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日本水産増殖学会第13回大会講演要旨集

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Academic year: 2021

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(1)

Program and Abstracts

日本水産増殖学会第13回大会

講演要旨集

October 18-19, 2014

Hiroshima University, Hiroshima, JAPAN

2014年10月18-19日

広島大学

Organized by

(2)

Meeting Schedule

大会日程

Venue: Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University

於:広島大学大学院生物圏科学研究科

October 18 (Sat)

10 : 00− Registration

受付

12 : 00−13 : 00 Council

Meeting

評議会

13 : 00−14 : 00 Poster

Presentations

ポスター発表

14 : 00−17 : 30 Oral

Presentations

口頭発表

18 : 30− Banquet

懇親会

October 19 (Sun)

9 : 30−12 : 30 Related

Symposium

関連シンポジウム

「ハタ類増養殖の最前線」

(3)

10月18日(土)

【ポスター発表】

13 : 00−14 : 00 会場  2 階ロビー

P-01 トラフグの効率的な選抜育種のための水温調節による飼育期間の制御 ○今井 正・片山貴士・香川要介・山本義久・吉浦康寿(水研セ瀬水研) P-02 大阪湾北東海域におけるキジハタの放流効果 ○ 村浩隆(大阪環農水総研) P-03 コイヘルペスウイルス感染後の血中ウイルスDNA量の経日的変化 ○安本信哉・近藤昌和・高橋幸則(水大校) P-04 日本産ヌタウナギにおける Acanthochondria eptatreti の寄生近藤昌和・安本信哉・高橋幸則(水大校)

P-05 Supplemental ef fect of Pyropia spheroplasts on growth of Japanese sea cucumber Apostichopus

japonicus in closed recirculating system

Shahabuddin, A. M., M. N. D. Khan and T. Yoshimatsu (Graduate School of Bioresources, Mie University)

P-06 Rearing of juvenile Japanese scallop, Patinopecten yessoensis in Closed Recirculation System (CRS) by feeding enzyme treated nori - a preliminary report

Khan, M. N. D., A. M. Shahbuddin, N. Arisman, D. Saha, T. Araki and T. Yoshimatsu (Graduate School of Bioresources, Mie University)

P-07 タナゴ, Acheilognathus melanogaster の産卵期の終了誘導要因太田勇太(東海大院地球環境科学研究科)・秋山信彦(東海大学海) P-08 mtDNA多型による養殖クルマエビの遺伝的多様性評価 ○後藤卓哉(愛媛大農)・高木基裕(愛媛大南水研セ)・菅谷琢磨・浜野かおる(瀬戸内水研セ) P-09 クルマエビの初期環境水温と性比 ○伏屋玲子(水研セ水工研)・安井理奈(沖縄県漁港漁場課)・坂本 崇(東京海洋大) P-10 マツカワ(Verasper moseri)から分離したスクーチカ繊毛虫の食酢・茶抽出物に対する感受性伊藤慎悟(道総研中央水試)・笠井久会(北大院水) P-11 海水飼育したサケ稚魚の絶食にともなう栄養状態の変化 ○伴 真俊 (水研セ北水研) P-12 カタクチイワシを用いた海産魚ゲノム編集のための実験系開発 ○中島奏子(九大院農)・坂口圭史・北野 載・長野直樹(九大院農唐津水研セ)・松山倫也(九大院農) P-13 マアジ受精卵の孵化時間および仔稚魚の成長に水温が及ぼす影響 ○魚住和弘(九大院農)・酒井 猛・高橋素光・依田真里(水研セ西海水研)・松山倫也(九大院農) P-14 クルマエビが捕食する二枚貝の殻長の成長に伴う変化 ○吉田 歩(長大院水環)・井上 猛・岡野将大(長大水)・ 山崎英樹・伊藤 篤・ 崎山一孝(水研セ瀬水研)・阪倉良孝(長大院水環) P-15 甲殻類における血球種の変化 ○近藤昌和・安本信哉・高橋幸則(水大校)

(4)

長谷川理(神奈川水技セ)

【口頭発表】

14 : 00−17 : 30 会場  2 階 C206講義室

14 : 00−

O-01 種特異的ミトコンドリア DNA マーカーによるクロダイ浮遊卵と浮遊 DNA の検出 ○宮奥昴次・笘野哲史・海野徹也(広大院生物圏科)・ 村浩隆(大阪環農水総研)  O-02 冬期クロダイの海藻に対する摂餌選択性 ○亀井孝祐・津行篤士・加藤亜記・海野徹也(広大院生物圏科) O-03 オオクチバス繁殖なわばり雄の効率的な捕獲方法(アユの友釣りならぬバスの敵釣り) ○山本充孝(琵琶湖博) O-04 干潟域放流種苗 3 種(トラフグ, クルマエビ, アサリ)の捕食 - 被食関係吉田 歩(長大院水環)・黒澤明日香・日高成陽(長大水)・ 山崎英樹・ 伊藤 篤・崎山一孝(水研セ瀬戸内水研)・阪倉良孝(長大院水環) O-05 人工芝のアサリ天然稚貝捕集効果の岸沖差 ○鳥羽光晴・岡本 隆・林 俊裕(千葉水総研セ) O-06 大阪湾における海域の類型化と底生動物相の変化 ○佐野雅基・大美博昭(大阪環農水総研)・横山 寿(京大フィールド研) O-07 飼育下におけるクニマスの成長と成熟 ○大浜秀規・森下 匠(山梨水技セ) 休憩

16 : 00−

O-08 仔魚飼育水槽内での極小ワムシ Proales similis の分布

内桶勇樹・阪倉良孝(長大院水環)・星野昂大・栗田正徳(名古屋港水族館)・萩原篤志(長大院水環) O-09 クエおよびマハタ仔魚のアルテミア摂餌選択性 ○岩崎隆志(水研セ西海水研)・井手健太郎・井上誠章・佐藤 純(水研セ増養殖研) O-10 Moina 属ミジンコ 2 種の増殖と寿命に及ぼす光強度の影響 程 弘・○吉松隆夫(三重大院生資) O-11 自然四倍体ドジョウの2n精子を用いた低温処理による雄性発生二倍体誘起 李 雅娟・高 養春・周 賀・姜 志強・王 玉生・斉 紅蕊・李 嘉奇・馬 海艶(大連海洋大学)・ ○荒井克俊(北大院水) O-12 トビハゼにおける視覚機能の組織・行動学的検討 ○瀧山 智(広大生生)・濱崎佐和子(広大院生物圏)・吉田将之(広大生生,広大院生物圏) O-13 ヒオウギガイの二酸化炭素分圧と炭酸水素イオン濃度 ○半田岳志・山元憲一 (水大校)

(5)

9 : 30−12 : 30 会場  2 階 C206講義室

企画責任者:征矢野 清

(長大海セ)

・阪倉良孝

(長大院水環) 趣旨:ハタ類はわが国の重要な増養殖対象魚であるとともに,国際戦略魚としても注目されている。そこで, ハタ類の増養殖の基盤となる繁殖・初期生態・漁病対策に関する最新情報を紹介するとともに,種苗生産・ 増養殖・放流事業の現状と今後のあり方を討議する。 形式:話題提供と聴衆参加型テーブルディスカッション 参加費:無料(水産増殖学会へ参加しない方も無料で入場いただけます。) 開催挨拶・趣旨説明 テーマ 1 「繁殖種苗生産の学術的トピックス」各10分,討論15分(計45分)      ①親魚養成と受精卵確保(長崎大学・征矢野 清)      ②仔魚飼育(生残と形態異常)(長崎大学・阪倉良孝)      ③魚病対策(増養殖研究所・森 広一郎 ら) テーマ 2 「種苗生産・養殖の現在と未来」各10分,討論15分(計45分)      ①クエ(長崎県五島振興局・中田 久 ら)      ②スジアラ(西海区水産研究所・武部孝行)      ③マハタ(三重県水産研究所・土橋靖史) テーマ 3 「放流事業の現在と未来」各10分,討論15分(計35分)      ①キジハタ(山口県水産研究センター・南部智秀)      ②クエ(西海区水産研究所・中川雅弘 ら) テーマ 4 「産業としてのハタ類の生産・国際戦略」15分,討論15分(計30分)      ①国内外動向(西海区水産研究所・照屋和久) 総合討論「ハタ類の増養殖はどうあるべきか」討論20分 閉会挨拶

(6)

P-02

大阪湾北東海域におけるキジハタの放流効果

村浩隆

(大阪環農水総研) 人工護岸に囲まれた港湾区域におけるキジハタの種苗放流効果を明らかにするため,2007 ∼ 2011年に大阪湾北 東海域の堺市地先と泉大津市地先の 2 カ所に大型種苗(全長約10 cm)を放流した。また,2009 ∼ 2011年には大 型種苗の放流に先立って,小型種苗(全長約 5 cm)を同じ場所に放流した。さらに,堺市地先において簡易魚礁 を設置し,捕食魚等による食害防止効果を調べた。なお,放流群別の回収率を調べるため,種苗には ALC 耳石染色, または腹鰭抜去を標識として施した。 漁獲物中に含まれる標識魚の混入率と漁業操業日誌等から推定された放流海域の漁獲量から,放流群ごとの回収 率を求めた結果,大型種苗の回収率は15 ∼ 20%程度と高いことがわかった。一方,小型種苗放流ではほとんど回 収されないことがあり,その回収率にばらつきが見られた。また,簡易魚礁の設置による明確な食害防止効果は認 められなかった。以上のことから,上記の港湾区域では全長10 cm の大型種苗の放流が有効であることが示唆され た。

トラフグの効率的な選抜育種のための水温調節による飼育期間の制御

今井 正・片山貴士・香川要介・山本義久・吉浦康寿

(水研セ瀬水研) トラフグ仔稚魚の成長に及ぼす水温の影響を明らかにすることにより,選抜育種における選抜に適した全長 4 ∼ 10 cm の飼育期間を制御する手法を検討した。孵化仔魚を500 L 水槽に2500個体収容し,全長 3 cm に到達するまで 水温17,20,23℃で飼育した。次に,全長約 3,5,7 cm の稚魚を200 L 水槽に30,25,20個体ずつ収容し,17 ∼ 29℃の範囲で 3℃ごと 5 段階の水温に馴致した後,1 週間飼育した。いずれの実験も 2 回行った。全長 3 cm への 到達に要した日数は,成長曲線から,水温17℃では71.8日,20℃では49.5日,23℃では38.0日と推定された。また, 稚魚の日間成長速度から,選抜に適した期間は17℃で飼育した場合には121.4日間,20℃では65.0日間,23 ∼ 29℃ では46.2 ∼ 46.4日間と推定された。水温を17℃ないし20℃に維持できれば,23 ∼ 29℃と比較して,選抜期間をそ れぞれ2.6倍と1.4倍に延長できることから,水温調節による選抜育種の効率化は可能と考えられた。

(7)

コイヘルペスウイルス人為感染後の血中ウイルス DNA 量の経日的変化

安本信哉・近藤昌和・高橋幸則

(水大校) 本研究では浸漬感染後の経日的な血中ウイルス DNA 量をしらべることを目的とした。浸漬法(7.0×104 copies/ mL で 1 時間)により人為感染させた平均体重30 g のマゴイを水量50 L の水槽 9 基に10尾ずつ収容した。その後, 毎日 1 基ずつ全ての生残魚を取り上げ,採血を行った( 8 日間)。血液は全血,血清および血球(血清以外)に分 けて保存し,それぞれのウイルス DNA 量を測定した。全血のウイルス DNA 量を測定したところ,感染後 1 ∼ 3 日目にかけて低濃度ウイルス DNA が検出されたが,その後は検出限界以下であった。血球成分のウイルス DNA 量は感染後 1 日目から高濃度のウイルス DNA が検出され,そのピークは感染後 2 ∼ 3 日目であった。一方,血清 からはウイルスは検出されなかった。以上の結果から,血液内のウイルス DNA 量は感染後 2 ∼ 3 日目にピークと なり,ウイルスは血球に感染した状態であることが示唆された。

P-04

日本産ヌタウナギにおける Acanthochondria eptatreti の寄生

近藤昌和・安本信哉・高橋幸則

(水大校)

最近,台湾沖のヌタウナギ類 3 種(Eptatretus burgeri,E. sheni,E. yangi)からカイアシ亜綱ポエキロストム目 ツブムシ科に属する新種の寄生性甲殻類が発見され,Acanthochondria eptatreti と命名された(Cheng et al. 2014)。 本報告では日本産ヌタウナギ E. burgeri における A. eptatreti の寄生状況を報告する。響灘で2014年 5 月上旬にアナ ゴ筒漁法によって採集されたヌタウナギを水温約15℃で無給餌飼育した。同年 7 月 4 日にヌタウナギ 1 尾を解剖し たところ,咽頭壁に A. eptatreti の寄生が認められたことから, 7 月 6 日と 7 日に計83尾のヌタウナギを解剖して 寄生状況を調べた。ヌタウナギ84尾中10尾に寄生が認められ,計15個体の寄生虫が得られた。寄生虫15個体のう ち,12個体は鰓嚢よりも前方に寄生していた。咽頭の左右に位置し,前後に走行する血管の直下に当たる咽頭壁に A. eptatreti は寄生し,寄生部位の咽頭壁は壁外に向けて肥厚していた。

(8)

Supplemental effect of

Pyropia spheroplasts on growth

of Japanese sea cucumber

Apostichopus japonicus

in closed recirculating system

Shahabuddin, A.M, M.N.D. Khan and T. Yoshimatsu

(Graduate School of Bioresources, Mie University)

A feeding experiment was conducted to evaluate the supplemental effects of freeze dried Pyropia spheroplasts (PS) on growth of Japanese sea cucumber (Apostichopus japonicus). Sea cucumbers were fed formulated diets with 1% (T1), 3% (T2) and 5% (T3) inclusion level of PS in closed recirculating systems. A diet without PS was used as control (T4). The experiment was conducted for 6 weeks maintaining water temperature 15 ± 1℃, photoperiod 18 : 06 h (D : L). Feeds were supplied ad-libitum at 14 h once in a day and excess feeds and feces were removed in the next morning. Results showed that highest growth was observed in the 5% PS diet compared to other treatments. Total weight gain, mean weight gain, net yield, protein efficiency ratio (PER) and muscle protein gain was significantly higher in 5% PS diet (p < 0.05). The highest specific growth rate (SGRs), feed conversion efficiency (FCE) (p < 0.05) was observed in higher percentage of PS diet. It can be concluded from the experiment that, PS can be added as a new cheaper feed ingredient in the formulated diet of Japanese sea cucumber for commercial aquaculture.

P-06

Rearing of juvenile Japanese scallop,

Patinopecten yessoensis in

Closed Recirculation System (CRS) by feeding enzyme treated nori

- a preliminar y report

Khan, M.N.D., A.M. Shahbuddin, N. Arisman, D. Saha, T. Araki and T. Yoshimatsu

(Graduate School of Bioresources, Mie University)

The potential impact of Pyropia spheroplasts–a new dietar y single cell material prepared by enzymatic digestion of low grade nori was tested to evaluate the growth and biochemical composition of juvenile Japanese scallop reared in Closed Recirculation System (CRS). Four diets (PS levels of 0.5%, 1.0% and 1.5% body weight basis, and live diatom, Chaetoceros calcitrans) were fed to the three replicates groups of scallops having 30 individuals (mean shell length: 30.27 ± 2.82 mm) for 40 days, three times a day (9 : 30-11.30, 12.-14.30 and 15.30-17.30) at ad libitum in CRS and its effects on growth and survival were assessed under the artificial photo condition of 12L : 12D. Significant differences (P < 0.05) were observed in survival rate (85.56-88.89%), carcass ratio among the dietary groups fed the PS based diets compared to the control diet. The scallop fed the PS based diets had significantly (P < 0.05) higher protein level in their carcass whereas, increased lipid content was reported for the control group. No significant differences (P > 0.05) was noted in length, breadth, height and shell weight of the scallops among all the dietary groups. Therefore, enzyme treated nori and CRS were found suitable for culturing scallop.

(9)

タナゴ, Acheilognathus melanogaster の産卵期の終了誘導要因

太田勇太

1

・秋山信彦

2 (1東海大院地球環境科学研究科,2東海大海洋) 【目的】本研究ではタナゴの繁殖生態を明らかにする目的で,産卵期の終了誘導要因を解明した。 【方法】実験に先立って屋外で自然日長,地下水のかけ流し条件下でタナゴを飼育した。産卵期間中の 5 月10日と 夏至から雌雄 5 個体ずつ抽出し,異なる日長と水温条件下での産卵状況を比較した。2012 ∼ 2014年に 3 回実験を 繰り返した。実験開始と終了時には GSI(生殖腺重量/体長3×107)を算出し,生殖腺を組織学的に観察した。 【結果】全ての実験で,開始時の個体の98%以上が成熟相か産卵相であった。2012年の 2 回の実験では,日長の変 化に関係なく28℃で産卵が停止し,20℃では継続した。2013年と2014年の 5 月からの実験では24,26℃の12L で産 卵が停止したが,同温度の14L と22℃の12,14L では継続した。夏至からの実験では,26℃の12,14L 両条件と, 22,24℃の12L で産卵が停止し,14L では継続した。これらのことから,本種は夏至以降の短日化は産卵期終了要 因であるが,水温上昇が産卵期を終了させる最大の要因と考えられる。

P-08

mtDNA 多型による養殖クルマエビの遺伝的多様性評価

後藤卓哉

1

・高木基裕

2

・菅谷琢磨

3

・浜野かおる

3 (1愛媛大農,2愛媛大南水研セ,3瀬戸内水研セ) クルマエビの種苗生産においては,交尾後の天然の雌親を人為放卵させ,種苗生産を開始してきたが,漁獲量の 低下とウィルスの垂直感染防除の意識の高まりから,完全養殖を行う必要が生じており,その取り組みがなされる 一方,近交弱勢のリスクが高まることが懸念されている。本研究では,mtDNA 多型を用いて日本の主要養殖場で 生産されている養殖クルマエビの遺伝的多様性を明らかにすることを目的とした。 天然の供試エビは国東半島近海および豊後水道産を,養殖種苗は 3 社 3 生産ロット( 1 社は天然からの F1 種苗, 2 社は継代種苗)を用いた。ミトコンドリア DNA 多型は D-loop 領域の塩基配列728bp を検出し,遺伝的多様度を 求めた。その結果,遺伝子多様度は天然の国東半島近海で0.993,豊後水道で1.000と高く,養殖集団では0.809∼0.860 と低かった。一方,ヌクレオチド多様度は国東で0.0262,豊後水道で0.0292,養殖集団で0.0168∼0.0295であった。

(10)

クルマエビの初期環境水温と性比

伏屋玲子

1

・安井理奈

2

・坂本 崇

3 (1水研セ水工研,2沖縄県漁港漁場課,3東京海洋大) 性決定機構には,遺伝型性,環境型性,その両方の競合による性決定があり,環境型性決定機構では温度依存型 性決定が有名である。本研究では,抱卵しないクルマエビの生態を利用し,同じ親の受精卵を低温∼高温の異なる 水温実験区で飼育し,性比を調べて温度による影響を検討した. 飼育下でクルマエビの 1×1 交配を行い,採卵した。同じ 1×1 交配家系から生まれた受精卵を18,24,30℃試験 区用に 3 分割し,種苗生産を行った。外部形態により雌雄判別ができるようになるまで飼育し,性比を調べた。 水温18℃では稚エビに変態できなったため途中から20℃で飼育した。3 家系の飼育による結果,24℃区では性比 は変わらないが,30℃区では雌が多い傾向がみられた。試験区によって生存個体数が異なり,また家系によっても ばらつきがみられた。今後は性決定遺伝子座について解析を行い,全雌生産について検討する予定である。

P-10

マツカワ(Verasper moseri)から分離したスクーチカ繊毛虫の

食酢・茶抽出物に対する感受性

伊藤慎悟

1

・笠井久会

2 (1道総研中央水試,2北大院水) 【目的】マツカワ稚魚にスクーチカ繊毛虫によると考えられる死亡が発生した。分離した繊毛虫の病原性と防除対 策の有効性を明らかにするため,感染試験を行い,食酢と茶抽出物への感受性を検討した。 【方法】種の同定を PCR 法で行った。SSN-1 細胞で培養した虫体を用い,マツカワ稚魚への浸漬攻撃試験と腹腔 内注射攻撃試験を行い,経過観察した。海水に懸濁した培養虫体を食酢または茶抽出物に曝露し,虫体生存数を MPN 法で測定した。また,これらのマツカワ稚魚への影響を検討した。 【結果】繊毛虫は M. avidus と推定された。104虫体/mL 浸漬区は 2 週間で20%,腹腔内注射区は 7 日間で全数死亡 した。虫体生存数は0.7%食酢または0.01%茶抽出物に30分曝露すると検出限界以下になった。0.01%茶抽出物はマ ツカワに毒性を示したが,0.7%食酢の影響はほぼなかった。

(11)

海水飼育したサケ稚魚の絶食にともなう栄養状態の変化

伴 真俊

(水研セ北水研) 【目的】サケ稚魚 Oncorhynchus keta が降海した後の餌不足は初期減耗に関わる一要因と考えられる。今回は,海水 飼育したサケ稚魚を絶食させた際の栄養状態の変化を調べた 【方法】平均体重1.4 g のサケ稚魚を 3 群に分け,異なる水温と給餌条件で海水飼育した(A 群:水温10℃,体重当 り 3%/日の給餌,B 群:水温10℃,絶食,C 群:水温15℃,絶食)。各群から定期的に20尾を取り上げ,肥満度, 血中の糖質濃度(グルコース:Glc)と脂質濃度(トリグリセライド:TG)を調べるとともに,累積死亡率を算出 した。 【結果】累積死亡率は A 群が実験期間を通じて 1%未満だったのに対し,B 群は絶食後21日目,C 群は14日目に50% を超えた。肥満度は A 群が約 7 を維持したのに対し,半数致死時の B 群と C 群は約5.5に低下した。Glc と TG は A 群がそれぞれ80-100 mg/dL と80-160 mg/dL だったのに対し,半数致死時の B 群と C 群の値は約50 mg/dL と 10 mg/dL 以下に低下していた。肥満度5.5,Glc 50 mg/dL,TG 10 mg/dL は降海したサケ稚魚にとって危険値と 考えられる。

P-12

カタクチイワシを用いた海産魚ゲノム編集のための実験系開発

中島奏子

1

・坂口圭史

2

・北野 載

2

・長野直樹

2

・松山倫也

1 (1九大院農2九大院農唐津水研セ) 近年,複数の核酸結合モジュールの発見に基づいた ZFN, TALEN, CRISPR/Cas9 などの部位特異的人工ヌクレ アーゼの開発により,非モデル生物や培養細胞などでのゲノム編集が可能となり,遺伝子改変が普通の技術となっ てきた。特に,非相同末端結合の修復過程における塩基欠損により生じた破壊は,カルタヘナ法に抵触しない可能 性も示されており,今後,水産分野における,精密なゲノム改変による新品種作出や育種の短縮化など,その利用 と進展が期待されている。我々は,ゲノム編集による遺伝子改変技術を海産魚で展開するため,カタクチイワシに 着目し,実験系を整備してきた。本研究では,カタクチイワシの実験系の特徴を解説するとともに,チロシナーゼ 遺伝子,ミオスタチン遺伝子を対象とした遺伝子破壊を試みたので,その成果を報告する。

(12)

マアジ受精卵の孵化時間および仔稚魚の成長に水温が及ぼす影響

魚住和弘

1

・酒井 猛

2

・高橋素光

2

・依田真里

2

・松山倫也

1 (1九大院農,2水研セ西海水研) マアジに関する水産資源学的研究は古くから行われているが,繁殖特性や仔稚魚の環境応答を含む生活史などに ついては分かっていないことが多い。これらの生物情報を得るには飼育実験が有効な手段の一つとなるが,巻網で 漁獲されたマアジ雌親魚の卵巣卵では退行が起こり,また,飼育下の親魚では卵黄形成や精子形成が進まないため, これまで産卵実験用の親魚を得ることが困難であった。我々はストレス低負荷の天然マアジ親魚を用いた産卵誘導 法を開発し,これにより再現性の高い受精卵取得および仔稚魚の飼育実験が可能となった。本研究では水温が,1 ) 受精卵の孵化時間,および 2 )仔稚魚の成長に与える影響を解析したので,その結果を報告する。なお,本研究の 一部は資源変動要因分析調査(水産庁補助事業)の一環として行われた。

P-14

クルマエビが捕食する二枚貝の殻長の成長に伴う変化

吉田 歩

1

・井上 猛

2

・岡野将大

2

・山崎英樹

3

・伊藤 篤

3

・崎山一孝

3

・阪倉良孝

1 (長大院水環1,長大水2,水研セ瀬水研3) 【目的】クルマエビとアサリは干潟域で種苗放流が行われているが,クルマエビは干潟に生息する間(体長 7 -140 mm)アサリ等の二枚貝を捕食する。クルマエビの放流がアサリ資源に与える影響を検討するため,着底か ら干潟を離れるまでの体長のクルマエビが捕食するアサリの殻長を調べた。 【方法】底に人工砂を敷いた容器に予めサイズを測定したクルマエビ(体長23.1-141.2 mm)1 個体とアサリ(殻長 1.6-13.3 mm)数個体を収容した。24時間後に生残したアサリの殻長を測定して被食アサリの殻長を特定し,次に クルマエビの口器の長さを測定した。 【結果】クルマエビの体長と捕食したアサリの殻長の間には正の相関が見られ(n = 89,r = 0.488,p < 0.05),クルマ エビの成長に伴って捕食されるアサリの殻長は大きくなった。クルマエビは体長比にして1.3-9.5%の大きさアサリ を捕食した。クルマエビの第2顎脚の長さは捕食したアサリの最大殻長と一致した。

(13)

P-16

ヒラメ仔魚腹腔内への精原細胞移植による代理親魚技術の開発

王 俊杰

1

・井野靖子

1

・内野 翼

1

・坂本 崇

1

・矢澤良輔

1

竹内 裕

1

・長谷川理

2 (1海洋大,2神奈川水技セ) サケ科魚類で開発された代理親魚技術(精原細胞移植技術)は,現在,数種の海産魚で利用可能となっている。 本研究では,ヒラメを用いた代理親魚技術を開発するため,1 )ヒラメ成魚精巣からのドナー精原細胞の調整, 2 )3 倍体ヒラメ仔魚の作出,3 )3 倍体仔魚腹腔内へのドナー精原細胞の移植を行った。移植後 8 か月以降の 3 倍 体宿主( 8 尾)の腹部を圧迫し,得られた精液を解析したところ,3 尾より運動能を有する半数体の正常精子が得 られた。人工授精試験では 2 倍体を示す F1 仔魚が誕生した。マイクロサテライトマーカー解析の結果,F1 仔魚に ドナー由来アレルが検出され,ドナー由来の機能的精子が生産されていることが判明した。本技術は,継代ヒラメ 代理親による天然ヒラメ由来配偶子の生産や,ヒラメ代理親を用いたマツカワ等の異種ドナー配偶子生産への応用 が期待される。

甲殻類における血球種の変化

近藤昌和・安本信哉・高橋幸則

(水大校) 甲殻類の血球形態および血球の種類数は,生物種によって多様であることをこれまで報告してきた。低位群(鰓 脚綱や顎脚綱)の多くでは,血球は 1 種類であり,体制が極端に退化した種では血球を有さず,血液循環が非常に 弱いと考えられる種では循環血球は有さないものの,組織に血球様細胞を持つ。一方,高位群(軟甲綱)において も,原始的なコノハエビ亜綱では血球は 1 種類であるが,同綱のトゲエビ亜綱や真軟甲亜綱では複数種の血球を有 する種が存在し,Ⅰ∼Ⅴ型に分類される。また,真軟甲亜綱においても血球種が 1 種類である種も存在する。以上 のことから,①甲殻類の祖先種は 1 種類の血球を有していた。②トゲエビ亜綱と真軟甲亜綱の共通の祖先種におい て血球種数の増加が起こり,その血球型はⅠ型であった。③Ⅰ型の祖先種から分岐した各動物群において,血球の 種類数の減少が起こり,血球の種類数に多様性が生じたと考えられる。

(14)

種特異的ミトコンドリア DNA マーカーによるクロダイ浮遊卵と

浮遊 DNA の検出

宮奥昴次

1

・笘野哲史

1

・海野徹也

1

・ 村浩隆

2 (1広大院生物圏科,2大阪環境研) 【目的】広島湾の重要魚種であるクロダイを対象とし,種特異的 mtDNA マーカーを用いて浮遊卵の同定と浮遊 DNA の検出を試みた。 【方法】クロダイの近縁種のデータベースを参照し,cytochrome b 領域(129bp)を増幅対象とした種特異的プラ イマーを作成した。発生段階別の卵を用いて増幅確認を行うとともに,種苗生産施設(約10万∼ 15万尾/50 t)の 飼育水からの浮遊 DNA の検出をリアルタイム PCR 法で試みた。 【結果と考察】様々な発生ステージの受精卵より得た DNA を用いて増幅確認を行ったところ,いずれのステージ においても検出が可能であった。実際に広島湾で採集した球形卵について種同定い,クロダイ卵密度は18個/m3 推定された。一方,浮遊 DNA の検出については,種苗生産施設における飼育水50 mL から得た DNA で増幅が確 認され,平均 DNA 濃度は0.235 ng/L となった。開発したクロダイ特異的 mtDNA マーカーは,本種の浮遊卵の同 定やバイオマスの推定に有効であると考えられる。

O-02

冬期クロダイの海藻に対する摂餌選択性

亀井孝祐・津行篤志・加藤亜記・海野徹也

(広大院生物圏科) 【目的】雑食性のクロダイは冬期に海藻食へと移行することが知られている。しかしながら,クロダイが摂餌して いる海藻を定性的かつ定量的に示した知見は少ない。本研究は,冬期クロダイの消化管内要物分析と潮間帯の海藻 を調べることで,本種の海藻に対する摂餌選択性を明らかにした。 【方法】2013年 2 月∼ 3 月に広島県呉市沿岸でクロダイ30個体を釣獲した。また,釣獲場所と同一の潮間帯におい て海藻を採集した。採集した海藻と消化管内容物は可能な限り分類し,乾重量を測定した。消化管内容物の乾重量 より,平均重量百分率と出現頻度を求め,ranking index を算出した。また,Manly の餌選択係数(α)を求めた。 【結果】冬期のクロダイは,ヒラアオノリ,ヒトエグサ,スジアオノリを高い頻度で摂餌していた。これに対して

環境中では,アナアオサ,ヒジキ,ヒトエグサが優占した。餌選択係数(α)は,スジアオノリで(0.575),タレツ アオノリ(0.282)となり,クロダイは優占種ではなく,これらの緑藻に対して高い嗜好性を有すると考えられた。

(15)

オオクチバス繁殖なわばり雄の効率的な捕獲方法

(アユの友釣りならぬバスの敵釣り)

山本充孝

(琵琶湖博) 【目的】有害外来魚であるオオクチバス(バス)を効果的に駆除する方法を開発するため,雄親が産卵床で卵や仔 魚を保護する性質を利用した親魚の駆除方法を検討した。 【方法】まず,ワームや活アユなどを使用した釣獲を試したが,無反応で捕獲できなかった。次に,生きたブルー ギル(ギル)を用いてバスが産卵床に侵入したギルを攻撃する性質を利用した捕獲方法を検討した。バス親魚は滋 賀県水産試験場の港湾に自然産卵した25個体を用いた。実験はバスの産卵床付近に掛針をつけたギルを提示し,バ スが初めて攻撃行動を示すまでの時間と捕獲までの時間を記録した。 【結果】雄のバス親魚を90%以上捕獲できた。また,雌親魚も半数は捕獲できた。捕獲に要した平均時間は攻撃行 動の提示までは 5 分,捕獲までは8.6分であった。頻繁に攻撃されても針掛かりしにくかったため,ボラ掛針を追 加してギルに接近したバスを引っかけるように改良すると短時間で捕獲できた。

O-04

干潟域放流種苗 3 種(トラフグ,クルマエビ,アサリ)の捕食 - 被食関係

吉田 歩

1

・黒澤明日香

2

・日高成陽

2

・山崎英樹

3

・伊藤篤

3

・崎山一孝

3

・阪倉良孝

1 (1長大院水環,2長大水,3水研セ瀬戸内水研) 【目的】干潟や河口域に放流されているトラフグ稚魚,クルマエビ稚エビ,アサリについて放流後の捕食 - 被食関 係の調査を目的として,1 )水槽実験と 2 )放流実験を行った。 【方法】1 )角形水槽に放流サイズのトラフグとクルマエビ,2 サイズのアサリ(殻長9.0 ,3.2 mm)を収容した(n = 5)。 5 日間の収容中 1 日 2 回生残個体数を計数した。2 )素掘池に小割網( 4 × 4 m)を 5 面張り,3 面は 3 種混合, 2 面は 3 種にクロダイを加えて収容した。5 日後に各種の生残個体数を計数した。 【結果】 1 )生残率はクルマエビが43%,アサリ(殻長3.2 mm)が69.5%であった。 2 )3 種混合区でアサリ(殻長 3.2 mm)が大幅に減少したのに対し,クロダイ収容区はクルマエビが激減し,アサリ(殻長3.2 mm)の生残率が 高くなった。放流サイズのクルマエビはアサリ(殻長3.2 mm)を多く捕食した。

(16)

人工芝のアサリ天然稚貝捕集効果の岸沖差

鳥羽光晴・岡本 隆・林 俊裕

(千葉水総研セ) 方法 2013年 7 月に木更津市の盤洲干潟の岸沖各 1 地点(地盤標高約+0.8 m,+0.4 m)に,アサリ天然稚貝を 捕集するための人工芝(15 cm×15 cm,芝長22 mm)をそれぞれ40枚ずつ設置した。設置後は約 2 週間間隔で,4 枚ずつ回収するとともに周辺域のアサリを採取し,それぞれの分布密度を調査した。 結果 沖側周辺域でのアサリ密度は 7 月には6,889個体/m2 であったが,12月には835個体/m2 に減少した。岸側 周辺域でのアサリ密度は385 ∼ 2,953個体/m2と変動した。岸側地点で捕集したアサリ密度は,8 月には2,578個体/ m2 であったが,継続的に増加して12月には18,755個体/m2 になった。沖側の地点では変動が大きく,8 月に6,922個 体/m2であったが,12月には約500個体/m2になった。沖側では周辺域の密度が高いにも関わらず捕集密度が少な かったが,これは沖側では干潟面の変動が大きく人工芝は露出や埋没を繰り返して不安定な状態であったためと推 定した。

O-06

大阪湾における海域の類型化と底生動物相の変化

佐野雅基

1

・大美博昭

1

・横山 寿

2 (1大阪環農水総研・2京大フィールド研) 【目的】大阪湾で問題となっている重要底魚類の減少要因解明のため,底生動物の生息状況を富栄養期と比較・解 析した。 【方法】大阪湾内の31地点で採集した海底堆積物の粒度組成(Mdφ,淘汰度,歪度),TOC,TN,δ13C,δ15N,C : N 比, AVS を測定し,これらの分析値の主成分分析により大阪湾を類型区分した。2013年 5 月に大阪湾内の25地点で目合 5 mm のカバーネットを被せた石げた網(幅1.8 m)2 丁を10分間曳網して底生動物を採集した。上記の区分ごとに, 1992年 5 月に同じ方法で採集した底生動物データとの比較を行った。 【結果】海底堆積物の主成分分析により大阪湾を A ∼ E に 5 区分した。湾奥部の A 区分の沿岸部では底生動物の個 体数,湿重量とも1991年 5 月より減少し,湾中央∼東部沿岸の B 区分ではほぼ全地点で個体数,湿重量とも増加 するなど,区分により底生動物の動向に差違がみられた。

(17)

飼育下におけるクニマスの成長及び成熟

大浜秀規・森下 匠

(山梨水技セ) 【目的】山梨県西湖で再発見されたクニマス Oncorhynchus kawamurae の飼育下における成長及び成熟について調 べた。 【方法】2011年11月から2012年 1 月にかけて西湖で採捕した親魚から採卵を行い,得られたクニマスを用い2013年 7 月からヒメマスとの比較飼育を行った。また,2 年目となる2013年10月から2014年 3 月にかけて,成熟状況を確 認した。 【結果】クニマスはヒメマスに比べ生残率が各々 82%,99%,飼料効率が各々 68%,73%とやや劣ったものの,飼 育成績としては比較的良好で養殖の対象になると考えられた。飼育する約500尾の中から26尾が成熟し,雌 2 尾か ら採卵を行い,ふ化率は低かったが第 2 世代の作出にも成功した。排精雄は10月から 6 ヶ月間確認され,排精が84 日間継続した個体もあった。円滑な人工採卵のためには排卵と排精のピークが同調することが望まれるため,今後 この点について検討を進める必要がある。

O-08

仔魚飼育水槽内での極小ワムシ Proales similis の分布

内桶勇樹

1

・阪倉良孝

1

・星野昂大

2

・栗田正徳

2

・萩原篤志

1 (1長大院水環,2名古屋港水族館) 【目的】口径が小さな仔魚の初期餌料として Proales similis(以下プロアレス)を用いる場合,水槽内でどのような 分布を示すか調べた。 【方法】30 L 容円形水槽にプロアレスを収容し,塩分25,水温25℃,通気20 mL/分で飼育した。毎日水槽内から飼 育水と底砂を採取し,水槽内の分布を求めた。そのとき,プラスチック板を水面,壁面,底面に設置し,付着個体 数についても推定した。また SS 型ワムシとの併用給餌で仔魚飼育を行った。 【結果】プロアレスの遊泳個体は表層( 0 ∼ 3.0%)と中層(0.3 ∼ 3.6%)に比べ底層(3.4 ∼ 18.5%)に多かったが, 72 ∼ 89%は底砂に分布した。付着個体の割合は,水面では 0 ∼ 0.5%,壁面0.5 ∼ 4.5%,底面0.2 ∼ 7.7%であった。 SS 型ワムシは仔魚飼育水槽内を均一に遊泳していたのに対し,プロアレスは飼育水槽に収容後 1 日で底層に分布 を移した。しかし,プロアレスを 2 時間おきに給餌すると,水中の密度を一定に維持できた。

(18)

クエおよびマハタ仔魚のアルテミア摂餌選択性

岩崎隆志

1

・井手健太郎

2

・井上誠章

2

・佐藤 純

2 (1水研セ西海水研,2水研セ増養殖研) 種苗生産における不適切な餌料系列は,仔稚魚の成長の鈍化や飢餓による死亡,体長差による共食いの誘発およ び形態異常の出現等の原因になることが懸念される。クエおよびマハタ種苗生産においては,飼育初期10日齢まで は,ワムシのサイズや密度,水温や照度,日周期性等の摂餌環境や摂餌生態に関する多くの報告があるが,それ以 降の摂餌生態や摂餌環境等に関してはほとんど知見がない。そこで,クエおよびマハタ仔魚におけるアルテミアの 適正給餌時期を把握することを目的に,両種仔魚のアルテミアへの摂餌選択性を調べた。その結果,両種とも平 均体長が 8 mm 以上になるとワムシよりアルテミアへの摂餌選択性が強くなることが分かった。また,アルテミア (平均全幅661±108μm)を摂餌した最小サイズの口幅はクエが約550μm,マハタが約600μm とアルテミアの全 幅とほぼ同じであり,仔魚の口幅が両種のアルテミアの摂餌制限要因であると推測された。

O-10

Moina 属ミジンコ 2 種の増殖と寿命に及ぼす光強度の影響

程 弘・

吉松隆夫

(三重大院生資) 【目的】Moina 属ミジンコ 2 種の生産効率の向上を目的として,培養時に照射される光量子束密度と増殖および寿 命の関係を,個別培養実験で検討した。

【方法】淡水産の Moina macrocopa と塩水産の M. mongolica を 6 穴マイクロプレートに個別に収容し,死亡するま で培養した。小型の LED 光照射装置からの疑似白色光を明暗周期16L : 8D,3 光量子束密度( 8 ,20,50μmol m-2 s-1 ) の条件で照射し,水温25±1℃で培養して増殖や寿命等に与える影響を検討した。 【結果】個別培養試験の結果,M. macrocopa の場合,20μmol m-2s-1 の光量子束密度で他の光量子束密度の区に比 べて産仔数,寿命で優れた結果が得られ,また,雄個体の出現率が他区より少し高くなった。一方 M. mongolica の場合には,50μmol m-2 s-1 の光量子束密度で産仔数および寿命で他区より勝る傾向が見られ,さらにほぼ雄の産 仔を行わずに雌のみを産むという結果が得られた。また,両種ともに光波長及び光強度が寿命に様々に影響を与え, 好適光強度条件下において寿命が伸長し,更に産仔数が多くなる傾向も認められた。

(19)

自然四倍体ドジョウの 2n 精子を用いた低温処理による雄性発生二倍体誘起

李 雅娟

1

・高 養春

1

・周 賀

1

・姜 志強

1

・王 玉生

1

・斉 紅蕊

1

李 嘉奇

1

・馬 海艶

1

荒井克俊

2 (1大連海洋大学,2北大院水) 受精直後の卵を低温処理することにより,精子核のみによる雄性発生が生じることがドジョウにおいて報告され た。そして,人為ネオ四倍体(二倍体雌×四倍体雄の受精後第二極体放出阻止)の 2n 精子による受精および低温 雄性発生開始後の第一卵割阻止の方法により生存性の雄性発生二倍体が得られた。本研究では中国湖北省産自然四 倍体の 2n 精子を遼寧省大連産野生型二倍体の卵に受精直後,3℃,60分間の低温処理を施した。無処理群を対照 とした。処理群と対照群の受精率はいずれも約95%と差はなかったが,孵化率は対照の52%に対し,処理群は39% であった。孵化 7 日令仔魚の生存率は対照の83%に対して,処理群は38%と低下した。対照が 3n = 75であったのに 対して,処理群は 2n = 50 を示し,四倍体の産する 2n 精子核のみの雄性発生が示唆された。

O-12

トビハゼにおける視覚機能の組織・行動学的検討

瀧山 智

1

・濱崎佐和子

2

・吉田将之

1,2 (1広大生生,2広大院生物圏) 水陸両生魚であるトビハゼの視覚特性を明らかにするため,まず網膜神経節細胞の分布から視野と精度の関係を 調べた。網膜神経節細胞の高密度領域は体軸とほぼ平行に網膜中心付近を通って帯状に存在しており,視野の水平 面に高い視精度をもつことがわかった。また後方背側にも高密度領域が存在し,視野の前方下側を高い精度で見て いると推定された。さらに行動実験から,トビハゼが対象物を注視する際の姿勢と眼球運動を調べた。注視時には 組織学的に求められた視軸を対象物に向けており,神経節細胞が高密度に分布した網膜領域に対象物を投影してい ることが確認された。体前部は鉛直方向にも広い可動範囲を持ち,体全体の姿勢変化や移動を要さずに上方にある 対象物を注視できることが示された。これらの結果は,トビハゼが陸上での行動に適応した視覚・運動機能を持つ ことを示唆する。

(20)

ヒオウギガイの二酸化炭素分圧と炭酸水素イオン濃度

半田岳志・山元憲一

(水大校) 【目的】ヒオウギ(Mimachlamys nobilis)の酸塩基平衡を解明するため,ヘモリンパ液の CO2 溶解度と炭酸解離定 数を分析し,CO2 分圧と炭酸水素イオン濃度を試算した。 【方法】ヒオウギ(平均体重105 g)からヘモリンパ液を採取するため,閉殻筋にポリエチレン細管を装着し流水式 呼吸室で回復させた(海水の酸素飽和度100%,pH8.14,温度24.0℃)。その後,CO2 溶解度と炭酸解離定数を分析 する為,細管を通してヘモリンパ液を採取し,数種類の CO2 標準ガスと平衡させ,pH と全炭酸含量を測定した。 【結果】本研究で得られたヘモリンパ液の CO2 溶解度と炭酸解離定数を利用して,ヒオウギ CO2 分圧と炭酸水素 イオン濃度の算出が可能になった。ヒオウギヘモリンパ液の CO2 分圧は約1.5 mmHg,炭酸水素イオン濃度は約 1.4 mM/L となった。これらは,他の二枚貝での値とほぼ一致するものの,真骨魚類での値よりも低値となった。

(21)

テーマ1「繁殖・種苗生産の学術的トピックス」

親魚養成と受精卵確保

征矢野 清

(長大海セ) ハタ類の種苗生産において,安定的な受精卵確保は,成熟誘導・採卵技術の進歩により可能になりつ つある。しかし,常に良質の卵を確保することのできる技術の確立には至っていない。また,養殖の現 場では,より効率的な親魚養成と受精卵の確保が望まれている。本シンポジウムでは,1 )良質の卵を 確保することと,2 )親魚養成と受精卵確保の効率化に焦点を当て,今後の研究と技術開発についての 話題提供を行う。 1)良質卵を確保するための親魚養成と採卵・人工授精技術: 種苗生産の成績を左右する要因としてしばしば「卵質」が話題とされる。では卵質とは何であろうか? 現在種苗生産の現場では 2 つの異なる「卵質」が混用されている。それは,①雌親魚が卵母細胞に蓄積 する孵化仔魚のための栄養としての「質」と,②排卵後の時間経過に伴うタンパク質変成や組織形態変 化による卵の「質」の変化である。後者は受精率・孵化率の低下を惹き起こす原因とされる。両者とも に健全な仔稚魚を確保する上で重要な要因であるが,前者は親魚養成と深く関わり,後者は人為的排卵 誘導および人工授精と深く関わる。これら「卵質」をキーワードとして,現在と今後の親魚養成・受精 卵確保技術を考える。 2)親魚養成と受精卵確保の効率化: ハタ類は初回成熟まで年月を要する種が多い。また,雌性先熟型の性転換魚であることから雌雄で個 体数とサイズが大きく異なる。そこで,小型の親魚の作出と若齢個体における成熟率の向上が求められ ている。近い将来必要なるこれらの技術とその基礎研究について考える。 コンタクトアドレス:soyano@nagaaki-u.ac.jp

(22)

仔魚飼育

∼生残と形態異常∼

阪倉良孝

(長大院水環) ハタ類は種苗生産の困難な魚種として広く認知されてきた。種苗生産を困難にしてきた原因として挙 げられてきた 1 )初期餌料,2 )飼育初期の大量減耗,3 )稚魚の形態異常,のそれぞれの課題解決の 過程を概説する。 1 )ハタ類は仔魚の体サイズと口径が小さく,適切な初期餌料を与える必要があった。開口後およそ 1 週間の間,ハタ類仔魚はいわゆる L 型ワムシを摂餌することが出来ない。開口時には SS 型ワムシ (インドネシア株)や S 型ワムシ(タイ株)の給餌が必須であることが定量的に示され,以後汎用 されている。 2 )ハタ類種苗生産の黎明期には,飼育初期の 浮上死 が大きな問題点であったが,飼育水表面に油膜 を形成することで防除できることが明らかにされた。近年は開口からおよそ10日の期間に仔魚が夜 間に遊泳を停止して比重が増加することで水槽底に沈降し,バクテリアフロックなどに絡まって死 んでいくと考えられている 沈降死 が問題となってきた。沈降死対策には,水槽底面に水流を起こ すことにより沈降してきた仔魚を水槽底と接触をさせないという方法と,全明(夜間点灯)にして 仔魚を極力水中に留まらせる方法がとられるようになった。 3 )生産した稚魚に見られる形態異常のうち,特に脊椎骨の前弯症を挙げることが出来る。当初は餌料 の栄養強化不足などが疑われていたが,ハタ類仔魚の浮上死防除のための油膜形成が,マダイ等と 同様に鰾開腔阻害と形態異常を引き起こす可能性が非常に高いことが明らかになった。最近になっ て,飼育水面の油膜を除去することで脊椎骨に見られる形態異常を大幅に改善できることが明らか になってきている。 種苗生産の技術開発が進むにつれて 1 生産機関で10万尾単位の種苗を作ることが可能になっている が,その課題の変遷が他の魚種と似通っているところが興味深い点である。 コンタクトアドレス:sakakura@nagaaki-u.ac.jp

(23)

魚病対策

森 広一郎・佐藤 純・米加田 徹

(水研セ増養殖研) ハタ類の養殖は,種苗生産技術の進展とともに盛んに行われるようになったが,ウイルス性神経壊死 症(VNN)と呼ばれるウイルス病が仔稚魚のみならず出荷前の大型魚でも発生し大きな問題となった。 本病の種苗生産過程での感染経路は,親魚からの垂直感染が主たる経路と考えられ,シマアジの事例 では,PCR 法による親魚生殖腺の検査で陰性の親魚を採卵に用いる親魚選別法,さらに,オキシダン ト海水を用いた受精卵の消毒やオキシダントによる飼育水の殺菌が防除に有効であることが報告されて おり,同様の対策がマハタでも有効であったことが報告されている。同対策によりハタ類での本病の発 生は大幅に減少したが,特にクエでは,同対策を講じたにも関わらず,しばしば本病が発生し健全な種 苗の生産に大きな障害となっている。一方,陸上の種苗生産水槽から屋外の海上生簀へ移した後の養殖 過程では水平感染が主たる経路と考えられ,特にマハタでは出荷サイズの大型魚でも感染死亡が認めら れることから,水平感染対策のために予防免疫が不可欠とされている。 本発表では,種苗生産過程の新たな対策として開発に取り組んだ人工授精する前の未受精卵および精 子を洗浄する配偶子洗浄法について紹介するとともに,海上生け簀の養殖過程の対策として,広島大学 大学院,三重県水産研究所,愛媛県農林水産研究所水産研究センターおよび日生研株式会社と共同で取 り組んだマハタの VNN ワクチンの開発についてその成果を紹介する。

(24)

クエ

∼種苗生産技術の高度化と普及∼

中田 久

1

・門村和志

2

・濱 将臣

2

・山田敏之

2 (1長崎県五島振興局,2長崎水試) クエ Epinephelus bruneus は,南日本沿岸から東シナ海,台湾などにかけて広く生息する大型のハタ 科魚類であり,九州地方では「アラ」と呼ばれ,鍋,刺身向けなどに 8 千円∼ 1 万円/kg の高値でも取 引される高級魚である。近年では,重要な増養殖対象種として種苗生産技術の確立が期待されており, (独)水産総合研究センターや長崎水試,近畿大学等で種苗の量産化に成功している。 1. 採卵技術 雌親魚は産卵期(水温20 ∼ 21℃)にカニューラにより卵巣卵を採取し,卵径が550μm 以上の個体 を選択して,HCG 注射投与(投与量500 IU/kg)により排卵を誘導する。HCG 注射投与から48時間後 に排卵の確認と人工授精を行うことで,安定的かつ同期的に大量の良質な受精卵を確保することができ る。 2. 仔稚魚の生残率向上技術 飼育初期(ふ化∼ 10日齢)は,特に飼育環境の変化に弱く,摂餌不良や沈降死,通気への接触によ る死亡が多く確認され,時には大量減耗が発生する。そこで,低い換水率や微細藻類の24時間添加によ り水質環境の変化をできるだけ抑え,仔魚の開口時の餌料は小型のタイプである S 型ワムシ(タイ株) を給餌し摂餌率を向上させる。また,沈降死対策は水中ポンプと塩ビ管を用いて水槽底面に緩やかな水 流を発生させるとともに,通気量は弱く調節することで,初期生残率(10日齢)は70%程度に向上する。 2013年は上記の生残率向上技術により26万尾(全長30 mm,単位生産尾数2,604尾/kL)を取り揚げ,52 日齢までの生残率は54%と過去最高の飼育成績となった。現在,長崎県内の種苗生産機関への技術普及 に努めており,約30万尾の生産に成功している。 3. 形態異常の軽減技術 クエで度々発生する前彎症について発生原因の究明と軽減技術を検討した。前彎症個体には鰾が未開 腔の個体が多く存在していたことから,オーバーフロー方式による飼育水面の油膜除去を徹底した。そ の結果,仔魚の鰾の開腔率は大幅に向上し,前彎症の出現率を低減することができた。現在,本手法は 他機関・他魚種にも導入され有効性が確認されている。

(25)

スジアラ

武部孝行

(水研セ西海水研) スジアラ Plectropomus leopardus は南日本からオーストラリアおよびインド洋に広く生息するハタ科 スジアラ属に分類される大型ハタ類である。海外では,近年天然魚を用いた養殖業が盛んになっており, 天然資源量が著しく減少している。そのため,中国,台湾,東南アジアおよびオセアニアでは,盛んに 増養殖研究が進められている。また,西海区水産研究所においても,スジアラを亜熱帯海域の重要な沿 岸漁業資源として研究および技術開発を進めている。 1. 親魚養成および採卵 採卵は天然魚を陸上水槽に収容し,自然産卵によって受精卵を得ている。産卵は八重山海域周辺では 水温が23℃以上になった 4 ∼ 10月の間,月周期に同調して新月の前後1週間の間で行われる。そのため, スジアラは計画採卵および計画生産が容易な魚種といえる。 2. 種苗生産技術 種苗生産技術については,初期飼育における至適飼育環境および餌料生物の至適サイズの把握など 様々な知見を集積してきた。また,2009年に水中ポンプを用いて飼育水の流場を制御し,スジアラ仔魚 の沈降死を防止する飼育手法を考案した。この結果,初期生残が大幅に向上し,10万尾レベルを安定的 に生産できる種苗生産技術の開発に成功した。 3. 養殖技術開発の方向性と今後について 沖縄県の海洋環境および気象条件を勘案すると,海上養殖施設を設けるには制約があるため,陸上水 槽施設による養殖技術開発に取り組んでいる。現在の飼育技術では約 2 年間で商品サイズ(プレートサ イズ)の300 ∼ 500グラムに達するものの,今後は,更なる好成長化技術や体色改善などによる付加価 値を付帯させる技術について研究開発を進める。 また,スジアラは中国で最高級魚の一つであり,その取引価格は国内での価格を大きく上回っており, 輸出産品として期待が大きい。さらに,近年,沖縄県は国内外を問わず県外からの観光客が増加してい る。そのため,観光客をターゲットにスジアラを観光資源として活用しつつ,広く認知してもらうこと が大切である。その結果,一次産業の振興および地域活性化の一助となり,将来,南西諸島におけるス ジアラ養殖産業の創出に繋がればと考えている。 コンタクトアドレス:ttakebe@fra.affrc.go.jp 〒907-0415 沖縄県石垣市桴海大田148 TEL:0980-88-2136,FAX:0980-88-2138

(26)

マハタ

土橋靖史

(三重水研) 1 . 親魚養成・採卵技術 マハタは雌性先熟の雌雄同体性を示し,成熟した雌となるには 5 年以上,性転換した雄となるにはさ らに長い年月を要するといわれている。そのため,雄親魚の確保が種苗生産を実施する上での大きな問 題であった。そこで,雄性化のためのホルモン投与法の検討を行い,未熟な雌へメチルテストステロン (MT)を含んだ医療用チューブを埋め込みすることにより,国内では初めて,完全に雌親を雄性化で きることを明らかにした。また,雄性化した雄親から採取した精子は授精能力を有することを確認した。 また2004年に,親魚水槽の水温および日長を調整することにより,国内では初めて,マハタ親魚から 秋季( 9 月)に採精および採卵することに成功し,人工授精の結果,通常の採卵期( 5 月)と比較して 同程度の卵質を示す受精卵を得ることができた。また,種苗生産にも成功し,春と秋の年間 2 回の種苗 生産が可能となった。 2 . 仔稚魚の生残率向上技術 マハタ仔魚は,飼育初期の減耗が激しく,種苗量産のためにはこの間の生残率向上が必要不可欠であっ た。初期減耗の要因として初期餌料の不適合,仔魚の活力不足および不適切な飼育環境が考えられ,こ のうち初期餌料については S 型ワムシ小型種の培養と給餌,仔魚の活力については親魚養成および人工 授精技術の向上により解決した。さらに飼育環境の検討を行い,10日齢の生残率は,水温で自然水温(20℃ 前後)より25℃前後で,照明で自然日長より昼夜連続照明で,オイル添加で無添加より添加で,それぞ れ高くなった。これらの飼育環境の好適条件を組み合わせ,量産試験を実施した結果,10日齢の生残率 は50%以上と大きく向上し,万単位での種苗量産が可能となった。 3 . ウイルス性神経壊死症(VNN)対策 種苗生産中に大量死亡を引き起こす VNN を防止するために,PCR 法を用いたウイルス遺伝子検出に よる親魚の選別,オゾン処理海水(オゾン処理によって発生したオキシダントでウイルスを不活化した 後,活性炭でオキシダントを除去した海水)による選別した親魚の養成,オキシダント海水(低濃度 のオキシダントを含む海水)による受精卵消毒,オゾン処理海水による生物餌料(ワムシ,アルテミ ア)の培養および仔魚の飼育を実施した。その結果,上記の対策を実施した2000年以降,種苗生産中の VNN の発生は 1 例も認められなくなった。 コンタクトアドレス:tsuchy00@pref.mie.jp

(27)

キジハタ

∼刺網で漁獲されたキジハタの再放流効果の検証∼

南部智秀

(山口水研セ) 山口県ではキジハタの栽培漁業を推進するため,種苗生産を事業化し大量の放流種苗を供給できる体 制を確立するとともに,放流調査では高い混入率と強い定着性など,その効果を実証した。これら取り 組みの成果はキジハタ漁獲量の増加として表れた一方で,経済価値の低い未成熟の小型魚が多く水揚げ される状況になった。その対策として体長制限(全長30 cm 未満の小型魚の採捕禁止)を検討した。し かしながら,これら小型魚は主に刺網で漁獲され,魚体の損傷が大きいことから再放流後の生残につい て検証を行った。 その結果,損傷部位の表皮は 1 ヶ月後には再生して治癒することがわかった。また,揚網時に生きて いる小型魚は,再放流すればその98.3%はその後の生残が期待できる結果となった。

(28)

クエ

∼クエ資源の持続的利用に向けての総合的な研究∼

中川雅弘

1

・菅谷 磨

2

・藤  博

3

・大津安夫

3

・渡邉庄一

4

・村瀬慎司

4

戸澤 

4

・森下貴文

5

・南部智秀

6

・佐竹顕一

7

・征矢野 清

8 (1水研セ西海水研,2水研セ瀬水研,3佐賀玄海水振セ,4長崎水試,5熊本水研セ,6山口水研セ, 静岡温水研セ7,長大海セ8) 重要な沿岸漁業対象種であるクエ資源を持続的に利用するため,資源解析の基本情報となる水揚げ量 の変動,成長式,年齢と成熟の関係,系群及び種苗放流の効果を推定することを目的とした。 我が国で最も多くクエが水揚げされている長崎県の主要市場においてクエの水揚げ量の経年変化を調 べた結果,水揚げ量は2001年以降急激に増加したが,近年では減少傾向を示していた。各機関で保有す るクエの年齢と全長のデータ(N=788)を集計し,Von Bertalanffy の成長曲線にあてはめて成長式を推 定した結果,Lt = 139.7( 1- e-0.0684(t+1.7654))となり,極限体長は139.7 cm,成長係数は0.0684と推定された。 年齢が特定されている人工魚を用いて,組織及び内分泌学的解析から年齢と成熟の関係を調べた結果, 3 歳から成熟が認められ,概ね 8 歳ですべての個体が成熟することが示唆された。また,本種種苗に標 識(ダート,腹鰭抜去)を装着し,放流後の移動及び混入率を推定した結果,長崎県福江で放流した一 部の種苗は北上し壱岐周辺海域まで,佐賀県で放流した種苗は島根県海域まで移動することが確認され た。福江魚市場で全日・全数調査をした結果,放流魚の混入率は 5%であった。長崎県の福江及び対馬, 熊本県,佐賀県,山口県,静岡県の地先で採捕された天然クエ186尾について10個の msDNA マーカー を用いて,海域間の遺伝的関係を調べ結果,msDNA マーカーの分析では,各海域の平均アリル数とヘ テロ接合体率の期待度はそれぞれ8.8 ∼ 13.3及び0.767 ∼ 0.804であり,比較的高い遺伝的多様性が認め られた。また,海域間に顕著な遺伝的差違は見られず,互いに遺伝的交流があると考えられた。 コンタクトアドレス:mnakagaw@affrc.go.jp 

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国内外の動向

照屋和久

(水研セ西海水研亜熱帯) 近年,天然資源に依存する漁業生産が減少する一方で安定生産,安定供給が可能な養殖業の割合が高 くなっており,2011年は養殖業全体に占める魚類養殖の割合は26.7%に達している。また,付加価値の 高い,ブリやマダイ,ヒラメ,およびトラフグが主要な対象種であったが,最近では価格の低迷などに よって,より付加価値の高いクロマグロの養殖が盛んに行われている。さらに,美味で希少性が高く付 加価値の高いハタ類の養殖業が現在,国内外を問わず注目を集めており,世界のハタ類養殖生産量は右 肩上がりで増えている。特にハタ類を好む中国では需要が高いため,種類によって異なるが 1 kg 当た り2,000円前後から8,000円前後で取引されている。さらに付加価値の高いスジアラではホテルなどの末 端価格が 1 kg 当たり20,000円で調理され提供されている。そのようなハタ類養殖の状況を踏まえ,国 内における産業としてのハタ類養殖のあり方と今後,国外戦略としてどうのように取り組むべきか考え てみたい。

参照

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田中 至道 1) 、谷山 洋三 2) 、隠 一哉 1) 、野々目 月泉 1) 、沼口 諭