)

2002年度は,日本株の下落による損失計上の影響で8社中5社の当期純利益 が赤字となったために数値が大きく落ち込んでいるが,それ以降は概ね ROEは安定している。

第3節で説明するように投資家の要求収益率の正確な推計にはさまざまな 要素が加わるため推計株主資本コストとROEを直接比較することは難しい が ,ROEは一定であることから1996年前後でリスク要因に変化が見られ れば,損保の低株価がその後も続いた原因の証拠となる。

3.資本コストの推計方法

⑴ CAPM

Sharpe  (1964)およびLintner(1965)によってCAPMが提唱されて以

降今日に至るまで,実務レベルにおける資本コストの推計において同モデル 図2 主要損保8社の修正 ROE の推移

4) 例えば,モデルを

CAPM

にするか

Fama and French

3ファクター・モデ ルにするか,もしくはマーケットリスクプレミアム

E

(

R

)−Rを何%とする か等で,株主資本コストは大きく異なってくる。

(7)

を用いた手法が主流となっている。

CAPMによる資本コストの推計は次の公式によって与えられる。

E(R)=R+β[E(R )−R] ⑵

ここで,

E(R)=企業iの株主資本コスト R=リスクフリーレート

E(R )=マーケット・ポートフォリオに対する期待収益率

β=システマティック・マーケットリスクに対する企業iの ベータ係数

=cov(R,R )/var(R ) である。

ベータ係数βは,推計時点から過去60ヶ月の月次データを用いた以下の 時系列回帰を行うことで推計する。

R −R =α+β[R −R ]+ε ⑶

ここでR はt時点における企業iの月次収益率,R は有担保コール翌日物 レート,R はTOPIX月次収益率を用いる。

⑵ Fama and French3ファクター・モデル

Fama and Frenchによって提唱された3ファクター・モデルは,株式の 評価ツールとして近年大きな注目を浴びているモデルである。

Fama and French(1992)は,銘柄間のクロスセクショナルな収益率格 差に対して,企業規模(時価総額)とBPR(自己資本╱時価総額)が有意 な説明力をもつことを報告した 。

5) 久保田・竹原(2000)は,Fama and French(1992)で用いられた

FM

型 回帰による日本の株式市場の分析を行っており,企業規模とBPRが日本の株

(8)

こ の 現 象 を 株 式 の 評 価 に 反 映 さ せ る た め,Fama and French

(1993,1996)はマーケット要因,規模要因,BPR要因の3つのファクター で株価を予測するモデルを開発した。彼らの提唱した3ファクター・モデル は以下の式で表される。

E(R)=R+b[E(R )−R]+sE(SMB)+h E(HML) ⑷

ここで,SMBは小型株収益率と大型株収益率との差,HMLは高BPR株 収益率と低BPR株収益率との差として表される。

企業iにおける各ファクターの感応度b,s,hは,CAPMと同様に推計 時点から過去60ヶ月の月次データを用いた時系列回帰を行うことで推計する。

R −R =a+b[R −R ]+sSMB+h HML+e ⑸

ここでもR はt時点における企業iの月次収益率,R は有担保コール翌日 物レート,R はTOPIX月次収益率を用いる。

SMBおよびHMLは以下の手順で求められる。まず毎年8月末に東証1 部市場に上場している全銘柄から,時価総額の中央値を求める。同様に毎年 8月末に東証1部市場に上場している全銘柄から,今度はBPRを基準とし て上から30%,40%,30%の分位点を求める。これらの分位点を基にして,

東証1部市場と2部市場に上場している全銘柄を,規模2(B,S)×BPR 3(H,M,L)の6つのポートフォリオ(B/H,B/M,B/L,S/H,S/M, S/L)に分類する。これらのポートフォリオの時価加重平均による月次収益 率を当年9月から翌年の8月まで計算し,翌年の8月末にポートフォリオを 再構築する。

SMBは,t時点の3つの小型株ポートフォリオ(S/H,S/M,S/L)の 式市場においても,クロスセクショナルの収益率格差を説明するのに有効なフ ァクターであること証明している。

(9)

単純平均収益率と大型株ポートフォリオ(B/H,B/M,B/L)との単純平 均収益率の差として求められ,HMLはt時点の2つの高BPRポートフォ リオ(B/H,S/H)の単純平均収益率と低BPRポートフォリオ(B/L,S/

L)との単純平均収益率の差として求められる。

4.データ

本論文は1991年から2005年の期間におけるわが国損害保険企業の株主資本 コストを推計する。資本コストの推計には過去60ヶ月の株式収益率の観測値 を必要とするため,1991年から2005年の期間に対する期間の資本コストを推 計するには,1986年からのデータを取得する必要がある。

本論文で対象となる企業は,その期間に東証に上場していた損保企業であ る。株主資本コストは各年4月に推計され,直前60ヶ月の継続したデータが 取得できない企業はその年の対象から外される。これらのデータは日経 NEEDS Financial QUESTから入手した。

CAPM(⑵式)もしくはFama and French3ファクター・モデル(⑷ 式)を用いて株主資本コストを推計するにあたり,リスクフリーレート

(R),マーケットリスクプレミアム(E(R )−R),規模リスクプレミアム

(E(SMB)),BPRリスクプレミアム(E(HML))を決定する必要がある。

本研究において,リスクフリーレートは推計時点における有担保コール翌 日物レートの年率リターンを用いる。マーケットリスクプレミアムは一般的 に長い計測期間で測定されるのが良いとされている。本研究では計測期間を 1978年1月から2005年12月までとする。数値はイボットソン・アソシエイ ツ・ジャパンが提供しているJapanese Equity Risk Premia Report2006 のShort‑Horizon Equity Risk Premiaを用いる。同レポートにおけるこ の 期 間 の レ ー ト は5.7% で あ っ た。E(SMB) お よ びE(HML) も 同 期 間

(1978年1月〜2005年12月)の数値を独自に算定し,それぞれ2.86%,3.77

%を得た。E(R )−R,E(SMB) およびE(HML) は全推定期間において 共通に用いられる。

(10)

5.損保企業の株主資本コスト

⑴ CAPM

図3および表1はCAPMによるわが国損保企業の株主資本コストの推計 結果を示している。図表のベータおよび資本コストはその年における損保企 業の単純平均である。図表を見ると,損保企業のCAPMベータは一貫して 下がり続けていることが分かる。1991年において1.223と1.0よりも高いベー タであったのが,2004年には0.483と1.0を大きく下回っている。尚,イボッ トソンのJapanese Individual Industry Beta2006には,1994年 か ら の 業 種別CAPMベータが報告されている。それによると保険業のベータは計測 時点から低下傾向にあり,1.0を大きく下回っていた。したがって,本研究 における結果と整合的である。

図3の棒グラフは各年度の資本コストを示している。うち斜線部分がリス クプレミアム部分を示している。推計資本コストもベータの低下と同様に低 下しており,1991年の15.163%から2004年の2.752%と大きく低下している が,これはリスクフリーレートの占める割合が大きい。

図4では,損保企業ごとのCAPMベータの時系列推移を示している。規 制緩和によって競争が激化し損保企業間のリスクにばらつきが出ることも予 想されたが,見たところばらつきが大きくなっている様子はない。

(11)

図3 日本の損保業の CAPM 資本コスト

図4 損保企業の CAPMβの推移

(12)

⑵ Fama and French3ファクター・モデル

図5および表2にFama and French3ファクター・モデルによる資本コ ストの推計結果が示されている。マーケット要因の感応度bはCAPMのと きと同じく低下傾向にあり,1991年の1.160から2002年には0.606と1.0を大 きく下回っている。一方で規模要因の感応度sは上昇傾向にあり,年度によ るばらつきはあるが1993年の‑0.320から2005年には0.338とプラスに転じて いる。BPR要因の感応度hは,規模要因よりも大きな上昇傾向を示してい る。1993年には‑0.642であったのが,2003年には0.707となっており,ほぼ 一貫して感応度が上昇していることが分かる。

表1 日本の損保業の CAPM 資本コスト Year   Obs. Avg. β

Cost of Capital  (%) 1991

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

13 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 10 7

7 7

1.223 1.094 1.112 1.088 1.062 1.011 1.058 1.042 1.072 0.869 0.657 0.583 0.520 0.483 0.713

15.163 11.780 9.466 8.343 8.176 6.162 6.482 6.388 6.133 4.965 3.826 3.323 2.964 2.752 4.068

(13)

本研究における目的の一つは,1996年から2000年までの規制緩和・業界再 編期において,損保業のリスクに変化があったかどうかを検証することにあ る。FF3Fによる推計資本コストは1991年と1992年を除いて5〜6%の水準 で推移しているが,図4の資本コストにおけるリスクプレミアム部分を見る と,1996年以降プレミアムは大きくなっていることがわかる。各要因別に検 討しよう。

マーケット要因で見た場合,CAPMにおけるベータにしてもFF3Fにお けるbにしても一貫して低下傾向にあるが,1996年前後で大きな変化は見 られない。

一方で,規模要因の感応度sとBPR要因の感応度hには大きな変化が見 られる。sに関して1996年以前は一貫してマイナスの符号であったのが,

1997年には0.057と若干のプラスに転じ,以降マイナスの時期もあるが概ね 1996年以前よりも高い数値を示している。

図5 日本の損保業の FF3F 資本コスト

(14)

BPR要因の感応度hに関しては,規模要因よりも大きな変化が見られる。

1996年以前には大きくマイナスの数値であったのが,1997年を境に大きくプ ラスに転じ,完全な逆転現象が見られる。Fama and French(1992)によ ると,BPR要因は財務困窮度(financial distress)を表している。第1節 で触れたように,損保会社は慢性的にPBR(BPRの逆数)が低い傾向にあ り,財務困窮リスクにさらされやすい業種であったと言える。いずれにして も,1996年を境にして損保業のリスク要因に大きな変化が見られることは明 らかである。

図6に主要損保8社の3ファクターの感応度および資本コストの推移を示 している。CAPMと同じく,規制緩和による企業間のばらつきの変化はさ ほど大きくなっていない。

13 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 10 7

7 7 1991

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

Cost of Capital  (%) h

  Obs.

Year

表2 日本の損保業の FF3F 資本コスト s

  b

1.160 1.069 1.066 1.071 1.050 1.026 1.053 0.988 1.001 0.869 0.723 0.606 0.646 0.628 0.715

−0.087

−0.265

−0.320

−0.259

−0.224

−0.112 0.057 0.129 0.139

−0.129

−0.066 0.011

−0.093

−0.003 0.338

−0.514

−0.401

−0.642

−0.457

−0.490

−0.055 0.083 0.227 0.187 0.671 0.694 0.643 0.707 0.616 0.409

12.613 9.371 5.871 5.784 5.618 5.721 6.926 7.304 6.828 7.123 6.628 5.913 6.082 5.897 6.585

(15)

図6 主要損保会社の FF3FM 資本コストの推移

(16)
(17)

6.まとめ

本論文では,わが国損保企業を対象に株主資本コストの推計を行った。

CAPMとFama and French3ファクター・モデルの2つのモデルを用い て推計を行った結果,両者の資本コストに大きな違いが生じた。CAPMに よる推計資本コストは検証期間で一貫して低下していく傾向にある一方で,

FF3Fによる推計資本コストは計測初期を除いて5〜6%で安定している。

この原因は,損保株のマーケット要因に対する感応度が低下傾向にある一方 で,規模要因およびBPRの要因が上昇傾向にあるためである。その結果,

マーケット要因のみで推計されるCAPM資本コストは低下していくが,

FF3Fによる資本コストでは低下したマーケット要因が上昇した規模要因と BPR要因で相殺されている。

さらに,保険業法が改正された1996年前後に注目すると,規模要因および BPR要因の感応度に大きな変化が見られた。特にBPR要因では1996年以 前はマイナスの感応度であったのが,1997年以降ではプラスに転じている。

業法改正等による規制緩和の影響が,投資家から見た損保業のリスク要因に 大きな変化を及ぼしていたことが推測される。

追 記

本稿は,澤村正鹿学術奨励基金の助成を得て行われた研究の一部である。

本稿は,日本保険学会(中央大学,平成18年10月29日)における報告に基づい ている。筆者は,日本リスク研究学会(徳島大学,平成19年11月18日)において 損害保険会社の資本コストの推計 と題する報告を行った。その内容は,高尾 厚・山﨑尚志 損害保険会社の資本コストの推計 として 日本リスク研究学会第 20回研究発表会講演論文集 (

Vol

.20,Nov.17‑18,2007年)に掲載されているが,

本稿の脱稿後であったため,レビューしていない。

(筆者は神戸大学大学院経営学研究科准教授) 引用 献

井上光太郎,加藤英明,山﨑尚志[2007], 損保の株価パズル 証券アナリスト

(18)

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