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精神遅滞児の図形模写能力(2) ― 図形模写と人 物画との関連 ―

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

精神遅滞児の図形模写能力(2) ― 図形模写と人 物画との関連 ―

著者 田辺 正友, 田村 浩子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

22

ページ 23‑32

発行年 1986‑03‑23

その他のタイトル Figure ― Copying Ability in Mentally Retarded Children (2) : The Correlation between Figure 

― Copying and DAM

URL http://hdl.handle.net/10105/6616

(2)

精神遅滞児の図形模写能.力(2)*

 一図形模写と人物画との関連一

田辺正友・田村浩子**

       (障害児学教室)

問      題

 学校教育の現場でほほとんど毎日のように、教育活動の一部として描画・製作活動が行なわれ ており、子どもたちの全面発達をめざす障害児教育においてほ、描画活動は欠くことのでき削、

極めて基礎的な教育活動である。ところが、ちえ遅れといラ発達上の障害とともに、視覚・聴覚・

言語・情緒・運動機能などの障害を合わせもっている障害児にとりて、この描画活動には多くの 困難を伴なうものである。なぜなら、子どもの描く力は、手指の操作機能、眼球連動機能、言語、

視知覚機能の発達など、子どもの全体的な発達と密接に連関し合いながら獲得されていくもので あワ、さらには、生活実態や障害の状況ともかかわワ合っているからである。こうしたさまざま な要因との関連において、子どもたちの描画表現の発達の過程を把握し、ひとりひとりの学習課 題を明らかにしていくことが必要となる。

 田辺(1985)は、先に、精神遅滞児の図形模写能力の発達過程を発達段階および視知覚機能の 発達との関連から検討した結果を報告した。そして、図形模写能力にはかなワはっきりとした発 達的な変化がみられ、2次元形成期・2次元可逆操作期において獲得したより高度の認知機能と よワ巧緻的な運動機能を基礎に、3次元形成期から3次元可逆操作期さらにほ1次変換形成期に かけて高次の図形模写能力を獲得していくこと、さらに、図形模写能力の獲得には視知覚機能が 極めて重要な役割を果していることが示された。

 本稿では、この図形模写能力と人物画との関連および図形模写と人物画にみられる障害による 傾向性について分析した結果を報告する。子どもの人物画を扱うた研究では、人物画を、それを 描いた児童のなんらかの特性の表出とみなすが、ここにはさらに、知的水準の表出とみなす

(Goodenough,F.L.)か、パーソナリティーの表出とみなす(Machover,K)かの2つの主要な 接近法がある。さらに、KopPiz,E.M。(1968旭、この2つのdimensionを包括的に調査し、そ の相互関係を総合的にとらえることによって彼女独自の採点法を開発するにいたっている。しか し、人物画の実際的適用にあたっては、まだまだ基礎的検討を要する面が残されているようにお もわれる。田辺(1973.1974)は、先に、Koppitz,E.M。(1966a,1966b,1966c)の情

*    Figu祀一Copying Abi1ity in Memtally Retarded Chi1d祀I1(2):The Com∋1ation

   between Figure−Copying and DAM

**  Masatomo Tanab6a皿d Hiroko Tamura(Depa前ment of Def㏄to1ogy,Nara    University of Education,Nara)

一協一

(3)

繕指標項目の臨床的妥当性および人物画の解釈にあたっての基本的仮説について検証した結果を 報告した。円・正方形などの幾何図形を模写する能力は人物画描写の基底となっていると考えら れる。そこで今回は、図形模写能力とGoodemugh人物画知能検査(DAM)との関連について の分析を試みるものである。さらには、話しごとば獲得期のちえ遅れ児と自閉性障害児の発達的 特徴について検討した田辺ら(1984)の報告で、自閉性障害児は、円・十字模写の課題にすぐれ ていたという結果を得ているので、図形模写課題および人物画表現における障害による傾向性に ついても合せて分析を試みる。

方      法

 対象児 対象児は、奈良市内N中学校障書児学級に在籍する生徒でありて、課題の目的から手 に顕著な麻痺のみられる児童を除いた23名で、その構成は、Tab1e1中に示す適ワである。また、

図形模写の障害別傾向性の分析でほ,前報告(田辺、1985)の対象児のうちのDown症候群児6 名と自閉性障害児1名の資料を追加して分析した。なお、ここでは生育歴のなかでの診断なども 参考にしながら、教師が日常の実践の中で把握している事実や発達診断場面において、r対人関 係がもちにくく、ひ≒リ遊びが多い」rオーム返しやことぱの理解に困難さがある」r同 性保 持の傾向が強い」などの行動特徴としてr自閉症状」がみられるものを自閉性障害児として抽出

した。また、発達段階は、新版K式発達検査資料を主に、田中(1977)のr可逆操作特性の高一次 化における階層一段階理論」に依拠して決定された。

 図形模写課題およびDAMの実施・採点字統き 図形模写課題は、対象児の発達段階を考慮し て、Fig.2に示されている10個の幾何図形を選んだ。なお、対象児に課題を理解させるために、

練習課題として横線、縦線の模写を実施した。各課題は、18㎝X I8c血の厚紙に描かれておワ、こ れらの課題はすべての対象児に対して一定の順序で呈示された。実施および採点の手続きは前報 告と同様であった。DAMの実施・採点手続きは、小林・小野(小林、1977)の方法に従った。

描画用紙は、DAM記録用紙が使用された。図形模写課題およびDAMの採点の信頼性係数は、

2名の独立した採点結果から、それぞれ.98と.91であった。なお、不一致の項目についてほ協 議して再度採点を行なった。

結 果 と 考 察

1 図形模写能力とD^Mとの関連

1−1 DAMの発達的傾向 全対象児の発達年齢(DA)、生活年齢(CA)、図形模写得 点およびDAM得点を、Table1に示した。表中にはDAMの50採点項目をr人物の部分」

 r各部分の比率」r部分の明細度」に関する項目ごとに整理したものも合せて示した。十は、

当該採点項目に通過したことを示す。図形模写課題およびDAMそれぞれの満点は30点、50

点である。.

       一24一

(4)

Tab1e1発達段階別図形模写得点およびDAM得点

D A M

人物の部分 各部分の比率 部 分 の 明 細 度

1 23 4 56 7 9141622 8 1 2124 2 3334 1oユ51I23 1 2 2 34838 3544 1 1 263 47I72531134423641434 刎50

発達段階 児性

uハ

DA CA 図形模写得点

得点

口腕 首日

@, 』 

両眼の

フ厚

@コ 1 ■

日の指

@1の

@1分

のさのロロ

のの

@苔

@1 ≡ =

の回 の=1合のと口1合 とのつすA 髪B しの

o

服2つメ服のの

S口.

@4禔B

@ユ@上

良一 ある、まの

向口

ォき 奄̀B

一2 3.l1

R:9 12:1O P4:4

1b P3

15 P6

十十十十

¥十

十十十1十

¥≡十 十十十十

¥一十

十十 十一

十 十 十 十 十

十十

1! i rDow皿症候群

3 3.3 I3.Il 1o 1O 十:十 十 十÷ i 1 i

4平均 3.o

R:7 14:o P3:11

 11 P25

i229)

 12 P2B i2J7)

十 十 十十 十 十

5 4.1 12 11 12 十十十十斗十十十 i

2逆

翠ツ期 6男

ス均

4.7 S:4

13,7 P3二1

 18 P45

i3別)

 19 P55 i350)

十十十十十十十十十十十 十十十 十  十  十 十  十 ≒ 1 性障署

7 5.9 12.3 22 25 十十 十十 十 十 十十十 十十十 十十十 十十

89 5:1

T:8 12.7 h2:4

13 Q5

19 P3

十十十十

¥十

十十十一十

¥十

十十 十十 十 十十十

¥十

十十十 十 十 十

j 閉性障書

1O女 6I 1g 4 25 19 十十 十十 十 十 十十 十十

n 6:2 14:I 23 ユ8 十十 十十十 十 十十十 十 十 i+

12 6.8 14:4 23 22 十十 十十† 十 十十十一ト 十 十十十 十 十 Dom症

13 6:4 14:1 16 15 十十十十 十 十 十十

14男P5男

6:7 V:6

14:8 P4:8

30 Q1

34 Q4

十十 十十

¥十

十十十十

¥十

十十十十十十十十

¥十

十十 十十 十十 十十 十十十十

¥十

十十¥

十十1

{

1+ 十十十十十十

十十¥ 十1+@1

自牲障害

16

P7

5.11 T:8

1o.6 奄S:lo

24 P6

22 P5

十十 十十

¥十

十十十十

¥十

辛十十十十十

¥十

十十十十 十 十 十 十十十 十十 十i

18

P9女

5:4 T:10

14:ll h5:O

18 P8

19 Q5

十十 十十

¥十

十十十十

¥十

十十十十 十十

¥十

十 十 十十 十十十

十十 十十 十 十

20

ス均

5:l0 U:0

lo:2 P4:1

 23 Q15 i386)

 30

Q1.4 i5.65)

十十十十 十 十 十 十 十 十十 十十 十 十十十 十 十 十 十 Do㎜症候群

21 8.4 lZ5 30 34 十十十十十十十十十十十 十十十十 十十十 十十十十十十十十十  十  十 十 十十 自閉怪障害

h次31 22 8.O 13.1 25 24 十十十十十十十十十十十 十十十 十十十十 十十.

醸饗形鰐 23

1O.6W:11 P3:412,7  28Q7.7

i205)

 35

R1.O i4Ψ)

十十十十十十十十十十十 十十 十十十十 十十十十十十十  十 十 十十 十十十

、 ■.」肺出 目坐

( )ほ漂準偏差値

(5)

 Table1中の各発達段階別DAM平均得点に示されているように、D AM得点は、2次元 形成期から3次元可逆操作期・1次変換形成期までの発達段階を迫りて有意差をもって上昇

を示している。これは、DAM得点の発達段階別平均得点を分散分析した結果からも明らか である(F=7.26,df「γ1g,P<.01)。通過率(各発達段階における平均得点の満 点に対する比率)でみると、2次元形成期・2次元可逆操作期では25〜30%、3次元形成 期で43%、3次元可逆操作期・1次変換形成期において60%以上の通過率を示すに至ってい

る。この結果をr人物の部分」r部分の比率」r部分の明細度」別に分析すると、頭・眼・

口などの人物の部分は、r比率」r明細度」に比してその出現率が高く、2次元形成期で80

%程度抽出されている。r人物の部分」に関して、この発達段階では出現しにくい項目は、

胴・毛髪であって頭・眼・口等の基礎的な部分は出現している。2次元可逆操作期・3次元 形成期でほ、r人物の部分」に関する11項目中の首・耳を除くほぼ全項目が、さらに3次元I 可逆操作期では、全項目が描出されている。r部分の比率」も、発達の高次化に伴なって出 現項目は多くなるが、その出現率は低く、2次元形成期・2次元可逆操作期ではほとんど描

出されていない。r部分の明細度」も該当する30項目を全体的にみると、発達の高次化に伴 なって出現項目が多くなるが、r比率」と同様、その出現率は低い。3次元可逆操作期・1 次変換形成期でも半数程度の項目が描出されているにすぎない。このr明細度」に関する30 項目を各項日ごとにみると、比較的出現率の高い項目(腕と脚のつけ方、まゆ・まつ毛、瞳).、

全発達段階を通して出現しにくい項目(掌、鼻孔、顎の突出、肩・腕・脚の関節、鼻・口の 輪郭、栂指の分化、衣服の部分4つ以上)、発達段階が高くならないと出翠しない項目(毛 髪の細部、腫、指の細部、描線)と、その出現の様相にちがいがみられる。衣服の描出には 発達的傾向がみられなかった。なお、横向き像は1次変換形成期の1名にみられたのみであ

った。

 全体的にみて、2次元形成期の頭足人的表現から3次元形成期・可逆操作期および1次変 換形成期におけるバランスのとれた人物像あるいは横向きの人物像へと、発達の高次化に伴 なって、人物画も全体の形をとらえた、まとまワのある描写へと、発達的変化がみられる。

小林(1977)の指摘に毛あるようにDAMの有効性の年齢範囲については考慮する必要が あるが、そこには、部分的人間像から全体的にまとまりた人間像に発達していく過程がみら れる。さらに、頭部と胴部・四肢部の描写とを比較してみると、頭部描写は、胴部・四肢部 に比して明細度の点ですぐれておワ、DAM得点の低いものでも頭部の各部分の描写が明確 なものが多い。そして、頭部の各部分は、発達の高次化に伴なって様々な形の表現がなされ、

描写表現が多様化していく傾向がみられる。それに対して、胴部・四肢部の描写では胴と腕・

脚などの位置関係・比率の明確化はなされていくが、表現の多様化は見られにくい。人物画 描画の発達的傾向については、次項の図形模写能力との関連でもう少し詳細に検討を加える が、全対象児それぞれのDAM得点を小林(1977)の方法に従ってDAMMAに換算してみ ると、DAとDAMMAとがほぼ同程度のものが5名(児 9,13,15,17,23)で他の

18名はDAに比してDAMMAのカがかなワ高くなる結果が示された。精神遅滞児を対象に、

一26一

(6)

WISCやWA田を用いてDAMの妥当性を検討した研究(Gu㎜bu㎎:1955,Tobias&Go祀一 1ick:1960,Roh耐&Hawo市h:1962)において、DAMIQはWQよDもPIQとの相関係 数が高いことからDAMは動作性知能との関係が深いことが示されている。また、真田(1980)

ほ、DAM得点とベンダーゲシュタルドテスト得点との間に有意な相関係数を見い出している。

これらの先行研究とも考え合わせると、精神遅滞児のDAMは、動作性知能あるいは視覚・

運動能力の発達水準を反映しているものと考えられる。

1−2 図形模写能力とDAMとの関連 次に、図形模写能力とDAMとの関連について言及す る。まず、全対象児の図形模写得点とDAM得点との相関係数(Pea耐。皿の係数)を求める  と、ア:.808で、1%水準で有意な相関関係が認められた。また、比較的対象児の多い3

次元形成期での図形模写高得点群と低得点群のDAM得点についての比較から、図形模写高得 点群が低得点群よりもDAM得点が高いとの結=果が示された(高得点群:図形模写得点254,

 DAM得点23.2; 低得点群:図形模写得点17.2,DAM得点18.6、各群N=5)。対象児 数は少ないが同様の傾向が、他の発達段階においてもみられる。

 次に、図形模写とDAMとの関連の発達段階ごとの分析を試みる。Fig.1に、各発達段階 における図形模写高得点と低得点の図形模写およびDAMの結果を例示した。

児 出 1 児 出 3 児   6 児   5

〇十口Xム 〇十口†・ bテロXム

◇ D◎ 吐。胴.日び やつ皿⑰o 〇十ロメ』りOo^D◎

一%o

司・・

児   川 兜   20 児   一7 児 { 13

○斗口X△ O+口X△

中◇o①◎ ザ◇ θo. O+口×△ 〇十口×ム

㈹ρ目む ダ◇血色◎

P■

=7

言I ・.

児   !1 児 帖 塊 肥  .里3

O+口×△

中◇oo⑰⑳ ヤ◇oo巨△〇十口×△ 〇十口X△ト◇田。④ .Fi9.1

図形模写

一例一

π

。ノ

図形模写と人物画   一例一

一27一

(7)

2次元形成期の人物画は、全身像が描かれてはいるが顔を中心とした頭部および脚部の描写 が強調されている。児 1(図形模写得点16点)は、模写課題において菱形模写を通過して おり、その人物画は、輪郭のあいまいさ、表現方法の未熟さはみられるが全身像であること が明白になってきている。児㎞3(模写得点10点)ほ、課題1〜4の○十口Xの模写は通過 しているが三角形の模写はできておらず、人物画は頭足人的表現である。しかし、生活年齢 3,4歳の頭足人とは異なワ、頭部描写の明細度は高い。2次元可逆操作期は対象児が2名 であって、ここから結論を急ぐことは危険であるが、2次元可逆操作期になると人物饅とし てそれなりのまとまりを示すようになる。児㎞6(模写得点18点)は、模写課題8、・9,10 の接合・交叉図形および立体図形以外の模写課題を通過しており、人物像は、頭部と胴部・

四肢部のパラソスには若干欠ける点がみられるが、全身像が描写されておワ、腕と脚のつけ 方・輪郭・指の数・肩など部分的には高度の描写がなされている。児 5(模写得点11点)

ばこ模写課題1〜4は通過しているが斜図形の角があいまいで、課題10の交叉図形は円の中 に包含され、課題8の接合図形は並列的にならべられている。その人物画は、頭部・脚部・

胸部の各部分は描写されているが丸表現が主でありて、未熟な表現となっており、全体的な バランスにも欠ける。3次元形成期になると人物像としてまとまワのある描写がなされてお

ワ、描画のタッチもじつかワしてくる。図形模写高得点群では、交叉・接合図形および立体 図形の模写も可能となるものが多く、人物画の全体的バランスは安定性を増し、各部分と部 分の位置関係も明確になっている。図形模写低得点群では、課題1〜5の基本的幾何図形の 模写は獲得されているが、立体図形は不通過で、交叉図形も図形としてはとらえられている が2図形の接点があいまいになっている。人物画においては、頭部・胸部・胴部・脚部の各 部分の描画はしっかりしているが、それぞれの部分と部分の接合のしかたに未熟さが残る。

また、この図形模写低点群5名中4名の人物画に首の描出がみられなかった。3次元可逆操 作期の児 21は、図形模写全課題を通過しておワ、人物画の全体的バランスがよく、統合の

よさがみられる。児 22(模写得点25点)は、立体図形および交叉図形の模写が不通過で、

人物画では、全体のバランスほとれているものの胴部・四肢部での描写表現に未熟さがあワ、

投視図的表現もみられる。

 図形模写課題9の立体図形を通過した3次元形成期および3次元可逆操作期・1次変換形 成期の5名の人物画(児 1O,14,20,21,23)についてもラ少し詳細に検討してみ

ると、図形のモチーフが正しくとらえられているとして3点で通過した2名(児 14,21)

の人物画は、全体像としてのまとまり・統合のよさがみられる。しかし、立体図形の基底線 の奥行を示す線の不明確さで2点の評価を与えられた3名の人物画においては、例えば児心 10(人物画の結果は省略)や児 20のように、前者2名と比較すると全体像としてバランス に欠ける傾向、あるいは、児 23の横向きの人物像にみられるように上半身は完全に横向き 像として描写されておリパラソスもよいが、下半身では脚部の重なワが明確でないといった 傾向がみられる。全体的にみて、これらの結果から、人物描画能力と図形模写能力との間に 密接な関係があることが示唆される。

一28一

(8)

2 図形模写および人物副こおける障害別傾向性

 自閉性障害児5名およびDow血症候群児9名の図形模写結果をまとめて図示したものが、

Fig・2である。

露騒

一理

1  2  3  4  5  6   7.  8  9  10 ll 1:得f

9丁÷τq㌻くフ⊂ρ,弓

0+ロイ4}σ・一 9{21  ω  工23 {21  制  ω  {O〕 ,    ω

:{:o

S:i 一:・{ 局

A3:0 】3 2逆

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3成

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一(;⊃十[;ユ界4、◆2:1 195:2 23

9+7、茶会 ?奴町、φ

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3成

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2逆 ォ燦ウ住 ツ昭 3成

汪?̀螂 ・…蛎

≒。只斉令ト◇,嶋,耳令

3成

氈D斤形餌

3:7

○十□×△十◇oo団◎③   (3〕  3  ㈹   3  ヨ    3  3    3  3

嫡麟ト鰯離 ○ □×△  ◇ω団員(2)   3〕  ③  (3〕  (3〕  3〕   ②  (ヨ   ② (リ〕   」■ 一

○十口×△ ◇○つ創Φ13〕  ㈹  (3〕  (3〕   3〕  3〕   (3〕 (3〕   一13〕 (3〕   ..一■     ■

Fi9−2 自閉性障害児およびDown症候群児の図形模写 ( )内は、各模写課題の得点を示 さ一

一29一

(9)

自閉性障害児およびDow耐症候群児の図形模写の発達過程においても、前報告(田辺、1985)

で示された発達的な規則性がみられることにほ変わりはない。つまワ、円・十字・正方形・正 三角形等の基本的幾何図形の模写から斜線の合成からなる斜線図形・2図形の接合あるいは交 叉図形・立体図形といった部分要素が多様な性質を持った図形の模写へ、といった図形模写の 発達過程がみられる。ただ、Down症候群児に比して自閉性障害児が模写にすぐれた力をもつ 場合があるという傾向性がみられる。Fig.2から明らかなように、同発達段階(2次元可逆操 作期および3次元形成期)における自閉性障害児とDow血症候群児の図形模写得点を比較する

と、両発達段階とも自閉性障害児の得点が高くなっている。この自閉性障害児の模写得点は、

前報告のちえ遅れ児を対象とした結果と比較してかなり高く、13次元形成期・3次元可逆操作 期の自閉性障害児の得点は、前報告でのユ次変換形成期の平均得点に匹敵するものである。

 図形模写得点3点および2点をその課題図形が模写できたもの、1点およびO点を湊写でき なかりたものとして、各課題図形別に検討してみると、Down症候群児の各課題図形の通過率 は、前報告の結果とほぼ同程度がやや高いといった程度である。自閉性障害児の場合は、3次 元可逆操作期の発達段階で全模写課題を通過している。また、3次元形成期においても、ちえ 遅れ児の場合は課題6,7,8、且0のような菱形や2図形の接合あるいは交叉する図形課題で は、その通過率が低かったが、本研究での自閉性障害児の2名ともこれらの課題を通過してお ワ、うち1名は、課題9の立体図形の模写もできている。前報告でのちえ遅れ児の場合は、3 次元形成期の9名とも立体図形は不通過でありた。自閉性障害児が模写能力にすぐれていると いう結果は、野村ら(1981)のビネーテストの通過頃日の分析から、自閉性障害児は、機械 的記憶・マッチング・形態統合や模写などの視空間認知能力にかかわる項目において通過率が 高かったとする結果と一致するものである。

 しかし、この自閉性障害児の模写能力にすぐれているといった傾向性については、学習場面 や日常生活場面での描画活動の実態をみていると、さらに詳細に吟味してみる必要があると考

えられる。描画表現にみられる障害による傾向性について、現在筆者らは描画の測定手段を図 形模写、人物画に限定せず、描画活動全般からの検討を計画しているので、詳しい分析は続稿 に譲ることにするが、ここでは、その基礎的資料を得ることおよび今後の問題を整理すること を目的として若干の考察を試みたい。まず、ちえ遅れ児と比較して模写能力にすぐれていると いラ傾向性は、本研究での課題のように呈示された図形を機械的に模写する課題などの場合に おいてであって、描画活動全般でみられるとはいいがたいのではないかといった問題がある。

同じことが人物画においても指摘できる 。つまワ、人物画描画においては衣服が正確に描かれ ているのに、裸の人物構成の上に衣服を着せるといりた人物の貼絵課題などでは、手や足をお おってしまい、衣服と身体との関係が不明確であったりする。身体部分に衣服を重ね合わせる といった重なワの構成を要求される課題などでほ、見えない部分をイメージしてその上に見え る部分を描くことに困難さがみられるようである。この点に関しては、話しごとば獲得期のち え遅れ児と自閉性障害児の発達的特徴について検討した田辺ら(1984)の研究でも、自閉性 障害児は言語や認識レベルでの発達の遅れにかかわらず、かなワ高い手指の操作性を獲得して

^30一

(10)

いるが、それは事物機能の相対的理解を必要としない定位活動などにおいてであって、r道具 的行為」のような事物機能の相対的理解を必要として、自己の中にrモデルを内化」させるこ とが要求される課題においては獲得の弱さがみられることが示されたが、こうした結果とも関 連させて検討していく必要があろう。

 また、発達の高次仙こ伴なって複雑な形を模写することも可能になるが、形と形が組み合わさ りた対象図形 対象物を描画していく過程をみていると、ある形と形との組み合わせとして認 知するのではなく、ひと筆描きのごとくその全体の形の輪郭線を追って描いていく、つまワ、

線をつなぱていった結果としてその形ができあがるといった傾向がみられたりする。あるいは、

O Comorら(1967)の視覚刺激に対する視線固定時間が短く、視覚刺激に対する注目が持 続しにくく、そのために視覚的に呈示されたデーターの処理と利用に障害が生じるのではない

かとの実験結果もあるが、実際の描画場面をみていても、注視、追視、対追視がなく、一べつ してまるで自分の頭の中にある映像を追って描いているような感じを受けることがある。

 描画表現の障害による傾向性を明らかにしていくためには、こうした模写課題の種類・内容 の検討とか、描画された結果だけを問題にすることから呈示された模写課題の吟味方法・注視 時間、模写様式・描画順序といった描画表現にかかわるプ連の過程についての分析がなされて いく必要があろう。

 DAMの結果からも前項でみたように、自閉性障害児およびDow血症候群児ともに、発達の高 次化に伴なって人物の各部分の出現率も高くなワ、部分的人間像から全体的にまとまった人間 像へと発達していく過程がみられる。しかし、その表現のありかた・しかた、あるいは描写さ れた人物像から受けるイメージに若干の障害による傾向性がみられる。Do㎜症候群児の人物 画は、自閉性障害児の描画と比較して全体のバランスの点では劣るようであるが、発達の高次 化に伴なって各部分の明細度が増し、衣服などの描写も明確になワ、全体から受けるイメージ として柔軟な人物像が表現されている。それに対して、本研究での4名の自閉性障害児は、先 に図形模写とDAMとの関連について検討した際の各発達段階における図形模写高得点者(群)

に属しておワ、そのDAM得点は概して高く、全体的にバランスのとれた人物像が描写されてい る。頭部・胴部・胸部・脚部等の人物の各部分の位置関係が正確で、さらに、几帳面な表現で 左右対称的に描画されていて、そこから硬直した人物像といったイメージを受ける描画表現に なっている。自閉性障害児ほ、描かれた形を使ってイメージを豊かに展開していく活動、いわ ゆる意味づけ活動がむずかしく、四角や菱形などの形が先行する傾向がみられ、教育現場にお いても、r教えられた形・図式はうまく描けるが、その表現はバターン化したものになワやす い」とかrいつまでも同じ絵はかワ描きつづける」といった問題が指摘されることが多い。

 若干の考察をすすめてきたように、描画表現のあり方において障害そのものに起因するとみ られるいくつかの傾向性がみられることも事実であろう。しかし、こうした傾向性については、

先に指摘したようなさらなる検討が必要であるとともに、その解釈にあたっては、障害による 固定的な特徴とみるのではなく、このような傾向性が発達過程の中でどのように変容をとげて いくのかを、生活実態や教育実践の中味ともかかわらせて吟味されていく必要があろう。

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引 用 文 献

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参照

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