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惑星の文脈で考える

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Academic year: 2021

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Transactions of The Research Institute of Oceanochemistry Vol. 27 No. 1, Apr., 2014

巻 頭 言

 

京都大学化学研究所教授,一般財団法人海洋化学研究所代表理事

惑星の文脈で考える

宗 林 由 樹

コロンビア大学のウォリー・ブロッカーは,海洋の断面観測に基づいてベルトコンベアモデル を提唱し,気候変動に対する海洋の重要性を指摘した地球化学者です.彼の著書 How to Build a Habitable Planet の初版は 1984 年に刊行されました.これは,たいへんやさしい語り口で,どの ようにして地球が誕生し,生命の星となったかを説きあかした名著でした.2012 年,その後 30 年 の科学の進歩をふまえた改訂増補版が,ウォリー・ブロッカーとチャールズ・ラングミューアーに よって著されました.ラングミューアーは,ハーバード大の地球化学者で,海底熱水活動の発見と 固体地球化学サイクルの研究に貢献しました.私は,現在この改訂版の翻訳にとり組んでいます.

その過程で強く印象に残ったのは,「惑星の文脈で考える」という姿勢です.

現在の地球環境は,40 億年におよぶ地球と生命の共進化によってつくられました.酸素を含む 大気と海洋は,永年の光合成の結果であり,生物の多細胞化と陸上進出をみちびきました.化石燃 料は,5 億年かかって蓄積された有限の非再生資源です.大規模な火山活動や隕石衝突,および急 激な環境変動がくり返され,大量絶滅が起こりましたが,生物多様性は危機のなかにチャンスを 見いだして,さらなる進化と生態系の充実をなし遂げてきました.1 万年前に最終氷期が終わると,

奇跡的に安定した気候にめぐまれて,人類は文明を発達させることができました.人類は,惑星の エネルギーと資源を独占し,すべての環境と生態系を支配し,急激に人口を増やしました.人類の 衝撃は,大量の温室効果ガスやフロンを排出して気候システムを撹乱し,資源を枯渇させ,大量絶 滅を引き起こし,ついには自分たちの子孫の生存可能性をも脅かそうとしています.

このような惑星の文脈で考えるとき,私たちが真剣に考え,なすべきことは何でしょうか?景気 対策,少子化対策,憲法改正,軍備増強,東京オリンピックなどが,ほんとうに何よりも優先され るべきことでしょうか?地球の生存可能性を守るためには,特に人類の持続可能性を保つためには,

私たち自身が大きな責任を持っていることを認識して,惑星の文脈に調和した生き方と社会の進む べき道を考えなければなりません.

本財団は,海洋化学の研究と教育を通して,惑星の文脈を正しく理解することに貢献できるよう

に,活動を続けていきたいと思います.

参照

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