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複根を有する下顎犬歯の4例

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114 岩手歯誌 1:114−118, 1976

複根を有する下顎犬歯の4例

野坂洋一郎

岩手医科大学歯学部

伊藤一三 大沢得二

佐々木利明

口腔解剖学第1講座(主任:野坂洋一郎教授)

〔受付:1976年5月22日/

抄録:複根を有する下顎犬歯の4例を経験した。歯牙の大きさは正常歯より小さかった。歯根は近遠心的 に圧扁され,根尖乃が唇舌的に分岐している。X線像から,唇舌側根には根管が認められ,唇側の方が太 い。原因は個体発生途上の変異によると考えるのが妥当ではないかと考えられる。

緒 言

 ヒトの前歯は通常単根,単根管であるが稀に 2根をなすことがある。その出現率は,上顎は 特に稀であると述べられている12㌔

 しかし下顎犬歯においては,岡本斗)は0.3%の 頻度であると述べているが,欧米白人では1.5

〜 8%の高率が報告されている3)。 しかし,藤 田D,内藤)は,このように高い出現率に対して は,多きに過ぎると指摘している。

 そこで筆者は従来の報告例4〜25)に追加する意 味で遭遇した複根を有する下顎犬歯の4例につ いて報告する。

研究材料

 岩手医科大学口腔解剖学教室で蒐集した抜去 歯牙の中からみつかった下顎犬歯の複根を有す る歯牙4例で,性別,年齢は不明である。

 4例のうち第4例目は,歯冠の崩壊が著しい が舌面歯頚隆線の発育,近心側よりの隣接而観 からして下顎の犬歯である。

観察成績

 1.大きさ:大きさは表1のごとくで,第3 例の歯冠厚径のみが正常歯の平均値と比べて大 きいのみで他はすべて小さい。

 2.歯冠:各歯牙とも咬粍し,その程度はマ ルチンの2度程度である。舌面歯頚隆線,その 他の隆線には異常を認めない(図3,4)。

 3.歯根:歯根は近遠心的に圧扁されてい る。第3例を除き他は全て歯根全長に対し根尖 側%が頬側根,舌側根に分岐している。第3例 は根尖側%が頬側根と舌側根に分岐している。

第4例は頬側根尖が非常に尖鋭になり,舌側根 の方が長いが,他はすべて頬側根が長い。

 分岐部位に沿って歯頚部まで溝が走りすべて 遠心側の方が深い(図1,2)。

 4.X線像:歯根外形に一致した完全な分岐 根管を形成し,唇側根の根管は舌側根に比べ歯 軸に平行に近く太い。

 根管の分岐位置は根尖から根の%〜%の高い 位置で分岐している。

考 察

 過剰根の発生に関しては哺乳類の歯牙の発生 起源を爬虫類以下の動物の単錐歯より由来した

Four cases of the double−rooted mandibular canine.

 Yohichiro NozAKA, Ichizoh IToH, Tokuji OHsAw△and Toshiaki SAsAKI(Department of Oral Ana−

 tomy, Iwate Medical University School of Dentistry, Morioka O20)

来岩手県盛岡市中央通り1−3−27(〒020)       Dθ加.」.1τθ碗εMε4.Uη初.1:114−118,1976.

(2)

岩手歯誌 1:114−118,1976 115

表1歯牙の計測値

計測部位

例 第1例第・例第3例第4例門撰㌍

長 長 幅長長長径

        根 根 厚   冠 冠 根         側 側 冠 全 歯 歯 歯 唇 舌 歯

歯根歯頸部厚径

歯  根  厚  径 根尖 璃躍魎置・1・・

左 側 20.30  9.22  6.14 11.08 11.08 10.95  7.53  6.49  7.28  47.7

左側

22.34  9.22 6.75 13.12 13.12 13.17  7.45  6.89  7.53  54.4

右側

19.83  8.51  6.48 11.32 11.32 10.29  8.04  7.51  8.06  43.8

左側

21.63  9.57

12.99 11.59 12.99

 7.64  8.21  59.5

21  λ﹁0∠U4 ∠U2∩フ3

U921

1

7.84

   単位:㎜

という癒合説27),集合説28)および分化説29・3C)な どにより系統発生学的に意義づけているものも

あるが10・12〜16・20・23)むしろ歯胚形成時に何らかの

要因が加わって発生するものと考えられる。

 すなわちThOma2)は単なる歯胚の異常発育で あると述べ,Taviani31),小林22)は歯胚と顎骨の 発育との相関に着眼し,顎の狭小化が歯胚に機 械的圧迫を加え歯根の発育にいろいろな影響を およぼすと説いている。又桐野32)は唇舌的な分 岐を隣在歯からの圧迫に帰している。しかし,

図1,2の5に示すごとく,下顎犬歯根の近遠 心的圧扁が強く,あたかも2根管をなすと思わ れる歯牙のX線像を観察すると,図5における 5のように1根管にすぎず,又青木33)は分岐根 管をなす下顎犬歯は99歯中1歯にすぎないとい

う。

 そこで分岐根の原因を圧扁のみに求めるのは 不適当かとも思える。

 しかし,複根をなす犬歯の出現が下顎に多く 上顎に極めて稀であること。根の分岐が唇舌側 で近遠心分岐がないこと。乳犬歯においては唇 側に溝の出現すること34)。複根をなす犬歯それ 自体は正常犬歯に比べ大きさが小さいこと4・52L 24)。以上から歯の個体発生途上の変異によると 考えるのが妥当ではないかと筆者らは考えた

いo

結 論

1.下顎犬歯の2根を4例認めた。

2.大きさは正常歯より小さかった。

3.歯根は近遠心的に圧扁され,根尖側%が頬  舌側に分かれている。

4.分岐部より歯頸に向い溝が走り,遠心面が  近心面より深い。

5.X線像による根管は高位で分岐し,唇側根 管の方が太い。

 Abstract:Four cases of the double.rooted mandibular canine were experienced. Measurements of canine were as follows.

Length over all Length of crown

Mesio・distal diameter of crown Labio−lingual diameter of crown Length of root

Length of labial root Length of lingual root

Case 1 20.30  9.22  6.14  7.53 11.08 11.08 10.95

Case 2 22.34  9.22  6.75  7.45 13.12 13.12 13.17

Case 3 19.83  8.51  6.48  8.04 11.32 11.32 10.29

Case 4 21.63  9.57

12.99 11.59 12.99

Averages(Kamijoh26))

 24.66

 10.29

 6.92

 7.84

 14.31

(3)

116      岩手歯誌 1 114−118, 1976

 Labio・lingual diameter of root     7.28    7.53    8.06    8.21  Length of bifurcation from apex   5.29   7.15   4.96   7.18       米Millimeter

   The lab輌al and lingual roots contained root canal shown on dental radiographs.

        文     献

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(4)

じ;]三1 来1i:1こ  1  114−118  1976

117

1司1 近心面観 1〜4:複根を有する犬1[十1,5 歯根の圧扁の強い大1斗、1

図2 遠心面観

(5)

118 岩手歯誌 1:114−118 1976

図3 唇面観

図4 舌面観

図5 X線像

分岐位置は高い。

5は近遠心的に圧扁の強い 下顎犬歯

1 2 〜 3 4 5

参照

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