Ⅰ はじめに
通級指導教室が平成 5 年に制度化された時点の指 導対象は言語障害,難聴,弱視,情緒障害,肢体不 自由,病弱・身体虚弱等の児童生徒であった.平成 18年にはこれに学習障害,注意欠陥多動性障害の児 童生徒も加わり,通常の学級に在籍する発達障害の 児童生徒の支援の場としての役割も担うようになっ た.通級による指導を受ける児童生徒は増える一方 だが,それに見合うだけの通級指導教室および担当 教員が十分に配置されていないという現状がある.
特に小学校に比べ中学校における整備の遅れが指摘
されている(吉田,2010).
中学校で通級による指導の整備が遅れている要因 として,特別支援教育そのものに対する意識が高 まっていないということがあげられる.山田(2012)
は,その要因として以下の 6 点をあげている.
①文部科学省での特別支援教育の推進が小学校モデ ルからの出発であったこと
②学校体制の最重点課題に特別支援教育が位置付い ていなかったこと
③生徒指導を中心とした学校体制にうまく結びつか なかったこと
④二次的な症状が強く出てきて,本人の特性や課題 よりも,問題行動や不登校という状態に振り回さ れたこと
⑤特別支援教育の視点を入れた支援の成功体験が周 りに少なかったこと
⑥学校としての推進の具体的な見通し,エビデンス
中学校通級指導教室に対する校内職員の理解啓発のあり方の検討
†~通級指導教室の授業公開の実践~
横山 直子* 秋田大学大学院 武田 篤**
秋田大学教育文化学部 平成18年の制度改正により,通級による指導の対象として学習障害,注意欠陥多動性障
害の児童生徒が新たに加わった.これにより,通級による指導を受ける児童生徒の数は増 加の一途をたどっているが,中学校の通級指導教室は小学校に比べ整備が遅れ,校内の職 員にもよく理解されていないなど,多くの課題を抱えている.筆者が勤務する中学校にお いても,通級指導教室に対する校内職員の理解は十分ではなかった.そこで本研究では,
中学校の職員に通級指導教室に対する理解を深めてもらうために行われた授業公開の実践 について検討することにした.その際の参観者の自由記述による感想を分析したところ,
通級指導教室の授業を公開することによって,参観した職員の生徒に対する見方が変わり,
意識も変化していた.さらに,回を重ねることで生徒の成長を感じることができ,理解も 深まっていくという結果が得られた.通級指導教室の授業公開は,校内で通級に対する理 解啓発と連携を進めるうえで,有効な取り組みであることが明らかとなった.これらの結 果を基に今後の通級指導教室への理解を深めてもらうための課題について検討した.
キーワード:通級指導教室,中学校,授業公開,KJ法
2015年 1 月 7 日受理
† Research on Improving Awareness of Junior High School Resource Rooms among Teachers: Opening Resource Room Classes to the Public
* Naoko YOKOYAMA, Graduate School, Akita University
** Atsushi TAKEDA, Faculty of Education and Human Studies, Akita University
が持ちきれていないこと
秋田県の中学校通級指導教室の現状を見てみる と,平成20年,県内の中学校 1 校に通級指導教室が 設置された.以来,設置校は徐々に増え始め,平成 25年度は 8 校となっており,全てLD等を対象とし ている.秋田県においても中学校で通級による指 導へのニーズが高まってきていることがうかがえ る.しかし,佐々木(2011)も指摘しているように,
LD等を対象とした小学校通級指導教室は既存の言 語障害対象の通級指導教室に担当者を加配する形で 設置・整備してきたのに対して,中学校では一から のスタートであり,多様な課題を抱えている現状が ある.
筆者の勤務するA中学校には平成22年度,中学校 では県内 3 番目となる通級指導教室が新たに設置さ れた.筆者はその最初の担当となり,初めての通級 指導教室運営に携わった.
通級指導教室開設当時,A中学校の職員のほとん どは「通級」を知らず,特別支援教育に対する理解 も進んでいなかった.筆者自身も,赴任したばかり で校内事情もよくわからず,やはり一からのスター トであった.初年度は校内支援体制の整備を進めな がら,校内職員に通級指導教室のことを理解しても らうための取り組みを行った.
通級している生徒達は通常の学級に在籍し,学校 生活の大半の時間を通常の学級で過ごしている.通 級による指導で養った力は,通常の学級においても 発揮できるようにならなければ,意味がない.その ためには,通級担当以外の教師が,通級指導教室が どんなことをするところなのか理解しておく必要が ある.しかし,A中学校においても,通級指導教室 に対する校内職員の理解が進んでいるとは言えない 現状があった.そこで,本研究では,筆者が校内の 職員に通級指導教室に対する理解を深めてもらうた めに行った通級指導教室の授業公開の実践について 検討することにした.具体的には,通級指導教室の 授業を公開することによって通級指導教室に対する 校内職員の意識がどのように変化していったのか,
授業感想カードの自由記述をもとに検討し,今後の 理解啓発のあり方について考察した.
授業公開の実践は 2 つある.1 つは通級指導教室 開設 2 年目に筆者が行った授業公開である.もう一 つは,3 年目にB教諭が行った授業公開である.こ の 2 つの実践について検討した.
Ⅱ 授業公開 1 1 はじめに
筆者は,開設されたばかりの通級指導教室を初め て担当することになった.そこで,通級指導教室が どういうところなのか,自分自身も勉強しながら校 内職員に伝えていく取り組みを続けてきた.例え ば,資料を準備して職員会議で説明する,職員向け の特別支援教育通信を発行して通級による指導の内 容や生徒の様子を紹介する等である.これに対して 関心を寄せたり積極的に知ろうとしたりする職員は 少なく,もっと直接相手に訴えかける方法が求めら れた.そこで,校内職員の理解を深めるためには通 級による指導を見てもらうことが最も効果的である と考え,通級指導教室開設 2 年目に,授業を公開し 全職員に参観してもらった.
ここでは,授業公開によって,参観した校内職員 の意識はどう変わるのかを明らかにし,校内職員の 通級指導教室に対する理解啓発の在り方について検 討する.
2 対象と方法
平成XX年 7 月に行われた,A中学校内の通級に よる指導の公開授業を参観した職員30名を対象とし た.通級による指導の授業を参観するのは,全員初 めてであった.16名の参観者が自由記述による感想 カードを提出した.内容はKJ法に準じてカテゴリー 化し検討した.
3 公開授業の概要 1)授業者
筆者は長く特別支援教育に携わってきた.公開授 業時は通級指導教室を担当して 2 年目であった.
2)対象生徒
自閉的傾向をもつ中学 2 年生の男子.視覚的な情 報を読み取る力が弱く,言葉とイメージを結びつけ ることが苦手である.通級では 4 コマまんがを教材 に取り入れ,単純化された絵から場面をイメージし,
それに合う言葉を選ぶ学習を行った.また,課題に 入る前に「教室でできる 1 分間集中トレーニング」
(上嶋,2008)を行い,集中力を高め,学習の基礎 となるよく見る力,よく聞く力をつけられるように した.
3)授業の様子
大半の職員は,狭い教室に約30人の参観者が入る ことでEくんが緊張してしまうことを心配してい た.しかし,集中トレーニングで教師の問いにEく
んがすらすらと答える姿に,参観していた職員から 驚きの声が上がった.
Eくんは大人に認めてもらいたい気持ちが強い.
自分が頑張る姿を先生方に見てもらいたくていつも 以上に張り切っていた.何度も後ろをふり返り,笑 顔を返したりうなずいたりしてくれる職員を見ては 満足そうにしていた.途中,張り切りすぎたEくん は課題選択の場面で難しい方を選んでしまい,苦し む様子も見られた.難しいことに取り組んだ方が認 めてもらえると思ったのであろう.
4 結果
授業を参観した校内職員の自由記述による感想 カードの内容を分析したところ総ラベル数は177枚 で,大きく「生徒の姿」「支援の在り方」「通級の 重要性」「その他」に分類された(表 1).なお( ) の数字はラベル数を示す.
1)生徒の姿
このカテゴリーでまず挙げられたのは,通級で生 き生きと学習している生徒の姿である.「落ち着い て学習に取り組んでいる」「一生懸命正解しようと 努力している」など普段は見られない生徒の様子に, 参観者は「感心した」「うれしい」などと感じてい たことが分かった.
2)支援の在り方
支援の在り方に関しては「ほめることを中心に言 葉かけする」など意欲を高めるための支援や「指示 を一つ一つ短くしている」「やることが明確である」
など学習に集中させるための支援についての感想が 多く寄せられた.また,普段の授業ではできないと 思われる学習にも「スモールステップで」取り組ま せていることや「自分で考え自分で決める」という 自己決定を促したりしている点にも注目していた.
日常の指導の成果については「よく見てよく聞いて という点がしっかり取り組まれている」等が挙げら れた.
3)通級の重要性
通常の学級における授業との比較から「普通授業 ではここまでできない」「1 対 1 で生徒が生かされ ている」と感じているものや「普段の授業にもつな がる」など,今後の普通授業に生かせると期待して いるものもあった.大切なこととして「本人のニー ズに応じた支援」や「ソーシャルスキル」等が挙げ られた.その取り組み方として「1 つ 1 つの課題に 十分な時間をかける」ことが示された.
表 1 通級による指導参観者の感想
Ⅰ 生徒の姿 1)生徒の様子
・学習に集中し落ち着いている ⑽
・見通し,自信をもっている ⑻
・一生懸命がんばっている ⑻
・安心,満足している ⑻
・意欲が高まっている ⑹
・学習態度が立派である ⑷
・楽しんでいる ⑶
・理解が深まっている ⑵ 2)参観者の感じ方
・うれしい,よかった ⑷
・感心・感激した ⑷
・すばらしい ⑶
Ⅱ 支援の在り方 1)意欲を高める工夫
・励まし,ほめる言葉 ⑼
・きちんと評価 ⑹
・雰囲気作り ⑷
・意欲のもたせ方 ⑶ 2)集中させる工夫
・分かりやすく丁寧な指導 ⑼
・ 1 つ 1 つ簡潔な指示 ⑻
・ 1 つ 1 つの活動が短く明確 ⑷
・教材の工夫 ⑶ 3)力をつける支援
・生徒が考え,生徒が決める ⑹
・難しいことにも取り組ませる支援 ⑶
・教具の使い方 ⑵
・段階的な指導 ⑵
・状況把握の力を高める ⑵ 4)日常の指導の成果
・約束やしつけができている ⑹
・トレーニングの効果 ⑶ 5)その他
・適切に行われていた ⑴
・意図が伝わってきた ⑴
・何をしているのか興味があった ⑴
Ⅲ 通級の重要性
1)通常の学級における授業との比較
・普通授業ではここまでできない ⑾
・ 1 対 1 で生徒が生かされている ⑷
・今後の普通教室への期待 ⑵ 2)本人にとって大切な事
・本人のニーズに応じた学習内容 ⑵
・ソーシャルスキルトレーニング ⑵
・ 1 つ 1 つの課題に十分な時間をかける ⑴
Ⅳ その他
1)課題が難しい ⑾ 2)参考になった ⑻ 3)質問 ⑶
5 考察
今回参観した職員は,それまで通級指導教室でど んなことをしているのか知らなかったり,あるいは 違うイメージをもっていたりした.通級している生 徒に対しても「障害をもっている子」「通常の学級 では無理」というような固定的な見方をしていた.
しかし,いつもと違う生徒の姿を見ることによっ て,参観者の生徒に対する見方は大きく変わった.
1 対 1 でニーズに応じた支援を行えば,生き生きと 学習できる生徒であるという新しい見方ができるよ うになった.また通級による指導の授業中の生徒と 教師のやりとりを間近で見ることで,どんなかかわ り方が生徒の良さを引き出すことができるのか,具 体的に知ることができ,通常の学級の授業にも生か せると感じた職員もいた.これは「通級の生徒は通 級で」という意識から「通級と通常の両方で」とい う意識への変化と考えられた.
通級指導教室の授業を公開することは,参観した 職員の生徒に対する見方を変え,自分も生徒を支援 する当事者であるという意識をもつようになるとい う変化をもたらすことができると考える.
公開授業では,校内職員の見方が変わるように,
普段は見られない生徒の積極性や集中力が見られる ような授業作りを工夫していくことが大切と思われ た.
Ⅲ 授業公開 2 1 はじめに
中学校の通級指導教室の担当者は,理解啓発のた めに様々な取り組みを行っている.中でも,通級指 導教室の授業を公開することは,直接相手に訴えか ける方法として非常に効果的であることがわかって きた.筆者は通級指導教室開設 2 年目に校内の全職 員に授業を公開し,授業を参観することによって校 内職員の意識はどう変わるのかを調査した.その結 果,授業を公開することによって,参観した職員の 生徒に対する見方が変わること,自分も生徒を支援 する当事者であるという意識をもつようになること が明らかとなった.授業を公開する際には,通常の 学級では見られないような生徒の意欲や集中力を見 せることができる授業作りが求められた.
A中学校では翌年再び通級指導教室の授業公開が 行われた.今回筆者は授業者ではなく,参観者と して授業の様子を観察した.ここでは,2 回目の公
開授業を校内の職員がどのような観点で参観したの か,またどのようなとらえ方をしたのかを明らかに し,職員の理解を深めるための授業公開のあり方を 検討することとした.
2 対象と方法
平成XX+1 年12月に行われた,A中学校内の通 級による指導の公開授業を参観した職員26名を対象 とした.参観者が感想カードに記入した自由記述の 内容を,KJ法に準じてカテゴリー化し検討した.
3 公開授業の概要 1)授業者
A中学校のB教諭.筆者の後任である.これまで,
特別支援学級を長く担当してきたが,通級指導教室 を担当するのは初めてである.
2)対象生徒
知的能力は境界で,自閉的傾向をもつ中学 3 年生 の男子.視覚的な情報を読み取る力が弱く,言葉と イメージを結びつけることが苦手である.通常の学 級の授業では,指示を理解したり自分の考えを表現 したりすることが難しい.通級指導教室では,集中 トレーニングや,言葉とイメージを結びつける学習 などを行っている.
3)授業の様子
教師との 1 対 1 の個別学習.大勢の参観者がいる 中で,生徒は落ち着いて学習に取り組んだ.4 コマ まんがを見て主人公の気持ちを考える場面では,戸 惑う様子も見られたが,教師の声かけで,自分なり の意見を発表することができた.終了後,たくさん の先生から声をかけられ,非常に嬉しそうであった.
4 結果
授業を参観した校内職員の自由記述による感想 カードの内容を分析したところ,総ラベル数は123 枚で,大きく「感心した点」「気になる点」「障害理 解の大切さ」に分類された(表 2).なお( )の数 字はラベル数を示す.
1)感心した点
このカテゴリーでまず挙げられたのは生徒の様子 で,「学習に集中し落ち着いている」「昨年より成長 している」「意欲的に頑張っている」等,学習に取 り組む姿勢や態度に感心している記述が多かった.
また,生徒が「自分の考えを表現している」姿には,
普段の姿とのギャップを感じるとの記載もあった.
教師の支援については,「きめ細かく丁寧な支援」
「教材が工夫されている」「苦手なことに対する手だ
てが講じられている」等,通級ならではの個々のニー ズに応じた支援に感心しているものが多かった.
参観者の学びについては,通級指導に対して「参 観前ととらえ方が変わった」「普段の授業に生かし たい」という感想が多かった.またその多くは「通 級の効果」や「通級の目的」が理解できたとも述べ ていた.「通常の学級でも生かしている」という職 員は対象生徒の担任であり,通級での学習の成果を グラフ化したもの見て,良くないときは声をかける ようにしている,と記述していた.
2)気になる点
ここでは,生徒の様子について「声が小さい」こ とや,「鉛筆の持ち方や書き方」が気になるという 記述が見られた.
教師の支援については,4 コマまんがの主人公の
「気持ちの理解のさせ方」は,「もっと多様な考えが あったのでは」というものや,「自立活動で何をね らうのか」等の疑問があげられた.
また,「他の通級生徒の指導内容」や「自立活動 の内容」をもっと知りたいというものもあった.
3)障害理解の大切さ
授業参観を通じて,「障害理解の必要性」を感じ たという職員は,「個々の生徒の障害の状況を知る ことによって教師の接し方も違ってくると思う」「生 徒の障害の特性についてもっと詳しく研修できる機 会があればいい」と述べていた.
5 考察
A中学校の授業公開はこれが 2 回目であったが,
前回との大きな違いは,1 回目と比較して生徒の成 長を感じていること,通級指導の効果や目的を理解 できるようになってきていること,気になる点が多 く指摘されるようになったこと,建設的な意見が出 るようになったこと等である.
参観した職員は,前回同様,生徒の姿や教師の支 援について感心し,通級についての理解を深めつつ,
通常の学級での授業との違いをより強く感じるよう になってきたと考えられる.ただし,主人公の気持 ちの理解のさせ方について疑問をもった職員は,国 語科や道徳の観点から捉えようとしていたと考えら れる.自立活動という視点から理解することは難し いと考えられた.
障害理解の必要性についての記述に見られるよう に,個々の生徒の障害状況や,自立活動など通級に よる指導のカリキュラムを職員全体で理解できる場
表 2 通級による指導参観者の感想
Ⅰ 感心した点 1)生徒の様子
・学習に集中し落ち着いている ⑾
・生徒の成長 ⑷
・意欲・がんばり ⑷
・授業に向かう姿勢 ⑷
・安心 ⑷
・自分の考えを表現 ⑵
・その他 ⑵ 2)教師の支援
・きめ細かく,丁寧 ⑾
・教材の工夫 ⑷
・苦手なことに対する手だて ⑶
・姿勢が良くなるイスの使用 ⑶
・すばらしい ⑶
・課題設定・課題把握 ⑵
・自分で成長が分かる ⑵
・大変そう ⑵
・筆談の後の発表 ⑴
・環境整備 ⑴
・低く落ち着いた音楽 ⑴ 3)参観者の学び
・参観前のとらえ方と変わった ⑺
・普段の授業に生かしたい ⑸
・通級指導の効果 ⑷
・通級指導の目的 ⑶
・通常の学級でも生かしている ⑴
・生徒の言葉の力 ⑴
・その他 ⑼
Ⅱ 気になる点 1)生徒の様子
・声が小さい ⑸
・鉛筆の持ち方や書き方 ⑴ 2)教師の支援
・気持ちの理解のさせ方 ⑸
・特殊なイスの使用目的 ⑷
・筆談の意味 ⑶
・BGM の音量が小さい ⑴ 3)参観者の疑問
・他の通級生徒の指導内容 ⑶
・自立活動の内容 ⑴
・その他 ⑶
Ⅲ 障害理解の大切さ 1)障害理解の必要性 ⑵ 2)その他 ⑴
の設定が求められる.
通級指導教室の最大のねらいは,通常の学級での 適応した生活ができることである.今後の通級指導 教室の授業公開は,校内の特別支援体制の年間計画 の中にしっかりと位置づけ,公開の前に生徒の障害 の状況とカリキュラム等について理解しておいても らうことが有効と思われる.これにより,授業を参 観する職員が観点を明確にすることができ,通常の 学級の授業との連続性についての理解につながるこ とが期待される.
Ⅳ まとめと今後の課題
通級指導教室の授業を公開し,参観者の自由記述 による感想を分析し検討することは,理解啓発のあ り方についての多くことを示唆してくれた.
筆者は,A中学校に通級指導教室が開設された年 から,通級担当者として校内の職員に対する理解啓 発に取り組んできた.しかし,情報発信や情報交換 を主とする地道な取り組みだけでは,相手がよほど 関心を持っていない限り,印象に残ることはなく,
もっと相手に直接訴えかけるような方法が求められ た.そこで,通級指導教室開設 2 年目に,通級指導 教室の授業を公開することにした.
通級指導教室の授業公開に当たって,協力してく れる職員もいたが、企画・運営は授業者である筆者 が行うほかなく,負担は大きかった.
授業当日,生徒は先生方に見てもらえることで,
とても張り切っていた.集中力を高めるトレーニン グをどんどんこなしていく生徒の姿に,参観してい る職員は驚いていた.通常の学級では指示が理解で きなかったり 1 人では活動できなかったりする生徒 であったが,ニーズに応じた支援によって,大いに 力を発揮することができた.生徒の良さが他の職員 に認められたことは,担当者として大きな喜びで あった.
参観した職員には自由記述で感想を書いてもらっ た.内容をKJ法に準じてカテゴリー化し分析した ところ,やはり,生き生きと学習する生徒の姿に感 心し,喜んでいる教師が多かった.また,通級なら ではのきめ細かな支援に注目し,通常の学級の授業 にも生かせると感じてもらえたことも,嬉しいこと であった.
通級指導教室の授業公開によって,通級ではどん な生徒が学習しているのか,どのような指導が行わ
れているのか等,これまで筆者が校内職員に理解し て欲しいと思ってきたことの多くを伝えることがで きた.参観した職員は,生徒に対する見方が変わり,
支援のあり方によって生き生きと学習できる生徒で あるという新しい見方ができるようになった.また,
通級指導教室の授業を見て,自分の授業にも生かせ ると感じた職員もいたことから,生徒に対して,もっ と主体的に支援していこうとする意識に変わったと 考えられる.
授業を公開することは,通級指導教室に対する校 内職員の理解を深める上で有効な取り組みであっ た.公開するに当たっては様々な苦労があったが,
終わってみると達成感のほうが大きかった.公開す る際には,普段は見られない生徒の積極性や集中力 が見られるような授業作りの工夫が必要であること もわかった.
翌年,A中学校では,通級指導教室の授業公開が 再び行われ,筆者は授業を見る側として参加した.
対象生徒は前回と同じであった.参観した職員の感 想も同様に分析した.
生徒は前回以上に学習に集中し,意欲的に取り組 んでいた.その姿に成長を感じ,力を引き出す支援 のあり方に感心している職員が多かった.通級の効 果や目的が理解できた,普段の授業に生かしたい,
という記述が多かった.継続して参観することで,
理解が深まっていくのだと感じた.
反面,気になる点も挙げられるようになってき た.公開授業の内容は,4 コマまんがを用いて言葉 とイメージを結びつける学習であった.授業者のB 教諭は,生徒が 4 コマまんがの主人公の気持ちを自 分なりに考えて,単語または 2,3 語文で表現でき ればいいと考えていた.ところが,参観者は通級指 導教室で行われている自立活動の授業になじみがな い.指導内容や指導方法については従来の教科の授 業と同じような観点で参観していたと思われる.参 観者の感想には,主人公の気持ちの理解のさせ方は あれでいいのか,もっと多様な考えがあったのでは ないか,という疑問がいくつか見られた.このこと は,同じような学習をしているように見えても,通 級指導教室ではねらっていることが違うということ を参観者に理解してもらう必要があることを示して いる.
2 回の授業公開を終えて,以下の 2 つのことが指 摘できると思われる.1 つは,授業を公開すること
は,見た人に一度に多くのことを伝えることができ,
理解を深めてもらう上で,非常に有効な取り組みで あるということである.もう1つは,ただ授業を見 てもらうだけでは,参観者の理解を深めるには限界 があるということである.授業公開をその時だけの 単一の取り組みにせず,いつ,誰に対して,何を伝 えるのかという,より具体的で計画的な取り組みへ 発展させ,継続していきたいと考える.
通級指導教室で行われている授業は,実態把握に 始まり,目標設定,指導内容の選定,個別の指導計 画作成という過程を経て,生徒の特性に応じて組み 立てられている.今後は,これらの過程の中で,生 徒の学級担任をはじめとするいろいろな教師と個別 又は全体で関わりながら授業を作っていくような取 り組みも,理解者を増やしていくために必要となっ てくるであろう.
文 献
佐々木朋広(2012): LD等を対象とした中学校通 級指導教室の現状と課題 ~中学校通級指導教室 を担当する教員へのインタビュー調査から~.秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要 34,81- 91.
上嶋 惠(2008):教室でできる特別支援教育 1 分 間集中トレーニング.学陽書房
山田朋子(2012):中学校における特別支援教育の 推進 : 特別支援教育コーディネーターの立場か ら.LD研究21⑶,329-332.
吉田純平(2010):「通級による指導」の歴史と課題.
ろう教育科学 51⑷,149-161.
Summary
Due to the revision of the educational system for children with disabilities in 2006, children with learning disabilities and with attention deficit hyperactivity disorders are now eligible to attend the resource room, resulting in the growing number of pupils of the resource room. However, the resource rooms at junior high schools are not as established as those of elementary schools, and they are not well understood by the school staff members themselves.
In this study, the authors carried out investigations on open classes to deepen the understanding of junior high school teachers to resource rooms. Open classes were conducted twice and the views of the participants expressed freely were analyzed by the KJ method. The results showed that teachers were able to see the progress of students and their understanding also deepened. It was confirmed that open classes of the resource room are an effective means of promoting the understanding and raising awareness of these classes. Based on these results, the challenges met in deepening understanding of the resource class in the future were reviewed.
Key Words
: resource room, junior high schools, open classes, KJ method(Received January 7, 2015)