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これまでの研究

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Academic year: 2021

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これまでの研究

経済学部准教授 山 下 耕 治

今年度より、長崎大学経済学部から福岡大学経済 学部に赴任してまいりました。研究領域は財政学で、

特に、政府行動を実証的に解明することに関心を 持っています。

政府行動について議論する際には、政府とはどの ような主体なのかを考える必要があります。通常の 経済分析では、政府は社会厚生の最大化を図る善意 的な主体と見なす場合があります。しかしながら、

実際に、そのような主体がいる訳ではありません。

実際の行動は、政治プロセスに登場する有権者・利 益集団・政治家・官僚による相互作用の帰結です。

これらのプレイヤーは、私的財の選択では、各個人 の選好に基づいて私的利益の追求を図ることになり ます。同様に、公共財の選択においても、各個人の 選好に基づいて私的利益の追求を図ると見なすのが 妥当です。例えば、有権者は自らの効用最大化のた めに、政治家を選別します。政治家は自らの当選確 率最大化のために、公約を表明します。利益集団は 自らの利潤最大化のために、規制緩和(あるいは推 進)、補助金の交付を陳情します。官僚は自らの昇 進や給与を高めるために、所属官庁の予算・権限を 拡大させます。もちろん、これらの行動は、すべて 合理的な意思決定によるものです。公共財の意思決 定プロセスにおいて、これらの主体が私的利益の追 求を図る以上、社会厚生が最大化される政策と実際 の政府の行動が一致する保障はありません。有権 者・利益集団・政治家・官僚が合理的に行動するこ とで、政府の行動が社会厚生最大化の政策と乖離す るならば、政府という主体は、大きな問題に直面し ていることになります。

このような歪みは、政府の肥大化を招いたり、財・

サービスの配分ミスを招いたりする可能性がありま す。さらに、公共財の生産においても、費用最小化 を怠るというモラルハザードを招く可能性もありま

す。このような歪みに関しては、ジャーナリステッ クな観点からも、その非効率について盛んに指摘さ れるところです。しかしながら、それらの主張には 十分な実証的裏付けがあるとは言い難く、仮説が提 示されている段階に過ぎません。したがって、それ らの非効率性について、的確な計量手法に基づいた 仮説検証が必要です。なぜなら、実際にどのような 非効率が生じているのかが明らかになれば、公共部 門の在り方を議論するうえで有益な情報となります。

そして、そのような非効率性を是正すれば、公共部 門の本来の機能を回復させることができるからです。

上記のような問題意識から、これまで、政府行動 の仮説検証を行い、公共部門の本来の機能を実現さ せる制度設計を提言してきました。その一つとして、

共著で23年に『地方交付税の経済学−理論・実証 に基づく改革−』(有斐閣)を出版しました。この 研究の目的は、理論的かつ実証的に地方交付税制度 の問題点を指摘することです。財政改革に関する議 論は盛んですが、その中でも、もっとも重要視され、

またされるべきである問題が地方交付税制度である と考えていました。なぜなら、地方交付税は、地方 税制度、国庫支出金制度、地方債制度と相互に関連 し、財政の根幹をなす制度であるからです。そこで、

地方交付税制度のインセンティブ効果を検証した結 果、地方交付税制度が地方自治体の費用最小化行動 を阻んでいることを実証的に明らかにしました。そ して、地方税制度や国庫支出金制度との整合性も十 分に配慮したうえで、地方財政の再構築を実現する 包括的な改革案を提示しました。地方交付税制度の インセンティブ効果の存在を明らかにしたことで、

公共部門の本来の機能を取り戻すための改革案を提 示することができたと考えています。今後も、経済 学的な視点に基づいた改革案を提言していきたいと 思っています。

研究雑話

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研究雑話

これまでの経験と今後の抱負

工学部教授 稲 田 達 夫

1.はじめに

私は、14年東京大学を卒業後直ちに三菱地所に 入社して以来、主として建築の構造設計に関わる仕 事に携わってきました。福岡大学に赴任するまでの 数年間、東京大学をはじめとする複数の大学・大学 院の非常勤講師を兼任し、ささやかではありますが、

教員として後進を指導する機会を得ました。その中 で、特に感じたこととしては、可能性を秘めた学生 達に、先輩技術者としての経験やノウハウを伝える ことの重要性でありました。そのようなことから、

専任の大学教員への路を志すようになり、縁あって 今年4月福岡大学に赴任することができました。以 下に、私のこれまでの経験、今後の抱負を述べてみ たいと思います。

2.今日までの経験

私が、約37年の技術者人生で得た経験としては、

以下の5つを上げることができます。一つ目は、入 社後3年間、および15年から7年間に亘り培った、

鋼構造超高層建物の設計監理に関わる経験です。二 つ目は、入社3年後から15年までの約20年弱の期 間培った、電算プログラム開発及び建築構造解析に 関わる経験です。三つ目は、15年以降、東京駅前 の丸の内再開発計画に参画する中で培った、旧丸ビ ル、日本工業倶楽部会館、三菱一号館などの、明治・

大正期の建物の解体調査、保存・復元工事等に関わ る経験です。四つ目は、最近の約10年間、日本建築 学会(AIJ)、日本建築構造技術者協会(JSCA)等 の社外学協会の活動を通して培った「地球環境問題 と建築」に関わる経験です。以下にその概要を述べ てみたいと思います。

(鋼構造超高層建物に関わること

私が直接設計監理者の立場で関わった主な鋼構造 超高層建物としては、以下の4棟が上げられます。

!新青山ビルヂング: 入社後3年間担当した、東

京都港区南青山一丁目交差点に立つ、地上23階(高 さ94.')の超高層ツインタワー。当時流行の外 郭チューブ構造を採用したが、解析節点数等の制 約から解析できるプログラムが身近になく、解析 プログラムはすべて自作した。

"丸の内ビルディング: 東京駅前に立つ、超高層 オフィス。大正12年竣工の旧丸ビルの建替えプロ ジェクト。耐震シャフトと呼ぶ新方式の制震装置 を開発、耐震性の向上を図った。耐震シャフトは、

特許を取得。

#日本工業倶楽部会館・三菱信託銀行本店ビル:

丸ビルと同様、東京駅前に立つ会館建築と超高層 オフィスの複合プロジェクト。足元に立つ日本工 業倶楽部会館の保存と超高層棟の奥行きの確保を 両立させるため、超高層棟下層の一部に、会館建 物を覆う形で、Y型架構を採用している。尚、本 建物は、日本建築学会作品選奨を受賞した。

$丸の内オアゾ: 同じく東京駅前、旧国鉄本社の

建替えプロジェクト。4棟の超高層タワーの内、

ホテル棟とそれに隣接する高さ4'の大アトリウ ムを担当した。

)電算プログラム開発及び構造解析に関わること

%構造一貫計算プログラムASTSの開発: 入社3 年後より構造一貫計算システム「ASTS」(三菱地 所保有)の開発を担当。4名の室員で分担してプ ログラム作成を進めたが、その内、データの入出 力、地震時応力解析、保有耐力計算部分を担当し た。開発には約7年を要し、総プログラムステッ プ数はFORTRAN言語で約30万ステップに及ん だ。

&横浜MM1ランドマークタワーの構造解析:

高さ2'地上70階のタワーの基本計画(実現可 能性の検討)及び構造解析を担当した。解析節点 数は1万を超え、当時のコンピュータでは、解析 は極めて困難であったが、サブストラクチュア法

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等を駆使して、解析を行った。

"オブジェクト指向プログラミングツール「FACT 法」の開発: !等の経験から、実務において短 時間で解析プログラムを改修あるいは作成できる ことの重要性を痛感し、オブジェクト指向プログ ラ ミ ン グ ツ ー ル「FACT法」を 考 案、ASTS、振 動解析プログラムの作成等に活用した。その後、

丸の内再開発計画では、丸ビルの耐震シャフトの 解析、日本工業倶楽部会館(中間層免震建物)と 超高層棟の連成振動応答解析等で大いに活用した。

尚、本法を題材として学位論文「建築構造設計に おけるコンピュータ利用のあり方に関する研究」

を執筆、16年に東京大学より、学位「博士(工 学)」を取得した。

'歴史的建築物の解体調査、保存・復元工事等

#旧丸ビルの解体調査: 新しい丸ビルの建設に先

立ち、大正12年竣工の歴史的建築物 「旧丸ビル」

の解体調査を担当した。文献調査等を皮切りに、

耐震性把握のため現地で実フレームをそのまま利 用した水平載荷実験を行った他、解体時にはワイ ヤーソーで切り出した部材のはつり調査を行い、

当時の鉄骨架構、柱梁接合部ディテール、配筋方 法等を確認した。結果としては、特に配筋におい て、現在とは全く異なる方式が採用されているこ とが確認された。

$日本工業倶楽部会館の解体調査、保存工事: 建物は大正9年竣工の歴史的建築物であるが、一 部保存・一部再現の手法により改修工事を実施、

併せて耐震性確保のため免震レトロフィットを 行った。再現部分については解体調査を実施、結 果は解体調査報告書としてまとめた。特に興味深 かったのは、関東大震災直後、鉄筋が提灯状に座 屈したとされる柱を切り出し、はつり調査を行っ た結果、大きく曲がった鉄筋がそのままで発見さ れたことであった。その切り出し部材は、現在日 本大学船橋キャンパスに、関東大震災の痕跡とし て保存・展示されている。

%三菱一号館の復元工事: 本建物はジョサイヤ・

コンドル設計、明治27年竣工の我国最初のオフィ ス建築で、昭和43年に一度解体されたが復元工事 を経て29年に再建された。コンドルが、濃尾地 震の経験を踏まえて行った耐震対策(壁の増厚と

帯鉄の壁内への埋設)を含めて、煉瓦造建物の構 造性能の確認実験を行った。結果としては、特に 帯鉄の埋設は、煉瓦造の耐震対策としては、きわ めて有効であることが、確認された。

(「地球環境問題と建築」に関わること

&地球温暖化問題が人類にとっての喫緊の課題とし

て認識されるようになって既に久しいが、私もま た、21年日本建築学会の地球環境構造小委員会 に参画して以来、現在は同学会の地球環境本委員 長を務めるなど、この問題に積極的に取り組んで きた。昨年は日本建築学会からの働きかけのもと 建築関連17団体による、「提言:建築関連分野の 地 球 温 暖 化 対 策 ビ ジ ョ ン20 −カ ー ボ ン・

ニ ュ ー ト ラ ル 化 を 目 指 し て−」(29年12月 発 行)の取りまとめに深く関わるなど、「地球環境 問題と建築」は私にとって、最も重要な研究課題 の一つとなりつつある。

3.これからの抱負

さて、超高層建物に始まり、構造解析プログラム の開発、免震構造、制震構造などを経て、地球環境 問題に至る私の取組テーマの変遷は、建築構造分野 の発展課程とほぼ同じ経過を辿ったものと言えます。

福岡大学に赴任して、新たにどのようなテーマに取 り組むか考えているところですが、現在是非研究対 象に加えたいと思っているのが、木造建築です。我 が国の木造建築の歴史は古くに遡りますが、その研 究は19年日本建築学会大会の「木造禁止決議」以 降、滞っているのが実状です。現在我が国において、

木造で建設可能な建物の規模としては、主として防 耐火上の制約から、3階建て以下の小規模住宅に限 られます。一方諸外国では、環境問題の圧力から、

6〜9階建ての建物を木造で造れるようにしようと する動きが活発化しています。我が国でも、9階建 てまでの非住宅中大規模建物を木造で建設可能とす ることにより、日本の都市の街並みに、木造建築特 有の温もりある景観を実現しようというのが、私の 目論見です。現在59歳で、ややロートルではありま すが、大学4年で研究室が決まってから大学院を卒 業するまでの6年間と同程度以上の時間は未だあり ます。初心に帰ったつもりで、新しいテーマに取り 組んで行きたいと思います。

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参照

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