− 47 − 共生のひろば 9号, 47−48, 2014年3月
ひとはく周辺にみられる伝統民家∼摂丹型民家∼について
−里それぞれの住まいと風景の伝承を考える−
山崎敏昭
(ひとはく地域研究員・兵庫県立大学大学院環境人間学研究科共生博物部門ŐŃ)
1į兵庫の茅葺民家ベルト地域
兵 庫 県 に は、「 千 年 家 」 と 呼 ば れ 重 要 文 化 財 に 指 定 さ れ て い る 古 民 家 が 2 棟 現 存 し て い る。 そのうちの1棟神戸市北区山田町の箱木千年家とその周辺は、近世初めの古い民家が残されて いる県下でも稀有な地域である。この箱木千年家のある地域に連なる神戸市西区から北区、三 木市、三田市、宝塚市北部、川西市北部、猪名川町、篠山市、丹波市にかけての地域は、県下 でも特に多くの茅葺民家が集中している「茅葺民家ベルト地域」である。神戸市北区・西区で はIJijıı棟 近 く あ り、 三 田 市 域 で も 約ĶĶı棟 が 今 も な お 現 役 の 住 居 と し て あ り、 隣 接 の 三 木 市やほかの市や町も含めると全体では数千棟の規模になると思われる(この数には鋼板覆い建 物も含む)。
2įひとはく周辺の茅葺屋根
ひ と は く 周 辺 の 茅 葺 民 家 の 状 況 は ど う で あ ろ う か。 三 田 市 を 含 む 旧 摂 津 国 域 や 旧 丹 波 国 域 に分布する独特の型式である、妻入り型式で内部が縦割り片土間の構造である、「摂丹型民家」 となっている。
3įすまいと風景の伝承にむけて
里のくらしを伝える茅葺民家は、生活様式が変化し世代交代が進む現在、急速に失われつつ あ る。 住 居 と い う 生 活 に 密 着 し た も の だ け に、「古 い か ら 残 せ」、「い い も の だ か ら 残 せ」 と い う掛け声だけでは、茅葺民家は残せないものであると考える。
それには全国的にも貴重な、兵庫県東南部に今も息づく茅葺民家ベルト地域がどのように形 成されたのか、また現状を捉える必要がある。今も住み続けている理由に、何か将来への継承 のヒントがあるのではないかと考える。
平入り形式の民家と妻入り形式(右端)の民家(三田市役所『三田の茅葺民家』ijııĺより)
「民家の缶詰・・鋼板を外してみれば・・」
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ひとはく周辺にみられる伝統的民家−摂丹型民家−について
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