別紙 1
論 文 審 査 の 要 旨
報告番号|甲第 .:> b~lf
1%I
氏 名 柏原 由佳主 査 中 野 泰 子 副 査 荒 川 秀 俊
論文審査担当者
副 査 岩 井 信 市 副 査 加 藤 裕 久 副 査 木 内 祐 二(論文審査の要旨)
本研究は、日本人の脂質異常症患者を対象にエゼチミブの有効性に影響す る因子を後方視的に疫学調査し、さらにコレステロール吸収に関与する小腸 刷子縁膜や肝臓に存在するコレステロールトランスポーターNiemann・Pick Cl like 1 (NPClLl)の遺伝子多型との関係を明らかにすることを目的とし て実施されている。
先ず、 2012年 5月から 2013年 3月に昭和大学病院循環器内科にて治 療を受けた脂質異常症患者でエゼチミブを新たに処方された(単独、併用を 含む) 20歳以上の成人を対象に投与開始から 6ヶ月間観察し、投与前より low‑density lipoprotein ・cholesterol (LDL‑C)が 15%以上低下した場合を有効
としてエゼチミブの有効性評価を行った。その結果、 効果あり と判定され た患者は対象患者 97名のうち 88名、 効果なし は 9名であった。効果 なしと判定できた対象は少数であったが、乙の 2群について性別、年齢、投 与前LDL‑C、投与前 totalcholesterol (TC)、投与前 triglyceride(TG、) 投 与前 high・density lipoprotein・cholesterol (HDL‑C)、投与前 HbAlC、糖尿 病の有無、高血圧の有無、冠動脈疾患の有無、スタチン併用の有無、他の脂 質異常症治療薬の有無、 bodymass index (BMI)の因子を用いて多重ロジス ティック回帰分析)を行った結果、 エゼチミブ投与前 TC値 が高いほど、
糖尿病あり 、 スタチン系薬剤併用あり であるほどエゼチミブの効果が 有ることが分かった。
次に、上記検討で対象とした脂質異常症患者における NPClLl遺伝子多型 解析を行っている。 NPClLlの機能に関与することが期待される NPClLlの コーディング領域にこれまでに報告されている cSNPの全てを対象としてそ の周囲 300〜500bpの塩基配列を解析している。その結果、 6つの cSNPに 多型が存在することや、データベースに報告されているものとジエノタイプ およびアレル頻度が有意に異なる cSNP4つを同定している。また、これらの 内の一つの cSNPrs2072183に連鎖する 5 上流の SNPrs2073548も見つけ ている。そこでこの SNPrs2073548がNPClLlの発現量に影響する SNPで はないか検討を行っているが、残念ながらそのような結果は得られなかった。
各多型とエゼチミブの有効性や LDL‑C低下率についても解析をおこなって いるが、特に有意なものは認められなかった。そこで、次に健康日本人で報 告されている多型頻度や、カナダ人の脂質異常症患者で報告されている多型 頻度との比較をおこなったところ、 1735C>G [Leu272Leu, rs2072183] GG ジエノタイプは、日本人の脂質異常症患者のバイオマーカーになる可能性が 示唆された。
上記したように本研究では、脂質異常症患者を対象にエゼチミブの有効性 に影響する因子を後方視的疫学調査により明らかにし、また、 NPClLlの機 能に影響する可能性のある cSNP全ておよびその周辺の塩基配列を解析し、
エゼチミブの有効性や効果に影響する多型は確認できなかったものの日本人 の脂質異常症患者のバイオマーカーとなる可能性のある SNPを同定してい る。これらのことより、その研究内容、研究レベル、研究の意義などについ て総合的に審査した結果、薬学博士を授与するに充分値するものと評価した。