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児童生徒色彩嗜好調査について

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

児童生徒色彩嗜好調査について

著者 稲垣 和子

雑誌名 奈良学芸大学紀要

7

2

ページ 135‑148

発行年 1957‑12‑15

その他のタイトル On Investigation upon Likes and Dislikes for Colour; for School Children and Pupils.

URL http://hdl.handle.net/10105/4890

(2)

(135)

墨色彩嗜好調査について

稲  垣  和  子 (家政学教室)

(昭和32年10月1日受理)

KazukoINAGAKI:OnInvestigation upon Likes aTld Dislikes for Colour;

for SchooI Children and Pupils.

I 緒

新しい時代には新しい色がある。色の種類は500種以上もあるが,その中でどんな色を一般に 好むだろうか。もし之について少しでも確実な資料が得られゝば色彩関係者にとってはこの上な い授けとなるし,色彩教育を行うにも児童生徒の色彩に対する好き嫌いの一般的傾向がわかって いたら非常にやり易いであろう。しかしこの様な調査には色々困難な問題が附帯してくるので,

調査をしようにも個人的にはなかなか手のつけにくい事であった。今迄も,これに関する訝査ほ ないではなかったが,調査方式に疑点があったりして,信用に足るまとまった調査はあまり見当 らない。偶々,色彩教育研究会での色彩嗜好調査の方法を調べたところ,新しい調査方法を知っ たので,その方式によって奈良学芸大学附属中学校,同附属小学校,及び大阪市立酉淡路小学校 の三校につき,調査した結果を以下報告する。

Ⅱ 調 査 要 項

(1)目  的

児童生徒ほどの様な色を好み,どの様な色を嫌うかをみ,これを学年,性別による嗜好色を統 計的にとらえ,東に教室の色を塗るとしたらどの様な色を好むか,叉衣服の色はどんな色のもの を好むかを調べて,色彩教育の上に或は家庭科指導の上に効果あらしめる。

佗)資  料

教育用標準色紙色。70種。色度番号は下記の通りである。

0−10−0,

1−17−4.

4−19−4,

8−17−5,

10−18−3.

12−18−3,

14−19−4,

16−12−5,

18−12−6,

21−16−5,

0−17−0,

1−19−4,

6−15−2,

8−19−3.

10−18−5,

12−18−5.

15−12−5,

16−14−3,

18−16−2,

21−19−3,

0−20−0,

4−13−5,

6−16−4,

8−19−6,

10−19−4,

12−19−4,

15−14−4,

16−14−6,

18−16−4,

23−13−4,

1−12−6,

4−14−3,

6−18−3,

8−19.5細6,

12−14−3,

14−15−3,

15−14−7,

16一ユ6−6,

18−19−2,

23−13−7,

1−14−10,

4−15−6,

6−18−6,

1.0−14−2,

12−14−5.

ユ4−15−6,

15−16−6,

16−17−3,

21−12−3,

23−17−3,

1−14−5,

4−17−3,

6−19−4,

ユ0−14−3,

12−16−3,

14−17−6,

15−17−3,

16−19−3.

21−12−6,

23−17−6,

1−16−8,

4−17−7,

8−16−2,

ユ0−16−4,

12−16−6,

14−18−3,

ユ5−19−5,

18−12−3,

21−16−3,

23−19−4

(3)

(136)       稲  垣  和  子

β)被験者

各学年一組づゝ,総数約50名,男女半数,従って小学校では一校1年から6年迄凡そ300名,

中学校では約150名になる。奈良学芸大学附属中学校生徒,奈良学芸大学附属小学校児童,大阪 市立西扱路小学校児童を対象に調査する。

(4)当  法

調査期間は昭和31年11月〜12月の晴天の日の午前中を選び,明るい教室を使用する。まず70色 の色紙(7cmX7cm)を下図の通りに自台紙に6cm間隔ではり,その下に図示した様に番号を記 入したものを教室の前面にはる。次に記入用紙を各人にくぼり,次の様な指示を与える。「前に はってある色全部をよくみて,このうち好きな色を3つ選んで下さい。他人のをみたり,又話を

したりせず自分の思ったまゝ正直に選び,その番号を用紙に記入して下さい」この場合好きな色 3つの順序はかまわない,又好きな色がなければかゝなくてよいし,どうしても2つしかない場 合は2つでよい。次で,同じ様な指示で嫌いな色3つを選ばせ記入させる。これが終ったら「も

しあなた方がこの教室を塗るとしたら,どの色で塗りますか。その塗る色を一色選んで下さい」

といって一色のみの番号を記入させる。又「もしあなた方が今新しく洋服を作っていたゞくとし たら,どんな色にしたいですか。その色を一色選んで下さい」といって色の番号を記入させる。

この場合,特に小学校の低学年ほよく説明しないとわからない事があるかもしれない。(大阪市 立丙淡路小学校の調査には洋服の色を省略した)

色 彩 嗜 好 調 査 用 色 紙 衷

1m も

日日巨]回巨]

ll  は  21 26  引

2  7 12  円

3   8 13 )8

巨]損

4  り  廿  拍

臼巨自重

S iO IS :0

3ら  41 4ら

22 27  32  37  42  47

23  28  33

巨=尋

24  2り

巨=∃

二15  刀

43  48

44  朋

35  40  45  50

.Sい  tつ  仕

52  57  62  占7

53  58  占3  る8

占4  与り  64  招

55  60  捕  り0

(4)

豊色彩嗜好調査について

(5)結果の整理

記入用紙を集めこれを整理用紙に整理する。

整理用紙第一の欄は色紙の番号を記入し,次

の欄は,その色紙番号に対していくつ答があ ったかを調べ,その数を記入する。最後の欄 は,中の欄の回答数が全回答数に対して夫々 何%になるかを記入する。この場合,好きな 色,嫌いな色の場合は,三色づゝ選んでいる

ので,回答者数は実 際人数の3倍になる わけである。例えば 50人の被験者で,資 料番号5を好きなも のとして選んだ総数 が30だったとすれば

,この回答者数に対 する割合は

㌫×100二品

×100=20

即ち20%となるわけ である。この%は小 数点以下2倍迄出し て四捨五入する。

(137)

記 入 用 紙

生年月日   年  月

学報 年

1.好きな色 2.嫌いな色 3.教室の色 4.洋服の色

No._ _ _

日生  才男女 施行月日  月  日

[]□[コ ロロロ

[]

[コ

児童生徒色彩嗜好調査整理用紙

教室の色,洋服の色は一色であるから選ばれた色の番号の数を総数で割り100倍しただけでよ い。

この様に整理用紙には男子,女子,夫々に対する好きな色,嫌いな色,教室の色,洋服の色に 対する回答数,及びその割合が累計されるわけである。整理用紙には他に学年,調査人員数,調 査日時,天候,その他備考欄に正確に記入しておく。

Ⅲ 調 査 の 概 況

調査人員数,調査日時,及び天候は下記の通りである。

奈良学芸大学附属小学校  一年男子 21名, 女子19名,

(以下A校と表示す)  二年男子 21名, 女子 8名,

大阪市立西淡路小学校

(以下B校と表示す〕

三年男子12名,

四年男子 20名,

五年男子19名,

六年男子 21名,

一年男子 25名,

二年男子 25名,

女子15名,

女子15名,

女子 21名,

女子17名,

女子 25名,

女子 25名,

昭和31年12月14日 昭和31年12月14日 賦和31年12月15日 昭和31年12月15日 昭和31年ユ2月19日 昭和31年12月19日 昭和31年11月23日 昭和31年11月24日

年前9時(晴)

年前11時(晴)

年前10時(囁)

午前9時(曙〕

午前9時(晴〕

年前10時(曙)

年前9時(曙)

午前9時(晴)

(5)

(I38)       稲  垣  和  子

三年男子 25名,

四年男子 25名,

五年男子 25名,

六年男子 25名,

奈良学芸大学附属中学校 一年男子 24名,

(以下C校と表示す) 二年男子 25名,

三年男子 23名,

女子 25名,

女子 25名,

女子 25名,

女子 25名 女子 20名,

女子18名,

女子 23名,

昭和31年11月26日 昭和31年11月27日 昭和31年11月29日 嘱和31年11月30日 昭和31年12月14日 昭和31年12月13日 昭和31年12月13日

年前9時(曙)

午前9時(曙)

午前9時(晴)

午粛9時(曙〕

午前10時(曙)

午前9時(暗)

午前10時(晴)

調査人員総数は642名。西淡路小学校は男子25名,女子25名,計50名で調査する事が出来て感 謝している。本学附属校は出来るだけ25名になる様に努力したが,折悪しく流感で欠席する児童 生徒が続出していた為に25名に揃える事が出来ず残念であった。尚,今回ほ調査校が三校である し,何れも周囲の環境は類似しているので同一とみなして結果を考察する事にしたが,多数校の 調査となれば,都市と地方に住む児童生徒の色彩嗜好や家庭の職業,教育程度によって複雑な結 果が出る事と思う。今回の調査によって得られた結果は次の如きものである。

Ⅳ 集計の結果と結論

好きな色,嫌いな色を三つづゝ,教室の色,洋服の色を一つづゝ選ばせたが,これを色紙の資 料番号ごとにまとめ,更に各学年,男女別に調査人員に対する膏分比を出してその結果をみたが,

かなり面白いものがでた。

1,小,中学,男女を通じ純色を多く好み,濁色を好むもめは殆んどない。中学生徒でも濁色を 好む率は1〜2%以下であった。(第一,二未参照)

2,小,中学,男女を通じ,淘色と無彩色中の灰色を多く嫌う,鈍色,清色を嫌うものは少ない が,赤の鈍色と赤,橙,黄橙,黄,黄緑,緑,青緑,青の暗色を嫌うものがある。(第三,四 表参照)

1

3,男女の差異はかなりはっきり出た。例えば,男子は青の明色を好むに対し,女子は青紫の明 色を好む。(第一,二表参照)

4,男女とも学年による甚だしい差異はみとめられなかったが,学年の進行につれて女子の傾向 の漸進漸減が割合明確にでている。

5,案外に思われる事は,暖色等の橙,黄橙の鈍色に対する好感が,全体的に問題にならない位 少ない事と,青の純色及び明色が好きな色の優位にあり乍ら,同じ色相の暗濱色が嫌いな色に なっている事。同じ暗視色で色相も似ている膏紫の濁色が,青の濁色のように憩われていない 事などである。

6,教室の壁の色は,全体として明色で清色を好む。(第五,六表参照)

7,洋服の色は,男女の好みの差がはげしく表われている。(第七表参照)

8,A校とB校を比較すると,色彩嗜好上の大差はないが,硝々B校児童の方がA校児童よりも 色彩に対して細やかな感情をもっている様である。

次に学年別,男女別,学校別の好き,嫌いの傾向を見よう。

好きな色−男子の場合(第一表参把)

第一,二,≡学年の傾向は似ている。赤,黄,青の純色が多く,符に黄,背は好きな様である。

この他,緑,青緑,青紫,紫,赤紫も若干好む傾向がある。清色を好むが膏の系統色では少し濁

(6)

霊色彩嗜好諷査について

(139)

色系であっても好きな様である。これらの色に対する好感は学年の進むにつれて増している。

欝四,五,六学年の傾向も似ている。低学年では黄,背が優位を示していたが,高学年では縁,

青,青紫の純色が擾位を示している。この他,窯及び赤,貴,黄緑,青線,紫の鈍色も好む様で ある。

中学の傾向も小学校高学年からの甚だしい飛躍はなく,漸進的に移行し,無彩色の黒,白及び 膏の鈍色が漸増の傾向を示している。叉学年の進むにつれて濁色を好むものも出ているのは身心 共に成人してきた表れと思う。

A校とB校を比較してみると,B校の方が種々の色にわたって注意をむけている様で,低学年 より橙,黄緑を好むのもあり,A校は青の純色が優位であるが,B枚は青緑の鈍色が優位である。

又高学年に進むにつれて,肯,赤紫の橙色,暗色を好む傾向も出ている。

好きな色−女子の場合(第二表参照)

女子の場合は男子の傾向とかなり違っている。

第一,二,三学年では,赤の純色が16%から20%をしめ圧倒的に多い事が特色で,黄の明色,

純色,及び赤紫の明色,純色が之につぎ,青の純色は少ない。赤紫の純色が学年の進むにつれて 著しく上昇するのも面白い傾向である。

翠四,五,六学年では,赤の純色が漸減し,黒,黄,青緑,膏,青紫,紫,赤紫を好み出し,

特に背の鈍色が漸増している。

中学は女子の場合はかなり面白い変化を示し,生徒の成長状態と考え合せて興味深いものがあ る。赤,青の鈍色は減少し,白,窯及び黄,緑,青紫の明色と純色を好む。ロマソチックな女学 生時代の好みが表れていて面白い。

A校とB校を比較してみると,類似しているが,B校は男子の好きな色の項で述べたと同様,

橙,黄橙,黄緑,青緑,青紫を好む率がA校よりも多い様である。

嫌し、な色−男子の場合(第三表参照)

舞一,二,三学年では,無彩色の黒を嫌う傾向がある。瀧色は殆んど嫌う様で特に橙,黄橙,

黄,黄緑,緑,青緑,赤紫の暗濁色を嫌う。又赤の純色を嫌うものもある。

第四,五,六学年では,無彩色の灰と黒と濁色中でも特に黄橙,黄緑,縁の暗濁色を嫌う傾向 がはっきりしてきている。又赤,紫,赤紫の暗濁色を嫌うのもある。

中学では黄橙,緑,紫,赤紫の暗菰色が更に上昇している。票,赤が減つ_てくるのも一特色で あろう。

A校と8校を比較してみると,低学年では出校は赤の純色と縁の濁色を嫌う傾向がつよく,高 学年では縁の暗濁色を嫌う傾向が更に上昇している。その他は同じ様な傾向である。

嫌し、な色−女子の場合(寛四表参照)

嫌いな色の傾向は,男子の場合と似ているが女子は男子より発育が早いせいであろうか,一年 上の男子の傾向とよく似ている。

葬一,二,三学年では,低学年では黒,真澄の暗濁色,及び縁の暗濁色を嫌う傾向がみられ,

高学年になると黒を嫌うものは減じ,縁の暗濁色を嫌う傾向が上昇している。

節四,互,六学年では,黒が減少し灰を嫌う傾向が出ている。又橙の暗色即ち茶を嫌う傾向が あり,黄橙,縁の暗濁色を嫌う率が急に増えている。その他は第一,二,三学年と大差ない様で ある。

中学では,黄橙の濁色,黄緑の濁色及び青の暗濁色と赤紫の橙色が多く,灰,累が急に減少し,

(7)

(140)

稲  垣  和  子

赤の純色を嫌うものが出てくるのが一特色であろう。

A校と8校を比較すると,傾向はよく似ている示,B校の方が繁華街に姐、為か色彩嗜好がは っきりしていて,寛一,二,三学年では黒,橙の暗色,黄緑の暗色を特に嫌い,第四,互,六学 年になると黄の明色,中間色,暗色及び黄緑の濁色,青緑の暗視色,青紫,紫,赤紫の暗濁色を 嫌うのもある。

教室の色−男子の場合(第五表参照)

全体を通じて淡色の明色を好む。

第一,二,三学年では,白及び青の明色を好む傾向が強い。

第四,五,六学年になると,どの色の明色にも同程度の注意をむけている事は面白い結果であ る。

中学では,白,黄橙の明色,黄の明濁色及び緑,背,青紫,赤紫の明色を好む様である。

A校と烏校を比較すると同じ傾向である。白を俊位として8校では第一,二,三学年では黄の 明色を好むに対し,第四,五,六学年では黄の淡淘色を好む傾向がみられ,部屋の感じを少し落 付いたものにしたい気持が表れている。

教室の色−女子の場合(第六表参照)

第一,二,三学年では,白,黄橙,黄,緑,青の明色を好み,特に白が酎立を示している。

寛四,五,六学年も同じ傾向であるが,赤の明色も好むものがある。又B校では白より灰が陵 位である。叉黄,青,橙の明色が最濠位を示しているのも面白い傾向である。

中学では,白,黄橙,黄,黄緑,縁,青,斉紫の明色を好む。

A校と3校を比較すると何れもよく似ている。3校では第四,玉,六学年になると高学年にな るにつれて黄の淡濁色と青の明色が優位になり,白よりも好まれている。

洋服の色−男子の場合(寛七表参照)

第一,二,三学年では,黒,茶,及び縁,青の鈍色,青紫の明色,中間色,暗色を好み,主と して暗色や濁色を好む様であるが,明色を好むのも表れているのはセ一夕の毛糸の色などを考え ているのだと思う。

第四,丘,六学年では大差ないが,赤と再の暗色が優位である。

中学になると小学校と比較して同じ傾向ではあるが,黒,赤の暗色,青の暗色,青紫の純色に 傾り,その他の色を好むものはあまりみられない。

洋服の色−女子の場合(第七表参照)

男子の場合と比較すると面白い結果が出た。

第一,二,三学年では,赤,黄,赤紫の明色,純色を好む傾向があり他の色は極少である。

第四,丘,六学年になると,赤が漸減し,縁の鈍色や青の明色,中間色,暗色を好み出してい る。

中学になると,黒を次第に好み出し,この他放線,青緑の暗濁色,青,青紫,赤紫の暗濁色を も好む傾向がみられ,次第にクラジツクな服装の色に輿味が出てくる様である。

Ⅴ 結

この調査は始めての試みであるだけに種々の問題はあるだろう。この様な方法でやったらこの 様な結果が出たという事は言い得ても,他の方法でやった場合,例えば並列比較によらず一対比

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豊色彩曙好調査について     (141)

校でやった場合とか,抽象的な色彩の好き韓いの表示でなく,具体的に服装などの色としてどん な色を好むかという場合には又違った結果が出てくる事が予想される。殊に女子については面白 い結果が予想される。高等学校生徒の調査もこれと関連してやってみると比較検討されて,面白 い事実が発見出来るだろう。戦後,近代工業が進歩してきたので,今日の若い子供達の色彩観は 相当に変化しており,生活環境による新しい鑑識力には頭の下る感がした。

小,中学校に於ける家庭科の色彩教育面については種々問題にされる事が多いが,これらは教 育そのものに対する見方や考え方の相違によって起っている様に思う。どの様な内容でどの様な 指導理念で導き,指導の到達点をどこにおくかほ凡ての教育で大きな問題である。

色彩教育が色彩の体系的な理論の指導に終って,実生活に応用のきく技術力の指導にまで及び にくいというのは,何処に問題があるのであろう。家庭科に於ける表現指導では,主観的,創造 的な面が強調されなければいけない。殊に色彩指導に於てほ,色彩そのものに対する解釈や扱い は元来感覚的のものであるから,多くの人に共通に諒解される理論があったとしても,結局個人 の感覚は無視されるおそれがある。又個人そのものに個性的,感覚的なものがあると同時に長い 間に培われた伝統があり,他ではおきかえる事の出来ないよさというものがある。このよさがも とになってすぐれた芸術作品が生み出されているが,これらの中で色彩教育はどの様な態度をと ればよいかは大きな問題である。

以上述べた事は色彩指導に於いて論議される「例であるが,学校における色彩教育は相当確固 たる態度をもって当らねばいけないと考える。これについては一応次の事が云えるのではなかろ

うか。

学校の教育が多くの人々の能力を最大限に伸ばす基擬の教養を目ざすものであってみれば,特 殊なものを扱うよりは一般的共通的な点に関心をおき,特殊な事は他の部門や他の機会にゆずる 事が寛一に考えられる。理論は実践への裏づけであり,理論に根底をおいた能力は単なる技術よ りは応用部門の広いものである事に気付かなければいけない。しかし理論はともすると単なる空 手形として残されがちであるので,実践への推進に当って大きな壁に打当った時の手助けとした

り視野を広める上に活用したいものと思うが,教育される児童生徒は心身の発達によって自らの 理論をかちうる様にしないといけない事も,指導の原理である事と同時に考えたい。理論と実践,

原理と応用,全く云いならされた事ではあるが,これらの関係をしっかりみる事によって色彩教 育を効果あらしめるのではないかと考える。

本調査を行うに当り,色彩教育研究会の岩崎喜久雄先生をはじめ,調査の便宜をはかっていた ゞいた奈良学芸大学附属小学校,同附属中学校及び大阪市立西淡路小学校の諸先生方に深謝致し ます。

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参照

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