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Academic year: 2021

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Title 大気汚染を通してみる中国近代化の「圧縮性」 : リスクをめぐる規制と分配を中心に [論文内容及び審査の

要旨]

Author(s) 王, 瞻

Citation 北海道大学. 博士(国際広報メディア) 甲第13778号

Issue Date 2019-09-25

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/76078

Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Type theses (doctoral - abstract and summary of review)

Additional Information There are other files related to this item in HUSCAP. Check the above URL.

File Information Wang̲Zhan̲review.pdf (審査の要旨)

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学位論文審査の要旨

博士の専攻分野の名称:博士(国際広報メディア) 氏名:王 瞻

審査委員

主査 教授 長 島 美 織 副査 教授

副査 准教授

鈴 木 純 一 金 山 準 副査 名誉教授 藤 野 彰

学位論文題名

大気汚染を通してみる中国近代化の「圧縮性」:

リスクをめぐる規制と分配を中心に

令和元年723日(401 教室、13:00開始)に行われた王瞻氏の博士論文口頭試問は、1 時間30分にわたって公開で行われた。本人から博士論文の内容について、40分の発表があっ た後、主査・副査から、論文の内容、研究手法、論述の組み立て方などに関して質問がなされ、

それに対して執筆者が応答する形で諮問が進められた。主な質問およびそれに対する応答、そ して博士論文全体に対するコメントは以下の通りである。

まず、当該論文では、リスクと危険をどのように区別し論議を展開しているかという質問が 出された。これに対して、論文執筆者は、ベックのリスク社会論におけるリスクと危険の区別 について、それが時代の流れの中で位置づけられていることを指摘した。具体的には、産業社 会においては、リスクは人間の合理的な判断によって生じるものであるのに対して、危険は社 会の外側にあって自然がもたらすものであり、それゆえ人間の行為によらないものであること、

そして、リスク社会においては、時間および空間を限定できず、その発生を制御することが困 難となることに加えて、責任の所在も特定しがたいものになるなど、リスクの特質が大きく変 化するとした。このような特質の変化により、リスク社会で生じるリスクは、産業社会のリス クの特徴を備えながらも、危険の特徴も併せ持つようになるというベックの主張にも言及した。

また、執筆者は、当該研究においては、リスク概念に関して通時的な観点と共時的な観点を 導入しており、前者においては、農民工は自らが遭遇するリスクに対し、自己責任での対峙が 要求されているにもかかわらず、そのリスク認識は未だに「運命論」に支配されているなど、

伝統社会的な理解に停滞しており、農民工が直面しているのは、リスクというより、危険と考 えることが適切であると、執筆者は主張した。後者に関して、博士論文では非知を原因とする 一次的リスクを緩和するために、社会的合意の導入によって生起するリスクを二次的リスクと

(3)

して定義しており、一次的リスクに、社会的合意を加えることなく対応することによって生じ た損害や損失は、その結果だけを受け取る人々にとっては、二次的リスクではなく、危険であ るという説明がなされた。すなわち、現在の中国においては、PM2.5に関する科学的知見が無 視され、社会的合意形成が限定されていることから、そこから生じる損害や損失は、二次的リ スクではなく、危険として生起していることが主張された。

次に、圧縮された近代と中国におけるリスクの現状について、改革開放以降、特に 2000 代以降、環境問題の原因が認識されているにも関わらず、汚染対策が有効に機能しない理由と して、中央政府の政治的判断と地方政府の実践の乖離が指摘され、この点をさらに分析する必 要があるという指摘がなされた。執筆者は、確かに中央政府の政策が地方政府により遵守され ていないという問題があることに論文中でも触れているが、さらに掘り下げた分析が必要なこ とに同意し、今後の研究の課題としたいと応答した。

最後に、本論の第7章において、どのような新規性があるのかという問いに応じて、執筆者 からは、圧縮された近代における個人化に関する先行研究は、主に圧縮された近代社会に生じ る個人化を「現象」として捉えているが、本論の第7章は、ベックの主観的個人化と客観的個 人化という理論装置を援用することにより、個人と制度が、どのような関係にあるかについて 検討し、そこから近代の圧縮性を描き出すという試みであると応答した。この客観的個人化と 主観的個人化という観点からの検討は、先行研究とは異なり、新規性のある部分であると同時 に、この検討を通して、農民工が伝統社会、産業社会、リスク社会という3つの時代に分断さ れて生きている現状を、より明確に描き出すことができたと解答された。

これらの質疑応答において、執筆者は、始終適切かつ誠実さをもって対応し、本博士論文の 意義と成果、そして、その限界と発展可能性についてもしっかりと認識していることが確認さ れた。

以上の公開口頭試問終了後、4 人の主査・副査のみで審査が行われた。副査からは、趣意書 検討会や博士論文第1稿に対するコメントや修正意見に対して、最終稿で丁寧な対応がなされ たこと、そして、その結果、一貫性のある完成度の高い論文となっていることが評価された。

また、圧縮された近代化論をこれほど系統的に用いて中国社会を分析した例はなく、中国の近 代化および現状に関して、新規な解釈をもたらす充実した論考となったことが指摘された。以 上により、王瞻氏の博士論文は、高い学術的価値と独創性を有するものであり、本学博士学位 論文としての基準を充分に満たすものであることが、主査および副査の全員一致で判断された。

参照

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