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知的障害児教育における電子キット及びコンピュータ活用の試み見

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Academic year: 2021

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(1)

知的障害児教育における電子キット及びコンピュータ活用の試み

綿繰木暖翠鍛㍉調一群

落巫山σ

Application Of Electronic Kits And Computer For The lntellectual

      Handcapped Education

Keniti Makiyama  and Tadayuki Sasaki    (Received May 31, 1995)

は じ め に

 私たち教師が日々の実践の中で中核を占めているものは,「授業」そのものである。

また,多くの悩みを抱かせるのも「授業」である。知的に障害をもつ多くの児童は,抽象的な理解 力に乏しく,より日常生活に密接なもの,より具体的なもの,具体的に自ら経験した物を通しての 学習が大切である。これらの理解して欲しい内容を児童に伝えるものが教材教具となってくる。つ

まり,教材教具とは授業の中で教師と児童をつなぐ道具であると考えられる。

 平井(1994)は教材教具を①個別性の重視②興味関心を引き出す③系統性がある④関連性がある⑤操

作性の容易さの5つの観点から児童の学習と位置づけている。これらのことから,知的障害児の学習 を進める上で,指導効果を効果的に高めるためにも児童一人一人の実態に応じた教材教具の作成や

工夫が必要であると考える。

 児童一人一人の障害や特性が多様化し,授業を進める上での教材教具の開発も難しいことも日々の

実践の中で多くの教師からあげられてきている。また,制約された時間,予算内での効率的な教材

作成も教師に求められてきている。

 児童生徒は,日常の生活の中でテレビゲーム,テレビ番組,ビデオソフトなど映像や音楽などに慣

れ親しんでいる。彼らにとって,これらは抵抗なく受け入れられる外界からの刺激であるとも言う

ことができる。

 近年,簡単なスイッチーつで音が出たり,光るなど児童にとって操作しやすい電子キットを利用し た取り組みが実践されてきている。楽しい教材を作る会(1994)では,怪獣の鳴き声が出る電子キッ

トを利用して,遊びの指導,体育などでの活用の実際を報告している。そこでは,興味関心の高ま りが児童生徒の意欲的な動きを引き出すこと,スイッチを押す,音が出るという単純な操作方法が

重度の児童生徒にも利用を可能とし,学習への参加を促すことにつながったとしている。

*茨城県立水戸飯富養護学校(〒311 一・42茨城県水戸市飯富町3436−20).

** ?城大早教育学部(〒310茨城県水戸市文京2丁目1−1).

(2)

82 茨城大学教育学部教育研究所紀要第28号(玉995)

 館山(1994)は肢体不自由児の意思表出の支援方法として,8つの曲が順次変わる電子オルゴールキ

ットを利用した研究を試みた。意思表出の手段に乏しい児童が,自分の取った行動が即時に音楽が 流れるという反応として現れたことに喜び,発声をあげるなどの表現を見せた事例も報告されてい

る。

 また,文部省の新学習指導要領を受けて,知的障害児教育現場にもコンピュータが導入されてきて

いる。その活用については,CAIとしての利用,教材作成としての利用,教職員の事務機器としての

利用など試行錯誤的な実践が多く見られている。コンピュータは提示内容への興味関心を高めさせ,

児童生徒の注意を引き付け,持続させる効果があると言われている。しかし,その一方で市販され ている学習ソフトが健常児中心で障害をもつ児童生徒のソフトについては著しく少ないのが現状で ある。児童一人一人に応じた教材ソフトの開発が担当する教師の負担となっている。さらに,キー

ボードやマウスなどの機器を使うことが難しい児童が多く,周辺機器の改良も必要となってくる。

 本報告では,以上のような電子キットやコンピュータの特徴を踏まえて,いろいろな指導形態の中 での活用を通して,児童生徒の学習の支援方法を検討した。児童生徒の学習への興味関心を高め,活 動を引き出す教材教具として,電子キットやコンピュータを利用した授業実践を試みた。以下に,そ の実践の概要を報告する。

活 用 の 実 際

1電子キット活用の実際

実践例1:怪獣キット

(1)教材利用のねらい

怪獣キットは,スイッチが入ると「ガオー」という鳴き声が出るキットである。生徒にとってはテ

レビアニメなどで慣れ親しんでいる怪獣の鳴き声とイメージしゃすいものである。

このキットを利用して,怪獣の絵の描いてある大きなゴールを作成した。蹴ったボールが怪獣のゴー

ルの中に転がり入ると「ガオー」という音声がでる仕組みである。このゴールを運動能力の面や身

体的な機能の面から配慮を要する生徒のサッカーの授業での動き作りに利用した。

(2)使用機器

 怪獣キット(ワンダーキット社主),スピーカー,怪獣ゴール(自作)

(3)使用例

対  象:養護学校中学部生徒(9名)

単元名:「ボール。ぼうる・ゴール」

指導期間:15時間取り扱い(怪獣ゴールを使っての指導は8時間)

(3)

展開例:

学 習 内 容 ・ 活 動 1集合・整列・あいさつをする。

2 二時の学習内容について知る。

3準備運動をする。

 (玉)辛甫弓童運動

 (2)ボール体操   ・上げ下ろし   ・左右   ・保持   ・回し

4 グループ(能力別)に練習する。

ド コココロロリリヤド コココロ ロロロロロ リリド    コココココ  コリリ り リギほコココつ

l    High (T1)    l  Low (T2, T3)  1

しサド コココロロロリリリ      ロココココココロロロロロリ リマののコココココロロロ一回 りリコ        コ       

1。パスの練習     1。シュート練習    1

       コ      ロ

1(サイドキック,  1(二二ゴールにシュー;

iシュート)     iトする)     i Ieドリブル      1       ;

l      l      1 L一一一一一一一一一一一一一一一mm−Tm一一一一一一1一一一一一一一m一 一一一一一一一一鞠一一一一一一一」

教師の関わりと留意事項

・生徒を指名し,号令をかけさせる。

。生徒の健康視察を行う。

・座位の姿勢をとらせ,教師に注目させる。

・示範が見えやすいように台状に体形を整えさせる。

・手,指,足など十分に伸ばさせる。

e一l一人に好きな色のボールを選択させ,意欲を高

めさせる。

・一ツ一つの動きについては,示範と言葉で教示する。

・動きのスピードを変化させることにより,活動の変 化をもたせる。

・Lowグループ

・音の出る怪獣ゴールを用意し活動への意欲を喚起さ

せる。

・友達の活動の様子を見て,応援するように働きかけ

る。

・教師の言葉かけにより順番を守らせる。

・1児の健康状態を観察しながら,取り組ませる。

(4)まとめ

 本単元では,心臓に疾患がある 生徒2名,水頭症により運動機能の 面で配慮の必要な生徒1名,集団で の活動が難しい生徒1名に対して,

電子キットを利用した怪獣ゴール を用いて指導に当たった。余り運

動の面で意欲をみせなかったり,

サッカーに対して興味がわかない 生徒にとってはシュート練習は興

味を誘うものではない。しかし,

「怪獣の鳴き声がする。」,「音がし た,しなかった。」といった即時の

灘懸

︸心

懸蟹

写真1 シュート遊び

反応が生徒の運動に対する意欲を高めていたように思われる。このことは三沢ら(1995)が実験的に

怪獣キットを利用したシュート練習において,効果がみられたと報告していることからもうかがわ

える。また,小学部の小さな児童においても,遊びの時間などを利用して楽しく取り組む姿も見ら

れた。そこでの反応も,「やった」, 「いえ一い」などシュートが成功しての怪獣の鳴き声に反応して のものであった(写真D。

(4)

84 茨城大学教育学部教育研究所紀要第28号(1995)

実践例2:電子ルーレット

(1)教材利用のねらい

 電子ルーレットは,スイッチが入ると「ピ・ピ・ピ・・」という音と共に盤上の6箇所のいずれかの

場所でランプがとまるキットである。今回は,児童が止まった位置を把握しやすいように,ランプ

がとまる6箇所にそれぞれ4個の赤色発光ダイオード(以下LEDと略)を取り付けた(図1)。さらに,

6箇所各々にさいころの役割をもたせるために,「やすみ・1・2・3・4・5」のカードを盤上にはりっけた。

音と光が同時に提示される電子ルーレットを用いることにより児童の学習への意欲を高め,課題学

習(かずの指導)において積極的な学習が期

待できると考えた。

(2)使用機器

 電子ルーレット盤すごろくゲーム用具

(3)使用例

対象:養護学校小学部3,4年生(6名)

題材名:「すごろくゲームをしよう」

指導期間:10時間取り扱い

展開例:       図1電子ルーレット盤

学 習 内 容 ・ 活 動 1本時の学習内容について知る。

 ○「すごろくゲーム」

 ○新しい指示内容を知る。

  ・服をたたむ

  ・葉ブラシをもってくる   ・ティッシュをもってくる 2すごろくゲームをする。

 (1)約束を聞く。

  ・順番を守る   ・みんなで数える

 (2)順番を決め,自分の駒をスタートに置く   ・ジャンケン

  ・自分の駒を取る  (3)ゲームをする。

  。ルーレットのスイッチを押す   ・駒を進める

  ・指示内容に従う

教師の関わりと留意事項

・着席させ学習の始まりを意識させる。

・前時に使用した双六盤を提示し,呼時の学習につい て知らせる。

・本時から加わる新しいマスの指示内容をとらえさせ

る。

・電子ルーレットが取り合いにならないように自分の 順番を守るように約束させる。

・駒はそれぞれ自分の顔写真をはり,分かりやすくす

る。

・K児にはスイッチを自分でおさせ,駒の進め方につい ては教師と一緒に行わせる。

・ルーレットのランプが止まった場所を良く見ている ように声かけする。

・指示内容についてはH児を指名し文字を読ませる。

      略

(4)まとめ

 本題材は1から5までの数の概念をすごろくゲーム遊ひを通して身につけさせるねらいで指導に当

たった。6名の内ゲームを理解し意欲的に参加できる児童が3名,集団での活動では学習に集中でき

ない児童が3名と同一の教材での学習が難しい学級集団である。そこで,部分的な参加も認めどの児

童も学習の場を共有できる教材として電子ルーレットを利用した。

(5)

「スイッチを押す一数字を読む一白を進める一指示内容に従う」といったゲームの流れの中に,音 と光がでる電子ルーレットを加えることにより,「押してみたい」,「いくつがでるだろう」,「○○ち ゃんは?」など友達の活動にも目が向き,学習に集中することができた。また,K児も点滅するラン プや音に対して表情がなごむ姿も見られた。さらに,回を重ねる毎に,押したいという気持ちが,「誰

ちゃんの次が僕」というr順番」を意識した取り組みも見られるようになった。

実践例3:動物鳴き声

(1)教材利用のねらい

 動物の鳴き声キットはスイッチにより,「象・馬・牛・怪獣」の4種類の鳴き声がでるものである。

これらの鳴き声はそれぞれ一つずつのスイッチに対応しているために,使用目的に応じて種類を選

択したりできる。今回は,動物の名前の学習に用いたので,「象・馬・牛」の3種類の鳴き声を利用し た。手続きは,児童が3つの動物の絵の描かれている穴あきボックスを用意し,各々の穴に木製のボー

ルを一つずつ指示されたボックスに入れる。すると動物の鳴き声が出る。これを何度か繰り返すも のである。ボールをボックスに入れるという単純な学習ではあるが,①指示された動物の絵のボッ クスを確認する②穴にボールを入れるといった視覚的な認知の学習として大切なものである。そこ に動物の鳴き声を加えることにより,学習

への楽しみをもたせることができると考え

た。

(2)使用機器

 鳴き声シリーズ「動物」(ワンダーキット 製),ボックス(3),スピーカー,木製ボール

(3)使用二

三  象:養護学校小学部4年(1名)

題材名:「どうぶつの名前」       写真2動物鳴き声ボックス活用例 指導期間:20時間取り扱い

展開例:

教 師 の 関 わ り

1学習のテーブルにつかせ,始まりのあいさつをす

る。

2 コンピュータを使っての動物の絵カードの指差し を行わせる。

K  児  の  反  応

・「れい」の指示に従って,頭を下げる。

・(次のコンピュータの活用例を参照。)

3ボール入れを行わせる。

・手続き・

 ①動物の名前を言う。fうし」

 ②ボールをうしのボックスに入れさせる。

 ③うしの鳴き声がなる。

 ④正解の賞賛をする。

*以上の手続きでそれぞれ繰り返し行う。

・自分から勝手に同じボックスにボールを入れて音を 楽しむ。

・言葉だけの指示では分からずに,教師の指先をみる。

・指先に力を入れて,ボックスの中におしこむ。

・音がなると,表情がゆるむ。

・何度も聞きたくて,ボックスを手で振る。

(6)

86 茨城大学教育学部教育研究所紀要第28号(1995)

(4)まとめ

 対象の児童は,情緒に問題があり,言語表出がなく,サインでのやり取りの難しい児童である。そ

こで,教師との一対一の個別指導を行い学習を進めてきている。特に視線が目的のところにいきに

くい為に,げた箱の位置なども不確かな実態である。

 そこで,本教材では①ボールの入れる穴を若干せまくし,最後まで指先に力を入れなければならな

いようにし,視線を向けさせるように工夫し,②その結果が親しみのある動物の鳴き声という音で 返ってくるように工夫した。動物の名称を聞いての正しい反応は難しかったが,ボールを入れると

いう活動に対しては抵抗なく取り組むことができた。また,いろいろな音の変化を自分で気づき,指

導開始の頃はみられなかった3つのボックスにそれぞれ入れる姿も見られた。(写真2)

2 コンピュータ活用の実際

実践例1:BIG玉

(1)本ソフトの概要と利用のねらい

 BIG1ソフトはVTRカメラなどから取り込んだ画像を画面上にいくつか提示し(2から16枚),タッ チスクリーンもしくはマウスを用いて一つの画像を選択すると,選んだ画像が画面上に大きく表示

されるソフトである。

 言語表出の難しい児童の要求や訴えなどを「画面上の画像を直接指で押す」という簡単な操作で教

師が受け止めてあげることができると考える。さらに,テレビなどの映像に興味を示す児童に取っ

ては学習の場での意欲づけにもつながると考える。

(2)使用機器

 コンピュータ本体(PC−9801DX), CRTディスプレイ,タッチスクリーン(NEC製:PC−9873L),画 像入出力ボード(テレフォース社製:CL−986−1)

(3)使用例

対象:養護学校小学部4年生(2名)

題材名:「どうぶつの名前」

指導期間:20時間取り扱い 展開例:

A児の指導の実際

B 児の指導の実際

活動内容 反      応 活動内容 反      応 提示され ・自分で画面上から選択し,画面を見てい 指示され ・自分のお気に入りの画像を選択し喜ぶ。

た16枚の る。 た動物を ・教師に手をもたれながら,正解の画像を

動物の絵

・平仮名で名前を書く。 指さす。 指さす。

カードの ・離席し,好きな遊びを始める。 ・すぐにまた,お気に入りの画像を指さす。

名前を平

・教師に促され,もう一度始める。

仮名で書

・名前の分からない動物のところで教師の 正反応 うし にわとり

く。 手を引く。

誤反応 くま らいおん ぞう

・全ての画像を選択し書き終える。 ・いくつかの画像を指さし,教師の言葉か けをまつ。

(7)

(4)まとめ

 今回対象とした児童2名とも情緒に問題があり,個別の対応が必要な児童である。A児は自分の好

きな活動(粘土遊びなど)に固執しがちでなかなか教師の働きかけが通りにくい児童である。文字学

習は絵カードなどを用いて行ってきたがなかなか取り組みが難しかったが,本ソフトを利用してか

らはゲーム感覚で取り組んでいた。「16枚の画像を開いて名前を書き終える」ことが学習の終了であ ることが本児に理解されてからは離席も見られなくなった(写真3)。

 B児は「うし・にわとり」を気に入り,画像が提示されるとすぐに指さすことが多かった。そのた めに,他の動物の名前については教師の補助が必要であった。しかし,自分で指さし選択した画像 の名前や鳴き声などを教師が話しかけるのを待っている様子がみられ,教師とのコミュニケーショ

ンを取ろうとする姿が芽生え始めたといえる(写真4)。

写真3 BIG1ソフトの活用例(A児)

灘騰

写真4 BIG1ソフト活用例(B児)

実践例2:かくし絵

(1)本ソフトの概要と利用のねらい

 かくし絵ソフトはVTRカメラなどから取り込んだ画像の上に青色のパネル(種類:1分割,4分割,

9分割,16分割,カラー色分け4分割,指さした場所が穴が開き見えるパネル)で隠して提示するソ フトである。児童は各々の分割されたパネルを指で押すことにより,隠れている画像を見ることが

できる。「これなんだ」と児童にみせたい絵柄を提示してもなかなか視線が向かずにいることの多い

知的障害児にとって,少しずつ見えるという方法は興味をもたせ,視線を向かせるのに有効である

と考える。

(2)使用機器

 コンピュータ本体(PC一一 9801DX), CRTディスプレイ,タッチスクリーン(NEC製:PC一・9873L),画 像入出力ボード(テレフォース社製:CL一・986−1)

(3)使用例

対象:養護学校小学部3,4年生(6名)

題材名:「乗り物に乗って遊ぼう」

指導期間:13時間取り扱い

(8)

88 茨城大学教育学部教育研究所紀要第28号(1995)

展開例:

15

学習内容・活動

1本時の学習内容を聞く。

 0乗り物遊びについて   ・乗り物について発表する。

・予定についての話しを聞

く。

・絵カードから自分の好き な乗り物を選ぶ。

。今日の約束を聞く。

2好きな乗り物に乗って遊ぶ。

。本時からの単元について個別に予想させ,単元への興味を高めさせる。

・テレビ画像を用いて,知っている乗り物を発表させる。

・手がかりとなる画像は,少しずつ開いていく方法により,興味を高め させる。

・個別に声掛けしながら,大まかな予定について板書きを通して捉えさ

せる。

・乗り物の選択は,一人一人乗り物カードと顔写真カードを対応させな がら行わせる。

・重複した場合は,ジャンケンで順番を決めさせ,交替で使うことを約 束させる。

・話合いの活動が苦手なS・T・とK・TにはT2が補助に当たり,言葉掛けな どで学習への興味を高めさせる。

・活動の目的をしっかりと捉えるように,かけ声をみんなで元気よく掛 けさせる。

(4)まとめ

 今回は学級での生活単元学習の導入で用いた。「自分の知っている乗り物について発表する。」と いう活動は児童にとって一一ts苦手な学習活動である。「乗り物」という概念が正しく構成されていな

い児童から意見を求めるために,かくし絵ソフトを利用した。少しずつ見えてくる画像に興味もた せながら,乗り物って何だろうということをまずとらえさせた。また,正しく答えた児童に実際に 操作させることで,今度は自分が答えて操作しようという意欲をもたせることができた。

 特に,自分で今日乗るものを選択する段階で,かくし絵で用いた画像と同じカードを用意できたこ とで以下の展開での活動にも効果的であった。

ま と め

 本研究では,児童生徒の学習支援としての電子キット,コンピュータの利用の可能性について検討

を進めてきた。児童生徒一人一人の能力や特性に応じた教材教具の工夫や提示方法について授業実 践を行ってきた。その中で,児童の学習への取り組みの様子からこれらの教材の有効性として以下

の2点があげられる。

 第一に,児童生徒の学習への興味関心を高めることができる。電子キットはスイッチを押すという 簡単な動作で,目の前の教材から音がなったり,光ったりすることは自分の行為が即時に視覚的に,

聴覚的にフィードバックされる。この特性が,サッカーでのシュート練習,目と手との協応動作を はかるボール入れ学習などでの児童生徒の意欲的な取り組みにつながったといえる。また,情緒に 問題のある児童の平仮名の文字学習でCRT画面上から自分で書きたい画像を選択することにより安

定した取り組みがみられた。「画面上に提示された画像すべてを終える」という見通しがもちやすか

ったことと画像の選択がテレビゲーム的な要素を含んでいたことが効果をあげたといえる。

 第二に,児童生徒の注意を促し,持続的な取り組みが期待できる。従来,物の名称の学習などでは

(9)

絵カードが多く利用されてきた。教師の指示により,絵カードを指さしたり,所定の場所に貼った

りする学習の形態をとってきた。今回,コンピュータを利用し,指示された絵(画像)をタッチスク

リーンを押すという方法を取り入れることにより,選択した画像が拡大されCRT画面上に表示され

たり,少しずつ隠されている画像が見えてくるなど,提示物に対する注意を喚起することができた。

特に言語表出が思うようでない児童に対する学習では,児童の訴えているものを教師が受け止め,即 時に反応を返してあげられるなど,教師と児童の間をつなぐ方法として有効であった。

 今回利用したコンピュータソフトについては,VTRカメラなど比較的扱いやすい機器から取り込

め,さらに印刷しカードとして利用できるなど教材の作成の時間的な短縮もできた。

 このように,コンピュータの利用を佐々木(1994)が報告しているように,教師の代わりとしての利 用ではなく,』

ウ師と児童生徒の間をつなぐ道具,教材を作成する道具としての利用の視座に立つ重

要性を確認することができた。

 今後も,これらの教育機器の活用を通して,児童生徒の特性に応じた教材教具のあり方について明 確にしていき,さらに活用上の問題点や注意事項などを明らかにしていきたい。

参考文献

平井 保.1994.「教材・教具をどうとらえるかjr精神薄弱実践講座』6一・9.

三沢博樹・村田孝二・鈴木二三恵。豊田順之・小幡尋恵.1995.f精神薄弱養護学校(小学部)のボール蹴          り指導における電子キット活用の効果」『特殊教育学研究』32巻5号105・一 110.

佐々木忠之.1994.「楽しい授業をするためのコンピュータの利用」r心身障害児学習用コンビュータソ          フトの開発とその普及方策に関する研究』(国立特殊教育研究所)3−7。

館山雅代.1995.「重度障害児の意思表出支援方法に関する研究一電子オルゴールを使用して一」(茨城大学教育

        学部卒業論文)

楽しい教材教具を作る会.1994.「電子キットを使った教材教具の工夫」r発達の遅れと教育』7月号.

         この会は茨城県内の特殊教育諸学校に主に勤務する教員を中心に活動し,コンビ

         ュータの利用や電子キットを利用した教材教具の開発を目的に活動している。

謝辞

 本報告をまとめるにあたり,附属養護学校の児童生徒の皆様,共に授業実践に取り組んで下さった

附属養護学校の先生方にご協力いただいたことを感謝いたします。楽しい教材を作る会に参加して

くだっさている尾崎久記教授をはじめ,県立諸学校の先生から多くのご助言をいただいたことを感

謝いたします。本報告の内容は,茨城大学教育学部附属養護学校での授業実践を通して行ったもの

である。また,本報告で使用した電子キットの開発工夫,コンピュータのソフト開発は情報教育講

座佐々木研究室で行われたものである。

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