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中国のほんの話 32

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中国のほんの話 32

中国のほんの話(32)

中国人を知る本

蔭山 達弥

 いやな時代になったものだ。1972 年、中日国交正常化以降、中 国と日本の両国にはかつて、17 年(1972 〜 1989)の長きに亘る

蜜月関係があった。だが、その後の 10 数年余りは、経済交流は絶えず増加しているのに、お互いの 深層心理にある気持ちのわだかまりは日を追う毎に深くなっている。

 中国の ʻ 日本を憎む気持ち ʼ と日本の ʻ 中国を嫌う気持ち ʼ を一種の個人や階層の利益を超えた ʻ 社 会心理 ʼ にまで発展させた要因は、両国間に過去 10 数年起こった深刻な変化にある。中国社会学院 社会学所副所長・李培林は、「国際世論で現在常に語られるアジアにおける中国の勃興と日本の衰退が、

両国の国民心理に深い影を落としている」と考えている。中国人から見ると、中国人はついに苦しみ から解放されて晴れ晴れとした気持ちになり、一部の日本人の内心にある中国人を劣った民族と見る 鬱憤を二度と受け入れられない。

 しかし、日本の一部の国民も中国は全体的に見てやはり、貧しい、遅れた、知識が乏しい国であり、

教養が足りない上に、絶えず内輪もめしていると考えている。日本はたとえ停滞しても、中国は日本 に追いつけない。中国は歴史上、強い排外思想を持っていて、一度実力を有すると容易に隣国を脅か すとまで、一部の日本人は考えているのである。

 昨今、このような憂慮すべき事態をさらに助長するような書籍や雑誌が出版されているが、お互い に相手のことを知らずに、単なるイメージだけで相手を非難・攻撃することは、非常に危険なことだ と思う。私たちは単なるイメージだけで、中国を見ているのではないだろうか。中国のことをあまり にも知らなさ過ぎるのではないだろうか。無知から生ずる誤解だけは何としても避けたいものである。

 今から 13 年前に出版された邱永漢著『中国人と日本人』(中央公論社、1993)は当時、わが国の ビジネス界で話題のベストセラーになった本であるが、中国人の父と日本人の母の間に生まれ育った 台湾人の著者による中国と日本の異同の説明はわかりやすい。この本の中の「こんなにも違う中国人 と日本人」を是非読んで欲しい。目から鱗が落ちること間違いなしである。例えば食事の礼儀作法に ついて、「中国人と日本人とでは箸やスプーンの置き方が違う。日本人は箸を横に並べる。これに対 して中国人は縦に並べる。箸の形が日本と中国ではまた違う。日本人の使う箸は、女物が男物より一 まわり小さいが、中国人には男女の区別がない。…また箸の長さにしても、中華料理店でご体験の通 り、中国人の使うものは日本人がふだん使っているものよりずっと長い。」と書かれている。日本と 中国の懸け橋になるような相互理解のために書かれた『中国人と日本人』は 13 年経った今も色あせ ていない。

 2005 年4月、中国で反日デモが起こった。多くの日本人は、このデモを驚きと衝撃を持って受け 止めた。1984 年から7年間、北京で人民中国雑誌社、中国画報社で勤務し、1995 年から2年間、北 京大学で教壇に立った工藤俊一氏の『北京大学超エリートたちの日本論』(講談社、2003)は、歯に 衣着せぬ中国の若者の日本観、日本では到底知ることができない鋭い日本批判、反面、日本に寄せる 親身な思いをありのままに語った良書である。宮沢賢治の研究で知られる王敏氏の『中国人の愛国心』

(PHP 新書、2005)は、「なぜ中国人は歴史認識にこだわるのか」「靖国参拝に反対する真の理由とは」「日 本文化に憧れながら、反日デモを起こすという中国人の相矛盾した行動はどこから生まれてくるのか」

といった日本人には容易に理解できない中国人の精神構造を徹底的に分析した本である。

かげやま たつや(教授・中国文学)

参照

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